動画「福島第一の現在(いま)」を公開しました

 

写真は、作業前に行われるミーティングの様子(動画より抜粋)
作業前に行われるミーティングの様子(動画より抜粋)

日本原子力産業協会では、動画「福島第一の現在(いま)」を制作、公開しました。現場で働く作業員のみなさんの姿を通して、現在の福島第一原子力発電所の現地の様子をお伝えするものです。ぜひご覧ください。

動画「福島第一の現在(いま)」

YouTubeをご覧になれない方は、こちら。

▽福島第一原子力発電所の現地では日々、事故収束にむけて作業が進んでいます。事故直後の緊迫した状況から4年、現場と、そこで働く作業員のみなさんを取材しました。 そこには、事故収束への使命感から家族を説得して現場で作業に取り組む地元出身の技術者の姿をはじめ、ひとつひとつ丁寧に、安全・直実な作業を進めるチームとして結束し事故収束に取り組む真摯な姿がありました。 ともすれば、混乱した事故直後のイメージを抱きがちな福島第一の現場ですが東京電力をはじめ、協力企業がともに作業環境の改善に取り組んでいます。発電所構内の除染も進んで、軽装備で作業ができる現場が基本になっています。

 

日立GEニュークリア・エナジー株式会社 日立事業所 福島総括事務所長 河合秀郎 氏河合

Q.指導する上で気にかけていることは?

→野帳場の仕事と、福島第一の廃炉復興作業は全く違う。世間から注目されており、災害が出ると否応なしに世間から「原子力は、福島第一の廃炉復興は、危ないんだ」と見られてしまう。我々メーカーが一番注意しているのは安全。あるいは放射線による不具合の防止。そういう意味で実際の作業に入る前の事前準備、ミーティングに力点を置いて、急がず、慌てず、確実に仕事を進めていければと思う。

Q.今ここをベースに1Fで働いている人数は?

→我々元請のメンバーを含め730名。実際に作業する一次下請け会社以下は、670名ぐらい。

Q.現在サイトで働いている作業員の年齢構成のバランスは?

→原子力発電所の管理区域内の作業の従事者の関係で、年齢制限が当然あるが、日立グループの人員の年齢構成は、20代が約17%。30代が25%。40代が27%。50代が22%。60代が9%。30代から50代が中心になっている。このままずっと継続して雇用できていけば、と思うがいろいろあって難しい。

Q.必要としている人材は?

→現時点の状況は、震災前から日立グループの作業に従事していたキーマンが中心になっている。福島第一の廃炉復興は長丁場の足の長い作業になる。当然のことながら若い人たちを育成しなければならない。しかし作業が年間通してベースになるような作業量が確保できるかというと、そうではない。例えば670名の人員もこの3~4月で作業が一旦落ち着くため、減らさざるを得ない。若手を継続雇用していけるような、作業量が必ずしもないというところが我々としても痛い。そういう意味ではどうしても以前から仕事をやってきた熟練のキーマンをいかにして雇用を継続していくかというところに向かっていかざるを得ない。長丁場だからゆくゆくは若手をという部分があるから、少ない人数かもしれないが若手を育てていかなくてはならないと思っている。

Q.人材をどのように確保する考えか? →非常に難しい話だが、我々としては震災前に日立グループで仕事をしていた人々をなるべく集めたい。現場の状況もよくわかっており、仕事の中味も知っている。しかし彼らの30~40%は戻ってきていない。一番大きいのは家族の反対だ。震災直後に1、3、4号機が爆発するという事象があったわけだが、家族はそういう状況を見ている。そういう意味で家族にはそういうところへ戻ってほしくないということもあって、なかなか戻ってくるタイミングを逸してしまった。 それと4年もたつと、当然のことながら避難先で新たな仕事に就いたりしている。そうすると時間がたてばたつほど、戻ってくる可能性は極めて低くなってくる。そこの期待はできないだろう。 そうすると今度は新たな人材を確保しなければならない。今現在やっている工事は、1号機と4号機の建屋内の滞留水の移送工事をメインでやっているが、建屋の中なので線量も高い。新たに人材の募集を掛けたのだが、本当は建設業経験者で募集したかった。しかし集まらない。どうしても人を集めなければならないので「経験問わず」という形で募集を掛けたら何とか集まった。何とか集まったが、約400名近くのうち300名が原子力が初めて、あるいは福島第一が初めてという人だった。 作業環境や装備が非常に厳しい状況の中で、まったくの新人では心配だ。そこで、新人の特別教育をやったり、放射線不具合の体感訓練をやったりと、新人向けの災害防止の取り組みを加速している。

Q.作業員のキャリアアップは?

