原子力文化財団が世論調査、再稼働など「ややポジティブ側」に変動と推察
日本原子力文化財団はこのほど、2018年10月に実施した「原子力に関する世論調査」の結果を発表した。同財団が2006年度より継続的に行っているもので、全国1,200人(15~79歳男女)から回答を得た。(調査結果は こちら)
原子力に対するイメージに関しては、福島第一原子力発電所事故前から「否定的なイメージ」に傾いており、今回の調査でも特に、「危険」(69.0%)、「不安」(56.0%)、「複雑」(33.3%)が回答の中で高い割合を維持している。一方で、前年度調査との比較で、「信頼できない」が30.2%から21.8%に、「悪い」が19.1%から12.3%にそれぞれ減少し、「必要」が17.9%から24.3%に増加していることから、「原子力のイメージが『ややポジティブ側』に変動した可能性がある」と推察している。
さらに、今後の原子力発電の利用に関する考えを、「増やしていく」、「震災以前の状況を維持していく」、「しばらく利用するが徐々に廃止していく」、「即時廃止」、「わからない」の選択肢で尋ねたところ、「しばらく利用するが徐々に廃止していく」が最も多く48.4%で、2014年度以降約5割を占め続けるボリューム層となっている。また、「わからない」も約2割程度を維持しているが、特に女性だけでみると約3割に上っていることから、「女性層に対して、原子力発電に関する情報との接点を増やす取組が求められる」としている。
再稼働に対する考えに関しては、引き合いとなっている項目について前年度調査から今回調査への変動をみると、「電力の安定供給を考えると原子力発電の再稼働は必要」が18.6%から26.7%に上昇する一方、「現状、電力は十分なので原子力発電の再稼働は必要ない」が24.7%から18.7%に下降するなど、逆転が生じた。放射性廃棄物処分や福島第一原子力発電所廃炉の見通しが立たないことから「再稼働すべきではない」や「わからない」も多かったが、総合的にはやや肯定的な意見が優勢となっていた。
原子力に対し「ややポジティブ側」に変動したと推察される今回の調査結果について、原子力文化財団では、「調査の1か月前に北海道胆振東部地震の影響で大規模停電が発生したことから、電力の安定供給に対する意識が高まったのではないか」などと、一時的な傾向ともいえる可能性から、引き続き慎重に観察すべきものとしている。