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規制委、東京電力より福島第一ALPS処理水の海洋放出対応について聴取
原子力規制委員会の福島第一原子力発電所廃炉に関する監視・評価検討会は4月19日、東京電力より、ALPS処理水(トリチウム以外の放射性物質が規制基準値を下回るまで多核種除去設備等で浄化処理した水)に係る政府の基本方針を踏まえた対応について聴取した。13日に、政府の「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」は、2年後を目途にALPS処理水を海洋放出する方針を決定。これに対し、実施主体となる東京電力は、「基本方針に基づき、国際基準に準拠した原子力安全に係る規制を始め、各種方針等を厳格に遵守することはもとより、風評影響を最大限抑制するための対応を徹底するべく取り組んでいく」との姿勢を示し、16日にはALPS処理水の処分に関する対応(基本的考え方)を発表した。規制委員会は、今後の海洋放出実施に関し、同社からの福島第一原子力発電所廃炉に係る実施計画変更認可の申請を受け、排水設備の設計、希釈方法、核種濃度の測定・評価方法などの審査を行う。検討会では、東京電力福島第一廃炉推進カンパニープロジェクトマネジメント室長の松本純一氏らが説明。ALPS処理水の海洋放出に当たっては、基本姿勢として、法令に基づく安全基準はもとより、関連する国際法や国際慣行に基づくとともに、人および環境への放射線影響評価により、放出する水が安全であることを確実にし、公衆や周辺環境、農林水産品への安全を確保するとしている。放出する水については、トリチウム以外の放射性物質が規制基準値を下回るまで何回でも浄化処理し、濃度の測定・評価、第三者による確認を行い、取り除くことが難しいトリチウムは大量の海水で(100倍以上)希釈。「二次処理」、「第三者による確認」、「十分な希釈」により、安全であることを確実にする。ALPS処理水の処分完了には10年以上が見込まれるため、モニタリングの拡充・強化、タンクからの漏えい防止、情報発信・風評被害対策、適切な賠償に努め、環境モニタリングの一環として魚類の飼育試験計画や、現状では困難なトリチウムの分離技術についても継続的に知見獲得を図っていく。海洋放出に必要な設備配置・設計に関し、検討会の有識者からは、具体的計画を順次示して欲しいとの意見や、信頼性の観点から新たな風評被害発生を懸念する声もあった。また、元原子力規制庁長官で事故直後の現場指揮に当たった経験を持つ安井正也氏は、3号機使用済燃料取り出しで生じたトラブルも振り返りながら、「確実に動かせる、何か不具合があっても対応できるバックアップ体制を築くよう、十分な資源を投資し余裕のある設計・施工がなされることを願う」と要望した。
- 20 Apr 2021
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【第54回原産年次大会】セッション2「福島のさらなる復興に向けて」
4月14日のセッション2「福島のさらなる復興に向けて」は、福島第一原子力発電所事故発生から1年後の2012年以来、続いているテーマ。今年は事故から10年が経過した福島第一原子力発電所の廃炉の現状を踏まえつつ、今後の福島復興の展望に向け意見交換が行われた。セッション冒頭、東京電力ホールディングス株式会社 常執執行役で福島第一廃炉推進カンパニーのプレジデント 小野明氏が福島第一原子力発電所の現状と課題を報告。まず、小野氏は今般の柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に関する不備の問題について、深く反省と謝罪の意を表した。その上で、福島第一原子力発電所の汚染水対策について、小野氏は、地下水・雨水の流入を抑制することによって、汚染水の発生が2020年には140㎥/日まで低下しているほか、多核種除去設備(ALPS)処理水貯蔵のために、計画通り2020年末で137万トン分のタンクを確保済みであるが、タンク貯蔵量が2021年2月時点で約125万トンに達している中、計画容量を超えてタンクをさらに建設すると、必要な施設の建設に支障を来し、今後の廃炉の進捗に多大な影響を与える可能性があることを懸念。ALPS処理水については、前日の4月13日に海洋放出の政府方針決定が発表されたところ。これに関し、小野氏は「当社としては、国の方針を受けて、関係者との協調を図りながら今後の処理に向けた具体的な作業を進めていく。しっかりやっていきたい」と述べた。小野氏は続いて、使用済燃料プールからの燃料取り出し、燃料デブリ取り出しに向けた作業の進捗状況、固体廃棄物管理、そして、「復興と廃炉の両立」について説明。「とくに、福島の復興について、我々はいかに1F(福島第一原子力発電所)の廃炉を復興に向けて活用していけるか、を考える必要がある。その鍵は、1Fの廃炉作業に地元の企業のみなさまに積極的に参入していただくことだ」と述べ、そのための企業向け説明会や地元企業と元請企業とのマッチングを増やしていく考えを示した。また、去る2月13日の地震発生時、3号機原子炉建屋の地震計が7月の大雨の影響により故障していたことを始め、タイムリーな情報発信がなされておらず、地元の方々による受け止めと東京電力の取組姿勢にギャップがあると自省し、「そうしたギャップを埋めていくことがまず必要。地域目線でしっかりと双方向のコミュニケーションに取り組んでいきたい」とも述べた。続いて、福島大学国際交流センター 副センター長のウィリアム・マクマイケル氏(モデレーター)の進行のもと、「震災から10年 福島が拓く未来」と題して、福島復興の第一線に関わってきた若手のパネリストたちが語り合った。 株式会社小高ワーカーズベース代表取締役の和田智行氏は、南相馬市小高区に生まれ育った。震災前に東京からUターンし、地元でITベンチャー企業を経営していたが、福島第一原子力発電所事故により避難生活を余儀なくされた。2014年2月、当時まだ避難指示区域で居住が認められていなかった南相馬市小高区に株式会社コワーカーズスペースを創業。小高区は2016年7月に避難指示が解除され帰還が進んではいるが、元は1万2千人を超えていた人口が、3分の1程度の約3,700人にまで減少。その半数を高齢者が占めるとともに、子どもの数も激減し、超少子高齢化の状況となっている。「本当に厳しい状況で、地域には課題が多く、それが帰還を阻んでいるが、見方を変えれば課題はすべてビジネスの種。ここでしか生み出せないビジネスがある」と、和田氏は反骨精神をみせる。最初に手がけたのは、人がいない町で働く場としてコワーキングスペースをつくること。また、食堂や仮設スーパーもつくった。生活環境が整っても若い世代がなかなか戻って来ないという課題に対し、若者にとっても魅力的な仕事として、ガラスアクセサリーの工房を立ち上げると、地元の若い女性たちが工房で働き、カフェのオープンや若者の来訪にもつながるという好循環が生まれた。今は、この地域の可能性を感じてチャレンジする起業家へのサポートと、コミュニティづくりのフェーズに移っており、これまでに全国から8人の起業家が集まっている。さらに、ゲストハウスやキッチンを備えたコワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」も新設。ここでは、地域の事業者と外部からの来訪者の交流の場として、コロナ禍中リモートワークで滞在しながら一緒に仕事をする人も増えている。最近、震災当時10代だった若者たちの起業支援や人材育成のためのプロジェクトも始めた。「最終的にこの地域を自立した地域にしたい」と和田氏は語る。そして、「先人たちの努力で豊かに成熟した現代日本だが、そこで閉塞感を抱える人も多い。逆にこの地域には何もなく、新しく創るしかない。その意味で、この地域は現代日本唯一で最後のフロンティアだ。予測不能な未来を楽しみ、フロンティアを開拓していく」と、意気込んだ。双葉郡未来会議「ふたばいんふぉ」の辺見珠美氏は、東京都生まれ。大学で原子力と放射線について学んだ。2011年、福島第一原子力発電所事故により富岡町から東京に避難してきた子どもたちの学習支援のボランティアに取り組む中で双葉郡とのつながりができ、2012年、川内村に移住し、福島大学川内村サテライト職員として、放射線についての相談受付などの住民対応を行った。