原子力学会・岡嶋会長が就任の抱負、さらなる「再構築期」を目指し

2019年7月3日

記者会見の模様(左より、山口彰副会長〈東京大学〉、岡嶋会長、中島健副会長〈京都大学〉、藤澤義隆副会長〈中部電力〉、原子力学会事務局にて)

 日本原子力学会の2019年度会長に就任した岡嶋成晃氏(日本原子力研究開発機構原子力エネルギー基盤連携センター長)が7月2日、記者会見を行い抱負を語った。岡嶋会長は前年度に副会長を務めている。
 原子力学会は発足60周年を迎えたのを機に、記念シンポジウムを4月に開催した。岡嶋会長は、還暦を迎えた学会の「再構築期」を目指し、その初年度として、同シンポジウムで示された今後の課題、(1)専門家の立場からの提言と理解活動の促進、(2)福島第一原子力発電所廃炉の促進と福島復興への支援、(3)放射線利用・放射線防護と研究の促進、(4)教育・人材育成の継続と技術伝承、(5)会員数維持の活動――に取り組む決意を表明した。
 その中で、理解活動については、専門家集団として社会への情報発信の重要性を改めて示す一方、「『受け手側がどういう風に理解しているか』を送り手が考えていかないと、十分に伝わらない」との認識から、同学会の社会環境部会で議論していく考えを述べた。
 また、国内で研究炉の新設が10年以上途絶えている現状から、「非常に重要なOJT(On-the-Job Training)の機会が失われている」と、将来の人材育成や技術伝承に対する危機感を強調した上で、「現場が必要なのは確かだが、現場がなくてもできることはある」とも述べ、シミュレーション体験など、新たな教育・訓練ツールの開発に前向きな姿勢を示した。
 原子力学会では、福島復興と廃炉推進への貢献として、他の学協会と連携した情報発信や技術協力などの活動を行っている。岡嶋会長は、福島第一原子力発電所で発生した汚染水の処理後に残るいわゆるトリチウム水の取り扱いに関して、「住民の理解が大前提。とはいえ、ずっと貯め続けるわけにはいかない。風評被害も懸念され非常に頭の痛い問題だが、最終的には処分が必要」として、今後水産学会などとも十分議論していく考えを述べた。