電気事業連合会の広報キャラ「Conちゃん」が、およそ半年ぶりに登場だ。電事連は、「あなたとエネルギーをつなぐ場所」をコンセプトとした広報サイト「Concent」を開設し、インタビュー、コラム、マンガを通じて、生活者の視点からエネルギーについて考えさせるコンテンツを随時、掲載してきた。2018年3月より、これまでに掲載された記事数は300件を超える。「Conちゃん」が専門家とのインタビューや現場取材を紹介するシリーズ「Conちゃんが行く!」もその一つ。「Conちゃん」は5月1日の記事で、地球温暖化対策からみた日本を取り巻くエネルギー事情に関し、2回にわたり国際環境経済研究所所長の山本隆三氏にインタビューしている。「これからの時代、火力発電って必要なの?」、前編ではまず、2023年11~12月のCOP28(ドバイ)で合意された石炭、石油、LNGなどの「化石燃料からの移行を進める」という記載に関し、「Conちゃん」が質問。日本では、東日本大震災以降、全国の原子力発電所が順次停止したことなどから、火力発電が発電電力量の約7~8割を占めている。「本当に移行できるの?」と、疑問に思ったのだ。これに対し、山本氏は、COPの広義での意味、1995年以来、気候変動対策について話し合ってきた経緯などを説明。COP28の成果に関しては、「グローバルストックテイク」(GST)という進捗評価がなされたほか、今回、原子力が気候変動に対する解決策の一つして正式に明記されたことを強調する。「本当に移行できるの?」について、山本氏はまず、石炭に依存する中国・インドのエネルギー事情について述べた上で、「再生可能エネルギーを増やすにもバックアップとして火力発電が必要だ」とするとともに、原子力発電についても、運転までのリードタイムや安全対策などの課題をあげ、脱炭素電源への移行は非常に難しいことを考えさせる。後編では、脱炭素社会の実現と経済成長の両立について考える。「そもそもなんで日本は火力発電の割合がこんなに大きいの?」と、「Conちゃん」は問う。「Conちゃん」は、山本氏とのやり取りで、昨今のウクライナ情勢を受けた世界のエネルギー事情を始め、送電ロスを減らす日本の技術を通じた「火力と環境の共存」、原子力を増やす上での技術継承・人材育成、データセンター・半導体工場の増加に伴う電力需要増などについて理解を深めていく。
07 May 2024
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「もんじゅ」サイトに設置が計画される新たな試験研究炉の開発・整備に向けて、今後の設計具体化を見据えた核拡散抵抗性に係る国際協力が進んでいる。増子宏文部科学審議官とジル・ルビー米国エネルギー省(DOE)国家安全保障庁長官は4月25日、都内で会談を行い、日米が連携し、DOEによる核不拡散・核セキュリティの取組「Pro-X」(Proliferation Resistance Optimization)への協力を進めることで合意した。「Pro-X」は、試験研究炉の設計段階から核拡散抵抗性の概念を導入することを目的として、DOE国家安全保障庁が2019年から開始した取組だ。アジア地域を中心とする原子力新興国では現在、医学・農業・環境保全分野でのRI・放射線利用が進められており、将来的に原子力発電の導入も見込まれている。今回の日米合意には、「もんじゅ」サイトの新試験研究炉とともに、こうした新興国における研究炉の核拡散抵抗性を高めていくことも盛り込まれた。〈文科省発表資料は こちら〉現在、廃止措置中にある「もんじゅ」のサイトを活用した新試験研究炉は、熱出力10MW級の照射機能を有する中性子ビーム炉。2022年12月に、詳細設計段階以降の実施主体として日本原子力研究開発機構が選定され、京都大学、福井大学の協力も得ながら、設計検討が進められている。産業分野でも多くの成果をあげている中性子利用に関しては、いずれも東海村に立地する原子力機構の研究炉「JRR-3」、大強度陽子加速器施設「J-PARC」が稼働中だ。一方で、京大炉「KUR」が2026年までに運転を終了することなどから、新試験研究炉は、今後の「西日本における中核的拠点」として機能することが期待されている。原子力機構は、2023年11月に三菱重工業を新試験研究炉の設計・製作・据付を実施する主契約企業に選定し、基本契約を締結した。今年度中にも設置許可申請の見込み時期が提示される予定。文部科学省の有識者による作業部会では、新試験研究炉の研究開発・人材育成や産業利用としてのあり方について、現在、検討を行っている。4月18日に行われた同作業部会では、新試験研究炉の運転開始までを見据えた「原子力研究・人材育成の拠点形成に向けたロードマップ」(素案)が示された。「利用促進体制の確立」、「複合拠点の整備」、「人材育成機能の強化」が柱となっており、今後、「敦賀エリアでの原子力研究・人材育成拠点の形成」に向けて、ワーキンググループを設置しさらに検討を深めていく見通しだ。〈作業部会配布資料は こちら〉
02 May 2024
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資源エネルギー庁の松山泰浩次長(首席最終処分政策統括調整官)は5月1日、佐賀県玄海町を訪れ、脇山伸太郎町長に最終処分地選定に向けた文献調査に係る申入れ文書を手渡した。文献調査は、高レベル放射性廃棄物等の処分地選定に向け、最終処分法で規定された最初の段階となる。関心を示した市町村を対象として、地域の地質に関する文献・データについて机上調査。地域には2年程度の文献調査期間中、国から最大20億円が交付される。北海道の寿都町、神恵内村で実施中の文献調査は2020年11月から開始され、現在とりまとめの段階。国からの申入れは、北海道の神恵内村に続き玄海町が2例目。玄海町議会では、文献調査の応募を求める地元商工団体からの請願3件を受け、4月15日より審議を開始。17日には資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)も出席し議員からの質疑に応じた。請願につき集中審議に付された町議会の原子力対策特別委員会では25日、岩下孝嗣委員長が冒頭、取材に訪れた報道陣に対し「『核のごみ』という呼び方は止めて欲しい」と強調。議員からは、地域活性化に向け採択を求める声の他、「文献調査の成果が、同町に立地する九州電力玄海原子力発電所の耐震安全性向上にも資する」といった意見もあった。請願はいずれも26日に本会議で賛成多数で可決。今後は、町長の判断が焦点となっている。総合資源エネルギー調査会の特定放射性廃棄物小委員会(委員長=髙橋滋・法政大学法学部教授)では現在、寿都町・神恵内村における文献調査報告書の取りまとめについて議論している。4月30日の同小委員会会合では、玄海町の文献調査応募に関する意見も交わされた。〈配布資料は こちら〉同会合では、資源エネルギー庁が、昨夏より始まった国・NUMO・電力が合同で全国の自治体首長を個別訪問する「全国行脚100自治体」を紹介。3月末時点で、目標の100自治体訪問を達成。これに対し、「今回の玄海町の動きとどのようにリンクしているのか」、といった質問が出た。さらに「今後、複数地域が異なるタイミングでプロセスが進む」可能性から、次の選定段階への判断ができるよう、国・NUMOに対し絞り込み基準などの早急な具体化を求める意見も出された。また、これまでに文献調査の応募を見送った自治体の前例も踏まえ、地域対立につながることなどを危惧し、慎重な対応を求める声もあった。
01 May 2024
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政府は4月29日、春の叙勲受章者を発表した。旭日大綬章を、元・新日本製鐵(現在は日本製鉄に改組)社長で、現在、日本原子力産業協会の会長を務めている三村明夫氏らが受章する。三村氏は、多年にわたって鉄鋼業に携わり業界の発展に尽力。日本商工会議所会頭、日本経済団体連合会副会長、日本鉄鋼連盟会長など、経済・産業団体の要職も歴任してきた。新日本製鐵会長在任中の2011年10月より、総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会委員長として、東日本大震災・福島第一原子力発電所事故後のエネルギー政策建て直しに向けた議論をリード。会合は、ほぼ週1回の多頻度で行われ、同氏は、総勢20名以上に及ぶ委員らによる多様な意見の集約で手腕を発揮した。2012年12月の政権交代後は、同調査会基本政策分科会の分科会長として、エネルギー基本計画の見直しに本格着手。国のエネルギー政策立案において多大に貢献した。受章に際し、三村氏は、コメントを発表し、「今回の栄誉は、私個人が頂戴したものではなく、日本経済の発展に携わる多くの皆様を代表していただいた」との姿勢を示した上で、「今後も微力ながら、産業、社会の発展に貢献できるよう精進を重ねていく」と抱負を述べている。旭日大綬章は、この他、元三菱重工業社長の佃和夫氏、元文部科学相の平野博文氏が受章。佃氏は、三菱重工社長在任中の2007年、高速増殖炉の実証炉開発に向け、同社が中核企業となり、エンジニアリング業務の主体となる三菱FBRシステムズを設立するなど、当時、政府が掲げていた「原子力立国計画」の推進で尽力。2008~10年には、原産協会副会長を務めた。平野氏は2012年、民主党政権時の野田内閣で文科相を務め、東日本大震災後の科学技術・文教行政をリード。就任当初から「経済活動や国民生活に安定的なエネルギー供給は不可欠」との認識に立ち、研究開発・人づくりの観点から原子力政策に関わった。瑞宝重光章を、元文部科学事務次官の土屋定之氏、元文部科学審議官の藤木完治氏らが受章。土屋氏は、旧科学技術庁時代の1990年代、原子力局核燃料課長などを歴任し、使用済燃料サイト外貯蔵の制度設計、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の六ヶ所村施設における一時保管開始に向けた地元対応他、バックエンド対策の推進で指揮を執った。藤木氏は、研究開発局長在任中の2010年、産学官連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」の設立で音頭を取った。外国人では、元ドイツ連邦経済・エネルギー相のペーター・アルトマイヤー氏らが旭日重光章を受章する。同氏は、経済分野における日独間の関係強化に寄与。連邦環境・自然保護・原子力安全相在任中の2013年、使用済燃料および高レベル放射性廃棄物のゴアレーベン中間貯蔵施設への搬入を、地元の反対などを踏まえ停止し、新たなサイト選定手続きに関する法案を示した。