2020年から富岡町に移住。双葉郡のインフォメーションセンター「ふたばいんふぉ」のスタッフとして双葉郡の情報発信や草の根の活動に取り組んでいる。辺見氏は地図を示しながら、「冬は出稼ぎに行く地域だったが、東京に出稼ぎに行く代わりに東京の電気をつくることで電源供給地となった」と、双葉郡の歴史に触れた後、2011年の福島第一原子力発電所事故発生からの避難区域設定の変遷を振り返った。現在の帰還困難区域の人口22,332人の規模感について、各電力会社の従業員数と比較したグラフで表現。「原子力発電所の事故は、『それまで』をすべて失うことだった」と辺見氏は言う。さらに、「ひと、もの、こと、思い出、いつもの日常がどれだけ幸せなことか。私の周りには、小学生の時に震災に遭い、いつもそばにあった夜ノ森の桜並木が帰還困難区域のバリケードで隔てられ、その桜を特別に感じてしまうこと自体に嫌悪感がある、という複雑な心情を抱えた若者たちがいる」と。そんな想いを抱き、双葉郡で活動する。新しく未来を築き、暮らしを取り戻すために、川内村で「村の暮らしを楽しもう」をコンセプトに、村内外の人々が楽しめる企画を展開している。中には養鶏を営む農家で「鶏をさばくところから始めるソーセージづくり」など、ここでしかできない講座もある。また、富岡町での「とみおかこども食堂」の活動は、廃炉作業員など移住してきた人々や帰還者を含めて、子どもたちを通して地域のコミュニティを再構築しようというユニークな試みである。「避難、軋轢、格差、高齢化、コミュニティの崩壊、考え方の違いなど、いろいろなことが原子力発電所の事故で引き起こされた。しかし、これらはどこにでも起こりうることだ」と辺見氏は指摘。さらに、「より良い未来をつくっていくには、『お互いを知り、対話を重ね、理解し合うこと』に丁寧に取り組むことが遠回りなようで近道であり、様々な課題に対して解決へ導く鍵となるのではないか」とも述べる。そして、原子力関係者に対しても「再稼働や処理水の海洋放出などに関して行われる説明会や公聴会も、一方的なものではなく、双方の立場の違いを理解し合った上での話し合いを丁寧にやってもらえればと思う」と強調した上で、「ぜひ双葉郡の方々の生の声を聞きに来てほしい」と呼びかけた。一般社団法人ふくしま学びのネットワーク理事・事務局長の前川直哉氏は、兵庫県尼崎市に生まれ、1995年、高校3年生の時の阪神・淡路大震災で被災した。大学卒業後、母校の灘中学校・高校の教壇に立ち、2011年の東日本大震災以降、たびたび生徒たちと福島や宮城の被災地を訪れるうちに福島県で仕事をしたいと思うようになり、2014年、福島市に移住して非営利団体「ふくしま学びのネットワーク」を設立。2018年からは福島大学の特任准教授も務める。前川氏は元同僚や大手予備校の講師などを招き、福島の高校生を対象とした無料セミナーを延べ14回開催。セミナーの講師陣は完全手弁当で、面白い授業にはリピーターも多い。「そういう『カッコいい大人』として誰かの力になるには力をつけなければならない。学校はそのための場所だと生徒たちに伝えている」と前川氏は語る。20年後の日本ではロボットやAIが人間の仕事を奪っていく時代になると言われている。しかし、正解のない問い、自ら課題を発見し、解決策を探ることはロボットやAIには決してできない。たとえば、「双葉郡の方々が少しでも日常を取り戻すにはどうすればよいか」を考えるのも人間にしかできない仕事だ。福島では高校生が県内各地で復興や地域貢献のため多様な活動を展開しており、こうした高校生の活動をサービス・ラーニングとして顕彰し、さらなる活性化を図っている。また、福島大学では地域実践特集プログラム「ふくしま未来学」にも取り組む。「福島は、自分のためではなく、誰かのための学びであることが伝わり、知識偏重教育でなく、正解のない問いにチャレンジできる場所。限界に来ている日本の教育を変えられるのは福島からだ」と前川氏は強調。一方で、教育者として、「子どもたちの活動を誇らしいと思うと同時に、福島の問題をどうしても遺してしまい、子どもたちを復興にしばりつけているのではないかと、忸怩たる思いも正直ある」とも。同氏は、そんな葛藤も抱えながらも「今後も子どもたちと向き合っていきたい」と語った。続いて、パネル討論に移り、自他共に認める「カナダ人で一番の福島ファン」マクマイケル氏が30年後の「FUKUSHIMA」について、あるべきイメージを問うと、和田氏は、「住民が自立した暮らしを実現している」ことをあげ、そのために、自社のミッションとして掲げる「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」を遂行し、「旧避難指示区域で事業やプロジェクトを興せる風土を醸成していく」と抱負を語った。また、辺見氏は「地層をつくる」と標榜。その心は、「原子力発電所の事故により暮らしが失われ、豊かな思い出まで『除染』されて、はぎ取られ、町として『欠けている感』が生じてしまった双葉郡の『まちを耕す』。つまり、一度人がいなくなり、それまで培ってきた暮らしが失われてしまった土地に、喪失を埋める『土』となる人の営みを積み重ねていく30年間」だという。また、前川氏は、30年後の福島に「地球と人類の最後の砦」をイメージ。そのためには「教訓の継承」が欠かせないとする同氏は、「原子力発電所の事故を『なかったこと』にせず、失敗を直視し、そこから学ぶこと」と強調した。最後に、「原子力産業に期待することは?」と、マクマイケル氏が投げかけると、和田氏は「幸せな社会をつくりたいのは共通の願いだと思うので、何か一緒にできることがあれば協働していきたい」との姿勢を示し、辺見氏は「原子力は一般市民にとって専門性が高くて遠いものなので、もっと社会との距離を近づけてお互いの理解を深めたほうが良い」と指摘。前川氏は「福島から学べることはたくさんある。ぜひ福島を訪ねてもらい、見聞きしたことを周りの人たちにも伝えてもらえると嬉しい」と期待した。マクマイケル氏は、「福島の人たちに今見えている課題、そして、今後の可能性について、多くの人に共感していただける時間になったと思う。今日の登壇者のみなさんが大切に育んでいる福島の再生の芽は、必ずや世界の未来にもつながると私は信じている。復興を地元で支えている人たちへの敬意を持ちながら、共に未来を形成していく姿勢を持ちたい」と語り、セッションをしめくくった。
- 15 Apr 2021
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農水省、福島産品の2020年度流通実態調査結果を発表
農林水産省は3月31日、福島県産農水産物の流通に係る2020年度の実態調査結果を発表した。福島県の農林水産業の再生に向けて、県産品の市場における販売不振の実態と要因を明らかにするため2017年度より行われているもの。それによると、調査対象の25品目中、重点6品目とする米、牛肉、桃、あんぽ柿、ピーマン、ヒラメについて、出荷量は依然と震災前の水準までに回復しておらず、価格は全国平均と比較し差が徐々に縮小し、ピーマンとヒラメではほぼ全国水準に達しているものの、他の品目では下回っているといった実態が明らかとなり、「引き続き販売不振の解消に向けた取組が必要」としている。同調査で実施した全国消費者約1万人へのアンケートによると、県産米では20.9%、県産桃では23.6%が購買したと回答しているほか、6品目ともに7~8割が「非常によい」、「よい」と評価。なお、桃の出荷量は、台風に伴う大雨や病害の影響で前年度より約2割減少している。全国平均との価格差が生じる背景については、事業者へのヒアリングでマーケティング面の課題も数多く指摘されており、消費者の需要の変化に応じた対応とともに、ブランド力や商品開発力の強化も求められているなどと分析。一方で、納入業者(仲卸業者など)が納入先(加工業者、小売・外食店など)の福島県産品の取扱い姿勢を過剰にネガティブに評価している、という「認識のそご」があることから、今回の調査では、人の感情に働きかけて“何となく”行動を促す「ナッジ」(nudge:「そっと後押しする」の意)と呼ばれる手法を用いた実証試験を実施。東京・大田市場内の青果仲卸業者125社を2グループに分け、一方には「認識のそご」を単に説明したチラシを、他方には「ナッジ」を利用して納入先への提案を促すチラシを配布し、納入先の福島県産品の取扱い姿勢について確認してもらうよう依頼した上で、両グループの行動・意識の変化を比較した。つまり、Aグループには「取引先はあなたが思っているほど福島県産品であることを気にしていない」と端的に説明するのに対し、「ナッジ」を利用するBグループには「納品先に自分から福島県産品を提案する方が多くなっている」と、「同調行動」を促すという仕掛け。その結果、Bグループの方が「販売先への福島県産品の提案を増やそうと思った」割合が6.9ポイント高くなっていた。さらに、「チラシ形式の通知を受け取ったことにより、福島県産品の扱いについて考えるきっかけとなった」とする事業者も前年度調査と比べ増えており、情報発信において、「ナッジ」を活用したチラシ発出の重要性が示されたとしている。
