第20回FNCA大臣級会合が都内で開催、「健康、医療への放射線技術の利用」がテーマ

2019年12月5日

 「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の大臣級会合が12月5日、都内で行われた(=写真)。
 FNCAは、日本が主導するアジア地域12か国の原子力平和利用協力の枠組で、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムが参加している。
 今回の会合は「健康、医療への放射線技術の利用」がテーマ。竹本直一内閣府科学技術担当大臣の歓迎挨拶で、今後の活動の方向性を示す共同コミュニケの発表に向けて政策討論が始まった。
 FNCA傘下に置かれた放射線治療プロジェクトでは、アジア地域で罹患率の高いがんの治療成績向上を目指し長く協力活動が進められてきた。議論に先立ち、量子科学技術開発研究機構の平野俊夫理事長が「日本の放射線治療の現状について」と題する基調講演を行い、世界に先駆けて同機構が取り組んできた重粒子線がん治療の開発経緯や、国内治療拠点が6か所にまで拡大してきた実績を紹介。その中で、1994年に臨床試験を開始した重粒子線がん治療装置「HIMAC」により、これまでの治験実績は総患者数1万人を超えたとした上で、既存の病院にも設置できる小型装置の開発状況や、海外展開として、最近日立製作所が北米初となる装置の受注を獲得したことなどを披露した。さらに、平野理事長は、「がん死ゼロ 健康長寿社会の実現を」と目標を掲げ、超電導やレーザーなど、同機構の技術力を結集した高性能の次世代重粒子線がん治療装置「量子メス」の開発を展望。各国からの出席者に対し、「Dreams are meant to be achieved」(夢は実現するためにある)と強調した。
 毎年開催されるFNCA大臣級会合は今回で20回目の節目を迎えたが、原子力委員会の岡芳明委員長は、「原子力関連分野の人材育成について」と題する講演の中で、「アジア諸国の研究者が来日してトレーニングを行い、自国でも人材開発に取り組むようになった。将来に向けて人のネットワークは極めて重要」などと述べ、今後のFNCA活動の発展に期待を寄せた。