1. 川内が再稼働!
今週初め(2015年8月11日)、川内原子力発電所1号機が再稼働し、2013年以降、日本で最初に発電する原子炉となった。日本ではさらに20基の発電用原子炉につき、再稼働に向けた審査が行われている。発電所ごとに審査の進捗状況は様々だが、この審査は、2011年福島第一原子力発電所の事故を踏まえ安全を強化すべく制定された新規制基準に適合しているか、原子力安全規制当局の確認を受けるものである。日本は、2030年において20~22%の原子力発電割合を維持する計画を立てている。
2. 米国は世界最多の運転中発電用原子炉を保有している
Source: NECG nuclear database
米国の原子力発電は好調に見える。しかし米国には2年前まで104基の運転中の発電炉があった。過去2年間にこのうち5基が早期に永久閉鎖された。これら5基のうち、キウォーニ原子力発電所とバーモントヤンキー原子力発電所は、自由化環境下に置かれた原子力発電所であり、経済的な損失を出したために閉鎖された。今後長期にわたり運転可能であるにもかかわらず、自由化環境下にある同様の多数の原子力発電所が、近い将来、閉鎖されてしまう可能性がある。NECGコメンタリー第10回「自由化環自由化環境下の原子力に対する米国政府の役割は?」、並びに「原子力は自由化電力市場で成功できるか?」を参照されたい。一方、米国の発電用原子炉は年々古くなっている。
3. 米国の原子力発電所の廃止が近づいている
Source: NECG nuclear database
現在運転中の米国の発電炉は、すべてが2055年までには廃止になる。上図は次のNECGデータベース事項を前提として描かれている。
- 全発電炉が、60年間運転のための承認をNRCから取得する。既に大半がこの承認を得ているが、19基は承認を申請中で、残る9基はまだ申請していない。
- 米国で現在運転中の発電用原子炉全99基は、NRCの許認可の期間満了まで運転を継続する(すなわち、経済的理由または保守上の理由から早期に閉鎖されない)。
一方、他に2つの明るい材料もある。
- 米国NRCは、これら運転中原子炉が80年間安全に運転できるかどうかを検討している。
- 米国で現在建設中の5基の原子炉は、これらの原子炉が廃止された後も長期にわたり運転されることになるだろう。
4. 中国は発電用原子炉を最も多く建設している
Source: Nuclear power plants under construction; NECG nuclear database
上図は、現在建設中の発電用原子炉数(安全関連施設のコンクリート打設済のもの)を示したものだ。世界で建設中の発電用原子炉の大半は中国にある。中国では加えて40基が建設計画中であり、さらに計画検討中のものが別に約150基ある。既設原子炉の運転実績と最近の順調な建設経験を基に、中国は実証された中国製原子炉を世界の発電炉市場に売り込もうとしている。
5. 世界最大の原子力発電所は日本にある
Kashiwazaki Kariwa nuclear power plant
<発電所名> | <最大出力> | <国名> |
柏崎刈羽 | 796万5,000 kW | 日本 |
ブルース | 630万kW | カナダ |
ハヌル | 588万1,000 kW | 韓国 |
ハンビット | 587万5,000 kW | 韓国 |
ザポロジェ | 570万kW | ウクライナ |
グラブリーヌ | 546万kW | フランス |
これらの原子力発電所は同一敷地内に複数の原子炉があるため、総出力がどれも大きい。原子力発電は出力(kW)当たりの所要土地面積が非常に小さく、複数原子炉を同一のサイトに設置すれば所要面積をさらに小さくすることができる。米国内で現在運転中の最も大きな原子力発電所は、アリゾナ州のパロベルデ発電所(393万7,000 kW)である。ジョージア州のボーグル発電所では2基の原子炉が建設中だが、これらが運転を開始すると同発電所の出力は453万6,000 kWとなり、米国で最大の原子力発電所になる。
6. 44年以上運転している発電用原子炉が10基ある
Beznau nuclear power plant
<原子炉名> | <所在地> | <営業運転開始日> | <運転年数> |
ベツナウ1号 | スイス | 1969年9月1日 | 45.94年 |
タラプール1号 | インド | 1969年10月28日 | 45.78年 |
