原産協会が定時社員総会、今井会長「原子力発電の価値を産業界全体で丁寧に説明」と強調

2019年6月19日

 原産協会は6月18日、2019年度の定時社員総会を東京・千代田区の日本工業倶楽部で開催し、2018年度決算案を承認するとともに、5名の理事選任を決定した。
 新たに選ばれた理事は、仙藤敏和氏(日本原燃代表取締役専務)、月山將氏(関西電力常務執行役員)、中井一雅氏(三井物産執行役員)、濱谷正忠氏(海外電力調査会専務理事)、柳瀬悟郎氏(東芝エネルギーシステムズ取締役)。これに伴い、米谷佳夫氏(三井物産常務執行役員)、酒井和夫氏(日本原燃フェロー)、畠澤守氏(東芝エネルギーシステムズ代表取締役社長)、廣江譲氏(電気事業連合会副会長)、藤冨正晴氏(発電設備技術検査協会理事長)の5名の理事は退任となる。
 開会に際し挨拶に立った今井敬会長はまず、福島第一原子力発電所の廃炉に係る取組が進展する一方で、今なお続く住民の方々の避難生活、放射線に対する不安、風評被害など、山積する課題をあげた上で、「引き続き福島の復興・再生に皆様の支援を願う」と呼びかけた。
 また、6月28、29日に日本が議長国として開催されるG20大阪サミットでの主要議題「持続可能な開発目標(SDGs)」に関し、17の目標のうち9の目標達成で、放射線利用を含む原子力科学技術が役割を果たすことを述べ、SDGs達成には「原子力発電の活用は必要不可欠」と強調した。
 さらに、日本がパリ協定で掲げた温室効果ガス排出削減目標の達成には、原子力発電プラントを「2030年で30基程度稼働する必要がある」として、原子力規制委員会による審査の効率化とともに、設計仕様の標準化など、規制の予見性を高めていく必要性をあげ、昨夏発足の「原子力エネルギー協議会」(ATENA)を中心に、これらの課題解決に向けた取組が進展することを期待。加えて、テロ対策として設置が要求される「特定重大事故等対処施設」や使用済み燃料中間貯蔵施設の早急な整備の他、審査や安全対策工事に伴うプラント停止期間の運転期限年数からの除外や、60年を超える運転などについて技術的観点からの議論が進められる必要性を述べた。
 この他、今井会長は、原子燃料サイクルに係る課題や、人材の確保・育成、国際的連携の必要性について触れた上で、「何よりも国民の理解が必要。原子力発電の持つ価値を、産業界全体で丁寧に伝えてもらいたい」と強調した。
 来賓として訪れた経済産業省の滝波宏文大臣政務官は、挨拶の中でまず、「福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策は最重要課題」として、福島の復興・再生に向けた取組を着実に進めていく姿勢を示した。また、昨今の世界的な異常気象から「気候変動問題への対応は喫緊の課題」として、温室効果ガス低排出型の発展を目指す「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が6月11日に閣議決定されたことを述べた。その上で、将来に向けて「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と、エネルギー基本計画に掲げられた原子力の位置付けを改めて強調。
 さらに、滝波政務官は、同15、16日に長野県・軽井沢町で開催された「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」について紹介。同会合の共同声明で、「原子力は、エネルギー安全保障、ベースロード、温室効果ガスの排出削減に資するエネルギー」と明記されたほか、高レベル放射性廃棄物に関し原子力主要国の政府が参加する「最終処分国際ラウンドテーブル」の立ち上げが合意されたことを述べた。
 また、文部科学省からは、佐伯浩治・研究開発局長が柴山昌彦大臣の挨拶を代読。原子力損害賠償制度、原子力の研究基盤・人材育成などの取組姿勢が述べられた。