原子力委専門部会、損害賠償制度の見直しに向け報告書を取りまとめる
原子力委員会の専門部会は10月30日、原子力損害賠償制度の見直しに向け報告書を取りまとめた(=写真)。福島第一原子力発電所事故後の関連法整備に基づき、「原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議」の要請を受け、約3年半にわたり議論してきたもの。
報告書では、現行の原子力損害賠償法に規定される原子力事業者の無過失責任、責任集中、無限責任については、維持することが妥当とされた。一方、被害者救済手続きに関し、国による仮払いに係る制度整備や、原子力事業者に対する損害賠償対応方針の作成・公表の義務化について、必要な法改正を行うことなどが盛り込まれた。
また、今後の損害賠償措置のあり方については、(1)迅速かつ公正な被害者への賠償の実施、(2)国民負担の最小化、(3)原子力事業者の予見可能性の確保――の観点も踏まえ、引き続き慎重な検討が必要とされ、損害賠償措置額(現行法で最大1,200億円)の引き上げは見送りとなった。これに関し、(1)国内外の保険市場の見通し、(2)電力システム改革の進展、(3)原子力の安全性向上に係る評価――などを踏まえた現時点の考え方と説明した上で、所管の文部科学省を中心に引き続き検討するとの追記がなされている。
報告書は、関連の法改正に向けて、31日に原子力委員会会合、副大臣会議に報告される運び。
30日の専門部会会合で、オブザーバーとして出席した電気事業連合会の大森聡理事は、原子力事業者の立場から、「『二度と事故を起こさない』という強い決意のもと、より一層の安全性向上に取り組んでいく」とした上で、今後の賠償制度に係る継続的検討に期待を寄せた。
報告書の取りまとめまで3年以上を要したことに関し、内閣府の担当者は、「多くのステークホルダーから意見を求めた結果」などと説明している。