量研機構・神田氏、ステークホルダー関与の事例データベース作成を提案
量子科学技術研究開発機構の神田玲子氏(放射線防護情報統合センター長)は5月21日、原子力委員会の定例会合で、放射線防護の立場からステークホルダー対話・公衆関与のあり方について意見を述べた。
神田氏は、初めに、3月末に開設された放射線被ばくリスクに関わる情報提供・説明を行うウェブサイト「Sirabe」(Site on Radiological Sciences and Beyond)を紹介した。同機構の放射線医学総合研究所が原子力規制委員会の委託事業として2014年度から検討を進めてきたもので、放射線に関わる規制制度の根拠となる科学的知見や国際機関の見解を中心に収録している。放射線被ばくに関する「基本解説」、国際機関の見解や海外論文を集めた「理解を深める」、用語・質問集の「理解を助ける」にコンテンツを大別し、知りたい情報に応じて色々な「入口」からアクセスすることができ、「高校生が読んでもロジックがわかる程度」の読みやすさを目標としている。「Sirabe」は今後、随時内容を追加・更新し、「放射線影響・放射線防護ナレッジベース」を構築していく。
また、神田氏は、OECD/NEAが整理した公衆関与の進化段階(1)情報提供、(2)協議、(3)参加、(4)協働、(5)パートナーシップ――について説明したほか、放射線防護に関わるケーススタディとして、カナダのウラン鉱業が生活環境に及ぼす影響の監視で先住民コミュニティが関与した海外事例などをあげた。さらに、国内についても、北九州市が東日本大震災に伴う災害廃棄物受入れを決定した際のタウンミーティングや住民説明会に関する分析結果を紹介した。同市では過去のPCB処理施設受入れの経験を活かし、市民参加型の取組を実施し成功に結び付いたとしている。
神田氏は、「失敗事例も参考になる」と強調し、こうした行政実施のステークホルダー関与に関する事例のデータベースを作成し今後の対話活動に活かしていくことを提案した。