→作業者本人のキャリアアップであったり、モチベーションが上がるような雰囲気にするのが、日立グループとしての我々の役目だと思っている。頑張った人間はきちんと評価するということで表彰制度を含め、運用しているところだ。 個人のキャリアアップという部分では、雇用している会社としてやるべきキャリアアップと、元請としてやるべきキャリアアップと、2つあると思っている。 例えば日栄動力が実施するキャリアアップは、主に建設業法に絡んだ実務的な教育訓練。今日は配管のフランジの締め付け作業をやっていたと思うが、配管のフランジ締め付けも、実は社内ルールでフランジ締め付け教育を受講して認定されないとできない。そうしないと片締めになって漏れにつながることもある。そういう認定制度がある。そのための教育は、日立のルールの中で、日栄動力が直接やっている。グラインダーを掛ける作業があれば、そういう訓練をやったりと。そういう部分では全くの未経験者と、これから従事する作業内容に合わせた教育訓練をやってもらっている。 日立の作業班長制度では、作業班長を持っていないと作業班長になれない。班長のスキルアップのための教育の場や、現場での作業のモックアップ訓練(日立事業所で実施)。こうした訓練は元請としてやっている。 これから廃炉が進むと遠隔の作業が出てくる。線量が高くて人が近づけない。モニタを見ながら重機やロボットを操作する。こうした作業に関しては元請として、日立事業所の設備を使っての訓練をする。そういう役割分担をして、キャリアアップを図っていく。

Q.作業員にとって大きな財産になるのか?

→廃炉の技術といっても、一般的な原子力発電所の廃炉という作業と福島第一の廃炉は全く別物だ。ここで経験したことがほかで活きるかというと、作業環境や装備に関して言えばここよりも厳しくなる現場はないだろう。そういう意味では一番厳しい条件下で仕事をしているわけだから、ある程度どこへ行っても通用するようなキャリアは積めると思っている。 こと技術に関しては、福島第一独自の取り組みだ。ここでやったことが必ずしも、次の正規な形での廃炉現場で活きるかというと、そうではないと思う。

Q.困っていることは?

→長年原子力発電所作業に従事していたベテランが戻ってこない。それと今般の災害がある意味で逆風になると思っている。そういう意味では新たに人材を発掘しなければならないが、被ばくや作業環境は、一般建設業に較べると今なお厳しい。しかしきちんと管理されているので、安全だということを正しく発信し、次世代の人材が福島第一の廃炉に使命感をもてるような時代になればいいなと思う。

Q.作業環境は改善されているか?

→4年たっているのでだいぶ良くなっている。敷地の中はタンクが林立する状況だが、構内の作業をもっと軽装備で出来るようなベースは出来上がっている。除染をしたり汚染した土の上をフェイシングで覆ったり。半面マスクで仕事ができるようなエリアが相当広くなっている。 しかし半面マスクで仕事をする人は、現実的には少ない。数値上は問題ないのだが、埃が舞ったりすると体につくんじゃないかと、どちらかというと保守的に、全面マスクで仕事をした方が安心だ、という風に思っている人もかなり多いのは事実だ。これから徐々に、軽装備で仕事できるように、我々も取り組んでいきたい。 社会に安心してもらうように発信するのには、以前は全面マスクでやってたけど、もう4年たって今では半面マスクでできるようになったというのが一番いいと思う。本当は今日もそういう現場映像を提供できればよかったが。

Q.所長自身の思いは?

→会社の定年もすぎ、老い先も短いので、現役でいるうちに1号の炉底部のデブリの状態ぐらいは見届けたいと思っている。ただそれは結構大変な作業で、1号機は100φのペネトレーションからロボットを入れ、ロボットが中で曲がってキャタピラが動いて原子炉底部のペデスタルの外側のグレーチングの上を見るのだが、それをやってもデブリまでは見えない。ペデスタルの下までは見えない。その後のデブリが見れる状況まで頑張れるのかなと思っている。 ただデブリが見えた以降も、実際にはデブリ取出しの課題は山積している。一筋縄ではいかない。 業者あっての日立グループなので、一蓮托生でこれからも一緒になって頑張っていきたい。

 

▽作業担当者

川端竜也氏(株式会社日立プラントコンストラクション 主任監督)川端 

Q.チームを運営する上で気を遣っていることは?

