原子力文化財団・桝本理事長が原子力委に活動説明、設立50年「色々なノウハウが蓄積」

2019年7月24日

 日本原子力文化財団の桝本晃章理事長は7月23日、原子力委員会の定例会合で、最近の取組状況について報告した。
 同財団は、一般の人々への原子力・放射線利用に関する知識の普及・啓発を行うことを目的として1969年7月に設立された。桝本理事長は、同財団の半世紀を振り返り、「色々なノウハウが蓄積されてきた」とした上で、2本柱となる情報提供と世論調査に関わる活動について説明。その中で、情報提供については、「国民各層との対話を通して、原子力やエネルギー、放射線について的確な知識と理解を普及する」ことを目指し、特に学校教育関係者と報道関係者を対象に「極めてユニークな活動を長く続けてきた」と強調した。
 2018年度の実績によると、全国の中学・高校に専門家を派遣し基礎知識だけでなく放射線の体験学習なども指導する協力支援活動は、実施件数164校・参加人数延べ10,392名で、実習については9割以上の参加者が「よかった」と評価している。報道関係者を対象にテーマごとに専門家を招き質疑応答を行う原子力講座は、福島第一原子力発電所の燃料デブリ取り出しに向けた技術開発、世界のエネルギー・原子力政策の現状、北海道の大規模停電から考える電力安定供給について取り上げた。
 一般向けの情報発信として、出版物や広報素材の制作にも力を入れており、例えば、エネルギー・原子力や放射線に関する網羅的な情報提供サイト「エネ百科」は、総アクセス数が2018年度で47万件を超えた。特に、エネルギー需給に係るグラフなどをまとめた「図面集」へのアクセスが多く、桝本理事長は、「色々な講演会・勉強会で利用されているようだ。それ故に正確であること、的確にアップデートすることが大変重要」と強調している。また、同財団と歩みを同じくする月刊誌「原子力文化」は、10月に通巻600号が発行される予定。
 さらに、2018年度実施の世論調査から、「エネルギー問題への関心の薄さが見える」、「地球温暖化への関心が高い」といった分析結果が紹介された。
 委員との意見交換の中で、桝本理事長は、今後の課題として、「その時々の『関心軸』をとらえること」をあげ、近年の気候変動や自然災害に対する不安の高まりから、気象予報士の講師派遣や防災対策との連携も考えていく必要性を述べた。岡芳明委員長は、高等教育に関わった経験から、「エネ百科」の有用性を強調。同財団では、この他にも一般向けの解説資料として、「原子力総合パンフレット2018」を制作しウェブサイトでの公開を始めているが、これらの情報発信と他団体の運営するサイトとの関連性などについて質疑応答があった。