30 Apr 2024
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日本保全学会はこのほど、原子力発電の健全性維持に係る技術や活動などを対象に2020年度より認定してきた「保全遺産」を紹介するパンフレットを作成し公表した。〈これまで認定された「保全遺産」一覧は こちら〉「保全遺産」の認定は、表には見えにくいところで原子力開発に貢献してきた技術や活動、いわば「縁の下の力持ち」を表彰し啓発するものとして、同学会が2020年度に開始。これまでに12件が認定されており、原子力発電に係る保全を支えてきた機材や工法の研究・開発にとどまらず、後世に教訓を伝えるための施設・活動も含まれている。例えば、初回に認定された「原子力発電所のピーニングによる応力腐食割れ(SCC)抑制技術」は、日立GEニュークリア・エナジー、東芝エネルギーシステムズ、三菱重工業のそれぞれが開発した原子炉容器内部構造物の保全に関する装置に対し与えられた。保全学会が今回、作成したパンフレットによると、日本で商業用原子力発電の運転が30年を超えつつあった1990年代、炉内構造物などのSCCが数多く報告されていたという。溶接時に生じる引張残留応力発生要因の一つとなっていたことから、その改善手段として、ウォータジェットまたはレーザを用いた「ピーニング技術」を各社が開発し、実機にも適用されてきたことを評価。いずれも水中遠隔操作による施工で、作業者の被ばく低減にも資するものだ。その中で、東芝エネルギーシステムズによる「レーザピーニング」は、光ファイバーの利用で水深数十mにおける遠隔操作を可能とした。狭あい箇所や複雑な形状など、多様な環境に対応できることから、原子力分野以外への適用も見込まれている。原子力発電所の長期運転に向けた技術も「保全遺産」に認定された。2022年度には、「BWRの炉心シュラウド等の交換工事」(東京電力、中国電力、日本原子力発電、東芝エネルギーシステムズ、日立GEニュークリア・エナジー)が選ばれている。BWR固有の炉心シュラウド交換工事は、高経年化が課題となった1990年代に行われてきた。同技術が適用されたプラントは、既に廃炉が決定しているものもあるが、その要素技術は、現在、進められている福島第一原子力発電所の廃炉にも応用されている。計装制御関連では、同じく2022年度に認定された「中央制御盤等の総合デジタル化更新工事」(四国電力、三菱重工業)があり、四国電力伊方発電所1・2号機(既に廃炉が決定)の中央制御盤を含む総合デジタル式への一括更新を、「世界初」の歴史的意義として評価。18,000本にも及ぶケーブル工事、シミュレータによる運転訓練などで得られた知見は、後続のPWRにおける工事にも活かされている。原子力開発においては、これまでに多くの事故・トラブルが発生しており、その教訓が保全活動の改善に活かされてきた。2023年度には「失敗に学ぶ回廊」(中部電力)が「保全遺産」の一つに認定。2001年11月に発生した浜岡原子力発電所1号機(既に廃炉が決定)の配管破断事故を受けて設置されたもので、パネル・模型展示の他、事故当時に関わったOBからのメッセージを振り返るコーナー、膝を突き合わせ話し合う「車座の間」などが設けられており、社員研修とともに、学生・海外視察団による意見交換の場としても活用されている。パンフレットでは、「技術と地元との共存共栄を示す歴史的博物館」、「失敗を財産として扱い、恥と感じるのではなく、前向きにとらえることが技術者育成において重要」と、その意義を強調。同施設は、「Learning from SHIPPAI」として、海外にも発信されており、世界原子力発電事業者協会(WANO)も良好事例として評価している。
26 Apr 2024
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日本原子力研究開発機構(JAEA)は4月23日、英国国立原子力研究所(NNL)と高温ガス炉の燃料製造技術に係る実施覚書およびライセンス契約を締結したと発表した。〈JAEA発表は こちら〉日本の高温ガス炉開発に関しては、JAEAの高温工学試験研究炉「HTTR」が2021年7月、新規制基準をクリアし10年半ぶりに運転を再開〈既報〉。水の熱分解反応による水素製造「ISプロセス」など、多様な産業利用に期待が寄せられている。さらに、高温ガス炉固有の安全性についても、2009年から実施中のOECD/NEAによる国際共同研究プロジェクトが再開され、2024年3月には、「原子炉出力100%の運転中に、原子炉を冷却できない」という厳しい状況を想定しても、「自然に原子炉出力が低下し、安定な状態を維持できる」ことが実証された。〈JAEA発表は こちら〉一方、英国では、温室効果ガス排出ネットゼロ達成に向け、2022年9月より高温ガス炉実証炉プログラムを開始。そのうち、燃料プログラムについて現在、ステップ1「燃料製造技術開発」(2025年終了予定)が進められている。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2023年7月、ステップ1に向け、JAEAと協力して技術開発を進める事業者としてNNLを採択。同年9月に、JAEAとNNLは、高温ガス炉の早期導入に向けた研究開発・関連活動を加速すべく、包括的な覚書を締結した。英国のプログラムによると、ステップ1以降、2030年代初期を見据えた高温ガス炉運転の具体化を盛り込んだフェーズに入る。こうした英国での燃料製造に係る技術開発によって、日本における高温ガス炉の実証炉に向けても、多様な燃料調達先を確保することが期待される。
24 Apr 2024
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放射線審議会は4月23日に総会を開き、航空機乗務員の被ばく管理ガイドラインの見直し、国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告の国内法令への取り入れ方等について審議し、今後、部会を設置するなどして必要な検討を進めることを決めた。航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドラインは、年間5mSvを管理目標値として航空会社に自主管理を求めたもので、2006年に策定された。以来、約18年経過している。その間にICRPが、航空飛行時の宇宙放射線からの防護に関する刊行物「ICRP Pub.132」を、また国際原子力機関(IAEA)が職業上の放射線防護に関する刊行物「GSG-7」などを発刊し、航空機乗務員の被ばく管理に関していくつか新たな考え方が示されている。民間航空機の飛行ルートに関しても、ロシアによるウクライナ侵攻によって2022年以降、欧州線が北極付近への迂回ルートをとることが増え、ロシア上空を通過する従来ルートより被ばく線量が高めになっている可能性が指摘されている。総会では、こうした状況の変化を的確にフォローアップし、論点を整理した上でガイドラインの見直しを進めてはどうかとの事務局(原子力規制庁)案が提案され、了承された。出席した各委員からは、被ばく線量の最新の状況を確認することや現場での被ばく管理の状況を確認した上で、必要な見直しについて議論を進めるべき、といった意見が出され、論点の整理や部会設置案など今後の検討にむけた準備を進めることになった。またICRP2007年勧告の国内法令への取り入れに関しては、これまで同審議会で進められてきた議論を踏まえ、外部被ばくと内部被ばくに分けて2つの部会を設置し、本格的に検討を開始することになった。2007年勧告に準拠した公衆の内部被ばくに関する刊行物はまだ発刊されていないため、その刊行を待ち技術的な情報が揃ってから部会を設置するなどの案も事務局から示されたが、各委員の意見を踏まえて2つの部会を設置し、内部被ばくに関しては職業人に関する検討から始めることになった。部会の設置、検討開始は来年度になる見通し。ICRPの2007年勧告は1990年勧告以来、放射線防護体系の総論的な勧告となるもので、国内法令への取り入れは多くの時間と作業量を要し、社会経済への影響も大きいため、同審議会ではどのように取り入れるか、その影響はどうか、また海外の状況確認や具体的な検討に必要な事項の調査などを進めてきた。2020年1月の総会では検討の中間とりまとめが行われ、「外部被ばくと内部被ばくの線量係数、職業被ばくと公衆の被ばくの線量係数を同時に法令に取り入れることが適当」との考え方が示された。昨年7月に開催された前回の総会では、検討が必要な技術的な事項や海外の状況確認がなされ、部会の設置やスケジュール等の案を準備することが了承されていた。
24 Apr 2024
