千葉大が授業で地層処分をテーマにディベート試合、NUMO支援により7年目
千葉大学教育学部の授業で1月22日、「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上での保管を義務づけるべき」との論題でディベート試合が行われた。原子力発電環境整備機構(NUMO)の支援により、同学部藤川大祐教授らが2018年度後期に開設する「ディベート教育論」の授業で開催されたもの。
授業では、ディベート試合のため予め受講する学生たちを10チーム(1チーム3~5名)に分けており、今回その中から2チームが参戦し対決した。試合方法は、始めに論題への肯定側が立論し、これに対して否定側からの質疑に応答、続いて否定側が立論し、これに対して肯定側からの質疑に応答、その後、否定側と肯定側が交互に2回ずつ反論を行う。立論、質疑応答、反論のいずれも制限時間が2分となっており、それぞれの間に1分間の準備時間が与えられる。
試合では、肯定側が、高レベル放射性廃棄物を地層処分せずキャスクに封入し地上保管する方法について、安全性とコスト面での優位性とともに、分離・核変換技術の進展など、廃棄物の低減化・資源化を図る新技術出現の可能性を主張した。一方、否定側は、自然災害によるリスクや用地獲得に関わる住民同意の困難さを地上保管のデメリットとして指摘した。これに対し、肯定側は、キャスクの頑健性が東日本大震災でも実証されているとしたほか、地層処分では重機による作業で工事期間中もリスクが大きいなどと反論した。
論戦後、出席した学生による挙手判定で、肯定側15名、否定側13名となり、藤川教授は「僅差で肯定側の勝ち」と軍配を上げた。今回、論点が安全性とコストに絞られたことに関し、藤川教授は「的確にポイントを抑えていた」と評価する一方で、キャスクの交換に伴うリスクや、コストを算定する期間については触れられなかったことから「試合全体を通じチームワークを発揮させ、もう少し深い議論が欲しかった」とコメントした。
試合に参加した学生からは、「相手側の主張を十分整理できるよう、メモの取り方も勉強すべきだった」といった感想が聞かれた。
NUMOでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる理解促進に向け、こうしたディベート授業への支援を継続的に行っている。千葉大で実施されるのは今回7年目となるが、2017年度の受講後アンケート調査によると、「将来教員となって地層処分を教えたい」と答えた学生が95%にも上るなど、次世代層への関心喚起につながっている。
藤川教授は、「『原発の是非』のような大きな話題ではなく、既に発生している高レベル放射性廃棄物処分のあり方について考えることで、国民的課題であるエネルギー問題を冷静かつ具体的に考えることができる」と、ディベート授業の意義を強調している。