原子力学会、設立60周年でシンポ開催や一般向けの書籍も刊行

2019年3月12日

 日本原子力学会は、設立60周年記念事業の一環として、4月25日に東京工業大学(東京目黒区)で「創立60周年シンポジウム-震災をこえて 原子力の明日-」を開催する(開催案内はこちら)。同学会の駒野康男会長(MHI NSエンジニアリング)が3月7日の記者会見で述べた。日本原子力学会は2月に設立から60周年を迎えた。同シンポジウムでは、2011年3月11日に発生した東日本大震災・福島第一原子力発電所事故への対応を含め、学会のこれまでの活動を振り返り、原子力の平和利用に対する信頼回復と新たな発展を展望する。
 日本原子力学会では、福島第一原子力発電所事故発生直後より、専門家集団としての立場から、事故に関する(1)情報の収集・分析・評価、(2)反省・教訓の抽出および提言、(3)社会への正しく分かりやすい情報発信、(4)関連学協会との連携、(5)海外との情報交換――といった取組を進めてきた。例えば、福島復興に関する活動としては、2012年に立ち上げられた「福島特別プロジェクト」があり、被災地における除染、放射線影響、風評被害などに関わる支援・助言を行っている。
 また、設立60周年記念事業として、この他、福島第一原子力発電所事故以降の原子力を巡る状況について一般市民や学生らを対象にわかりやすくまとめた「原子力のいまと明日」を3月20日に発刊する(発刊案内はこちら)。1998年に刊行(2011年の事故発生直前に改訂)された「原子力がひらく世紀」の姉妹版となるもので、事故の推移と発電所の現状、廃炉への道のり、事故の教訓を踏まえた安全性向上の取組、放射線の人体影響、風評被害、国内外における原子力利用の状況、次世代原子炉の研究開発、人材育成などを取り上げている。
 3月7日の記者会見には、山口彰副会長(東京大学大学院工学系研究科教授)も同席し、4月より新たに「確率論的リスク評価(PRA)の活用および手法調査」に関する研究専門委員会を立ち上げることを紹介した。同氏は、複数基の相互作用に関わる「サイトレベルPRA」など、近年の技術進展も踏まえ、PRAに関する最新知見の調査を実施し若手研究・技術者の育成にも寄与したいとしている。