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定期検査中にある関西電力の高浜発電所4号機が4月23日夜間に原子炉を起動する見通し。同社が有する原子力発電プラントは、美浜3号機、高浜1~4号機、大飯3・4号機の計7基。同じく定検中の大飯3号機は4月7日に調整運転を開始しており、他は営業運転中であることから、高浜4号機の原子炉起動により全基稼働となる。新規制基準が施行された2013年7月以降では初のこと。関西電力では、2015年3月17日に、美浜1・2号機の廃炉を決定するとともに、同3号機、高浜1・2号機の新規制基準適合性に係る審査を原子力規制委員会に申請。その後、2017年12月22日には大飯1・2号機の廃炉が決定され、現在、同社の原子力発電は全7基体制となっている。近年では、美浜3号機が2021年6月、高浜1号機が2023年7月、同2号機が同年9月に、いずれも40年超運転として再稼働。同社が2024年4月4日に発表したところによると、2023年度の原子力発電による総発電電力量は442.5億kWh(対前年度比58.4%増)、設備利用率は76.6%(同28.1ポイント増)となっている。高浜4号機は、原子炉起動後、26日に調整運転を開始し(発電を再開)、5月21日に営業運転に復帰する見込みだ。因みに、東日本大震災以前も含めて、関西電力の原子力発電プラント全基が稼働するのは、全11基体制であった2008年12月~09年2月以来となる。
23 Apr 2024
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原子力規制委員会(規制委)は4月22日、原子力災害時に屋内退避する場合の、効果的な運用を明確化するための検討チームを始動した。規制委の伴信彦委員、杉山智之委員が担当する。原子力規制庁および内閣府(原子力防災)の担当官に加え、放射線や原子力防災などの外部専門家、地方自治体の関係者をメンバーとして、今年度内に検討結果をとりまとめる。原子力災害対策指針では、原子力発電所が全面緊急事態となった場合にUPZ(概ね5~30km圏)内の住民は屋内退避をすることとしているが、屋内退避の解除や避難への切替え等の判断は示されていない。このため、検討チームは2月14日の規制委で了承された、屋内退避の対象範囲及び実施期間の検討に当たって想定する事態の進展の形屋内退避の対象範囲及び実施期間屋内退避の解除又は避難・一時移転への切替えを判断するに当たって考慮する事項──の3点を検討課題とし、地方自治体等の意見も踏まえて効果的な運用の考え方や必要な事項をまとめる。会合のなかで、伴委員は検討の進め方について「最悪の状況だけ考えて安全側に保守的であれば良いというわけではない。現実的で柔軟な対応を考えていきたい」との基本的な考えを示した。検討チームは今後、日本原子力研究開発機構(JAEA)の確率論的事故影響評価コード「OSCAAR(オスカー)」を用い、炉心損傷により放射性物質が外部に放出する場合に想定される事態の進展をシミュレーションする予定で、炉心損傷に至らない場合を含めて3つのケースで事態進展の形を検討。その結果をもとに、屋内退避の効果的な運用について検討を進めていく。検討課題のうち、「解除又は避難・一時移転への切替えを判断するに当たって考慮する事項」については、福島第一原子力発電所の事故など過去の事例を踏まえることとし、現実的かつ効果的な運用が行えるよう議論を進める方針だ。この課題に関連して敦賀市の藤村弘明危機管理対策課長は「住民への広報のタイミングや範囲も検討に加えていただきたい。能登半島地震以降、住民の皆さんの意識は高まっている」と指摘し、安定ヨウ素剤の確実な配布についても検討に含めることを要望。規制委は、住民への周知とヨウ素剤配布について、検討課題に含めて必要な議論を行う考えを示した。内閣府では屋内退避についてのわかりやすいリーフレットを作成し、各自治体に配布するなど、地域住民への理解促進につとめているが、今後とりまとめられる検討の結果をどう周知していくかも重要な課題になる。
22 Apr 2024
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放射線の農業分野における利用の一つとして品種改良がある。植物にガンマ線などを照射して多様な突然変異体を作り出し、その中から有用な性質を持つものを選抜することで、効率的に品種改良を行うものだ。これまでに、日本酒醸造に適したコメ、病気に強いナシやリンゴ、多彩な花弁色を持つキクやバラなどが作り出されており、われわれの生活に供している。元農業生物資源研究所(農業・食品産業技術総合研究機構に改組)の中川仁氏は、4月16日の原子力委員会定例会合で、自身が場長を務めていた同所放射線育種場が2022年度で60年超に及ぶ放射線照射業務を終了したことから、その成果を振り返るとともに、放射線育種に係る将来展望などを語った。〈中川氏発表資料は こちら〉放射線育種場の「ガンマーフィールド」(茨城県常陸大宮市)は、植物の品種改良を行う世界最大級の野外照射施設で1960年に稼働を開始。半径100mの円形フィールドの中央にコバルト60線源(88.8テラベクレル)を備えている。中川氏は、放射線育種場が長く取り組んできたガンマ線によるコメの品種改良の成果を主に紹介。短稈(背丈が低く倒れにくい)のコメとして開発された「レイメイ」に由来する新品種は、これまでに約200種にも上り、コメの品種改良のおよそ半分を占めるという。また、栽培上の耐性向上だけでなく、低たんぱく質種として食味の改善も合わせ開発された「LGC1」は、近年、急増している腎臓病患者が毎食コメを食べることができ、病院でも多く用いられている。こうしたことから、品種改良は間接的な経済効果も高い。同氏は、放射線の農業利用の経済規模を2,780億円と試算し、その中で、品種改良に関しては、「増殖し続け、経済効果も増殖する」と強調。実際、内閣府の調査によると、国内の栽培面積で突然変異品種の占める割合は12.4%となっている。中川氏は、原子力委員会が主導するアジア地域の放射線利用を中心とした協力枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の農業分野プロジェクトをリードした経験を紹介。品種改良に関しては、途上国での栄養源となっているバナナの収穫増などにつながっており、IAEAにより手順書も発刊されている。この他、同氏は、放射線育種場で照射された突然変異品種が日本のガンマ線照射による育種の大半を占めることや、遺伝学的研究における成果もあげた上で、「放射線育種場がリーダー的立場に立ち、アジアおよび世界の突然変異育種に及ぼした貢献は大きかった」と、振り返った。これを受け、委員との間で、放射線の農業利用に関し、食品照射に対する国民理解、ガンマ線源の価格高騰、小型加速器の導入検討などを巡り意見が交わされた。
19 Apr 2024
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東京電力の柏崎刈羽原子力発電所7号機では、4月15日より原子炉への燃料装荷が行われている。同発電所に関しては、一連の核物質防護に係る不適切事案で原子力規制委員会より発出されていた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が2023年12月、約2年9か月ぶりに解除。新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可が2017年12月に得られている7号機について、同社は2024年3月28日に、プラントの健全性確認を進めるため、規制委員会に対し使用前確認変更申請書他を提出。4月15日、同委より、原子炉を起動する前に行う使用前事業者検査を含む設備の健全性確認に向けて、安全対策設備の試験使用の承認を受け、燃料装荷作業に入ったもの。東京電力は、「作業を進める中で、課題等が見つかれば立ち止まり、必要な対策を講じるなど、一つ一つの工程を着実に進めていく」としている。柏崎刈羽7号機における燃料装荷開始を受け、齋藤健経済産業相は、4月16日の閣議後記者会見で、「再稼働そのものではない」と、設備の健全性を確認する一プロセスとの認識を強調。その上で、今後の東京電力における対応につき「地域や社会の皆様に対し丁寧に説明を行うとともに、安全最優先で高い緊張感を持って対応してもらいたい」と述べた。4月17日には、制御棒1本分の駆動用モーターの電源不具合(ブレーカー落下)が発生し作業が一時中断。これに関し、原子力規制委員会の山中伸介委員長は、同日の定例記者会見で、燃料装荷はおよそ13年ぶりとなることから、「機械上のもの、手順上のものもあるだろう」などと、ハード・ソフト面それぞれに起因する軽微なトラブル発生の可能性に言及した上で、今後、「検査の中身については厳正に見ていく」姿勢をあらためて示した。柏崎刈羽7号機は、2007年7月の中越沖地震で停止後、設備の健全性確認および地元の理解を経て、2009年5月に再稼働したものの、2011年3月の東日本大震災を挟み、同年8月以降、停止している。
18 Apr 2024
