IRIDシンポがいわき市で開催、燃料デブリ取り出しで学生の研究発表も

学生による研究発表も

 国際廃炉研究開発機構(IRID)は8月1日、福島第一原子力発電所廃炉での燃料デブリ取り出しに向けた技術開発状況を報告する「IRIDシンポジウム2019」を福島県いわき市で開催した。
 開会挨拶に立ったIRIDの石橋英雄理事長は、「国内外の英知を結集し、燃料デブリ取り出しに挑戦する」と、技術開発への意欲を見せ、また、来賓として訪れた経済産業省原子力事故災害対処審議官の新川達也氏は、得られた技術から「『使える装置』を開発することが重要」と強調し、IRIDの今後の取組に期待感を示した。

燃料デブリ表層の状態把握に向け開発中の「少量サンプル回収装置」(試作機)

 IRIDによる技術開発の状況については、開発計画部長の高守謙郎氏が説明。同氏は、燃料デブリ取り出しのための炉内調査について、「これまでは画像取得が中心だった」と振り返った上で、「今後は、より多くの情報を取得するため大型のアクセス装置を開発していく必要がある」として、1、2号機にそれぞれ投入を目指すボート型アクセス装置、アーム型アクセス装置のイメージを披露した。

多くの来場者の関心を集めたポスター展示の模様

 また、技術者らが直接来場者に説明し質問に答える展示会場では、ボート型アクセス装置のモックアップ試験映像、三菱重工業で開発を進めている「少量サンプル回収装置」のデモンストレーション(試作機)など、最新の技術開発の状況が紹介された。

早稲田大院建設工学専攻生発表の「超重泥水」、燃料デブリ取り出し時の掘削粉塵拡散防止などに役立て「『廃炉地盤工学』を創出する」という

 「IRIDシンポジウム」では、将来に向けての人材育成の重要性から、前回2018年夏の開催に続き、今回も学生による研究発表の場を設け、大学・高専生らが口頭7件、ポスター8件の成果を披露。その中には、「Pepper」を用いたロボットオペレーティングシステム、建設工学専攻生による土質系材料「超重泥水」を利用した空間放射線量の低減など、実際の燃料デブリ取り出し作業に即したユニークな研究もあり、講評に当たったIRIDの川村忠専務理事は、「リアリティある発表内容。頼もしく心強い」と称えた。
 学生研究成果発表の最優秀賞には、東北大学大学院情報科学研究科・山内悠さんの「自動挿入機を用いた能動スコープカメラの操作支援」が選ばれた。