原子力委員会が米ROPについて説明受ける、来年度の新検査制度運用開始で
原子力委員会は1月14日の定例会合で、日本原子力学会の安全規制に関する分科会で活動している近藤寛子氏(マトリクスK代表)より、米国の原子炉監督プロセス(Reactor Oversight Process:ROP)について説明を受けた。
2020年度より原子力発電所の新たな検査制度の実運用が開始するが、制度見直しのひな形となった米国ROPは、1990年代からの一貫した規制理念のもと、2000年初頭より開発・改善が行われてきたもので、新制度の導入に際し成功要因を学ぶことが重要とされている。
近藤氏は、米国の原子力規制の仕組み、ROPの前身となる「設置者パフォーマンスの体系評価」(Systematic Assessment Licensee Performance:SALP)が見直しに至った経緯、ROPの開発と運用状況など、教訓となる事項にポイントを置いて説明。
SALPは、1979年のTMI事故を受けて、それまでケース・バイ・ケースだった事業者のパフォーマンス評価を長期的視点で評価するため翌1980年に導入された仕組みで、運転、保守、エンジニアリング、プラント支援の分野について、「1:最高レベル」、「2:満足すべきレベル」、「3:最低許容レベル」、「N:未実施」の4区分で原則18か月ごとに評価していた。近藤氏は、SALP見直しの発端として1985年に発生したデービスベッセ発電所の給水喪失事故をあげ、「『2』評価を得ていたことから、SALPにおいて事象の予兆を見逃していた」問題から、規制当局幹部による「シニアマネジメントミーティング」(SMM)を通じ「ウォッチリスト」に掲載された問題プラントに対し厳しい検査を課すようになった変遷を述べた。一方、こうした規制プログラムの上乗せにより、制度が複雑化し、安全に対するパフォーマンスの実態と乖離した評価も行われるようになったことから、議会、政府、事業者、メディアなどからの批判が相次ぎ、ROPの開発に至った経緯を説明。
近藤氏は、ROPの理念検討に際し開催された官民共同によるワークショップ(1998年)や、「一般の専門家が関わること」で規制当局と事業者との二者関係に陥ることなく、より開かれた制度として運用を開始できた経緯とともに、その後も様々なステークホルダーによる多角的な検証を通じ改善が進められていることを、米国の好例として紹介。IAEAでも「リスク情報を活用し、安全のパフォーマンスに基づいている。予見性があり、透明性があるという点で、ROPはよい実践」と高く評価されているとし、米国原子力規制委員会(NRC)が理念とする独立性に関しては、「Trust but Verify」(事業者を信頼するが、検証する)と強調した。