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日本経済団体連合会は4月16日、「日本産業の再飛躍へ ~長期戦略にもとづく産業基盤強化を求める~」とする提言を発表した。提言は冒頭、日本のGDP世界比率に占めるシェア低下、少子高齢化・人口減少などの社会的課題が山積みしていることや、エネルギー資源や食料の海外依存度が高まり対外収支を圧迫している現状を懸念し、「人手不足やエネルギー問題など、先送りできない課題の解決によって、足元の基盤固めを行い、未来志向の挑戦によって積極的な投資を促すことが必要」と強調。今後、産業基盤の強化に向けて、取り組むべき課題と施策を整理した。現在、政府では「新しい資本主義実現会議」などの会議体を通じ、日本産業の目指すべき方向性が議論されているところだが、今回の提言では、エネルギー基本計画も含め、「各分野の短中期的な戦略や計画は策定されているものの、わが国産業全体を見据えた長期的かつ統合的な産業戦略が確立されていない」と指摘。次世代を担う若い人材も含めた産学官による集中的議論を通じ、2040年頃をターゲットとした「産業戦略2040」の策定を求めている。産業基盤強化に向けて、具体的施策を、国内投資促進/法制度・規制デジタルエネルギー国土・地域自由で開かれた国際経済秩序スタートアップ新興/産業の新陳代謝サプライチェーン知的資本人的資本金融資本――の各項目に整理した上で、「世界市場を牽引しているのはデジタル技術」、「デジタル化は電力を消費する」との現状を踏まえ、「S+3Eを満たすエネルギーの供給体制、特に原子力の最大限の活用が不可欠」と強調。国際エネルギー機関(IEA)が1月に公表したレポートから「データセンターの消費電力が2026年までに倍増」との推計値を示し、カーボンニュートラルの観点にも留意し、安価で安定的な電力供給の重要性をあらためて述べている。その上で、民間企業が国内投資を行う際の予見性・限界を懸念し、政府に対して「2030年・40年・50年といった長期的スパンでの見通しを具体的に示すべき」と要望。間もなく検討が本格化する次期エネルギー基本計画については、「半導体・デジタルを始め、各種産業政策との整合性をとった形で策定すべき」としている。原子力発電に関しては、国民・地域による理解醸成、早期再稼働、核燃料サイクルの確立を始め、リプレース・新増設を推進することを強く求めたほか、高速炉・高温ガス炉・核融合など、次世代革新炉の開発・実装についても「官民で大胆に開発資金を投入し、スケジュールを前倒しするなど、抜本的な支援強化が重要」と指摘している。
17 Apr 2024
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玄海町議会は17日、原子力対策特別委員会を開き、地層処分施設立地の「文献調査」受け入れを求める地元3団体からの請願書について審議を始めた。請願書は玄海町の旅館組合、飲食業組合、防災対策協議会の3つの団体から提出されていた。「文献調査」は地層処分施設の立地選定の第一段階となる事前調査で、これまでに応募があった北海道の寿都町と神恵内村での調査が2020年11月から開始されている。17日の会合では資源エネルギー庁からエネルギー政策、地層処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)から地層処分の安全性や「文献調査」の内容などについての説明が行われ、出席した議員との間で脱炭素をめざすエネルギー政策の現状と課題、また北海道の寿都町と神恵内村で実施中の「文献調査」の進捗状況や地域住民との対話活動、風評問題等をめぐって質疑が行われた。風評被害に関してNUMOは、すでに調査が行われている2町村で現状、風評問題は起こっていないことを説明し、今後も風評被害を招かないように分かりやすく丁寧に理解活動を進めていくとした。同委員会は来週中にも開催を予定しており、請願の紹介議員から趣旨説明を受けたうえで審議を行う。玄海町議会に請願書が提出されたことに関してNUMOは15日、「地層処分について、地域の皆さまに関心をもっていただけることに深く感謝申し上げます。当機構では今後も、玄海町をはじめとする全国の皆さまに地層処分の仕組みや日本の地質環境などについてご理解を深めていただくため、引き続き全国での対話活動に取り組んでまいります」との理事長コメントを発表した。NUMOでは「対話の場」などを通じてオープンな形での理解活動を、2町村はじめ全国で実施している。地層処分の技術・安全性を含む事業内容や文献調査の進捗状況・結果だけでなく、事業が地域の産業に及ぼしうる効果やリスクなども幅広く説明、加えて地域の経済発展ビジョンについても議論するため継続的な対話を進めてきている。寿都町と神恵内村で「文献調査」が開始されたことを受けて、経済産業省は「文献調査段階の評価の考え方」を昨年11月までにとりまとめた。透明性を確保しながら丁寧に議論を進めるという方針のもと、地層処分技術WGを設置して今年2月からNUMOがとりまとめた文献調査報告案の検討に着手している。
17 Apr 2024
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原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2023年度の国内原子力発電所の平均設備利用率は28.9%、総発電電力量は840億5,506万kWhで、それぞれ対前年度比9.6ポイント増、同49.9%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2023年度は、関西電力高浜1・2号機が、それぞれ8、9月に発電を再開し、国内で再稼働したプラントは、いずれもPWRで、計12基・1,160.8万kW。国内の40年超運転は、両機の再稼働により、同美浜3号機と合わせ計3基となった。関西電力では、美浜3号機の安全な長期運転に対し客観的に国際的評価を受けるべく、IAEAのSALTO(発電所の経年劣化管理などの活動がIAEAの安全基準に満足しているかを評価する支援プログラム)チームを受け入れ、4月16日に同25日までの予定で調査が開始されたことを発表。今回の調査で得られた知見を、今後のプラント設計や設備保全に反映し、原子力発電所の安全性・信頼性向上に取り組んでいく。〈関西電力発表資料は こちら〉最も高い設備利用率を記録したのは、九州電力玄海4号機で99.8%。同機は3月27日に定期検査入りし、年度内のフル稼働には至らなかった。同川内1号機がこれに次いで99.6%。新規規制基準をクリアし再稼働の先陣を切った川内1・2号機は、それぞれ2024年7月、2025年11月に法令で定める40年の運転期間を満了するが、いずれも20年間の運転期間延長に向け、原子力規制委員会による認可が2023年11月に発出された。両機とも2024年3月の設備利用率はそろって107.7%を記録し好調だ。*2023年度の各プラント運転実績は こちら です。
16 Apr 2024
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2日目のセッション4「原子力業界の人材基盤強化に向けて」では、これからの原子力業界の歩みの中で極めて重要な課題となる人材に焦点をあてて4名のパネリストからの講演、その後に学生のパネリスト3名が加わってのディスカッションが行われた。パネリストには、コンステレーション社 燃料設計エンジニア・クリーンエネルギー推進担当でミス・アメリカ2023のグレース・スタンケ氏、近畿大学 原子力研究所 教授の若林源一郎氏、アジア経済研究所 開発研究センター 主任研究員の牧野百恵氏、国際原子力機関(IAEA) 保障措置評価官/保障措置査察官で原子力青年国際会議 (IYNC) 会長のクリスティン・マデン氏の4名、学生パネリストとして福井南高等学校 3年生の西田 杏乃氏、福島工業高等専門学校 機械システム工学科 5年生の高橋那南氏、早稲田大学 先進理工学部物理学科 学部4年の舟坂柚香氏が登壇した。モデレーターを芝浦工業大学 工学部物質科学課程 環境・物質工学コース 教授の新井剛氏が務めた。セッションへの導入として新井氏は、「原子力産業を学生に魅力あるものにするために」をテーマに講演。特に、原子力産業を学生に魅力あるものにするため、ジェンダー・ダイバーシティにより原子力産業で活躍する女性を増やすことを提言し、原子力産業への関心を呼び起こすためのアプローチの検討を呼びかけた。スタンケ氏は「原子力における若者の役割とメンターシップ」をテーマに、自身が原子力工学に関心を持った背景、若い世代と原子力業界との橋渡しをすることへの思いを語った。原子力産業が求めるのはエンジニアだけではなく、コミュニケーションなどさまざまな人の関わりが大事であることから、スタンケ氏は、次第に原子力産業を若い世代に広く知ってもらう活動にも力を注ぐようになったという。若林氏からは「近畿大学原子炉を活用した原子力人材育成」における高等教育と中等教育について報告があった。中高生のための原子炉実験研修会はこれまで5回開催。毎回定員の16名をはるかに上回る応募があり、参加者の半数以上は女子生徒だという。しかしながら、大学入試の頃になると原子力工学を目指す女子は激減している現状がある。ここに疑問をもった若林氏は、原子力に関心のある子どもたちに対し、進学や仕事の将来像を示すことが、このギャップを埋める鍵になるのではないかと述べた。開発ミクロ経済学の実証研究を専門にする牧野氏は、欧州ではSTEM分野が圧倒的に所得が高く、女子がSTEM分野を専攻しないということが男女間の所得格差の5割を説明していると解説。思い込みがジェンダー格差にもたらす影響の大きさについて紹介した。マデン氏からは、IAEAとIYNCが若い世代や女性に働きかける取り組みが紹介された。特にIYNCでは、若者の専門能力開発と育成に取り組んでおり、気候変動の議論に若い世代の声を反映させるべく、欧州原子力学会等とも連携を図っているという。その後、これまで登壇したパネリストに、学生パネリスト3名が加わり、新井氏のファシリテーションでパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、ジェネレーションとジェンダーという2つの軸を中心に意見が交わされた。西田氏は、「原子力との関わりには広報など文系からのアプローチもできそう」との思いを述べた。高橋氏は、東日本大震災や台風による被災を受ける中、中学生の時に長崎の学生と福島の原発について話し合う機会があり、危ないものだと思い込み原子力発電のことを全く知っていなかったことに気がついて学び始めたという。舟坂氏は「長い海外生活を通じて、人種の問題、多様性について考える機会に恵まれた。原子力産業は社会と科学技術のつながりについて考えられる研究分野だと感じ、宇宙分野での加速器や放射線利用への興味とも合致したので、原子力分野を選んだ」と力強く述べた。実際に原子力業界に飛び込んだスタンケ氏からは、米国で35年ぶりに新規炉の運転が始まり、今年さらに1基が運転開始するなど、技術的な発展に期待を寄せる。また、大学時代にさまざまな企業の面接を受ける機会にも恵まれたことから、原子力工学の専門家だけではなくいろんな人がこの業界で必要とされていることに希望を感じているという。一方マデン氏は、若い世代が気候問題に関心を持っていることを挙げ、原子力はネットゼロに大いに寄与することを若い世代との議論の場を設けて対話をしていきたいと強調した。また、さまざまな人材を原子力産業に巻き込むための人材マッチングツールの開発や、IAEAでの働く環境を知ってもらうためのポッドキャストの展開などについても紹介した。若林氏は、具体的なロールモデルや、自分なりの将来像が見せることで、原子力業界に就職する学生が確実に増えていると指摘。原子力産業で働く近畿大学の卒業生を研究室へ招き、経験談を話してもらう会を何回も開催することで、具体的な将来イメージが湧く。自分の研究を実社会でどのような形で役立てられるのかがわかれば、原子力の分野に進む意欲につながると語った。
