原子力文化財団が世論調査、「原子力に対する考え方が『ややポジティブ側』に変動」と分析
日本原子力文化財団は3月17日、2019年度「原子力に関する世論調査」の結果を発表した。同財団が2006年度より継続実施している全国規模の調査で、経年的・定点的に原子力に関する世論動向や情報の受け手側の意識を把握し知識の普及・啓発活動に資するもの。今回の調査は、10月に実施され、全国の15~79歳の男女1,200人から回答を得た。
「今後日本は原子力発電をどのように利用すればよいと思うか」との問いに対し、最も多かった回答は「徐々に廃止」で49.4%、次いで「わからない」が22.7%だった。また、「増加」の2.0%と「東日本大震災以前の状況維持」の9.3%とを合わせた「積極的な利用層」の割合は2017年度以降増加し、これと「徐々に廃止」とを合わせた「利用層」の割合は2016年度以降増加。一方、「即時廃止」と回答した割合は11.2%で2016年度以降減少している。「わからない」と回答した割合は、10代、20~30代、女性で高く、全体よりそれぞれ、7.0ポイント、4.8ポイント、5.8ポイント上回っていた。これを受け、原子力文化財団では、「2017~19年度で原子力に対する考え方が『ややポジティブ側』に変動した」、「特に10代や女性層に対して、原子力発電に関する情報との接点を増やす取組が求められる」などと分析している。また、再稼働に関する意見としては、「国民の理解が得られていない」が50.3%と大半を占めた。一方で、「電力の安定供給から必要」(26.6%)が「電力は十分まかなえているので必要ない」(16.5%)を、「新規制基準への適合確認を経て認めてもよい」(17.6%)が「新規制基準への適合確認を経たとしても認められない」(14.5%)をそれぞれ上回っていた。
「今後日本はどのようなエネルギーを利用・活用すればよいと思うか」(複数回答可)との問いに対しては、「太陽光」(75.5%)、「風力」(62.8%)、「水力」(51.8%)、「地熱」(40.0%)の順に回答が多く、東日本大震災以降では同一順が続いた。「原子力」と回答した割合は16.3%で2018年度の17.3%を若干下回り、性別で比較すると、男性23.1%に対し女性9.7%と大きな開きがあった。
原子力・放射線・エネルギー分野の情報保有量について、今回の調査では、高レベル放射性廃棄物に焦点を当て、「地層処分選択の経緯」、「日本での処分方法決定」、「廃棄物の量」、「廃棄物貯蔵の状況」、「3段階の処分地選定」、「次の段階への進め方」、「各国でも処分が難航」、「処分の先進国」に関して質問。それによると、聞いたことがある項目として最も回答が多かったのは、「廃棄物貯蔵の状況」で32.7%、「各国でも処分が難航」がこれに次ぐ21.7%となったほか、いずれの項目の回答率も男性が女性よりも高く、年代別では60~70代が最も高かった。また、「どの項目も説明できない」が93.8%、「どの項目も聞いたことがない」が50.2%に上るなど、原子力・放射線・エネルギー分野全般と比較し、高レベル放射性廃棄物関連の認知度の低さが示された。
原子力に対するイメージについては、「危険」、「不安」が福島第一原子力発電所事故前から上位を占め、依然と否定的なイメージの回答率が高いが、一方で、肯定的なイメージとして、「必要」、「役に立つ」などもあがっており、いずれも原子力に関する情報量が多いほど回答率が高くなっている。