福島大・筑波大、チェルノブイリ森林火災跡地の「地表流」による放射性物質拡散で研究成果

2020年1月22日

 福島大学と筑波大学の研究グループはこのほど、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所周辺(半径30km圏内)で、土壌に浸透しきれなかった雨水が地表を流れる現象「地表流」を観測。森林火災跡地で放射性物質を含む土砂の移動が起きていることを明らかにした。
 同研究では、放射性物質の再拡散に対する懸念をとらえ、ウクライナの研究機関との共同プロジェクトで、2016年にチェルノブイリ原子力発電所から約2km離れた地点で発生した大規模森林火災の跡地と、火災の影響がなかった周辺の森林地のそれぞれに調査区を設け、「地表流」によって流出する放射性物質の量を比較。その結果、森林火災跡地では、火災の影響がなかった森林地と比べ「地表流」の流量は約2.7倍、さらに、「地表流」に含まれて移動する放射性物質は約30倍にも上っており、放射性物質の大きな増加は、水中に溶けた状態ではなく、水中に浮遊する微細な土壌粒子などに付着して移動していることに関係するとされた。
 研究グループでは、森林火災跡地において放射性物質の拡散を防ぐには「地表流」による土砂流出を抑えるのが有効と考えられるが、河川周辺で森林火災が発生した場合の影響評価・対策に向け、今回の研究成果を発展させていくとしている。
 同研究は、科学技術振興機構と国際協力機構との連携プログラムにより実施された。