15 Apr 2024
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12日に開かれた原子力規制委員会(規制委)の新規制基準適合性に係る審査会合で、北陸電力は今年1月1日に発生した能登半島地震の後、同社の志賀原子力発電所で確認された状況を踏まえ、2014年8月に行った志賀2号機(ABWR、135.8万kW)の新規制基準適合性審査の申請内容に対する影響の有無などについて報告した。地震発生後、志賀発電所に関する初の審査会合となる。北陸電力は、概ね審査済みの「敷地内断層」、「敷地近傍断層」については既往評価への影響の有無を確認。審査未着手の「津波」、「基礎地盤」については申請時の評価への影響の有無及び施設の安全性を確認した結果をとりまとめ、審査会合の場で報告した。報告のなかで同社は、これまでの状況確認の結果を説明したうえで、志賀2号機の既往の申請に示されている敷地内断層等、また津波や基礎地盤に関する評価に影響はないとの見解を示した。また各種研究機関等により本地震に関する調査研究が開始されていることから、同社としても確認が必要な項目について調査を開始したことを明らかにした。さらに同社は今後この地震から得られた知見を収集、整理して必要な調査、今後の審査への反映をしていく、などと報告した。報告を受けた規制委は、敷地内及び敷地近傍の断層に関する同社の報告について「説明はおおむね理解できた」などとし、「新たな知見の収集と整理、審査への反映をしてほしい」と要望した。また断層のずれの有無を確認するための追加的な調査の実施や、各資料の記述の明確化や充実などの点を指摘し、既往の評価に対する影響の有無をより明確にするよう、北陸電力に対応を求めた。同審査会合を担当する規制委の石渡明委員は、今回の地震は広域の液状化という特徴があると述べ、「影響がなかったということをきちんと示すことが大事なので、液状化に関する観察事実をきちんと記述し、既往評価への影響がないという根拠をきちんと示してほしい」などと要望した。会合での指摘を踏まえ、北陸電力は、今後の審査にあたって必要な調査や検討を行って事実の確認や明確化、新たな知見の収集等につとめる考えを示した。なお、同社は地震の後に実施した志賀発電所の点検結果から、志賀2号機の主変圧器に油漏れが認められる等、一部設備に被害が生じたものの外部電源や冷却設備等の重要機能を維持しており、原子炉施設の安全確保に問題は生じていないとしている。現在、被害のあった設備等の復旧が段階的に進められている。
15 Apr 2024
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「第57回原産年次大会」では2日目の4月10日、セッション3(福島セッション)「福島第一廃炉進捗と復興状況」が行われた。同セッションではまず、東京電力福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントの小野明氏が、福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水・処理水対策の現状と課題について講演。2023年8月に開始したALPS処理水の海洋放出については、2023年度内に計4回の実施で、総放出量31,145㎥との実績を述べ、「海水希釈後、海洋放出後のいずれにおいても、トリチウム濃度に異常は出ていない」などと説明。2024年度には、計7回の実施で約54,600㎥を放出する計画だ。1~4号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しについては、残る1、2号機で、それぞれ2027~28年度、2024~26年度の開始が予定されている。そのうち、1号機(新燃料を含み392体の燃料が保管)については、取り出しの準備に向け、原子炉建屋を抱きかかえるように囲む大型カバーの設置が2025年夏頃の完了を目指し進捗している状況。2号機(新燃料を含み615体の燃料が保管)については、汚染拡散の防止、作業時の被ばく低減のため、既存建屋の南側に開口部を設け燃料取扱設備を出し入れする計画で、現在、これに必要なクレーンや走行台車を設置する構台・前室の建設が進められているところだ。また、小野氏は、安全な使用済燃料の乾式保管方式として、海外で実績のあるコンクリートキャスクの適用性を検討していることを紹介した。燃料デブリの取り出しに向けては、調査の最も進んでいる2号機から「ごく少量の取り出しから試験的に」着手する予定だが、これに用いるロボットアームは現在、モックアップ試験・訓練中で「現場への適用にはもう少し調整に時間がかかる」ことから、2019年度の調査でも実績のあるテレスコ式装置(望遠鏡の筒が伸縮するイメージ)を補完的に用い、「遅くとも2024年10月には開始したい」と説明。また、1号機では、2024年2月下旬より原子炉格納容器内の燃料デブリの状態を確認するため、小型ドローン(計4機)および無線を中継するヘビ型ロボットを用いたペデスタル(原子炉圧力容器下部の土台)内の調査を実施しており、小野氏は最近取得した映像を披露。今後の取り出し規模の拡大に向けては、3月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の技術委員会が示した提言「気中工法(燃料デブリが気中に露出、もしくは低水位で浸漬した状態で取り出す)に軸足を置きつつ、充填固化工法(充填材で燃料デブリを安定化させ線量を低減し、掘削により取り出す)を組み合わせる」を踏まえ、「今後、1~2年かけて、実際に現場に適用するための設計を検討していく」と述べた。「復興と廃炉の両立」を目指し、小野氏は、廃炉事業への地元企業による参入促進に向けたマッチングの取組を紹介。2024年1月までに、その成約件数は約1,000件にのぼったという。さらに、被災地域の復興の動きを、地元祭礼の復活などから振り返り、「少しずつ人々が戻り、賑わいを見せている。今後も住民の方々が安心してふるさとに帰還してもらえるよう、引き続き安全第一で廃炉を進めていく」と強調した。講演に続いて、パネルディスカッションでは、東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授の開沼博氏がモデレーターを務め、パネリストとして、それぞれの立場から福島の復興に取り組む一般社団法人HAMADOORI13代表理事の吉田学氏、株式会社haccoba代表取締役の佐藤太亮氏、浅野撚糸株式会社代表取締役社長の浅野雅己氏が登壇。いわき市出身で福島復興に関し多くの著書を有する開沼氏は、2015年開催の「第48回原産年次大会」で、福島セッション「ふくしまの未来予想図」のモデレーターを務めたことがあるが、今回の登壇に際し、ALPS処理水の海洋放出開始、双葉町における避難指示の一部解除など、近年を振り返り、「毎年、新しい動きがあるが、まだ解決せねばならない細かな課題が山積している」と、議論に先鞭をつけた。大熊町出身で東日本大震災発生時、建築士として福島第一原子力発電所構内で作業に従事していたという吉田氏は、原子力災害発生後、被災地家屋の調査に尽力。その中で、双葉郡の人口急減を憂慮し、2021年に浜通りの若者による起業を支援する「HAMADOORIフェニックスプロジェクト」を立ち上げた。実際、双葉郡8町村の人口は、2011年の約75,500人から2024年には約17,900人にまで減少しているという。同プロジェクトでは現在18社が採択されており、同氏は、地元食材を利用した古民家カフェ(川内村)、地元の伝統行事「相馬野馬追」に因んだ乗馬ジム展開構想(南相馬市)、震災前には特産品であったキウイの再創出事業(大熊町)などを紹介した。続いて、同プロジェクトに参画している佐藤氏が登壇。同氏は、埼玉県出身だが、誕生日が震災発生日の「3月11日」という因縁から一念発起し、新潟県で酒造りの修業を積んだ後、浪江町・南相馬市で酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」を始めた。どぶろくの文化に立ち返り「自由な酒作り“クラフトサケ”」とともに、「若者も集う新しいコミュニティ作り」を標榜。最近はJR常磐線・小高駅を利用した観光にも供する醸造所を開設しており、今後はベルギーでの酒蔵作りも目指しているとした。繊維業の浅野撚糸は、岐阜県に拠点を置いているが、浅野氏は、外国製品の台頭などによる厳しい下請け経営環境からの脱却、国産繊維の復権を目指し、経済産業省からの打診を受けて、2023年に新工場「SUPER ZERO」を双葉町に開設。同社は福島・東北の復興に貢献すべく、昨秋、紳士服のコナカによるプロジェクトともタイアップし「福島復興国産Tシャツ」を製造・販売した。2024年には若手新入社員を迎え入れたほか、最近では、学生も見学に訪れているという。ディスカッションの中で、若者との議論にも積極的な開沼氏は、地元に娯楽が少ないことなど、将来的に人が地方に定着していく上での課題を指摘。これに対し、浅野氏は、最近の外国人記者による取材対応経験に触れ、「社員の生活に責任が取れるのか」といった厳しい質問を受けたとする一方、若手社員らに対するインタビューを通じ「記者たちは納得した様子だった」ことを述べ、「世界はまだ『福島という響き』に誤解を持っている」として、「福島を見てもらう、来てもらう」必要性を強調した。
