新型炉開発に関するシンポ、エネルギー市場の動きの中で競争力維持に向け議論
将来の革新的原子炉開発について考えるシンポジウム(資源エネルギー庁主催)が2月12日、東京大学(本郷キャンパス)で開催され、小型モジュール炉(SMR)などの新型炉がエネルギー市場の動きの中で競争力を維持する方策に関し海外有識者も交え議論した。革新的原子炉開発の推進については、新たなエネルギー基本計画にも明記されている。
シンポジウムでは、英国大使館原子力担当一等書記官のキース・フランクリン氏他による基調講演を踏まえ、日本エネルギー経済研究所研究主幹の松尾雄司氏が、諸外国の原子力技術開発を巡るエネルギー市場動向に関し課題を整理。松尾氏は、米国ではガス火力の収益性が向上し、カナダでも水力が安価となっていることから、「原子力の競争力維持は厳しい」と現状を述べたほか、再生可能エネルギーについても系統対策に係るコスト上昇を指摘するなどし、議論に先鞭を付けた。
経済性の観点から米国でSMRに期待がかかっていることに関し、東京大学大学院工学系研究科教授の藤井康正氏は、地域分散化による熱利用の可能性や、大量生産で価格が下がる「学習効果」をメリットとして強調した。
また、急遽欠席となった米国の電力経済エコノミストのエドワード・キー氏(ニュークリア・エコノミクス・コンサルティング・グループCEO)は、メッセージを寄せた。その中でキー氏は、これまで大型軽水炉が抱えていた課題を解決するものとして、SMRへの期待感を示す一方、「小さいからといって直ちに安価、安全というわけではない」とも述べ、全体像をよく考えながら開発していく必要性を訴えかけた。さらに、「新型炉の安全性を主張しても、経済性が目に見えるまでになるのは難しい」として、例えば、発電において出力抑制を要する際に海水の脱塩処理に利用するなど、市場に受け入れられるよう活用方法を考えることが必要だとしている。
この他、エネルギー総合工学研究所プロジェクト試験部長の都築和泰氏が、今後の革新的原子炉開発について(1)大型軽水炉、(2)軽水炉型SMR、(3)高速炉、(4)高温ガス炉、(5)超小型炉、(6)舶用炉--に大別した分析調査報告を、GE日立技術リーダーのディビッド・ヒンズ氏が500MWの新型炉「BWRX-300」の開発状況を披露した。