→各社に担当監督を付けてもらい、夕方ミーティングをやってもらい、次の日の作業に備えるという工夫を毎日やっている。

Q.作業環境は改善されつつあるか?

→全面マスクエリアが減ってきて、半面マスクでも作業できるエリアが増えてきている。

Q.非熟練作業員を指導する際の注意点は?

→入所教育の時に、別の教育をしてもらい、現場では入域の際に必ず班長さんについてもらって、慣れるまでは一緒に入域してもらって、作業になれてもらうようにしている。

Q.日々の作業への思いは?

→3歳の時から住んでいる地元が富岡町なので、自分がやっている仕事が双葉郡の復興のために少しでもなればと思って頑張っている。

Q.家族の反応は?

→父親と妻には反対された。避難先で3号機の方に自衛隊のヘリから海水を注入する映像がテレビで流れ、父親から「お前絶対に行くな」と言われたが、同じ会社でやってる仲間がその時すでに現場にいたのと、双葉郡が自分の地元であることから、双葉郡復興のために少しでも力になれればと思って、家族を説得した。

 

鈴木宏幸氏(株式会社日立プラントコンストラクション 担当監督)鈴木

Q.最近の大きな変化は?

→私たちは屋外の作業が多いが、以前よりも放射線量は下がっているし、装備も軽くなってきているというのはわかる。休憩所もかなり増えたので、すぐに休憩やトイレにも行ける。最初の頃よりは不安はない。

Q.今度大型の休憩所ができるが、作業効率にいい面がある?

→今までは細かい休憩所に分散していたが、大人数が入れればまとまったミーティングもできるので効率がいい。

Q.現場での苦労は?

→屋外が多いので天気に左右され、冬は今日のようにだいぶ寒い。夏場は本当に暑い。汚染水を扱えば、今日と同じ装備をして作業をするので、長時間の作業が出来ないので苦労する。

 

門馬善行氏(日栄動力工業株式会社 業者監督)門馬

Q.現場で仕事を進めるうえで若手の指導も含め注意している部分は?

→この仕事に関しては慣れが少ない。定期点検をやったことのある人は多いが、今はほとんど建設のような工事が多い。建設のような仕事は慣れていない人が多く、それを注意しながら、重点的に教えながらやっている。

Q.作業環境は改善されつつあるか?

→われわれは水処理作業をほとんどやっていたので、ほとんど屋外の作業。冬場と夏場の装備の厳しさ、冬は寒いし夏は暑いしという中で、だいぶ改善されたこともある。休憩所がだいぶ出来たということで、かなり楽になった。何かあった場合、休憩所に入れる。それだけでも全然違う。

Q.夏の熱中症は?

→工夫としては30分ごとの声掛け、1時間ごとの体調確認がある。毎日声掛けで「大丈夫か?」とかやっている。

Q.日々の作業への思いは?

→この業界に入って来年で丁度40年になる。ずっと建設が主だった。地震があった時は福島第一4号機の定期点検をしていた。それを思うとこれからの作業は、地元として、廃炉をなんとかしなければと緊急に呼ばれているが、なかなか思うようにできない。我々がやることはほんの微々たる作業だが、役に立てばと思ってやっている。

 

望戸義嗣氏(日栄動力工業株式会社 業者監督)望戸

Q.高線量下での不安は?

→線量は目に見えないので不安はあったが、放管さんがいるので、不安はだいぶ軽減してきた。今現状下がっているというのも周りの環境見ているとわかってきた。

Q.作業環境は改善されつつあるのに、世間では悪いイメージが付きまとうが?

→どうしても目に見える範囲と、伝えられない範囲があると思う。作業してる自分らと、中に入って来れないで報道だけ見て話している人とでは、そのギャップでなんとも伝えきれないと思う。

Q.現場の改善例は?

→線量が下がってきているのは目に見えている話であり、そこを伝えていけば、「じゃぁ大丈夫なんだな」って思ってもらえると思う。

Q.日々の作業への思いは?

→生まれてからずっと住んでいた地元だ。原発が身近にあるものであり、環境が変わっても仕事が頑張れるんであれば、頑張っていきたいと思っている。

 

永山貴良氏(東立テクノ株式会社 作業班長)永山

Q.TBM―RKYが生むものは?

