アイソトープ協会、放射性同位元素の医学利用に期待

2018年12月13日

 日本アイソトープ協会の二ツ川章二理事他は12月11日の原子力委員会会合で、放射性同位元素の利用に関し、医療分野での現状と課題について説明した。
 医療分野では、外部から放射線を照射し身体の内部を撮影するX線検査の他、体内に放射性同位元素を含む薬剤を投与し、その薬剤が発する放射線を捉え画像化し診断する核医学検査も広く行われている。
 同協会の調査によると、近年核医学検査全体の臨床ニーズに大きな変化はないものの、より高度な検査が求められていることから、ポジトロン断層法(PET)検査の実施件数が増加傾向にあり、2012年に約58万件だったのが、2017年には約71万件にも上っているという。

JAFMIDホームページ(アイソトープ協会発表資料より引用)

 一方で、年間約100万件と核医学検査全体で多くを占めるシングルフォトン検査と呼ばれる方式では、検査で主に用いられるテクネチウム製剤の原料となるモリブデン99をすべて輸入に依存しており供給不足も生じている。さらに、生産国の原子炉故障も相まってモリブデン99の国産化に向けた官民共同の検討や学会による提言が盛んになるなど、安定供給体制の確立が急務となってきた現状をアイソトープ協会は強調した。新たな動きとしては今夏、同協会が先導し、テクネチウム製剤の国産化を強力に推進するオールジャパン体制づくりに向け「日本医用アイソトープ開発準備機構」(JAFMID)が設立された。
 また、アイソトープ協会は、放射性同位元素を用いた核医学治療に関し、アルファ線源による治療効果が多くの症例で確認されていることをあげた上で、線源によっては世界的な供給体制の構築が進んでいるものの、日本ではまだ学術レベルの利用に留まっているとして、「診断分野では先進国、核医学治療分野では20年遅れ」との懸念を示した。
 この他、大学施設における放射性同位元素利用の減少傾向などを指摘した上で、(1)安定供給によるさらなる利用の拡大、(2)アクチニウム225(海外で研究開発が活発化しているアルファ線源)による治療の進展、(3)人材育成と放射線・アイソトープへの理解拡大――を提言している。