原子力規制庁新長官・荻野氏が会見、「色々な方法で人的資源を」と意欲

2019年7月11日

 7月9日に就任した荻野徹・原子力規制庁長官(前・同次長、=写真)は11日、記者会見を行い、「人と環境を守る」という原子力規制委員会の使命を改めて強調した上で、同委の事務局として「しっかりと組織を取りまとめていきたい」と抱負を述べた。同氏は、福島第一原子力発電所事故後、規制委員会の発足準備に関わった経験を持ち、法律分野に明るく、これまでも原子炉等規制法の改正などで手腕を発揮してきた。
 記者から「福島への思い」について問われたの対し、荻野長官は「多くの方々が長期にわたる避難を余儀なくされ、正に『ふるさとを奪われた』」と、事故の影響の大きさを省み、「規制委員会にとって組織出発の原点」と、福島の方々の気持ちに寄り添って職務に当たる考えを強調した。
 また、事業者とのコミュニケーションについては、規制委員会が掲げる活動原則「独立した意思決定」と同時に、「多様な意見に耳を傾ける必要がある」として、臆することなく意見が表明されることを期待した。
 荻野長官は、前任で原子力安全人材育成センター所長を兼務していたが、今後の人材確保に関する質問に対し、「大変厳しい問題。そもそも若い労働力が減り続けており、人材の取り合いが生じている」などと、現状を危惧した上で、技術面で経験のあるベテランの再雇用や安全研究分野の魅力発信などを通じ、「色々な方法で人的資源を集めていきたい」との展望を述べた。
 さらに、「事故当時高校生だった人が入庁してきている。世代交替が進む中、どのように教訓を伝えていくか」と、過去の経験継承や、発足から間もなく7年を迎えるのに際し「自身を変化させるモーメントが欠け始めている。自負が慢心へとつながらないように」などと、継続的改善の重要性を強調した。
 荻野長官の就任に伴い退任した安井正也・前長官(2017年1月~19年7月在任)は、福島第一原子力発電所事故発生当時のプラント安定化やOECD勤務の経験などを活かし、今後は特別国際交渉官として、海外の規制当局との連絡や情報共有の場で活躍する。