原子力国民会議全国大会、立地地域首長らが総括討論し閉幕

2018年11月2日

 原子力国民会議他主催の「原子力立地地域全国大会」が11月1日、2日間の日程を終了した。1日目に衆議院第一議員会館でエネルギー戦略研究会会長の金子熊夫氏、ジャーナリストの櫻井よしこ氏らによる講演が行われたのに続き(既報)、2日目は、会場を如水会館(東京・千代田区)に移し、地域ごと、テーマごとに議論を深掘りし、「立地地域が目指すべき原子力のあり方」を考える総括セッションへとつなげた。
 「再生可能エネルギーと原子力のベストミックス」をテーマとした議論の中で、東京工業大学先導原子力研究所特任教授の奈良林直氏は、9月に発生した北海道胆振東部地震による全道大停電の際に、道内の泊発電所が停止中だったことをあげ、「安全性が確保された原子力発電所を利用する重要性」について問題を提起した。これに対し、東京大学大学院工学系研究科教授の岡本孝司氏は、原子力のメリットとデメリットについて述べた上で、化石燃料、再生可能エネルギーも含め、「良いところを組み合わせる」ことでベストミックスを実現すべきと述べた。
 また、ドイツ在住の作家・川口マーン惠美氏は、「脱原子力、省エネ推進、再エネ利用」を掲げるドイツのエネルギー転換政策に関して、太陽光発電の不安定性などから、安価な褐炭の利用によりCO2排出量が増加している実態を述べ、再生可能エネルギーの限界を主張した。

総括セッションに臨む末永氏(司会)、細田衆議院議員、宮下むつ市長、品田刈羽村長、山口美浜町長(左より)

 元青森大学学長の末永洋一氏の進行による総括セッションでは、むつ市長の宮下宗一郎氏、刈羽村長の品田宏夫氏、美浜町長の山口治太郎氏、衆議院議員の細田健一氏が登壇し、原子力立地地域における将来の町づくりやエネルギー教育のあり方などを議論した。
 その中で、宮下氏は、むつ市内に建設中の使用済み燃料中間貯蔵施設について、「使用済み燃料が50年の貯蔵期間を終え運び出された後、地域振興をどうするか。50年なんてあっという間」と、貯蔵事業の開始と同時に始まる問題に不安を呈した。さらに、宮下氏は、「国民全体の原子力に対するリテラシーが足りない」とも述べ、まず立地地域からエネルギー教育の充実化に取り組んでいく必要性を訴えた。
 山口氏も、2004年の美浜3号機二次系配管破損事故発生時に「放射能漏れ」といった誤った報道により、夏の行楽シーズンにもかかわらず海水浴客が帰ってしまったことを振り返り、「最低限のエネルギー・環境教育が必要だ」と強調した。
 また、末永氏が、新たなエネルギー基本計画に原子力発電所の新増設・リプレースが盛り込まれなかったことを述べたのに対し、自由民主党の電力安定供給推進議員連盟に所属する細田氏は、「まずは再稼働をきちんと進め道筋を付けること」として、次期計画に向け検討していく考えを示唆した。エネルギー行政に係った経験のある同氏は、原子力の安全確保を図る上で、ピアレビューに電力会社OBが参画する有効性も述べた。
 細田氏は、今後の原子力規制の改善に向け、米国原子力規制委員会(NRC)の考え方を取り入れる方策にも言及したが、刈羽村の品田氏は、確率論的リスク評価(PRA)など、日本で米国の手法が定着するのは容易ではないことを指摘した。