今冬の電力需給対策、北海道に「数値目標なし」の節電要請

2018年11月9日

 資源エネルギー庁は11月8日、今冬の電力需給対策を取りまとめた。それによると、全国で電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3%を確保できる見通しだが、北海道については、(1)系統規模が小さく他電力からの融通に制約がある、(2)厳冬のため万一の需給ひっ迫が人の生命・安全に関わる可能性がある、(3)9月にブラックアウトを経験している――ことから、「数値目標なし」の節電要請を行うこととした。節電要請の実施は、東日本大震災に伴う供給力の大幅減少で10季続いた2015年度冬季以来のこと。
 同日、総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会で、資源エネルギー庁は、今冬12~3月の電力需給について、10年に1回程度の厳寒を想定した最大需要量に対し供給力が3%を上回っているかを検証し、さらに、北海道胆振東部地震を踏まえた追加検証を行ったことを説明した。

泊発電所敷地内の地質調査を行う石渡原子力規制委員(©原子力規制委員会)

 その中で、冬季に電力最需要期を迎える北海道では、最大の供給力として見込む北海道電力苫東厚真発電所4号機(石炭、70万kW)の停止が予備率12.6%の喪失ともなる地域特性から、緊急時には、試運転中の同石狩湾新港発電所1号機(LNG、56.94万kW、2019年2月営業運転開始予定)を運用できるよう前倒しの取組を進めるなど、万全を期すこととされた。現在、同泊発電所は、全号機が新規制基準対応に伴い停止しており、原子力規制委員会による審査が先行する3号機(PWR、91.2万kW)については、敷地内断層の活動性評価が進められている状況だ。因みに、北海道では、全国的に厳しい寒さとなった昨冬、1月25日(札幌市で最低気温マイナス12.7度C)に最大需要525万kWを記録した。
 9月の北海道胆振東部地震に伴う停電に関して、北海道が取りまとめたところによると、商工関係被害額(商品・在庫廃棄等)約136億円、売上影響額(営業・操業停止によるもの)約1,318億円、観光消費影響額(宿泊キャンセル等から推計)約356億円、農業被害額約26億円などと、産業活動に大きな影響を受けたとしている。運輸関係では、信号復旧まで道路輸送が再開できない状況も生じた。