- 02 Apr 2021
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JANSIが福島第一原子力発電所事故の教訓集を公開
原子力安全推進協会(JANSI)は4月1日、福島第一原子力発電所事故に係る教訓集をホームページ上に公開した。JANSIは、事故の反省に立ち、原子力安全を牽引する産業界の「自主規制組織」として2012年に発足。「世界最高水準の安全性の追求」をミッションに掲げ、発電所の評価活動(ピアレビュー)、運転情報の収集・分析、技術者養成などに取り組んできた。このほど公開された教訓集は、事故発生から10年の節目に際し、これまでに発表されてきた事故調査報告書などが示す教訓を改めて再整理するとともに、教訓の元となった事象や事実をさかのぼる検索システム(準備中)を構築し、「事業者が事故の教訓を日常的に学び現場で活用できる」よう作成したもの。教訓集は、政府事故調査委員会が最終報告書で示した委員長所感7項目を「知見」として活用し、(1)原子力施設の運営に係る教訓を再整理する際の基軸、(2)各事故調査報告書の教訓や指摘事項の体系的な整理、(3)原子力産業界だけでなく他産業界にも通じる教訓――といった「汎用的」な効果に結び付くことを期待している。政府事故調による7項目に加え、緊急時に活動する要員の環境整備や対外対応に関する「その他」項目を合わせた8つの「知見」を柱に、計71の「教訓細目」を示し、その根拠となる175の関連資料を分類整理。「知見」の第一にあげられた「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる」からは、8つの「教訓細目」を示している。その一つ「他社事例から脅威となる本質を見抜き、ここでも起こり得るとの現実感をもって分析する」では、福島第一原子力発電所事故の要因となった津波による全電源喪失の経験から、「来ない」、「発生しない」といった思い込みを戒め、問いかけ学ぶ姿勢を堅持し他者の意見に耳を傾ける重要性を強調。また、「自分の目で見て自分の頭で考え、判断・行動することが重要であることを認識し、そのような能力をかん養すること」との「知見」では、「極限状態の中での意思決定に資する訓練を行う」必要性を述べており、各種事故報告書が記述した事故発生当時の現場での指揮状況について拾い上げ、冷静な決断力と信頼される人間力が極限状態の判断者には求められるとしている。この他、複合災害に鑑み緊急時要員の長期的な安全・健康管理や、情報発信に関し日頃からのリスクコミュニケーションを通じ「伝わること」を目指す重要性なども述べている。
- 01 Apr 2021
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福島の未来に向け、学生たちが「Jヴィレッジ」でトーク
原子力災害を経験した福島の10年を振り返り、「30年後の未来に向けてできること」をテーマに学生たちを交え話し合う環境省主催のトークイベントがこのほど「Jヴィレッジ」(楢葉町)で開催された。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から10年を契機に、福島の環境再生と未来について考えるシンポジウムの中で行われたもの。東京からオンライン参加した小泉環境相(左)と丸山桂里奈さん環境省では昨秋より、「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジ・アワード」と題し、福島の復興に関心を持つ中学生から大学生を対象に、これからの福島について、「こう変えたい」、「こうなって欲しい」という未来や希望に関するアイデアや想いを募集。3月12日に優秀作品が発表された。今回のトークイベントは、「チャレンジ・アワード」の受賞学生たちに加え、9月に環境省から「福島環境・未来アンバサダー」の第1号として任命されたタレントのなすびさんの他、オンラインを通じ、小泉進次郎環境相、内堀雅雄福島県知事、元サッカー女子日本代表で福島第一原子力発電所での勤務経験を持つ丸山桂里奈さんが参加。学生たちにエールを送る内堀知事トークイベントに先立ち行われた「チャレンジ・アワード」表彰式で、内堀知事は、「Jヴィレッジ」の名付け親である元サッカーイングランド代表のボビー・チャールトン氏の言葉「福島県の皆様が示した『あきらめない魂』は多くの人々に感動を与えている」を紹介し、今後の学生たちの活躍に期待を寄せた。「チャレンジ・アワード」最優秀賞を受賞した守谷さん(左)と林さん「チャレンジ・アワード」中学生部門最優秀賞を受賞した林佳瑞さん(ふたば未来学園中学校)は、「里山モデル福島への道」と題する作品の中で、「生物多様性での地域おこし」を提案。「双葉町では稲作をやめ水田に水が入らなくなったためタガメが消滅したが、帰還困難区域が解除された土地で再び人間が農業を始めると、消えた生物が戻ってくるケースが多い」という県職員の話に衝撃を受け、「絶滅に瀕した生物を救いたい」想いに至ったという林さんは、イベントで、「観察会もできるビオトープ(生物空間)を創りたい」と将来の希望を語った。なすびさん、2016年のエベレスト登頂経験を語り若者のチャレンジ精神を応援また、「蝶の研究から学んだ『自然と共生する福島』の実現方法」で高校生部門最優秀賞を受賞した守谷和貴さん(福島高校)は、福島県内の蝶を「自然のバロメーター」として調査し続け、急激な再生可能エネルギー開発や原子力災害に伴う森林管理の放棄などで生じた環境破壊を危惧したという。作品の中で空地への太陽光パネル設置や風車の小型化の他、県内森林資源への需要喚起、地形を活かした牧場・スキー場の創設を通じ観光産業の振興を提案する守屋さんは、「福島の美しい光景を未来に残していきたい」と意気込みを見せた。山村留学を通じ「人のつながりの大切さ」を学んだという東京出身の高校生・三宅さん、「福島を新しい社会のモデルへ」とこの他、高校生部門の入賞者から、カフェを拠点とした地域情報発信の提案や、福島県只見町への山村留学で得たふれあい体験など、コミュニティの視点からの福島復興・再生に向けたアイデアや想いも語られ注目を集めた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 25 Mar 2021
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「JANSI Annual Conference 2021」がオンライン開催