12 Apr 2024
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大会初日最後のセッション2では、「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物(HLW)最終処分をめぐって」というテーマの下、(公財)原子力安全研究協会の山口彰理事がモデレーターを務め、国内外の専門家4名が講演した。高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定、使用済燃料管理の柔軟性確保について、海外事例も参考に、地元との共生という視点を取り入れた議論を通じて、今後のわが国の原子燃料サイクルに係る示唆を得ることが狙い。山口氏は冒頭、原子力の持続的活用には、GX実現に向けた基本方針と国が決定する貢献(NDC)に合致する「正当性」、原子力基本法第一条にある目的(エネルギー資源の確保、学術の進歩、産業の振興、地球温暖化防止)との「合目的性」、革新技術による安全向上や合理的なバックエンドプロセスといった「将来性」、そして、社会的信頼と国民理解、立地自治体との信頼関係、中長期的な対応の柔軟性の「実現性」がカギであるとし、高レベル放射性廃棄物の最終処分へ向けた取組みは、国が前面に立つだけでなく、使用済み燃料の安全管理と貯蔵能力の強化により、対応の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に繋げるべきと指摘した。その後、原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長の近藤駿介氏が、日本の取組状況を発表。最終処分場の選定プロセスにおいて、2002年から文献調査の受入れを公募し、2017年に地層処分に係る科学的特性マップを公開。2020年に北海道寿都町と神恵内村から文献調査の申し出を受け、2024年2月に文献調査報告書草案が完成したばかりだと説明。「容易な道ではないが、原子力発電の持続的利用のために真摯に取り組む」との決意を示した。最後に同氏は、数々の地域社会との対話活動を通じて、事業者が正しい情報を提供し多様な意見に耳を傾け、信頼できる存在であること、事業者の提案する取組みがそこで実施する正当性を有すると認められること、そして事業者が地域社会を大切に考え、信用できる存在であること、が大切であると強調した。続いて、フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)国際関係部長のダニエル・ドゥロール氏が、「仏深地層処分場の立地から許認可取得までの主な課題と成功要因」と題して講演。ANDRAは2023年1月、高レベルならびに長寿命中レベル放射性廃棄物の深地層処分施設「Cigéo」の建設許可を申請しているが、同氏によると、「Cigéo」プロジェクトは段階的に進められ、フランス議会の継続的かつ強力な関与を受け、役割と責任の明確な分担の下、安定して資金を調達しているという。同氏は「Cigéo」プロジェクトの重要な成功要因について、①明確なガバナンスとステークホルダーとの継続的な対話、②意思決定に余裕のあるロードマップとマイルストーン、③各決定マイルストーンで科学的根拠を示せる研究開発、④安定した資金調達と複数年開発計画を可能にする法と政令──の4点を挙げた。スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)広報担当上級副社長のアンナ・ポレリウス氏は、スウェーデンのバックエンド進捗状況と地元での合意形成について発表。スウェーデンでは、高レベル放射性廃棄物はオスカーシャムの集中中間貯蔵施設(CLAB)で中間貯蔵し、短寿命の中低レベル放射性廃棄物は海底岩盤で処分するほか、使用済み燃料の最終処分場の建設がフォルスマルクで計画中であることなどを紹介した。同氏は、最終処分場をめぐっては、過去に住民とのコミュニケーション不足からデモ騒動にまで発展したが、2023年時点で支持する意見が86%に達していることを明らかにした。そして立地選定プロセスでは、安全第一を原則に、自治体の自発的参加を促し、オープンかつ透明性を確保しつつ合意形成に取り組むほか、調査、評価、運用の段階的な実施がプロジェクトの成否を握る、とその重要性を強調した。最後に同氏は、スウェーデンでは、規制当局が中立の専門家として信頼性が高いことに触れ、事業者は社会の一員となり、一緒に社会を築いていく意識が必要であると強調した。またフィンランドPOSIVA社上級副社長のティナ・ヤロネン氏は、同国で建設中の使用済み燃料最終処分施設(オンカロ)について講演した。POSIVA社は、2001年に最終処分施設サイトとして正式に選定されたオルキルオトのオンカロの操業許可を2021年12月に申請。現在、建設とシステムの試運転を継続中で、今年中に試験操業を見込んでいる。また、オンカロの地上には使用済み燃料の封入プラントも建設している。同氏は、オルキルオトを処分地に選定した理由として、地質学的・長期使用の適切性、サイト面積の広さ、使用済み燃料の大部分がオルキルオトにあること、地元の既存インフラの活用、地元住民の理解、地域の将来戦略上の重要性を挙げた。同氏によると、地元との会合を2か月毎に実施するなど理解促進に努め、処分場を選定する直前に実施された住民調査では住民の約60%が建設候補地になることを支持、全国調査では地層処分の安全性について、1990年の肯定的回答の約10%が2020年には40%前後まで増えたという。立地決定の成功のカギは、①事業者の信頼性と透明性の堅持、②信頼できる当局、明確なプロセスと責任・役割分担、③国民に有益な原子力産業──と指摘した。モデレーターの山口氏は最後に、日本が学ぶべき点として、地域の信頼を得るために原子力や最終処分の正当性を伝えること、ステークホルダーの役割と責任を明確にすること、独立性と専門性の高い信頼される規制機関が安全性を地域住民や国民に伝えること、といった貴重な示唆を得たと評価し、セッションを総括した。
11 Apr 2024
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東京電力では、柏崎刈羽原子力発電所に係る「核物質防護強化の取組」や「安全性を向上させる取組」について、地元からの意見を聴き今後の発電所運営に活かしていくため、「県民の皆様への説明会」を開催している。柏崎刈羽原子力発電所については、2023年12月27日に、一連の核物質防護事案を受け原子力規制委員会により発出されていた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が、規制上の対応区分変更に伴い解除された。東京電力は、2024年に入り1月の柏崎市と刈羽村に続いて、4月2~9日には、県内の新潟市、上越市、長岡市、見附市において、各市内会場で最大約200~400名の県民参加を見込み説明会を開催。福田俊彦・原子力・立地本部長、橘田昌哉・新潟本社代表、稲垣武之・柏崎刈羽原子力発電所長らが県民からの質疑に応じた。説明会は6日、長岡市内のホールで開催。同市は立地自治体と隣接し(刈羽村は飛び地)、柏崎市とは中心駅同士で約35kmの距離にあるが、参加した県民からは福島第一原子力発電所事故にも鑑み、広域的・長期的な防災対策に関する質問・不安の声が多く出されたほか、東京電力が3月28日に規制委員会に提出した柏崎刈羽7号機への燃料装荷を含む使用前確認変更申請について反論の声が上がった。開会に際し、挨拶に立った福田本部長は、「双方向のコミュニケーションの場にしたい」と、忌憚のない意見を求めた上で、一連の核物質防護事案に関して「あらためて地域の皆様を始め、広く社会の皆様に大変な不安・不信を抱かせてしまったことをお詫びする」と陳謝。核物質防護に関するこれまでの改善活動については、「自ら『気付き』を発見し、改善する仕組みを構築できたことは大きな成果。一過性のものとせず、しっかりと定着させることが重要」と述べ、引き続き本社と発電所が一体となり、慢心することなく継続していく姿勢を示した。続いて稲垣所長らが、県民より多く寄せられる疑問に対し回答。元旦に発生した能登半島地震や2007年に発生した中越沖地震に鑑みた自然災害に係る不安に対しては、福島第一原子力発電所事故以前からの対策、それ以降の新規制基準を踏まえ追加・強化した対策、それぞれについて具体策を図示し、「同等の地震が来ても、十分耐えられるように重要設備の耐震設計、地震・津波対策を行っている」と説明した。再稼働に関しては、「地域の皆様の理解があってのこと」との姿勢を繰り返し強調。4つの柱として、「核物質防護」、「安全対策工事・主要設備の健全性確認」、「緊急時等の対応能力」、「コミュニケーション」をあげた。また、運転員についても「約35%が運転経験のない」ことを課題ととらえ、稼働している他社の原子力発電所、共通する設備の多い火力発電所などでの訓練を日々重ねることで、「安全な運転を実現できるものと考えている」と説明。実際、6・7号機の若手運転員からは「停止している今だからこそ、機器類を直接見たり触れたりする機会を大切にしている」との声もあるという。県民からは、福島第一原子力発電所事故の影響を振り返り、事故発生時の避難・防護措置、農林水産物への被害に関する不安の他、説明会開催方法を巡るコミュニケーションの課題などが指摘されるとともに、「ミサイルが飛んできたらどうなるのか」、「原子力発電は止めるべき」との声もあがった。東京電力では、参加者アンケートなども踏まえ、引き続き説明会を行っていく考えだ。
