原子力機構、水底土壌の放射性セシウム分布評価で新手法開発

2018年11月8日

 日本原子力研究開発機構の福島環境安全センターはこのほど、河川・湖沼の水底土壌で試料を採取することなく、放射性セシウムの深さ分布を評価する手法を開発した。水底の土壌表面で測定したガンマ線の特性から、「RPC(Ratio of Peak and Compton)」と呼ばれる係数を導き出すことで可能となったもの。

©原子力機構

 原子力災害被災地のモニタリング・除染対策に向け、河川・湖沼の水底で放射性セシウムによる汚染実態を把握する必要があるが、これまでは、水底に向けて垂直方向に柱状の土壌試料を採取し、それを層別に分割して、深さごとの放射能測定を行っていたため、農業用のため池の場合、約1週間程度の時間と手間を要していた。
 今回開発した手法は、水底の土壌表面で放射線検出器によるガンマ線スペクトル(エネルギーと計数率の関係)測定を行った上で、表面の放射性セシウムから放出される「直接ガンマ線」と、土壌深くから物質と衝突してエネルギーが小さくなった「散乱ガンマ線」の、2つの計数率の比「RPC」に着目し、放射性セシウムの深さを推定するもの(=図上)。
 研究グループは、農業用ため池で、新たな手法により測定を行ったのと同位置で、実際に試料を採取し、水底土壌中の放射性セシウムの水平分布と鉛直分布について測定結果を検証し、本手法の有効性を確認したとしている。放射性セシウムの鉛直分布については、重量、含水率などから算出される「ベータeff」と呼ばれる係数により評価を行っており、今回対象としたため池では、「深層に放射性セシウムが存在し、表層濃度は低い」箇所も判明した(=図下)。
 本手法により、現場で試料を採取することなく、水底土壌中の放射性セシウムの分布を約1~2日で、深さ約50cm程度は把握することが可能となり、研究グループでは、「ニーズがあればさらに深度を上げることも考えたい」と話している。

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