原子力安全推進協会(JANSI、ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア会長)は3月17日、「JANSI Annual Conference 2021」をオンラインで開催。海外からのビデオメッセージ発表やパネルディスカッションなどが行われた。 JANSIは、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、「世界最高水準の安全性の追求」をミッションに掲げた原子力産業界による自主規制組織として2012年に発足し、(1)発電所評価(ピアレビュー)、(2)安全文化醸成支援、(3)運転経験情報の収集・分析・提示、(4)リーダーシップ研修、(5)安全向上策の評価・提言――などの活動を展開している。現在、事故の教訓が確実に事業者の活動において継続活用されることを目的とした「教訓集」の公開を準備中。 感染症拡大により2年ぶりの開催となった今回、来賓挨拶としてビデオメッセージを寄せたOECD/NEA事務局長のウィリアム・マグウッド氏は、「新型コロナのパンデミックで電力供給がいかに重要かを学んだ」とした。11日に福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎えたのに際し、「これまで日本の原子力は多くの難題に直面した。今後もたくさんの課題が待ち受けているが、是非とも前に進んで欲しい。原子力は経済と環境の両面から将来に向けなくてはならないエネルギー」などと述べ、JANSIの今後の活動に期待を寄せた。 この他、世界原子力発電事業者協会(WANO)議長のトム・ミッチェル氏は、福島第一原子力発電所事故がもたらした信頼失墜の厳しさを改めて述べ、「積み上げてきた知識の土台の上に立ち、業界全体の改善に取り組んで欲しい」と強調。原子力規制委員会委員の山中伸介氏は、JANSIに対し、社会とのコミュニケーションの必要性などを指摘した上で、「事業者のマネジメントシステムの改善や、人材育成にもより一層取り組むことを期待する」とした。 パネルディスカッションでは、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会に参画する東京大学大学院工学系研究科教授の山口彰氏が座長を務め、これまでの自主的・継続的安全性向上の取組について、「米国からみてどう評価できるか」、「他産業からみて改善点はないか」などをポイントに議論。パネラーとして、JR西日本副社長の緒方文人氏、元米国サウス・カロライナ・エレクトリック&ガス社(SCE&G)副社長のジェフリー・アーチー氏、北海道電力社長の藤井裕氏、九州電力社長の池辺和弘氏らが登壇し発言した。 緒方氏は、2005年の福知山線脱線事故を踏まえた「能動的な事故防止」の取組について紹介した上で、「事故当時の社員が少なくなっている」として、事故の教訓を後進につないでいく重要性を強調。アーチー氏は、「米国では継続的改善の文化が強く浸透している」として、JANSIが設立に際し手本とした米国原子力運転協会(INPO)による原則文書「トップであり続ける」(Staying on Top)を示し、JANSIのミッション追求に向け事業者のリーダーは全面的に参画する必要があるとした。 地域への電力安定供給に係る立場から、藤井氏は、2018年の北海道胆振東部地震に伴う大規模停電や、積雪・厳寒対策を踏まえた安全性向上活動について述べた上で、泊発電所の停止期間の長期化に鑑み「技術継承やモチベーションの維持が重要な課題」と強調。また、社会とのコミュニケーションに関し、池辺氏は、発電所周辺の「フェイス・トゥ・フェイス」を基本とした取組に一定の評価を示しつつも、「九州全体、日本全体をみるとまだ不十分」として、プラントの安定的な運転とともに、原子力に対する理解促進にJANSIと連携し取り組んでいく考えを述べた。
- 19 Mar 2021
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福島第一原子力発電所事故発生から10年で東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員らに対し訓示を行った(=写真上)。〈動画は こちら〉発災時の14時46分より1分間の黙とうをささげた後、小早川社長は、震災による犠牲者への哀悼の意を述べるとともに、「今なお福島の方々を始め、広く社会の方々に多大なご負担・ご心配をかけていることに心よりお詫び申し上げる」と改めて表明。その上で、社員らに対し、(1)過去から学び実践に移す、(2)常に社会やお客様の目線で考える、(3)全員が主役となって安全性や品質を高め続ける――ことの重要性を強調。事故を振り返り「防ぐことができなかった根本原因や背後要因を省み日常業務に活かして欲しい」と、一人一人の行動姿勢が体現化されることを求めた。さらに、福島県出身の野口英世の名言「過去を変えることはできない。人生で変えることができるのは自分と未来だけ」をあげ、「過去から学び、心一つにして福島の復興、福島の未来のために、それぞれの持ち場で全力を尽くしてもらいたい」と訴えかけた。続いて福島復興本社から、大倉誠代表が訓示に立ち、「福島への責任に立ち向かうことは会社の経営方針」と強調。3月末で現職を退く同氏は、発災後の避難住民の方々への支援活動を振り返りながら、信頼失墜の厳しさを改めて認識した上で、「今から5年先か、10年先か、廃炉を成し遂げたときか、『東京電力は責任に向き合い続けた』と言われる日がきっと来る。3月11日の振り返りを新しい力に」と、社員らの今後の活躍に期待を寄せた。東京電力の取組に対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日発表のコメントの中で、「安全確保を最優先とした廃炉や、生活環境の再生、産業基盤・雇用機会の創出といった取組を、引き続き全力で支援していきたい」としている。また、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が、発災10年の節目に際し同委発足時の「初心を忘れぬよう」として所感を表明(=写真下)。更田委員長は、まず、原子力行政組織における推進と規制との分離を巡り議論となったいわゆる「規制の虜」(規制当局が被規制産業である事業者の利益に傾注する〈国会事故調報告書〉)の再来を危惧。さらに、「世界最高水準」と呼ばれる新規制基準においても「継続的改善を怠ることがあってはならない」と、慢心に陥ることを戒めた上で、改めて「新たな安全神話を生まないよう十分注意していく」との決意を述べた。その上で、原子力規制庁や事業者に対して、現在進めている審査・検査のガイドライン整備などが思考停止をもたらすことを懸念し、「安全を求める戦いは想定外を減らす戦いであって、新たに考え続けることが常に不可欠。時には白紙に戻って考える『ちゃぶ台返し』も必要」と警鐘を鳴らした。〈動画は こちら〉※写真は、いずれもインターネット中継より撮影。
- 11 Mar 2021
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新たな「東日本大震災からの復興の基本方針」が閣議決定
政府は3月9日、2021~25年度の「第2期復興・再生期間」に向け、新たな「東日本大震災からの復興の基本方針」を閣議決定した。原子力災害被災地域については、「福島の復興・再生には中長期的な対応が必要であり、『第2期復興・再生期間』以降も引き続き国が前面に立って取り組む」としている。廃炉・汚染水対策に関し、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いについては、「先送りできない課題であり、政府として責任を持って、風評対策も含め、適切なタイミングで結論を出していく」とした。帰還困難区域の避難指示解除に向けては、区域内の「特定復興再生拠点区域」(市町村の計画に基づき、線量の低下状況を踏まえ5年を目途に居住可能となることを目指す復興拠点)以外における方針検討を加速化していく。また、「福島イノベーション・コースト構想」の推進とともに、浜通り地域の創造的復興の中核拠点として新設される「国際教育研究拠点」の整備にも取り組む。復興推進会議・原子力災害対策本部で発言する菅首相(官邸ホームページより引用)閣議に先立ち行われた復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合で、菅義偉首相は、「地元の方々と移住されてきた方々とが協力して、新しい挑戦を行う熱い思いに触れることができた」などと、6日の福島県訪問を振り返った上で、「福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし」と、改めて強調した。会見を行う梶山経産相(インターネット中継)東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から明後日で10年を迎えるのに際し、梶山弘志経済産業相は、閣議後の記者会見で、「燃料デブリの取り出し、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組、自立的・持続的な産業の発展など、さらなる難題を一つずつ解決していかねばならない。被災地の課題に正面から向き合い、福島が復興を成し遂げるその日まで全力を尽くす」との決意を述べた。また、原子力委員会は9日の定例会で、委員長談話を発表。「事故による悲惨な事態を防ぐことができなかったことを真摯に反省するとともに、原子力利用に対する国民の不信・不安が払拭できていないことを念頭に置きつつ、事故から得られた教訓を生かして、原子力安全を最重要課題として取り組んでいく必要がある」としている。