→「経験」ですね。前日同じ現場だったら、前日入った環境を伝えることができる。

Q.安全確保に向けては必須?

→そうですね。必要です。

Q.雨の作業の中で一番注意しなければならないことは?

→雨が降ると、全面マスクはどんなにリークチェックをしても曇る場合が多い。そうすると足元とか見辛くなることが多く、足元とか周囲を確認して、気を付けなければならない。

Q.家族は理解しているか?

→18歳からずっと原子力の現場にいたので、これといって、特には何も言われなかった。

Q.思いは?

→いわきでずっとこういう仕事をしてきた。震災後は今までやってきた自分の能力が少しでも役にたてればいいなと思っている。

 

山内英樹氏(東立テクノ株式会社 作業員)山内

Q.福島第一の仕事は初めて?

→過去は何度か福島第一に入ったことがあるが、基本的には建築関係の仕事だった。

Q.なぜ福島第一の作業に戻ろうと思ったのか?

→畑違いといえば畑違いなのだが、自分が培ってきたものが役にたてばなと思った。

Q.不安はあったか?

→初めはテレビの映像しか見ていなかったので、不安はあった。でも実際来てみれば、みんないろいろ手助けとかアドバイスをもらえるし、環境もかなり整っていたので、安心している。

Q.夏場に熱中症になりそうになった経験は?

→ない。みんな気遣ってくれる。マメに休憩もとる。

Q.日々の作業への思いは?

→福島県は故郷であって、家族もいるので、復興させたい。

 

▽1Fサイト内の医療関係者

壱岐善男氏(看護師、勤務歴3年)壱岐善男

Q.通常の発電所の健康管理室と、福島第一のER室との違いは?

→震災後に周囲の医療機関が避難してしまったため、救急車がサイトに入って来れなくなった。いかに早く対応するかということで、医師と看護師、(当初は放射線技師も)が詰めることになった。その流れから救急医療室が設立された。

Q.現在の体制は?

→もう大丈夫だということで放射線技師に替えて救急士を入れ、現場救護のプロをということで、救急医、看護師、救命士+医療班で運営している。

Q.何かあった時の措置はスムーズにできているか?

→ここに入って頂いている救急医の先生方は、おそらく全国でもかなりハイレベルな先生たちばかりで、医療の提供という面ではなんら通常の病院とは遜色のないレベルだ。どうしても道具は限られているが、最高の治療を提供できているのではないか。救命士さんに関しても、現場で働いている救急隊に救急財団経由で来ていただいており、公設の救急隊となんら遜色ない。自分たちはその指示に従って、介助、診療補助をやっている。 ここで働いている方が、当然安全には気を付けて作業されてるとは思うが、現場作業は事故が皆無というわけにはいかない。有事の際には少しでも安心して頂けるような医療を提供するという部分で、自分たちがサポートできればと思っている。

Q.怪我と熱中症含めて夏場が一番多いか?

→夏場が一番多い。通常の生活でも熱中症があれだけクローズアップされている。特殊な現場で、タイベックを着て全面マスクをしてという場面では、どうしても夏場は気分が悪くなる、こちら側としても「重症化する前に早期に来てください!」という働きかけは各企業さんに常々言っていただくようにしている。そういう意味では軽傷も含め、どうしても夏場は患者さんの数が多い。

Q.患者数は夏場で多くて一日どれくらい?

→一番多い時期で多分、10人来るか来ないかぐらい。ここの現場では皮膚が開いた状態での外傷がちょっとでもあった場合は、基本的に作業をやらせないという立ち位置だ。ちょっとでも切った場合は来ていただいて、作業に戻るのではなく、処置をして帰っていただく。傷が完治したら作業に戻っていただくという対応を徹底している。

Q.作業環境の改善にERは寄与していると思うが、世の中には知られていない

→ここにERがあることを、自分たち医療関係の仲間に聞いてもほぼ知らない状態。一般的にも知られていない。寂しい感じもするが個人的には気にしていない。作業員さんがけがをしたら患者さんなので、医療従事者としては対応させてもらう。周りが云々という感覚はない。 作業する現場の中で、ERという特殊な医療環境があるというのは、ある意味先端を行っているのではないかという風には考えている。

Q.原子力発電所で働くということに関し、看護師として不安はあったか?

