原子力産業新聞
NECG Commentary
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原子力発電の長期的価値

08 May 2018

原子力発電は、短期的経済性に基づく意思決定では気づかれることがない長期的な価値を有しているが、政府やその他一部の人たちは原子力がそうした価値を持っていることをきちんと認識している。

10年ほど前になるが、私はある自治体が所有する電力会社が既設原子力発電所の増設計画の検討について支援したことがある。我々はその電力会社の増設計画と投資評価のレビューを行い、市議会に対してどのように進めるべきかについて報告を行った。

市議会議員達は電気料金への影響が関心の的で、どう進めるかについて意見が分かれた。市長は、地域のビジネスリーダー達からなる審議会を開催して市長が判断を下すにあたっての意見を求めることとなった。

ビジネスリーダー達には2つの選択肢が提示された。

こうした選択肢が示された後、ビジネスリーダーの一人一人が意見を述べた。

ビジネスリーダーの全員が原子力増設に賛成で、市長に対し計画承諾を勧めた。彼らが賛同した理由は以下のとおりでいずれも注目せざるを得ないものであった。

これら一連の意見を通じて言えることは原子力が長期的な価値をもたらすということである。

新規原子力発電所を計画、建設するには10年間もの時間を要し、それは一旦建設されれば60年間、もしくはそれ以上運転されることになる。電力市場や金融市場では原子力発電資産が生むそのような長期にわたる価値の総額を評価し認識しようとはしていない。

電力市場では短期のスポット市場に焦点が当たっている。(すなわち毎時、あるいは場合によっては毎5分間ごとに価格が更新される)さらに追加で短期的な(すなわち3~5年程度の)容量市場が設定されることもある。しかしこうした市場では原子力発電が持つ長期的な価値は価格に反映されない。

原子力発電所建設計画についての財務評価ではDCF法、つまり将来のキャッシュフローは割り引いて現在価値換算して評価する手法が取られる。従って現時点から大体25年後よりも先に発生するキャッシュフローは現在価値換算すれば価値はほとんどないことになる。(つまり現在価値はゼロとなる)

投資家の眼で原子力発電建設計画を見るとすれば、計画・建設が行われる10年間を通して大規模な初期投資を行い、その投資は運転開始後の最初の15年間だけで回収する、という評価を行うことになる。こうした伝統的な財務評価手法では、原子力がそれ以降45年間、もしくはそれ以上も長期にわたって運転され、そこでキャッシュフローを生むことが無視されている。

翻って言えば、既設の原子力発電所はその全てが政府・公的部門もしくは料金規制下にある電力会社によって建設されたものであり、それはこうした見方を裏付けているともいえる。

原子力発電資産は大きな価値ある長期的なインフラ投資であって、それは市場に委ねてしまうにはあまりに重要すぎるものであり、料金規制下に置いておくか、さもなくば直接政府・公的部門が保有するべきものである。

中国のような国家資本主義国で原子力が推進されているのも原子力が長期的な価値をもたらすからであって、そこでは国家は原子力の所有者でもあり、また同時に原子力が生む価値の受益者でもある。こうした原子力が生む価値があるからこそ、米国内の電力非自由化地域の規制当局は既設原子力発電所の運転ならびに新規建設を後押ししている。

 

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