- 09 Mar 2021
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福島県・内堀知事、ふるさとへの帰還が復興・再生の基軸と強調
会見を行う内堀知事(インターネット中継)福島県の内堀雅雄知事は3月8日の記者会見で、東日本大震災から10年を迎えるのに際し、「福島第一原子力発電所事故により避難を余儀なくされていた方々が元の生活を取り戻す環境をつくり、ふるさとへの帰還を望む方々に帰ってもらう」という根幹の考え方に変わりはないことを改めて述べた。浜通り地域の住民帰還の状況(2020年6月現在、長崎大復興学セミナー・高村教授講演資料より引用)一方、浜通り地域では自治体により住民の帰還率に差異が生じている。内堀知事は、帰還率8割が見込まれる川内村について比較的早いタイミングで「帰村宣言」が発表された経緯をあげながらも、他市町村に関し「5割がなかなか見えてこない」などと、帰還が滞る現状を懸念。これまでに避難指示解除がなされた自治体の状況から、「長い期間避難先での生活になじんできた。子供の就学の兼ね合いなどもあり、これまで以上に時間がかかる」と、今後はより地道に「住民が戻るプロセス」をつくり出していく必要性を述べた上で、「ふるさとに戻ってもらうことが復興・再生の基軸」であることを繰り返し述べた。政府の復興政策委員会は3月1日、2021~25年度までを「第2期復興・創生期間」として、新たな復興の基本方針案を提示したが、内堀知事は、次のステージにおける重要施策として、(1)移住・定住政策を進める、(2)新しい産業を創出し雇用の確保にしっかり取り組んでいく――ことを強調。今後の産業創生に向け、双葉町の工業団地や大熊町のいちご栽培などを例に、他地域から進出した人たちとの連携にも期待を寄せた。
- 08 Mar 2021
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消費者庁、食品中の放射性物質に関しオンライン意見交換会
消費者庁はこのほど食品中の放射性物質に関する意見交換会を開催。食品に関するリスクコミュニケーションの一環として、消費者庁が食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省と連携し全国主要都市で行ってきたもので、今回は感染症拡大防止に鑑み、ウェブサイトで収録動画を公開し、一般からの質問・意見を受け付ける格好となっている(質問・意見の受付は3月7日まで、収録動画の公開は3月31日までを予定)。〈動画および質問・意見の応募は こちら〉意見交換会ではまず、放射性物質の基礎知識、食品中の放射性物質に係る対策と現状について説明。厚労省と農水省によると、福島第一原子力発電所事故後17都県を中心とする地方自治体で行われてきた食品中の放射性物質に関する検査で、2019年度に基準値(100ベクレル/kg)を超えたものは、栽培・飼養管理が可能な田畑・果樹園の農産物(山菜類を除く)・畜肉と海産魚介類についてはゼロとなっている。一方、消費者庁が2012年度より実施している風評被害に関する消費者意識実態調査の結果で、2020年度は、放射性物質を理由に福島県産品の購入をためらう人の割合はこれまでで最小となった。また、買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合は減少傾向にあるものの、前年と同程度の14.1%だった。続くパネルディスカッションでは、フリージャーナリストの葛西賀子氏(コーディネーター)が、こうした根強く残る被災地産食品を忌避する傾向について問題提起。これに対し、消費者の立場から、コープデリ生活協同組合連合会サービス管理部長の篠崎清美氏は、「避けるというよりは、漠然とした不安があるのでは」として、行政機関などによるわかりやすい情報発信を改めて求めるとともに、「生産者と消費者の相互理解が安心して食べることにつながっていくのでは」とも指摘。いわき市で農業を営むファーム白石代表の白石長利氏は、自身を「農家と消費者を結ぶ『畑の仲人』」と称し、「安心・安全はもとよりいかに美味しいものを作るか。生の福島の声を野菜と一緒に届けていきたい」と、生産者としての使命感を強調。流通事業者の立場から、「うまいもんドットコム」などの食品通販サイトを運営する(株)食文化取締役の井上真一氏は、昨今のステイホームの流れにより食品通販の利用者が増えつつあるとする一方、家庭での食事に加工品が多くなりがちなことを懸念し、「食材そのものの魅力を発信したい」と、販路拡大に意欲を燃やす。ディスカッションの結びで、産業医科大学産業保健学部長の欅田尚樹氏は、「この1年間はコロナという新しいものに対する不安が続いてきたが、おうち時間の充実など、色々な工夫がなされてきた」とした上で、福島第一原子力発電所事故後の食品安全についても同様に、前例のない困難に対し検査体制の構築や生産段階での管理など、様々な取組があったことを忘れぬよう訴えている。
- 04 Mar 2021
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福島第一3号機、使用済燃料プールからの燃料取り出し完了
東京電力は2月28日、福島第一原子力発電所3号機の使用済燃料プールからの燃料取り出し作業が終了したと発表した(動画)。福島第一廃止措置に向けた中長期ロードマップで目標とする「2020年度内の取り出し完了」を達成。使用済燃料プール内の燃料取り出し完了は2014年12月の4号機に続くもの。同社では、続く1、2号機での燃料取り出し作業に向けて、「安全最優先で廃炉作業を着実に進めていく」としている。梶山弘志経済産業相は3月2日の閣議後記者会見で、「燃料デブリが残るプラントで使用済燃料の取り出しが完了したのは初めてのことであり、長期にわたる廃炉作業において重要な一歩」と述べた。3号機使用済燃料取り出しのイメージ(東京電力発表資料より引用)3号機の使用済燃料プールには、事故発生時、使用済燃料514体、新燃料52体が保管されていた。4号機に続く燃料取り出しに向けて、2017年度に燃料取り出し用カバー(全ドーム屋根)および燃料取扱機・クレーンの設置工事を完了。燃料取り出し開始は、当初「2018年度中頃」が目標とされていたが、燃料取扱機・クレーンの試運転で複数の不具合が連続して発生し2019年4月に延ばされた。2020年11~12月にはクレーンモーターのトラブルによる作業中断もあったが、燃料取り出しは12月24日時点で441体にまで達した。2020年度からは重量物落下によりハンドル部分に変形が生じた燃料への対応に向け、つかみ具の製作やつり上げ試験に入り、2021年2月3日よりこれら燃料の取り出しも開始。同28日に使用済燃料プール内の最後の6体を輸送容器から共用プール燃料ラックへ取り出す作業が終了した。続く2号機の燃料取り出し開始は2024~26年度が目標とされており、現在、燃料取扱設備の設計が進められている。
- 02 Mar 2021
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新井理事長、福島第一事故から10年を前に所感
