福島第一処理水に関するエネ庁委員会、東京電力がタンク貯蔵・処分の時間軸を示す
福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会が11月18日に開かれ、東京電力より貯蔵・処分の時間軸について説明を受け議論した。
それによると、福島第一の多核種除去設備(ALPS)による処理水は、10月末時点で貯蔵量は約117万立方m、トリチウム総量は約856兆ベクレルと推定。これをもとに、(1)処分および減衰により単純に毎日定量のトリチウムが減少、(2)処分開始日は2020年1月1日から5年刻みに4ケース、(3)処分完了日は廃炉30年(2041年12月31日)と廃炉40年(2051年12月31日)の2ケース、(4)トリチウム総量は2020年1月1日現在で860兆ベクレル、(5)毎日150立方mの汚染水が発生――などを仮定条件に試算を行った。東京電力は8月の同委員会で、2020年12月末までにALPS処理水用の溶接型タンク約134万立方m分を確保する計画を示し、2022年夏頃にはタンク容量が満杯となるとしている。
2020年に処分を開始するケースでは、1年当たりのトリチウム量の減少幅が、2041年末完了、2051年末完了で、それぞれ約39兆ベクレル、約27兆ベクレルとなり、想定保有水量はタンク容量を上回ることはないとした。一方、2025年、2030年、2035年に処分を開始するケースでは、いずれも2022年夏頃に想定保有水量がタンク容量を上回り、2035年ケースでは、処分開始時に保有水量が約200万立方mに達すると想定。
また、合わせて、資源エネルギー庁よりALPS処理水の放出による放射線影響について、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の評価モデルを用いた評価結果が示された。海洋放出については、砂浜からの外部被ばくと海洋生物による内部被ばくを考慮し、仮に、タンクに貯蔵されている処理水すべてを1年間で処理した場合、放射線による影響は年間約0.052~0.62マイクロSvと、自然放射線の年間2.1m Svと比較し十分小さいとしている。
これに対し、委員からは、希釈やモニタリングも考慮した現実的な時間軸を求める意見とともに、処理後のタンク再利用の可能性を問う声があり、東京電力は「ありうるかもしれないが、処理を終えたタンクは原則解体撤去する」とした。
この他、風評対策に関する議論があり、水産業については小山良太氏(福島大学食農学類教授)が首都圏の飲食店を中心に展開される「常磐ものフェア」を、観光関連では開沼博氏(立命館大学衣笠総合研究機構准教授)が海外インフルエンサーの活用や若者向け動画コンテンツが数十万もの閲覧を集めていることを紹介し、これまでと違った新しい方策を考える必要性を強調した。