原産協会がIAEA職員を招き講演会、新興国への支援策など

2019年12月10日

 原産協会は12月9日、IAEAで新規導入国への原子力発電開発に関わる協力活動を担当している安良岡悟氏を迎え講演会を開催(=写真)。会員企業などから約50名の参加があった。
 同氏は、2006年に経済産業省に入省後、資源エネルギー庁で、福島第一原子力発電所事故対応や軽水炉の安全性向上に資する技術開発プロジェクトに従事したほか、製造産業局航空宇宙産業課などを経て、2017年より IAEA原子力エネルギー局原子力発電インフラ開発課に出向している。
 今回、原子力エネルギーを巡る最近の国際動向や導入検討国に対する支援について発表し、日本のステークホルダーがIAEAの場を活用するメリットなどを示唆した。
 安良岡氏は、2018年の世界の電源別発電量で原子力が約10%、水力と再生可能エネルギーも合わせると36%のシェアを占めることを図示し、「『全体最適としてどうバランスをとっていくか』が盛んに議論されている」と述べ、原子力の「クリーンエネルギーとしての位置付け」を強調。
 今後の原子力開発の流れに関しては、SMRを中心とする「技術シフト」とアジア諸国を中心とする「地域シフト」の2つの側面をあげ、「堅調な新設ペース」にあるとした。
 自身が携わる原子力発電の導入検討国に対するインフラ開発支援として、安良岡氏は「INIR」(Integrated Nuclear Infrastructure Review)ミッションを紹介。各国の要望に応じ、「INIR」で取りまとめたレポートは、2009~18年でアジア・アフリカ諸国を中心に27か国に達したとして、10年間の取組を振り返り「徐々に体系化されつつある」と一定の評価を述べた。また、原子力発電導入に向けたマイルストーンにおいてIAEAでは19の評価軸を示しているが、同氏は特にその一つである産業政策の立案支援について、自身の関わる業務を紹介。例えば、石炭産業が盛んなポーランドについては原子力を通じ環境保全技術の市場拡大も図るなど、地場産業へのベネフィットを考える必要性を述べた。
 安良岡氏は、「INIR」の実施されたアフリカ諸国として、南アフリカ(運転中)、ナイジェリア、ケニア、モロッコ、ガーナ、ニジェール、スーダンの6か国をあげたが、参加者から、今後原子力発電の導入が有望な国について問われたの対し、「モロッコはかなり進んでいる」としたほか、ザンビアの近年の動きにも触れ、「アフリカは注目すべき地域」と強調。また、日本の人的貢献に関して、「日本は有数の地震国」と述べ、関連する知見が蓄積されてきた地質学、耐震設計、防災対策などの分野での可能性を示唆した。