学術会議がCT検査の適正化に向け提言、放射線診断医の重要性など
日本学術会議の臨床医学委員会は9月19日、CT検査による画像情報の活用に向けた提言 を発表した。
全身の様々な部位を短時間で画像化できる一方で、単純X線撮影に比べ高い放射線被ばくを伴うことや、近年の病変見落としなどの問題から、本提言ではCT検査を中心とした画像診断情報利用の現状と問題点を整理。その上で、(1)画像検査の適正利用の推進および画像診断体制の改善、(2)検査依頼医による画像診断報告書確認の医療情報システムを用いた支援、(3)人的システムによる画像診断情報伝達の補完、(4)画像検査に関わる教育の充実――に関し、今後望まれる取組についてまとめている。
提言によると、世界的に見て日本では、多くのCT装置が設置されており、検査の件数も年間3,000万件程度と、世界最多水準に上っているという。さらに、撮影の高速化により1回のCT検査による画像数も増加していることから、「画像上で異常が抽出されても、これを医師が認識して適切に診断し、治療方針に生かされなければ意味がなく、放射線被ばくによる不利益だけが残る」、「画像情報量が増大する一方で、画像診断を担当する放射線科医の数が不足」などと指摘。これに関し、日本を含む8か国のCTとMRIによる検査について調査した論文を紹介し、日本では放射線診断医1人当たりの検査数が他国のおよそ3~4倍だったと述べている。
また、提言では、全身の様々な臓器を画像化できることから、「検査の目的外の重大な異常が偶発的に発見されることも稀ではない」と、CT検査の有用性を評価する一方、検査を依頼する医師に関して「専門外の異常の診断に弱点がある」などと、誤診や見落としの危険性を指摘。例えば、腎臓がん手術後のケアのため大学病院で半年ごとにCT検査を受けていた40代男性が、放射線科に画像診断が委ねられ、主治医によるチェックが不十分だったことなどから、3年間にわたり肺がんが見落とされていたという事例もある。こうした事例から、放射線診断医が主治医に診断結果を伝える画像診断報告書の重要性について述べ、「放射線診断医とのコミュニケーションによりCTからの情報を最大限に生かす」よう求めている。
さらに、画像診断の充実化に向け、電子カルテなどの医療情報システムの活用については関係学会による標準的なモデルの作成を、医療機関に対しては医師間の情報共有の意識高揚を、大学医学部に対しては放射線診断に関わる臨床研修の拡充などを提言。
近年、健康寿命への関心が高まり、放射線科を舞台としたドラマが人気を博すなど、画像診断に注目が集まりつつある。学術会議の臨床医学委員会では、2017年にも「CT検査による医療被ばくの低減に関する提言」を発表している。