エネ調原子力小委員会、新エネルギー基本計画を踏まえた課題解決に向け議論開始
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)が12月5日、およそ8か月ぶりに開かれた。前回の会合以降、閣議決定された新たなエネルギー基本計画で示す2030、50年における原子力の位置付けを踏まえ、今後の課題解決に向けて、「安全性」、「廃炉・廃棄物」、「イノベーション」、「立地地域」を視点に議論していく。
これら各論に先立ち、資源エネルギー庁が、最近の原子力政策の動向について説明するとともに、これまでの同小委員会での議論を、(1)さらなる安全性の向上、(2)防災・事故後対応の強化、(3)核燃料サイクル・バックエンド対策、(4)状況変化に即した立地地域への対応、(5)対話・広報の取組み強化、(6)技術・人材・産業の基盤維持・強化――の項目ごとに整理した。
事業者の立場から、電気事業連合会原子力開発対策委員長の森中郁雄氏は、自主的な安全性向上に向け7月に発足した「原子力エネルギー協議会」(ATENA)について述べ、「福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、常に厳しい目で安全性を見ていく」と強調した。2019年2月には、メーカーも含めた産業大の取組について広く発信する「ATENA国際フォーラム」が開催される予定。
これに対し、大橋弘委員(東京大学大学院経済学研究科教授)は、「安全性を向上させるため民間によるイノベーションを促すには、国の規制や政策のあり方が非常に重要」などと、官民協調の必要性を指摘した。この他、委員からは、「立地地域とどういう関係を築いていくか、諸外国の色々な知見を在外公館も通じ獲得していくべき」(増田寛也・野村総合研究所顧問)、「『ゴミを捨てるところがないのに前へ進むのか』という課題がずっとある。再稼働すれば使用済み燃料も溜まっていく」(伊藤聡子氏〈フリーキャスター〉)といった意見があった。
山口彰委員長代理(東京大学大学院工学系研究科教授)は、エネルギー基本計画で原子力が「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けられていることを踏まえ、「どのように現存のものを持続的に使っていくか」として、人材・技術力の維持、核燃料サイクル推進、防災対策についても、具体的議論がなされるよう求めた。
5日の会合では、資源エネルギー庁より、今後の原子力イノベーション政策に関わる議論に向けて、米国ニュースケール社による小型モジュール炉(SMR)開発の事例などが紹介された。10月に開催されたイノベーション創出の国際会議「ICEF年次総会」で原子力分科会の座長を務めた遠藤典子委員(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)は、SMR開発に関し「価格競争力を持つにはまだ時間を要する」として、規制や立地地域との関係など、様々な政策オプションを整理していく必要性を述べた。