原子力委が「人材育成ネットワーク」の戦略機能強化でヒア、岡委員長「具体的目標を」

2019年5月15日

 原子力委員会は5月14日の定例会合で、「原子力人材育成ネットワーク」の取組状況について、その事務局を務める原産協会と日本原子力研究開発機構よりヒアリングを行った。「わが国全体で一体となった原子力人材育成体制の構築」を目指し2010年11月に発足した同ネットワークは、現在、大学、電力会社、メーカー、研究機関、行政機関(国・地方)など、79機関が参加し、高等教育段階の人材育成、国内人材の国際化、新規導入国に対する海外人材育成支援、初等中等教育段階の人材育成、実務段階の人材育成・技術継承の5つの個別テーマで分科会を設け活動している。
 一方、原子力委員会は、原子力分野における人材育成の重要性に鑑み、2018年2月に見解をまとめており、その冒頭で、「原子力人材育成ネットワーク」設立時に当時の近藤駿介委員長が表明した「世界中で通用するユニバーサル人材の育成」、「国内外に開かれた活動」、「あらゆる層に訓練と啓発のメカニズムを」、「人材育成は組織が生き残るための必須課題」といった点を念頭に置くべきとしている。
 14日の会合では、原産協会の喜多人材育成部長が、「原子力人材育成ネットワーク」の2018年度活動実績と今後の活動予定を紹介するとともに、4月より新たに「戦略ワーキンググループ」を設置し、これまでの情報共有機能に加え、国内外の活動全体を俯瞰し戦略立案などの実務を担う機能・体制を強化していく考えを述べた。(説明資料は こちら
 これに対し、岡芳明委員長は、見解発表後のフォローアップとして随時実施してきた海外での教育経験を持つ有識者からのヒアリングを振り返り、欧米に比べて実習・演習が軽視されているといった日本の高等教育における問題点を指摘し、「学生が自ら手を動かさなければ人材育成はできない」と強調。また、原子力の現場で働く技術者の育成において原産協会が担う役割の重要性も述べ、一例として、大学院レベルの難解なものではなく、わかりやすいテキストの作成を日本機械学会の取組も参考に検討すべきなどとコメントした。
 さらに、人材の国際化を巡っては、日本の終身雇用制の歴史から「異文化の中で仕事をする経験が非常に少ない」と憂慮し、新興国との連携に向けては、大使館推薦の留学枠の活用を参考事例としてあげるなどした。新たに設置された「戦略ワーキンググループ」の役割に関し、岡委員長は、「具体的目標がなければPDCAは回らない」と繰り返し強調し、さらに検討が図られることを期待した。