エネ調原子力小委、イノベーションと廃炉について議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・持続性推進機構理事長)が4月23日に開かれた。エネルギー基本計画の決定を受け、同委では2018年12月より、原子力政策を巡る課題を、安全性、廃炉・廃棄物、イノベーション、立地地域の観点から整理し順次意見交換を行っており、今回はイノベーションと廃炉がテーマ。
12月の会合でも取り上げられたイノベーションについては、これまでの議論を踏まえ、資源エネルギー庁が、「原子力のイノベーション創出に向けた課題と取組の方向性」を、(1)技術開発の方向性の共有・ステークホルダーとの対話、(2)技術開発支援、(3)研究基盤の提供、(4)人材育成、(5)規制との対話――に整理。さらに、研究開発や人材育成の観点から文部科学省原子力課も説明に当たり、日本原子力研究開発機構の施設に代表される国内研究基盤のあり方に関し、「原子力に限定しない多様な分野・セクターの知見の取り入れ」を強調したほか、将来に向けて「他組織・他分野との融合や国際協力を通じた人材育成拠点の形成」が提案された。
これに対し原産協会の高橋明男理事長は、若手の原子力分野に対する関心が薄れていくことを危惧し、シミュレーション技術など、ソフト面においてもイノベーション創出の取組が図られる必要性を強調。また、革新的原子炉とされる小型モジュール炉(SMR)の開発に関して「経済性が確保できるかがカギ」と指摘し、海外との連携や民間による創意工夫の重要性を主張した。
一方、廃炉については、資源エネルギー庁が「日本の原子力発電プラント60基(建設中含む)のうち、24基が廃炉を決定または検討中」、「原子炉等の解体は2020年代半ば以降に本格化する」などと、現状・見通しを説明。今後の課題として、(1)原子力人材の減少、(2)クリアランス対象物の増加、(3)リスクレベルに合わせた作業管理と規制対応――をあげ、これらに対応すべく、(1)電力各社の連携、(2)有用資源の再利用、(3)規制当局への具体提案――を取組の方向性として掲げた。例えば、クリアランス対象物の金属は現状で年間発生量1,000トン程度だが、2030年代には同1万~1.3万トンと急増が見込まれることから、電力業界内で一定の物量が期待できる建材への活用や、再利用先の拡大に向けて制度や安全面に関する理解活動に努めるとしている。
事業者の立場からは、電気事業連合会原子力開発対策委員長の森中郁雄氏が廃止措置の先行する日本原子力発電東海発電所や中部電力浜岡1、2号機の取組状況を説明。今後本格化する廃止措置工事が安全かつ円滑に進むよう電力各社による連携を図り、特に、規制制度に関する事項については、原子力エネルギー協議会(ATENA)とも連携して規制当局との対話を行っていくとしている。
クリアランス制度に関して、委員から「循環型社会に貢献するもの。処分場の立地と同様に理解促進に努めていく必要がある」、「対象物には質の高いものも含まれている」といった意見があったのに対し、森中氏は「『原子力発電所から出たもの』というレッテルが貼られてしまうが、廃棄物ではなく利用できる『宝の山』。色々な業界と連携して進めていく必要がある」と強調した。
この他、米国ベクテル社日本支社長の宮崎丈彦氏がオイスタークリーク発電所(ニュージャージー州)の廃止措置シミュレーションを披露し、コスト・スケジュール管理の重要性を説いた。