タラプール2号 | インド | 1969年10月28日 | 45.78年 |
オイスタークリーク | 米国ニュージャージー州 | 1969年12月1日 | 45.69年 |
ナインマイルポイント1号 | 米国ニューヨーク州 | 1969年12月1日 | 45.69年 |
ドレスデン2号 | 米国イリノイ州 | 1970年6月9日 | 45.17年 |
ギネイ | 米国ニューヨーク州 | 1970年7月1日 | 45.11年 |
ポイントビーチ1号 | 米国ウィスコンシン州 | 1970年12月21日 | 44.64年 |
H.B.ロビンソン2号 | 米国サウスカロライナ州 | 1971年3月7日 | 44.43年 |
モンティセロ | 米国ミネソタ州 | 1971年6月30日 | 44.11年 |
原子力発電は比較的新しい技術である。世界で運転中の原子力発電所の大半は「第2世代」と呼ばれる原子炉である。現在建設されている新設原子力発電所の設計は「第3世代」と呼ばれる。
7. 原子力発電は温室効果ガス排出量が非常に少ない
上図は、ライフサイクルの温室効果ガス(GHG)排出量を示している。ライフサイクルGHG排出量は、建設、運転、および廃止措置を含む発電所寿命の全段階について排出量を積算して求めている。既存発電用原子炉の運転時のGHG排出量はゼロであるが、火力発電所のGHG排出量の大半は運転中に発生する。GHG排出量の削減に真剣に取り組むならば、電源構成上、原子力発電を含めないわけにはいかない。
8. 原子力発電所の地元は原子力が好きだ
出典:NEI発電所近隣住民意識隔年調査 2015年版 |
普通の人々も原子力発電の中味を知れば知るほど原子力発電に好意的になる。
9. ウランは大量のエネルギーを生む
ウラン1ポンドで石炭1ポンドの 16,000倍の発電量を得られる |
Source: PopAtomic Studios
原子力は少量のウランで大量の発電が可能だ。
10. ウランはエネルギー密度が高いから発生する廃棄物量も少ない
Source: WNA
原子燃料は非常にエネルギー密度が高く、このため使用済燃料もまた密度が高い。図は世界原子力協会(WNA)による。米国の原子力発電全体で年間合計約2,000~2,300トンの使用済燃料が発生する。過去40年間に米国内原子力発電所全体で74,258トンの使用済燃料が発生した。これらの使用済燃料集合体をぴったり並べて束ねて積み上げた場合の容積は、深さ7mのサッカー場1面に相当する。(出典:米国原子力エネルギー協会(NEI))
11. 原子力発電所では熟練した作業員が多数必要となる
(出典:Vyntex、米国エネルギー省) |
12. 発生電力量あたりの死亡者数は原子力発電が一番小さい
原子力は、発電電力量当たりの死亡者数が最も少ない。(上図はTWh(10億kWh)当たり死亡者数、Next Big Futureのデータに基づく。)
13. 浮揚型原子力発電所はあるか?
大西洋発電所-過去、ニュージャージー州海岸の沖合に計画されたもの。(写真はスミソニアン・マガジンから)
ロシアは、ロシアの北部沿岸で使用するための浮揚型原子力発電所を建設している。
14. 民間用船舶も原子力推進を活用できる
Source: “NSsavannah-1962” by US Government – NARA: Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons .
これは原子力船サバンナ号である。現在はボルチモア湾に停泊して博物館になっている。
15. 海軍艦艇は原子力を活用している
米海軍の空母と潜水艦は原子炉を動力源にしている。燃料交換なしで、非常に高速で遥か遠くまで航行できる。
16. 原子力は砕氷船に最適である
Source: expeditionsonline.com.
これは北極氷原を進むロシアの砕氷船「50年の勝利号」である。普通の人もこの砕氷船での北極旅行を予約することができる。
17. 原子力は宇宙探査ロケットの動力源になる
2015年7月14日にNASAの宇宙船ニュー・ホライズンズ号から見た冥王星。
ニュー・ホライズンズ号は、米国エネルギー省のアイダホ国立研究所で開発されたプルトニウム238放射性同位元素を動力源とする。
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Edward Kee +1 202 370 7713
edk@nuclear-economics.com