「福島第一廃炉国際フォーラム」開催、地元との共生をテーマに2日間議論

2019年8月6日

パネルディスカッションの模様

 福島第一原子力発電所の廃炉について考える「福島第一廃炉国際フォーラム」(原子力損害賠償・廃炉等支援機構主催)が8月4、5日に開催された。初日は福島県富岡町で地元の方々との対話型ワークショップイベントと学生セッションが、2日目は同いわき市に移り、「地元共生と廃炉プロジェクト」をテーマに国内外の専門家によるパネルディスカッションなどが行われ、2日間で延べ約1,300名(うち、ほぼ半数が福島県民)の参加者を集めた。
 原子力損害賠償・廃炉等支援機構の山名元理事長は、5日のプログラム開始に先立ち、「60名の高校生たちを含め、地元の方々と活発な議論がなされた」と、前日の模様を振り返った上で、今後の燃料デブリ取り出しなど、中長期的な廃炉の進展に向けて「地域と共生すべき事業と認識する」と、今回フォーラムにおけるテーマ設定の意義を強調。「地域の持つ力を廃炉事業に活かしていく」ため、海外レガシーサイトの先行事例からも、地元との相互理解の醸成や協働について学ぶ必要があるとして、議論に先鞭を付けた。
 来賓として訪れたいわき市長の清水敏雄氏は、「日々福島第一の廃炉に携わる4,000名のうち、約6割は地元の方々が占めている」と、地域の力を強調した上で、さらに長期にわたる廃炉作業の完遂に向けて「海外の知見・実績を共有して欲しい」と、有意義な議論を期待した。

併催の技術ポスターセッションに展示された福島発の小型電動災害対応ロボット「Spider」(会津大学・アイザック)、WRS2020福島大会出場を目指す

 「地元との共生」に関わる事例として、英国国立原子力研究所副所長のアイヴァン・ボールドウィン氏は、同国カンブリア州の地域企業300社以上を集結させ、セラフィールド原子力サイトの廃炉工程だけに留まらず、地域支援にも貢献した「ブリテン・エナジー・コースト・ビジネス・クラスター」の取組を披露。また、米国からは、周辺大学との教育構想・キャリアパスの連携を通じ、優秀な技術者育成につながった事例が紹介された。
 国内からは、JR西日本の石川裕章氏が、西日本地域の人口減少傾向から「地域の衰退が将来における企業の経営課題」と強調し、地元自治体と連携したサバ養殖などにも取り組んでいることをあげ、新しい事業領域への挑戦を通じた「地域の価値向上」の必要性を原子力産業界に示唆した。
 福島第一原子力発電所の地元企業としては、エイブルの中馬真理子氏が登壇。8月に着手された同社の手掛ける1/2号機排気筒解体作業の映像を披露した上で、自社の強みとして、「中小企業ならではの迅速な意思決定」、「既にある有用なパーツの組み合わせによる工期短縮」、「長年の下請けを通じた構造物の熟知」、「熱い思いと行動力」をあげ、「東日本大震災のつらい経験をプラスのエネルギーに変える」企業姿勢を強調した。

フォーラム終了後記者会見を行う山名氏、次回の地元対話セッションは浪江町で開催予定

 パネルディスカッションでは、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)、英国原子力規制庁(ONR)、米国エネルギー省(DOE)から登壇者があり、それぞれの立場から地域との共生の重要性を主張。これを受け、東京電力福島第一廃炉推進カンパニー・バイスプレジデントの高原一嘉氏は、福島の復興や廃炉の安全かつ着実な進展に向け、「技術と同時に、『地域と一体』となる必要性を強く感じた」と述べた。