原産協会の新井史朗理事長は2月26日、月例のプレスブリーフィングを行い、同日発表の理事長メッセージ「福島第一原子力発電所事故から10年を迎えるにあたって」を配布し説明(=写真)。改めて被災者の方々への見舞いの言葉とともに、復興・再生に向け尽力する多くの方々への敬意・謝意を述べた。事故発生から10年を迎えるのを間近に、復興が着実に進展し生活環境の整備や産業の再生などの取組が期待される「ふくしまの今」を伝える情報発信サイトを紹介。原子力産業界として、「福島第一原子力発電所事故の反省と教訓をしっかりと受け止め、二度とこのような事故を起こさないとの固い誓いのもと、たゆまぬ安全性向上に取り組んでいく」とした。また、昨夏東京電力より現職に就いた新井理事長は、福島第一原子力発電所に配属された新入社員当時を振り返りながら、「私を育ててくれた場所、思い出がたくさん詰まった場所」と思いをはせたほか、発災後、富岡町における被災住宅の家財整理など、復旧支援活動に係わった経験に触れ、「住民の方々の生活が事故によって奪われたことに対し誠に申し訳ない」と、深く陳謝。福島第一原子力発電所の廃炉に向けて「現地の社員たちが最後までやり遂げてくれると信じている」とした上で、「1日も早い福島の復興を願ってやまない」と述べた。将来福島第一原子力発電所事故を知らない世代が原子力産業界に入ってくる、「事故の風化」への懸念について問われたのに対し、新井理事長は、会員企業・団体を対象とした現地見学会などの取組を例に、「まず現場を見てもらい肌で感じてもらう」重要性を強調。事故を踏まえた安全性向上の取組に関しては、「一般の人たちにわかりやすく広報していく必要がある」などと述べた。また、2050年カーボンニュートラルを見据えたエネルギー政策の議論については、「まず再稼働プラントの基数が増えていくこと」と、既存炉を徹底活用する必要性を強調。経済団体から新増設やリプレースを求める声が出ていることに対しては、「60年運転まで考えてもやはり足りなくなる」などと、首肯する見方を示した。
- 01 Mar 2021
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電事連会長、福島県沖地震による対応状況を説明
電気事業連合会の池辺和弘会長は2月19日の定例記者会見で、13日23時過ぎに発生した福島県沖を震源とする大地震への対応状況を説明した。東京電力エリアで最大約86万戸、東北電力エリアで最大約9万戸発生した停電は翌14日午前9時までにすべて復旧。揺れの大きかった地域の原子力発電所においても、大きな影響はなく、福島第一原子力発電所では、原子炉注水設備や使用済燃料プール冷却設備など、主要設備に異常がないことが確認されたとしている。火力発電所では、地震の影響で複数のプラントが停止したものの、被害の軽微なプラントから順次運転を再開しており、電力供給に大きな影響はない状況だ。〈電事連発表資料は こちら〉なお、福島第一原子力発電所における今回の地震に伴う影響に関し、東京電力は22日の原子力規制委員会の検討会で説明。発災後の現場パトロールの状況を整理し、19日までに1、3号機の原子炉格納容器の水位に低下傾向があることが確認されたが、原子炉圧力容器底部温度や敷地境界モニタリングポストに有意な変動はみられず、外部への影響はないものとしている。ベース供給力不足のイメージ(電事連発表資料より引用)また、電事連は会見で今冬の需給状況に関し、「数年に一度レベル」の非常に強い寒波到来に伴い、12月下旬から1月上旬にかけて電力需給のひっ迫が生じたが、電力各社では燃料の追加調達や日頃稼働していない高経年火力を含めた発電所をフル稼働させるなど、供給力の確保に全力を尽くすとともに、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力融通も図り安定供給が確保されたとしている。1月下旬以降は、気温が平年を上回る日も多くなり電力需要は落ち着きを見せ、発電用LNGについても各社とも安定供給に必要な水準にまで回復。電力供給面では、関西電力大飯4号機(関西エリア供給力の4%に相当)が1月17日に発電を再開した。電事連は2月17日の総合資源エネルギー調査会会合で、今般の需給ひっ迫対応における課題として、(1)リスクを考慮した需給電力量(kWh)想定と評価の不足、(2)ベース供給力の不足、(3)全国大で燃料不足が発生している状況の把握遅れ(4)需給電力量不足に対するエリア間で融通調整に時間を要したこと、(5)節電協力のお願いの実施検討・調整に時間を要したこと――をあげている。
- 22 Feb 2021
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10年先の未来へ向けて、10年前を振り返る
早いもので、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故からもうすぐ10年という月日が経とうとしています。今世の中は新型コロナ一色に明け暮れ、10年も前の災害など回顧する余裕はない、という方も多いかもしれません。しかし目前の危機対応に視野が狭くなってしまう今だからこそ、一旦顔を上げてこの10年間の復興の軌跡を見つめなおすことも大切なのではないでしょうか。復興のエネルギー「今がどん底だから、向く方向は上しかないよね」私が最初に相馬市を訪れた2012年頃の被災地では、しばしばそんな言葉を聞きました。空元気、やせ我慢、と自分たちを笑いつつも前に進むその姿は、開き直った明るさとも言える独特のエネルギーを放っていたと思います。興味深いのは、そのようなエネルギーを持つことと、性別、年齢、職業などの背景には全く関係がなかったことです。ごみを拾う、放射能を測る、ご飯を作る、編み物をする、しめ縄を編む…多くの活動は斬新でも高度でもなく、自分の手が届く範囲でできる、些細な活動です。しかしそれは、多くの人が忘れかけていた日常を取り戻すための大切な第一歩であったと思います。復興が始まる場所大災害の後、本当に困っている多くの方の姿は、ニュースやメディアの中にはありません。災害の後には極端な体験をした少数の人々、声が大きい人、地位の高い人か専門家のみが報道されがちだからです。被災地で苦しむ多くの方は、極端な不幸もなく、かといって幸せというには遠く、単純な枠にはめられない茫漠とした「非・幸福」を抱えながらも華々しい「復興事業」からとり残されてしまった人々でした。この「物言えぬ多数派」が日常を取り戻すために何ができるのか。今振り返れば、それを模索することこそが復興の始まりだったように思います。重要なことは、最初に動き出すことのできた方は、誰よりも早くご自身の心の復興も遂げてきた、という点です。それはおそらく、復興という活動が単なる他者への貢献ではなく、「人は誰でも自分の手でできることがある」という自信を思い出させてくれる大切なプロセスであるからなのではないでしょうか。コロナ禍のチャンス当時、被災地の外では、被災地に貢献できないご自身を責める声も度々聴きました。「被災地に足を運びたいけれど、家庭や仕事があって何もできない」「苦しんでいる人がいるのにこんな普通の日常を送っていてよいのだろうか」九州豪雨災害や熊本・大分地震の際でも、心の中で支援したいと願っていても物理的な距離に阻まれ何もできなかった、という方も多かったと思います。災害時に何かをさせてもらえる、というのはある意味恵まれた経験と言えるのかもしれません。では、今のコロナ禍はどうでしょうか。国民のほぼ全員が被災した今般のコロナ禍では、度重なる禁止事項の羅列によって社会全体がえも言えぬ暗さに覆われています。でも見方を変えれば、今回の災害は、これまでどこか遠くの「被災地」に居た救うべき人々が、皆さんのすぐ隣にいるということもできるのです。「ソーシャル・ディスタンス」という言葉の下に人とのつながりを絶たれてしまった結果、多くの方がすぐそばにある「被災地」、すぐそばにいる「被災者」に気づけなくなっているのかもしれません。でも多くの被災地でそうであったように、支援の芽はおそらく全員の手の中にあります。そしてその支援こそが、私たち自身を復興へと導いてくれる原動力なのではないでしょうか。東日本大震災の10年の歴史は、私たちにそのことを思い出させてくれています。新たなリンゴの苗をもとめてもちろん東日本大震災とコロナ禍は規模や種類の面で全く異なります。けれども、何かをするという支援、させてあげるという支援が明日へとつながることに変わりない、と私は思っています。「たとえ明日世界が滅びようとも、私は今日リンゴの苗を植える」10年前、津波に襲われた後の被災地ではこの言葉が多くの方の口に上りました。10年が経ち、新たな災害に直面している私たちの多くは、今まだコロナの被災地に植えるべきリンゴの苗を見つけられずにいます。これから10年先の未来へ向け、何を植え、どのように踏み出せばよいのか。10年前の震災から現在へと伸びた軌跡をたどることが、その先にある10年を生み出すための一つの糧になればいいな、と思います。
