京大他、2050年の温室効果ガス削減目標に関わる経済影響で試算
京都大学などの気候変動・エネルギーに関する研究グループはこのほど、新たなシミュレーションモデルを用い、日本の掲げる目標「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」に要する費用が従来の試算よりも格段に小さくなることを明らかにしたと発表した。
同学と国立環境研究所が中心となって開発した気候変動対策に関わるコンピューターシミュレーション「アジア太平洋統合評価モデル」(AIM)を用いて、従来の手法では困難だったエネルギーシステムの変革とそれに伴う経済システムの影響を整合的に描くモデルを開発し分析を行ったもの。それによると、温室効果ガス排出80%削減に向けた政策を実施した場合、GDPへの影響は0.8%となり、従来の研究による2~8%と比較し大幅に下がっていた。
また、将来のエネルギーシステムは現状から大きく変化し、再生可能エネルギーとともに、その変動性に対応するための蓄電池を大量導入する必要があると分析。発電電力量でみると、石油火力が2020年代半ばに、石炭火力が2030年代半ばにほぼゼロとなり、原子力とガス火力は2050年まで概ね一定量が維持される見通し。
今回の研究では、温室効果ガス排出削減策を実施しない「成り行きケース」の他、原子力発電やCCSに関わる比較についても評価を行っており、引き続き新たなシミュレーションモデルを用いて、技術イノベーションを含む社会変革が気候変動対策にどう影響を与えるか検討を進めていくとしている。