11 Apr 2024
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大会初日午後のセッション1では、「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」と題し、パネル討論が行われた。原子力発電所の新規建設プロジェクトを掲げる英国およびフランスの、プロジェクト実現に向けた技術開発、資金調達、法規制、サプライチェーン・人材確保面での取り組み事例を参考に、エネルギー基本計画の改定を控えた日本への示唆を検証する内容となった。モデレーターを務めたみずほ銀行・産業調査部次長の田村多恵氏は冒頭、英仏両国の特徴として、政府が原子力の価値・役割を明確にし、新規建設実現に向けたロードマップを明示していることを強調。その上で、英国のRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))やフランスのMatchプログラム((能力開発プログラム))等、海外事例から学ぶことは多いと指摘した。フランス原子力産業戦略委員会(CSFN)のエルヴェ・マイヤール氏は、同国が2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、既設炉の運転期間を60年以上に延長したことや、新型炉であるEPR2を14基新設する計画であること、SMRプロジェクトにも支援していく方針であること等を紹介。そのためにMatchプログラムや原子力専門大学などを通じて、技能者を育成し、必要となる人材のギャップを埋めていく取り組みを示した。またウクライナ戦争、コロナを経て、国民の間でエネルギー安全保障の観点から原子力への肯定的な意見が増えてきているとし、「長期的に電力価格が安定していることが大切」と強調した。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のマーク・ヘイスティ・オールドランド氏は、今年1月に発表された「2050年に向けた民生用原子力のロードマップ」について紹介。原子力人材の高齢化に伴うスキル継承が、英国最大の課題であると指摘した。そしてサイズウェルC原子力発電所(SZC)建設プロジェクトへの適用が検討されているRABモデルについて、「これまで水道や送電線、洋上風力などのインフラに適用してきた実績があるが、原子力へは初適用のため課題が多い。また各国の事情は異なることから、英国の制度をそのまま他国へ導入してもうまくいくとは限らないが、自由市場における民間事業者による運用に限れば、RABモデルは有効である」との認識を示し、「RABモデルを選ぶか、差金決済(CfD)を選ぶかは目標設定によって変わる」と述べた。また、「エネルギー安全保障、気候安全保障、国家安全保障の観点から原子力は重要であり、原子力があるリスクだけでなく、原子力がないときのリスクも考慮すべきだ」との考えを示した。経済産業省原子力政策課長の吉瀬周作氏は、脱炭素化とエネルギー安全保障を両立させる原子力が世界的に脚光を浴びていると強調。COP28での原子力の位置付けや、原子力3倍宣言、世界初となる原子力サミット(於ブリュッセル)の開催等、国際的な機運が高まっていることに加え、IT産業や製造業など幅広い産業において原子力利用の可能性が拡大していると指摘した。そして国内では、データセンターや半導体工場の増加により、電力需要の増加が予測されており、既設炉の再稼働を加速する必要があるとの考えを示した。また吉瀬氏は、人材育成についても、文科省とも連携して力を入れていく考えを示した。電気事業連合会副会長の佐々木敏春氏は、2024年はBWRの再稼働に力を入れていくと言明。新増設については、「民間事業である以上、株主・金融機関などのステークホルダーに対し、収益性が確保されていることを示さなければならない」とした上で、電力市場自由化後の事業予見性の低下や、安全対策投資の大幅増加など、ファイナンス面が改善されない限り状況は厳しいと強調した。また、日本の原子力損害賠償が無過失無限責任である点にも触れ、「このことが民間事業にとって投資判断やファイナンスにおけるネックとなっている」とし、事業予見性が確保されるよう現行制度の見直しを訴えた。同時に佐々木氏は、「原子力の必要性については国民のコンセンサスが得られていると考えている。むしろ原子力発電設備の規模感が重要だ。電力需要増が予想される中で、既設炉の稼働延長にも限界があることから、新増設が不可欠だ」と強調した。最後に田村氏は、オールドランド氏が指摘した「原子力を活用しないリスク」を踏まえた上で原子力の価値をしっかりと認識していく必要があるとし、「一体何のために事業環境を整備するのかを改めて考え、官民で取り組んでいく必要性を再確認できた」と、セッションを締め括った。
10 Apr 2024
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「第57回原産年次大会」が4月9日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。国内外より約700名が参集し(オンライン参加を含む)、10日までの2日間、「今何をすべきか 国内外の新たな潮流の中で原子力への期待に応える」を基調テーマに議論する。開会セッションの冒頭、挨拶に立った日本原子力産業協会の三村明夫会長はまず、「原子力発電の積極的な活用の機運が国内外において極めて高まっている」と強調。最近1年間を振り返り、2023年4月の「G7札幌エネルギー・環境大臣会合」では日本がG7議長国として「原子力の最大限活用」が謳われ、12月のCOP28(ドバイ)では「COP史上初めて公式に原子力が積極評価されるとともに、25か国により『原子力3倍宣言』が発出された」とした。また、直近3月には、ベルギー・ブリュッセルで、IAEAとベルギー政府の主催による史上初の原子力に特化した首脳会議「原子力サミット」が37か国参加のもとで開催されたことに言及。こうした動きをとらえ、「原子力発電の拡大を目指す国際的な動きが加速している」と、あらためて述べ、「国内外の強い原子力推進モメンタムの中で、われわれ原子力産業界は今何をすべきなのか」と、今大会基調テーマの趣旨を訴えかけた。開会セッションに続き、セッション1では「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」、セッション2では「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・高レベル放射性廃棄物最終処分をめぐって」、10日のセッション3では「福島第一廃炉進捗と復興状況」、同セッション4では「原子力業界の人材基盤強化に向けて」と題し、それぞれ議論する。三村会長は、これらセッションを通じ「原子力の最大活用に向けた課題と展望、日本のみならず世界のエネルギー・環境問題を解決するための糸口について、見出せることを切に願う」と、活発な議論が展開されるよう期待した。続いて、来賓挨拶に立った岩田和親・経済産業副大臣は、「福島第一原子力発電所事故の反省を一時も忘れることなく、高い緊張感を持って、安全最優先で万全の対策を行うことが大前提」と、原子力エネルギーを活用する上での姿勢をあらためて強調。さらに、元旦に発生した能登半島地震に伴うエネルギーインフラに係る被災・復旧状況も踏まえ、「不断の安全性向上に努めていくことが重要。長い積み重ねであっても、一瞬の気の緩みで信頼が失われかねない」との教訓を述べた。原子力発電に関しては、東日本大震災以降、新規プラントの建設機会喪失により、「サプライチェーン・人材を含めた原子力産業を支える事業環境は年々危機的な状況になりつつある」と懸念。次世代革新炉の建設、核燃料サイクルの推進、バックエンドの課題対応などを見据え、原子力産業の基盤を支援すべく「強靭なサプライチェーン構築に向け政策支援を一層強化していく」と、引き続き事業環境整備に取り組んでいく姿勢を示した。開会セッションでは、特別講演として、世界原子力発電事業者協会(WANO)の千種直樹CEO、元米国エネルギー省(DOE)副長官のダニエル・ポネマン氏(ビデオメッセージ)が登壇。千種氏は、1986年のチョルノービリ発電所事故を契機に設立後、世界の原子力発電事業の安全性を向上する「リーダー」となるビジョンを掲げ、35年にわたって情報交換、ベストプラクティス共有などに取り組んできたWANOの活動を紹介。WANOのメンバーとなる発電所は現在、世界で運転中460基、建設中60基に上るという。これまで蓄積された豊富なデータとその分析は「これから建設に入る国々への支援にも資する」などと、WANOのグローバルな活動姿勢を示した上で、こうした活動に対し、産業界からの一層の支援を求めた。また、同氏は、ロシアによるウクライナ侵攻に関し、「ウクライナのすべての原子力発電所にとって非常に由々しき状況」と危惧。WANOとして、IAEAとも協力し、ザポリージャ発電所に係るタスクフォースミッション派遣の他、住民らの心理的ケアも行っていることを紹介した。ポネマン氏は、「エネルギー戦略における新しい視点と原子力の役割」と題し講演。かつても原産年次大会に登壇した経験のある同氏は、あらためて原産協会との協力意義を振り返りながら、「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた原子力の役割を強調。電力部門にとどまらず「電気自動車の普及が進むことにより、運輸部門の脱炭素化にも重要な役割を果たす」などと、産業界による技術革新への期待を述べた上で、「世界のエネルギー業界ではますます原子力の拡大が必要」と訴えかけた。さらに、同氏は、データセンターやAIの普及に伴う世界のエネルギー需要増を、「原子力発電所の新設でも賄いきれない、遥かに速いスピードで進む爆発的勢いだ」と懸念。その上で、再生可能エネルギーの限界にも言及し、原子力の役割について、「すべての人の意見が一致することはできないが、こうした深刻な懸念にも立ち向かわねばならない」などと述べ、今大会の議論に先鞭をつけた。