- 17 Feb 2021
- COLUMN
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福島県産食材で料理研究家・寺田真二郎氏がオンラインクッキング
福島県産食材の魅力を発信する料理ワークショップが1月25日、福島県郡山市内の会場を拠点とし、神奈川、愛知、京都の料理教室(ABCクッキングスタジオ)を結ぶオンライン形式で開催された。復興庁主催(農林水産省・福島県協力)による「作って、食べて、投稿しよう!ヘルシー美食講座」と題する今回のワークショップは、料理研究家の寺田真二郎氏を講師に迎え、「常磐もの」として質の高さに定評があるヒラメをメイン食材とした創作料理の調理方法を紹介するとともに、作った料理の魅力がSNSを通じて拡散されるようインスタグラマーによる撮影講座も実施。「常磐もの」のヒラメを使ったフルーティカルパッチョ(上)とトマトリゾット寺田氏は「トマトリゾット」と「フルーティカルパッチョ」の2種類の創作料理を披露。「トマトリゾット」には三浦大根(神奈川)、「フルーティカルパッチョ」には蒲郡みかん(愛知)と九条ねぎ(京都)と、各会場のご当地食材も使用。カルパッチョでは、ヒラメの他、福島県産食材として、「料理に華やかな印象を与えシャキシャキ感がある」と絶賛するフリルレタスを添え、九条ねぎとザーサイを加えたソースをかけるなど、食感や彩りにも工夫を凝らした。リゾットには福島県産米「天のつぶ」を使用。 ワークショップではSNSによる拡散を目指し「インスタ映え」する料理撮影のコツも披露(神奈川会場で実演するモデルの中村江莉香さん)各教室の模様をモニターで見つつ寺田氏は、食材の持ち味や調理のポイントを説明しながら実演。料理が出来上がった後は、「インスタ映え」も意識し、盛り付けやランチョンマットにもこだわりを見せた。ワークショップに招かれたスマート農業でフリルレタスを生産する(株)KiMiDoRi(川内村)の兼子まや氏は、カルパッチョを試食し「味もよく見た目もおしゃれ」と、続いてリゾットも口にし「ヒラメのふわっとした食感。大根が入っていてダイエットにもいいのでは」と、顔をほころばせた。今回、感染症対策を徹底した上で会場を4か所に限定しライブ中継を併用した開催となったが、京都会場の参加者は、「福島には行ったことがない。他の地域とつながりができたことも意味があった」と話している。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 29 Jan 2021
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東京電力「原子力改革監視委員会」、事故を踏まえた原子力安全改革の取組を評価
東京電力の外部有識者による諮問機関「原子力改革監視委員会」(委員長=デール・クライン氏〈元米国原子力規制委員会委員長〉)は1月27日に会合を開き、同社が2013年より取り組んでいる「原子力安全改革プラン」について総括的にレビューした答申案を取りまとめた。同プランに基づき東京電力は、「安全意識の向上」、「技術力の向上」、「対話力の向上」を柱に継続的改善に取り組んでおり、進捗状況を四半期ごとに公表している。答申案では、「安全最優先・ガバナンス強化・リスク管理の強化」、「学ぶ姿勢・技術力の強化」、「緊急時対応力の強化」、「リスクコミュニケーションの強化」、「内部監視機能の向上」、「被ばく線量の低減」の個別分野ごとに所見を述べた上で、「8年以上にわたり原子力安全改革に取り組み、組織が正しい方向に向かって着実に進捗している」と評価。学ぶ姿勢の浸透や技術力の維持に関しては、「運転を経験していない職員が増える中、実操作の経験を付与しながら訓練・研修を行い、着実な運転員の力量向上に努めている」としている。リスクコミュニケーションについては、「職員自らが地域の声に触れて感度を磨き業務に反映させる」ことを期待。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けて、安全監視機能の重要性も述べ、専門性を有する人材の強化なども提言している。会合終了後、記者会見(オンライン)に臨んだクライン委員長は、まず、2020年8月に逝去したバーバラ・ジャッジ同委副委員長への追悼の意を述べ、今後の委員会体制に関し、ジャッジ氏が取り組んできたコミュニケーション・安全文化に通じた女性の専門家の人選を進めるとともに、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を見据え、技術系の適任者を検討している考えを明らかにした。また、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関しては、「安全の問題よりも感情の問題がある」として、政府、東京電力、アカデミアなどが安全性について丁寧に説明を行い人々の不安が払拭されるよう努めるべきと強調。福島第一原子力発電所事故から間もなく10年を迎える現状下、答申案は「事故を経験していない社員が増える」などと指摘。これに関し、クライン委員長は、「東京電力は事故の当事者として事故から学んだ教訓を広く発信し、原子力の安全性向上に貢献していくことが重要」と、事故の反省と教訓を忘れてはならないことを改めて述べた。
- 28 Jan 2021
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規制委、福島第一事故に係る調査・分析で中間取りまとめ案
原子力規制委員会は1月27日の定例会で、同委の福島第一原子力発電所事故調査に係る検討会による中間取りまとめ案について報告を受けた。取りまとめ案は今後、パブリックコメントを経て、3月上旬にも正式決定となる運び。同検討会は2019年、廃炉作業の進捗に伴う原子炉建屋内へのアクセス性向上、新たな知見・情報の蓄積を踏まえ、約5年ぶりに再開。原子炉格納容器からの放射性物質の放出、原子炉冷却に係る機器の動作状況など、事故のプロセス解明に向け調査・分析を進めてきた。中間取りまとめ案では、事故発生時の2号機のベント(格納容器内の放射性物質を含む気体を外部環境に放出し内部の圧力を降下させる措置)について、原子炉格納容器から排気筒に通じるベントライン中に設置されたラプチャーディスク(外部環境との最終バウンダリ)が破裂しておらず、ラプチャーディスク付近の線量率がベントに2回成功した3号機より3~4桁低かったことから、「一度も成功しなかった」と判断。一方、ベントが行われた1、3号機についてはベントガスの逆流を結論付け、1号機では「水素が原子炉建屋に逆流した可能性がある」とみて、水素爆発との関連性を今後の調査検討課題の一つとしてあげた。また、1~3号機原子炉格納容器上部のシールドプラグ(直径約10m・厚さ60cmの鉄筋コンクリートを3枚重ねた蓋)下方の放射能汚染レベルが高いことを確認したとして、「安全面と廃炉作業面において非常に重要な意味を持つ」などと指摘。特に、2、3号機については、シールドプラグの上から1層目と2層目の間に大量のセシウム137(20~40ペタベクレル)が存在すると結論付けた。3号機水素爆発に係る「多段階事象説」のイメージ(原子力規制委員会発表資料より引用)福島中央テレビ他の技術協力を得て行われた水素爆発の詳細分析で、3号機で発生したものについては、超解像処理(毎秒60コマ)や地震計記録などから、複数の爆発・燃焼が積み重なった「多段階事象」との見方を示した。更田豊志委員長は、定例会終了後の記者会見で、今回の調査・分析を通じて確認されたシールドプラグの汚染状況について、「廃炉戦略に与えるインパクトは非常に大きい。遮蔽の施し方など、簡単ではないだろう」と述べた。
- 27 Jan 2021
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菅首相が施政方針演説、2050年カーボンニュートラル実現に向けた施策など
