東大他、福島第一より飛散した放射性微粒子の溶解挙動を解明
東京大学、農業・食品産業技術総合研究機構、日本原子力研究開発機構の研究グループはこのほど、福島第一原子力発電所事故によって飛散した放射性微粒子の海水中および純水中での溶解挙動に関する研究成果を発表した。(発表資料は こちら)
事故で放出された放射性セシウムの一部は、セシウムボールと呼ばれる数ミクロン(1,000分の1mm)の球形微粒子となって飛散したことが、東京理科大学の研究グループがつくば市の気象研究所で大気粉塵を採取し実施した調査でわかっている。大型放射光施設「SPring-8」を用いた分析により、セシウム以外に、バリウム、モリブデンなどの核分裂生成物と考えられる元素とともに、燃料であるウランを含んでいたことから、事故当時の原子炉格納容器破損の可能性が裏付けられたほか、セシウムボールがガラス状であることが示されている。
今回の研究成果は、この放射性微粒子がケイ酸塩ガラスであることを解明した上で、緩やかに液中で溶解するという化学的性質に着目して、様々な温度条件下で純水中と海水中における溶解速度を測定・算出し、形状の変化などの溶解プロセスを明らかにしたもの。実験では事故時に野外にあった農業資材の不織布に付着した放射性微粒子を用いた。
研究グループでは、事故から8年が経過し海洋では放射性微粒子の溶解が進行していると予想されるが、海水中の放射性セシウム濃度は検出下限値(約1Bq/リットル)未満であり、溶解による環境への影響はないとの見方を示している。
今回得られた科学的知見は、原子力事故による放射線影響評価や汚染問題の解決、農業における放射性セシウム低減対策などに貢献することが期待される。