量研機構が汚染患者搬送を想定した訓練、被ばく医療研修の体系化に向け
量子科学技術研究開発機構(千葉市)は5月7~11日、原子力災害医療に関する医師、看護師、診療放射線技師らを対象とした研修を行った。同機構が4月に原子力規制委員会より原子力災害医療体制において中心的・指導的役割を担う「基幹高度被ばく医療支援センター」に指定されたのを受け、被ばく医療に係る従事者研修の体系化に向けて試行的に実施したもの。原子力災害医療に係る専門的な診療機能を備え研修・訓練を施す医療拠点としては、量研機構とともに、全国を網羅すべく弘前大学、福島県立医科大学、広島大学、長崎大学の計5機関が「高度被ばく医療支援センター」に指定されている。今回の研修には、これら5機関の医師、看護師、診療放射線技師ら約30名が参加した。
10日には、報道関係者公開のもと、被ばく患者が搬送されたことを想定した実地訓練が行われた。被ばく患者については、「47歳の男性作業員が、管理区域内の中レベル廃液タンク清掃中に、高さ約1.5mのタンク上部からタンク外の床に転落し、左大腿部を負傷。創傷部周辺、左上腕に汚染を検出」との想定。研修生らは、医療用ダミーを用いて、連携しながら、脱衣、放射線計測、除染などの被ばく医療処置を実践した。
被ばく患者搬送を想定した研修の中でリーダーとして全体を統括した福島県立医科大学の長谷川有史さん(医師)は終了後、記者団の取材に応じ、「座学だけではなく、汚染された患者の処置とはどのようなものか、実際に肌で感じてもらうことに意義がある」としたほか、全国の「高度被ばく医療支援センター」から研修生が集まることで各機関の能力の均てん化が図られる効果も強調した。
原子力災害医療分野の人材育成に関し、規制委員会では、国、支援センター、自治体などが行う研修について、「内容に重複がある」、「再教育や技能維持の仕組みがない」といった課題をあげており、今後研修の体系化に向けて量研機構のリーダーシップ発揮が期待される。