菅義偉首相は1月18日、通常国会の開会に際し施政方針演説を行った。菅首相はまず、新型コロナウイルス感染症の早急な終息に向けて、様々なソーシャルワーカーらに対する謝意を述べるとともに、自身も戦いの最前線に立ち、自治体関係者とも連携しながら「難局を乗り越えていく決意」を強調。3月に東日本大震災発生から10年を迎えることに関しては、改めて犠牲となった方々への冥福を祈り被災したすべての方々への見舞いの言葉を述べた上で、心のケアも含めたきめ細やかな取組を継続するとともに、福島については、2023年春の一部開所を見込む浜通り地域の復興・再生を目指した「国際教育研究拠点」などを通じ、「復興の総仕上げに向け全力を尽くす」と述べた。また、10月の所信表明演説で掲げた2050年カーボンニュートラルについては、「環境対策は経済の制約ではなく、世界経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換、力強い成長を生みだすカギとなるもの」と強調し、今後所要の予算措置を図っていくことを明言。さらに、次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクル他、野心的なイノベーションに挑戦する企業を支援し最先端技術の開発・実用化を加速するとともに、水素や洋上風力発電などの再生可能エネルギーの拡充、送電網の増強、安全最優先での原子力政策を進めることで、「安定的なエネルギー供給を確立する」とした。この他、科学技術政策の関連で、12月の小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセルの地球帰還を称賛した上で、「未来を担う若手科学者の育成」に意欲を示し、昨今の都市部から地方への人の流れを踏まえ、ポストコロナを見据えたテレワーク環境の整備や地方移住への後押しなど、地方創生や働き方改革の取組にも言及。米国バイデン政権の発足に関しては、「日米同盟はわが国外交・安全保障の基軸」などと述べ、バイデン次期大統領と早い時期に会い日米の結束強化を確認し、新型コロナ対策や気候変動などの共通課題に取り組んでいくとした。今夏の東京オリンピックについては、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会とすべく、感染対策を万全なものとして、世界中に希望と勇気を届ける大会」となるよう準備を進めていくと述べた。
- 18 Jan 2021
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学術会議他、東日本大震災発生10年で40学会が参集しシンポ開催
東日本大震災発生から間もなく10年を迎えるのを前に、関連学会が一堂に会しこれまでの活動を振り返り今後の取組について考えるシンポジウムが1月14日に開催された。日本学術会議と防災学術連携体(防災減災・災害復興に関わる学会ネットワーク)の主催によるもの。感染症拡大防止のためオンラインでの開催となったが、アクセス数は約40学会による発表を合計し5,000件を超え、今回のシンポジウムを通じ、「分野横断の連携」が災害への備えや発災後の復興にとって重要なことなどが示された。〈資料等は こちら〉日本原子力学会の中島会長、被災地支援に向け展開してきた「福島特別プロジェクト」の活動を紹介福島第一原子力発電所事故の関連では、日本原子力学会が事故調査や廃炉に関わる専門的検討、被災地住民への支援など、これまでの取組について発表。事故発生から丁度10年となる3月11、12日には活動成果を振り返るとともに若手を交え原子力の未来像について議論するシンポジウムを行うことが紹介された。学術的連携に関しては、2016年に発足した36の学協会が参加する連絡会「ANFURD」をあげた上で、「社会科学的視点が要求される事柄もこの10年間で顕在化してきた」と、他学会との接点の拡大・緊密化を今後の課題として示唆した。日本森林学会の三浦氏(森林研究・整備機構)、次の10年に向け「記録し伝えること、対話を深めること、備えること」を強調日本地震工学会は、原子力学会との協力により発刊した技術レポート「原子力発電所の地震安全の原則」(2019年)を紹介し「外的事象については他分野の学会とも連携すべき」と指摘。日本森林学会は、森林内の放射性セシウム分布・動態に関するデータや木材学会との協力による産業影響調査について述べ「分野を越えた対話を」と、次の10年に向けた課題を提示するなど、それぞれ分野横断の重要性を強調した。災害のアーカイブ化・伝承に関しては、日本災害情報学会が2019年に双葉町に開設された「東日本大震災・原子力災害伝承館」について発表。チェルノブイリ博物館やネバダ核実験博物館など、海外のアーカイブ施設とも対比しながら、災害・復興の検証やコミュニケーション手法に関わる課題をあげ、「『何を伝え、何を学んでもらうか』を今後十分検討しなければ原子力災害の伝承は難しい」と述べた。原子力災害からの復興に関しては、「浜通り地域の生産動向で建設業の増加は復旧活動によるもの。これからが課題」(日本地域経済学会)、「長期にわたる災害の特質を踏まえた法制度や、原子力防災省のような行政組織の創設が必要」(日本建築学会)といった発言があった。シンポジウムでは、災害廃棄物対策や発災時の保健医療・公衆衛生活動に関わる課題、阪神・淡路大震災との対比の他、昨今の情勢に鑑み、自然災害の頻発・激甚化、新型コロナウイルス感染症による影響を危惧する声もあがった。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 15 Jan 2021
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新潟県委員会、福島第一原子力発電所事故による避難生活で検証結果取りまとめ
新潟県の有識者委員会は1月12日、福島第一原子力発電所事故が及ぼした避難生活に関する検証結果を取りまとめ、花角英世知事に報告を行った。県は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関わる議論開始の前提として、福島第一原子力発電所事故の「3つの検証」(事故原因、健康と生活への影響、安全な避難方法)を進めており、今回、2020年10月の「事故原因」に続き、「健康と生活への影響」に関する検証結果がまとまった格好だ。同委員会では2017年より、新潟県内居住の避難者へのアンケートやテーマ別調査から得られたデータをもとに、支援団体の声、健康への不安、家族形態別にみた避難生活の課題など、多角的視点から検証を行ってきた。委員会座長として検証結果の取りまとめに当たった新潟大学人文学部教授の松井克浩氏は、報告書序文の中で、「事故による影響が極めて深刻で、長期にわたって続き、回復が難しい」ことがわかったとした上で、「避難者個々の状況も多様化しており、それぞれのケースに応じたきめ細やかな支援や調査を今後とも長期的に続けていく必要がある」と、述べている。報告書によると、福島第一原子力発電所事故による新潟県への避難者数は、2012年5月の6,440人が2020年9月には2,209人となったものの、避難生活の長期化とともに、単身・二人世帯の増加(震災前:32.4%、2017年:50.2%)、3世代同居世帯の減少など、避難の過程で家族が分散した状況がみられている。また、これまで多くの大規模自然災害に見舞われ復興に取り組んできた新潟県だが、原子力災害の生活再建に関わる特徴を、(1)事故の全体像がなかなか明らかにならず線量に対する認識の差を背景に異なるタイミングで広域避難が発生、(2)放射能汚染被害の捉え方に個人差が大きく帰還の有無にも差が出る傾向、(3)東京電力からの賠償金が支援の中心――などと対比・分析。足かけ4年にわたる検証作業で議論された調査データを整理し、報告書では結びに、「現時点で言えること」として、7項目の結論を述べている。例えば、「震災前の社会生活や人間関係などを取り戻すことは容易ではない」といった仕事や地域コミュニティの回復が困難な状況や、「健康被害への不安がリスク対処行動をもたらし生活の質を低下させている」といった放射線リテラシーにつながる課題も指摘。また、広域避難によって生じる自治体間の支援策の違いや、発災から間もなく10年を迎える現在において、「避難者が抱える問題や困難が見えにくくなっている」といった懸念を述べ、「避難者ごとの課題が個別化・複雑化する中で、長期的な支援が必要」などと提言している。
- 13 Jan 2021
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