原子力産業新聞

SMRって何?

米国で進むSMR開発の最新状況

マイクロ炉

一般的に熱出力2万kW以下(または電気出力1万kW以下)の超小型の原子炉であるマイクロ炉をいくつか紹介する。マイクロ炉は、送電網が整備されていない遠隔地での利用やディーゼル発電機の代替、地域暖房や水素製造など熱の利用も可能である。また、トラックでの輸送が可能なコンパクトなタイプのものもある。

マイクロ炉・液体金属高速炉

オーロラ

「オーロラ」は先進的原子炉開発企業オクロが開発した液体金属高速炉のマイクロ炉で、電気出力は0.15万kW。HALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を燃料として使用するが、原子炉の冷却に水を使わず、同社によれば少なくとも20年間、燃料交換なしで熱電併給を続けることができる。

「オーロラ」発電所の完成予想図 🄫Oklo Inc.

オクロは同設計をDOE傘下のINL敷地内で2025年の運転開始をめざしており、DOEも2019年12月にINLでのオーロラ建設を許可した。これを受けて、オクロの子会社であるオクロ・パワーは2020年3月、非軽水炉型の先進的SMRとしては初の建設・運転一括許認可(COL)をNRCに申請。NRCスタッフは同年6月にこの申請を受理し、審査を進めていた。しかし、NRCは2022年1月、設計の安全面など複数のトピックスについて情報不十分との判断から、オクロのCOL申請を却下すると発表。その後同年9月、オクロは将来の許認可活動を支援するための同社の関与案をまとめた許認可プロジェクト計画(LPP)をNRCに提出し、許認可活動を再開した。

またオクロは2021年6月、オーロラに使用する先進的原子炉燃料の製造技術とリサイクル技術の商業化に向け、DOEの技術商業化基金(TCF)からの支援を獲得。DOEおよび傘下のアルゴンヌ国立研究所(ANL)と合計200万ドルのコスト分担型官民連携プロジェクトを実施するというもので、電解精製技術を使って放射性廃棄物を転換し先進的原子炉燃料を製造するほか、使用済燃料のリサイクル化を図る技術の商業化を進めていく。これらを通じて放射性廃棄物の量を削減し、燃料コスト削減をめざす考えだ。

オーロラ
オーロラ の用途 その他情報

マイクロ炉・高温ガス炉

BANR

BWXテクノロジーズ(BWXT)の「BANR(BWXT Advanced Nuclear Reactor)」は、電力網の未整備地域や遠隔地での利用を想定した、電気出力1,000~5,000kWの輸送可能な極小原子炉の高温ガス炉。電気、プロセス熱、またはその両方を出力するコージェネレーション・モードなど、出力に柔軟なオプションを提供する。

マイクロ炉のサイズ感 🄫Idaho National Laboratory

BANRは2020年12月、DOE・ARDPの「将来実証リスク削減プログラム」の1つに選ばれた。また国防総省戦略的能力室(DOD-SCO)は2022年6月、同省の「プロジェクト・ペレ」と呼ばれる軍事作戦用の可搬式マイクロ原子炉の設計・建設・実証プロジェクトにBWXTの高温ガス炉(HTGR)を選定、今後、2024年までにHTGR原型炉をINLに設置する予定だ。HALEU燃料の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」を使用する同炉では、INLがその後、最大3年にわたって様々な実験プログラムを実施する。具体的には、同炉の操作性や分散型電源としての性能を確認するほか、システムの分解と再組立て実験を含む可搬化の実証も行う。

BANR
BANR の用途 その他情報

マイクロ炉・高温ガス炉

MMR

ウルトラ・セーフ・ニュークリア(USNC)のMMR(Micro Modular Reactor)は電気出力0.5~1万kWで、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン粒子を燃料に用いる小型モジュール式HTGR。20年の運転期間中に燃料を交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても、物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。

MMRの完成予想図 🄫ULTRA SAFE NUCLEAR

カナダのエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)はすでに2019年3月、パートナー企業であるUSNCのMMRをオンタリオ州チョークリバー・サイトで建設するため、SMRとしては初の「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。また、米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)は2021年6月、USNC社製MMRの試験研究炉を将来学内で建設するため、NRCに「意向表明書(LOI)」を提出した。また2022年2月には、MMRの建設に向けた実行可能性調査でアラスカ州の電力共同組合と協力中であることが明らかになった。

さらにUSNCは2022年8月、MMRに使用する3重被覆層・燃料粒子「TRISO」と「完全セラミックマイクロカプセル化(FCM)燃料」のパイロット製造(PFM)施設をテネシー州のオークリッジで開所、MMR用燃料の試験と性能認定を実施する計画である。

MMR
MMR の用途 その他情報

米国で開発中のその他の主なマイクロ原子炉

Xe-Mobile
Xe-Mobile の用途 その他情報
eVinci
eVinci の用途 その他情報

SMR
炉型別開発状況

開発予定サイトが既に発表されている
代表的なSMRをいくつか取り上げ、
その開発状況を炉型別に紹介する。

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