千葉大で地層処分の是非をテーマにディベート、地上管理の安全性など
千葉大学教育学部でこのほど、高レベル放射性廃棄物地層処分をテーマとするディベート試合が行われた。原子力発電環境整備機構(NUMO)の協力により、「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上での管理を義務付けるべきである。是か非か」との論題で学生チームが論戦した。同学の藤川大祐教授らが担当する「ディベート教育論」の授業の一環で行われたもので、学生たちは事前に、ディベートの手法を学ぶとともに、原子力関係の専門家による講義を受けたほか、希望者は原子力発電所や、幌延深地層研究センター、大強度陽子加速器「J-PARC」などの研究施設への見学会にも参加し理解を深めている。
このほど公開されたディベート試合では、全10チーム(1チーム3~5名)のうち、2チームが対決。「高レベル放射性廃棄物を地上管理する」、つまり論題に対して肯定側は、「乾式キャスクによる長期管理の安全性は東日本大震災でも実証されている」、「分離変換技術の実用化により廃棄物の毒性を低減できる」などと主張。一方、「地層処分を行う」、つまり論題に対して否定側は、「分離変換技術が実用化しても廃棄物の毒性は残っているため、地上管理ではリスクがある」、「廃棄物を恒久的に管理するには莫大なコストが発生する」と反論。両チームは、安全性とコストを論点に熱く舌戦を繰り広げた。
勝敗は、学生による挙手の後、藤川教授が、「地層処分を行わない」とする肯定側に対し、分離変換しても残る廃棄物の安全な地上管理方法に関する説明が不十分だったことを指摘して、否定側に軍配を上げた。また、「僅差」として勝敗を判定した藤川教授は、「見どころの多い質疑が行われていた」と善戦を称えた上で、「相手の直前の主張を踏まえた反ばくをして欲しい」、「重要な点は繰り返し主張し強調することが必要」などと講評した。
試合に臨んだ学生からは、「ディベートを通して地層処分への理解を深めることができた」、「コミュニケーション能力を高めることが大事」といった感想が聞かれた。
NUMOでは、若年層への理解活動を重要な取組の一つととらえ、教育現場への支援活動を積極的に行っており、千葉大でのディベート授業については2012年度から8年間続いている。受講した学生からは「将来教員となって地層処分を教えたい」といった声も多い。