→一番最初は、事故が起きて、放射線の状況もわからず、看護師という立ち位置ではあるが、放射線に関する知識が非常に薄く、ある意味こちらに来て勉強させてもらったようなところもある。多少の不安はあったが、原子力というところで働くという違和感というよりも、救急の現場で、まして放射線災害の医療に接する機会は少ないので、いい経験かなと。

Q.改善していきたい点は?

→自分たちができることはあくまでも有事に関してなので、もちろん災害ゼロというのが理想ではあるが、そこを追及するのも必要だが、何かあった時には最大限のフォローができるということを皆さんに伝えていくと同時に、それ相応の医療を提供するために努力を惜しんではいけないということを常々考えている。今後こういう医療機関がどこまでこちらで存続させられるかわからないが、ちょっとでも作業員の方々が安心して働ける環境の一環としては継続していく必要があると考えている。

 

月ヶ瀬和利氏(救急救命士、勤務歴1年半)月ヶ瀬

Q.どのような思いでサイトにいるか?

→大震災があった時に、自分は一度釜石の現場に入っていた。その惨状を目の当たりにして、それが時間の経過とともに日常生活の中に戻っていく。東京都内にいると、普通の日常生活を送って震災は過去のことになったようなそんな感覚に陥る。震災はまだ続いている。自分がもともと命を扱うような仕事をしているので、それを肝に銘じて、何らかの貢献ができるのであれば、自分にできることをやっていこうかなと、そういう風に考えている。

Q.サイトで働くやりがい、不自由さなどは?

→通常の救急活動、普通の日常の中の救急活動と一緒の較べ方は出来ないので、何が不自由化というのは非常に難しい。救急士として求められるのは、現場の活動を安全かつ迅速に行うことだ。もちろん通常の活動時もそうだが、医療資源がない、病院が近くにないということは、一つ遅れることでその後どんどん時間が伸びていってしまう。一人の命を救命するにはその時間をどれだけ短縮できるかというのが非常に重要で、こういう特殊な環境下ではそれが一層求められている。

Q.広いサイトでは何かあった時の連絡体制が重要だろう。どのような改善がなされてきたか?

→何回か現場に出させてもらって毎回感じることがある。それを東京電力の医療班と話し合いながら、ブラッシュアップさせてきている。かなり時間的には改善できているし、通常の医療とさほど変わらない時間で救命することができている事案もあり、毎回の事案を大切に次へとつないでいる。そういうブラッシュアップはチームとして出来ていると感じている。 福島第一のER単独ではなく、公設の消防や福島県立医大の方々の協力なしには実現できない。そうした外部の方々、支援して頂いている方々にいろいろと教わりながら、ブラッシュアップしている。

Q.スタッフ間の情報共有は?

→しっかりと情報共有の体制は作っている。一事案ごとにその情報を共有して、自分なりに考え、その考えをシェアしていく。ということを日常やっている。

Q.放射線への不安は?

→見えないものなので、いつどういう影響が出てくるのかわからないことだが、我々医療に関してはプロフェッショナルであると活動しているが、放射線に関しては正直、専門的ではないので、放射線管理の係の人が一緒に同行して指示をしてくれるので、そこはその人の指示を信頼して活動にあたっている。活動上不安かというと、現場に出てしまえばそういう不安は一切ない。

Q.ドクターヘリの体制は?

→ドクターヘリがいてくれるからこそ助かる命が多くあると考えている。やはり時間との勝負だ。救急車での陸送はどうしても物理的距離があり、スピードを出せると言っても限られている。限られた時間の中で迅速に救命するには、ヘリコプターは非常に大きな存在となっている。

Q.ご自身が現場へ出る際は?

→夏場になると、脱水になりやすくなるので、暑さに対して体が活動時間もつかどうか、やはり救護する側もしっかりとした体力を持たなければならない。そういったことを日頃からトレーニングして体力を向上させるということに努めている。

Q.ERが現場にあるケースはあまり多くないと思うが、意義は?

→医療側としては迅速に対応できる体制、しかもドクターヘリを使って大学病院と連携しながら、作業環境をしっかりと救護していく、そういう体制が構築できているというのは、他にないのではないかと思う。継続的に災害が起こっている中で、医療システムをどうやって構築していくかは非常に重要な課題だ。 これから日本だけでなく世界で。原子力だけでなく他の災害が起きた時に、福島の災害医療体制の作り方、システムというのがモデルになっていけばいいのではないかと思っている。