09 Apr 2024
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日本原子力産業協会は4月5日、「世界の原子力開発の動向」2024年版を刊行した。世界の原子力関係施設から得たアンケートなど、独自の調査をもとに、2023年における世界の原子力発電開発の主な動向およびデータ(2024年1月1日現在)を取りまとめたもの。それによると、世界で運転中の原子力発電所は、2023年に、中国で2基、米国、フィンランド、ベラルーシ、インド、UAEでそれぞれ1基ずつ、計7基が営業運転を開始し、一方で、ドイツ、ベルギー、台湾で計5基が閉鎖され、計433基・4億1,244万kWとなった。また、建設中の原子力発電所は、中国で5基、ロシアで2基、エジプトで1基が着工し、計73基に、計画中の原子力発電所は、中国で6基、フランスで2基、韓国で2基、カザフスタンで2基、ウクライナで2基、ブルガリアで1基が新たに計画入りし、計89基となっている。原産協会の新井史朗理事長は、4月5日の記者会見で同書を紹介。福島第一原子力発電所事故以降のエネルギー情勢を振り返り、「原子力発電の導入が停滞していたが、ロシアによるウクライナ侵攻と中東情勢の緊迫化によって、化石燃料の価格高騰に拍車がかかり、エネルギー安全保障の重要性が認識されるとともに、安定供給と脱炭素の両立が可能な原子力の評価が世界的に高まっている」と強調。2023年の特筆すべき動きとしては、米国のアルビン・W・ボーグル3号機、フィンランドのオルキルオト3号機の営業運転開始をあげた。ボーグル3号機は、米国で35年ぶりの新設プラントで同国初のAP1000。同4号機も2024年中に営業運転を開始する見込みだ。オルキルオト3号機は、欧州で12年ぶりの新設プラントとして、2005年に着工したものの、欧州初のEPRということもあり、様々なトラブルに見舞われ、18年を要し2023年5月に営業運転に至った。また、近年、欧米諸国では、小型モジュール炉(SMR)の開発が非常に活発になっており、設計認証手続きが進み、他産業からも関心が表明されていることも注目点だ。一例として、新井理事長は、米国大手化学メーカーのダウ・ケミカル社による小型高温ガス炉の導入に向けたX-エナジー社との協定締結、北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア社の製鉄所・SMR併設計画の他、データセンターへの電力供給を図るSMR導入計画も進んでいることを紹介。同書について、「国ごとに最新の動向をまとめているほか、世界中で進む運転期間延長の状況や、SMRの開発動向などを取りまとめている」と、有用性をアピールした。
08 Apr 2024
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福井県美浜町で3月29~30日、エネルギーへの理解を深める「美浜エネルギー・キャンプ」が開催され、電力生産地と電力消費地の中学生、高校生、高専生、大学生など20名が参加。2日間にわたる様々な体験を通して、エネルギーや電気に対する理解を深めた。同キャンプは福井南高等学校と美浜町の共催。同校の生徒たちが企画し、島根大学、慶應義塾大学、岐阜工業高等専門学校、兵庫県立舞子高等学校、京都府立桃山高等学校、京都教育大附京都小中学校などから希望者が自主的に参加。美浜町が全面的に協力した。参加者は、美浜町レイクセンターで電池推進船に体験乗船し、関西電力・美浜原子力発電所を見学。さらに同町のエネルギー環境教育体験館「きいぱす」((日本で唯一、エネルギー環境教育に特化した体験館で、廃校となった小学校を再利用し、2017年に美浜町営の施設として開館))で、日本のエネルギー事情や電源の特徴に加え、実験を通じて、交流/直流、同時同量、長距離送電を可能にする変圧器の仕組みなどを学んだ。また、きいぱすに電気を供給する太陽光、風力、蓄電池を組み合わせたエネルギーシステムも見学。気候に左右される再生可能エネルギーの通年での稼働状況などを通し、エネルギーをめぐるさまざまな状況を「体感」した。2日間にわたって行われた同キャンプは、生徒たちを主体に進められ、周囲の大人はサポートに徹していた。また、多くの時間を、参加者同士の意見交換に費やしていたことも同キャンプの特徴と言える。最後の意見交換では、幅広い世代にエネルギー問題を理解してもらうにはどうすればよいか議論。「今回のような交流会イベントを定期的に開催し、自分から話し合う機会を設ける」、「発電所を訪問して体験することで、理解度が飛躍的に高まる」、「楽しい旅行のような交流会イベントを企画し、幅広い世代に参加してもらう」、「移動式きいぱすのようなもので、各地を回る」、「電気を全く使わないNO電気デイを過ごしてみる」、「子供がさまざまな体験を通じて学び、そこから親を巻き込んでいく」など様々なアイデアが出た。2日間の日程を参加者たちは「エネルギー問題について自分で考え、また他者の発表を聞く事で自分が思いつかない意見を知り、大変ためになった」、「いろんな地域の人たちが、それぞれ違う考えを持っていて、それをお互いに受け入れて、そのうえで議論し合う、というのが新鮮で面白かった」、「美浜町では原発が地域となじんでいる、生活の一部になっていると感じた」などと語り、今後も引き続きエネルギー問題に取り組む考えを示しながら、互いに再会を期していた。美浜町エネルギー政策課・上野和行課長は、「きいぱすは『エネルギーを通じて主体的に考える』をテーマに掲げた施設。子供たちがそれを体現し、主体的にエネルギー問題を議論する姿に感銘を受けた。原子力発電所の見学と、きいぱすでの実験を通してエネルギーへの理解を深めていただけたようで、町が運営する施設としても自信につながった。皆さんの知的好奇心はまだまだ満足されていないと思うので、これからも学び続けてほしい。美浜町としても応援していきたい」と語った。きいぱす・橋場隆館長は、「豊かな時代はエネルギー問題を意識しなくて済んだ。しかし今は、エネルギー問題を知らないといけない厳しい時代になっている。参加者の皆さんには、今回得たものを周囲の方に話して、あらゆる世代に広げてほしい」と期待を込めた。
08 Apr 2024
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原子力・放射線を含む国民のリスク認識に関する調査報告が、4月2日の原子力委員会定例会合で発表された。同委受託によりMRIリサーチアソシエイツが取りまとめたもの。同調査は、「科学的なデータから推定されるリスクと国民の一人一人が認識しているリスクとの間に乖離がある」との観点から、「一般層」と「原子力・放射線に関する知識を持っている層」の2層に対し、2月にインターネットを通じて実施。各々6,000件、1,000件のサンプル回答を回収した。「原子力・放射線に関する知識を持っている層」は、男性が86.6%で大半を占め、年代別には60代以上が6割を超えていた。「リスク項目」としては、ALPS処理水、産業廃棄物、放射性廃棄物、クリアランス物、化学物質、放射線治療、コロナワクチン、農薬、タバコ、お酒、遺伝子組み換え食品、放射線照射食品、自動車・自転車の運転、電磁波が出る電子機器(スマートフォンなど)など、計21項目を提示。各々、認知度、受容度、危険度について調査した。調査結果によると、各「リスク項目」の認知度に関し、「他の人に説明できる」、「他の人への説明は難しいが、内容を理解している」と回答した「内容理解」の割合は、原子力・放射線関係の項目で「一般層」の認知度が低く、レントゲン検査などの医療系を除きほぼ4割未満。特に、ALPS処理水の「内容理解」については、「一般層」が29.1%だったのに対し、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が48.9%と、両者の差が顕著だった。各「リスク項目」とも、認知度は、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が「一般層」を上回っており、両層ともに、最も高かったのはタバコで、それぞれ、91.7%、69.9%。お酒、自動車・自転車の運転、コーヒー・紅茶・緑茶がこれに次いでいた。また、各「リスク項目」の受容度に関し、「受け入れられない」と回答した割合は、「一般層」の方が「原子力・放射線に関する知識を持っている層」より高く、特に、ALPS処理水については、両者の差が27.9ポイントと、最も顕著。こうした差分は、放射線照射食品の25.2ポイント、クリアランス物の20.8ポイントがこれに次いでいた。各「リスク項目」について、「受け入れられない」理由としては、「少なくても危険性がある」、「自分でコントロールできない」が主にあげられた。逆に、「受け入れられる」理由としては、「ベネフィットがリスクを上回る」があげられ、今回の調査では、受容度を得点化しさらに詳細分析。受容度は、「ベネフィットがリスクを上回る」との回答割合との間に正の相関がみられた。また。危険度に関して、科学的な危険度ではなく、「回答者が当該項目を自身の生活や健康にとって危険だと感じるか否か」を得点化し分析。その結果、受容度と危険度の間には負の相関がみられた。今回の調査では、原子力・放射線関連の項目について、リスクの認知度が低い結果となり、「国や原子力・放射線関係者による情報発信や説明にさらなる改善の余地がある」などと提言している。
05 Apr 2024
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