立命館大、水月湖の「年縞」で放射性炭素年代測定法を較正

2019年11月6日

ステンドグラス状に加工した水月湖の「年縞」が展示(文科省にて)

 湖底に堆積した地層が描く縞模様「年縞」を用いた年代測定研究に関する企画展示が文部科学省庁舎のイベントスペース「情報ひろば」で開催されている。
 この企画展示は立命館大学によるもので、展示期間中、同学古気候学研究センター教授の中川毅氏らによる講演が行われた。「年縞」は、木の年輪のように、季節によって異なる明暗1対の層が1年に1つずつ重なって形成されたもので、縞を数えることでその年代を特定することができる。一方、遺跡から出土した遺物などに含まれる放射性炭素14の残存量を測定しその年代を知る「放射性炭素年代測定法」があるが、生物では年代によって炭素14の量が変動しており、遺骸だけからでは正確な年代が特定できない。

講演を行う中川氏(左)と北場氏

 福井県三方五湖の一つ水月湖では、好条件が幾つも重なり、世界にも類を見ないほどの年月にわたり「年縞」が形成され続け、その数は湖底から45mまで約7万年分にも及んでいる。例えば、水月湖「年縞」の13,927層目から出土した葉は13,927年前のものとなり、同じ葉を炭素14の残存量で調べた結果との差が補正される、つまり水月湖「年縞」から得られたデータを「放射性炭素年代測定法」の較正に用いることができる。これは、較正曲線「IntCal13」として国際的に評価されており、「年縞」の研究に深く取り組んできた中川氏は、「歴史を測る世界標準のものさし。水月湖は地質学の『グリニッジ天文台』」と、その意義を強調した。
 また、合わせて講演を行った同センター准教授の北場育子氏は、現在、メキシコの湖で発見された「年縞」により、マヤ文明の盛衰と気候変動の関係を研究しているという。同氏は、地球の歴史の中で繰り返された間氷期・氷期と天体運動の関係について説明。その中で、間氷期の安定した気候が文明の繁栄をもたらしたとする一方、「現在進行中の地球温暖化は、単なる気温上昇ではなく、これまで経験したことのない異常なモードにある。想像以上に脆い気候の安定化の上に文明は成り立っている」などと、昨今の気候変動に警鐘を鳴らした。
 文科省の同企画展示は8日までだが、水月湖「年縞」に関する展示・説明は福井県若狭町の 年縞博物館 で行われている。