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消費者庁が食品の風評被害で調査結果を発表
消費者庁は3月10日、被災地産食品の買い控え行動の実態など、風評被害に関する消費者意識調査の結果を発表した。東日本大震災・福島第一原子力発電所事故を受け2013年より継続的に実施しているもので、今回の調査は2020年1~2月に行われ、被災地域(岩手、宮城、福島、茨城)と大消費地(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫)に居住する20~60代の男女約5,000人から有効回答を得た。それによると、普段の買物をする際に食品の産地を「気にする」または「どちらかといえば気にする」と回答した人のうち、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」という理由をあげた人の割合は13.6%と、これまでで最少となった。この他の理由としては、「産地によって品質(味)が異なるから」が27.8%、「産地によって鮮度が異なるから」が20.5%、「産地によって価格が異なるから」が19.7%となっている。「放射線による健康影響が確認できないほど小さな低線量のリスクをどう受け止めますか」との質問に対しては、「基準値以内であればリスクを受け入れられる」または「殊更気にしない」と回答した人の割合が53.2%で2016年2月の調査から増加傾向。食品中の放射性物質の検査に関しては、「検査が行われていることを知らない」と回答した人の割合が46.9%と、これまでで最多となり、「基準値を超える食品が確認された市町村では、他の同一品目の食品が出荷・流通されないようにしている」ことを知っていると回答した人の割合は37.6%と、これまでで最少となった。また、消費者庁は、同調査結果と合わせ、被災地産食品の購買行動や放射性物質に関する理解度などを分析するインターネット意識調査の結果も発表。2020年1月に全国の20~60代の男女を対象として実施された。福島県産の食品を購入している人に、米、野菜類、果実類、魚介類、牛肉の品目別に、複数回答を可とし理由を尋ねたところ、いずれも「おいしいから」、「安全性を理解しているから」、「福島県や福島の生産者を応援したいから」が多かった。一方で、福島県産の食品を購入していない人に同じく理由を尋ねたところ、いずれの品目についても、「日常生活の範囲で売られていないから」が30~40%台で最も多く、「放射性物質が不安だから」は10%台。性別・年代別で比較すると、「放射性物質が不安だから」をあげた割合は、いずれの品目でも40代女性が最も多かった。また、品目別では、福島県産の米を「購入している」が9.4%、「購入していない」が40.8%、「購入しているかわからない」が49.8%だった。「購入していない」と回答した人の割合は、60代女性で最も多く55.7%、次いで50代女性の51.1%、40代女性の48.7%。「購入しているかわからない」と回答した人の割合は、20代男性で最も多く62.1%、次いで20代女性の61.5%、30代男性の56.0%となっている。これらの調査結果を踏まえ、消費者庁では、引き続き食品中の放射性物質に関する情報発信やリスクコミュニケーションの取組を推進するとしている。
- 12 Mar 2020
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福島第一原子力発電所事故から9年、東京電力・小早川社長が訓示
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故から9年を迎え、東京電力の小早川智明社長は3月11日、社員に訓示を行った。発災時刻の14時46分に合わせ1分間の黙とうを行った後、小早川社長はまず、「震災で亡くなった方々のご冥福を祈るとともに、ご遺族の皆様に深い追悼の意を表したい。今なお福島の皆様、広く社会の皆様に多大なご負担・ご心配をかけていることに心からお詫び申し上げる」と述べた。その上で、先般の双葉町、大熊町、富岡町の一部地域での避難指示解除、14日には常磐線の全線開通、26日には東京オリンピック聖火リレーの「Jヴィレッジ」スタートが予定されるなど、福島の復興に向けた動きをあげ、「今後は『復興と廃炉の両立』が大きなテーマ」、「地域の皆様に信頼してもらえるよう取り組んでいく」と強調。福島第一原子力発電所の廃炉に関わる産業創出などを通じた復興へのさらなる貢献に意欲を示した。また、福島第一原子力発電所事故の反省に立ち、「原点は福島。安全に終わりはない」と社員らに訓示。「福島への思いを新たに日々の業務にしっかりと取り組み、一丸となって福島への責任を果たしていく」と強調した。同日、原子力規制委員会では、更田豊志委員長が原子力規制庁職員に訓示を行った。「多くの方々の人生を変え、いまだに多くの方々が不自由な生活を余儀なくされている」と、福島第一原子力発電所事故の及ぼした影響を強調し、職場で事故について考え話し合う時間を持って欲しいと述べた。また、業務への取組姿勢に関して、「人間には現状維持を望む傾向がある」と危惧し、4月からの新検査制度導入も踏まえ、既存の文書や前例に過剰に依存することなく、「そもそもどうあるべきか」に立ち返って考えるよう職員らに求めた。
- 11 Mar 2020
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「福島水素エネルギー研究フィールド」が浪江町に開所、製造される水素は東京五輪にも供用
福島県浪江町で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業が2018年より建設を進めてきた「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R:Fukushima Hydrogen Energy Research Field)の開所式が3月7日に行われた。〈NEDO発表資料は こちら〉FH2R では、18万平方mの敷地内に設置された2万kWの太陽光発電による電力を用いて世界最大級となる1万kWの水電解装置で年間約200トンの水素を製造する。今後、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、昼間の太陽光発電による余剰電力の発生が見込まれるが、FH2Rではこれを水素に変換し貯蔵・利用する技術の実証を行い、将来的に水電解技術の商用化に向けて、世界最先端の高効率で低コストの水素製造技術の確立を目指す。資源エネルギー庁の水素・燃料電池戦略室では、「再エネの大量導入は調整力確保とともに余剰の活用策が必要。水素利用のポテンシャルは大きい」と期待を寄せている。また、FH2R で製造する水素は、東京オリンピックの聖火台・聖火リレートーチ(福島県、愛知県、東京都の一部)を始め、大会車両の燃料電池自動車(FCV)500台、選手村の定置用燃料電池などにも供し、日本の技術力発信にも寄与する。FCVは、既存のガソリン車と同程度の機能を持ち、電気自動車(EV)と比べ航続距離が長く(500km以上)充てん時間も短い(3分)ほか、走行中の排出は水のみである。開発中の次世代FCVを運転し開所式に訪れた安倍首相(©経産省)FH2R開所式には安倍晋三首相他、関係閣僚、内堀雅雄福島県知事らが出席。今回の福島訪問で14日に全線開通する常磐線の双葉駅を視察し常磐自動車道常磐双葉インターチェンジの開通式に出席した後、FH2Rを訪れた安倍首相は、テープカットに臨むとともに施設内を視察し、「被災地の皆様の故郷への思いが大きな力となり、復興は確実に前進している」、「未来を見据えて新しい福島をつくっていく」などと述べた。
- 09 Mar 2020
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福島第一、1号機原子炉格納容器内部調査に向けアクセスルートの構築が進む
東京電力は2月27日、福島第一原子力発電所廃炉の進捗状況を発表した。燃料デブリ取り出しに向けては、1号機原子炉格納容器内部調査のためのアクセスルート構築作業で、2月12日に所員用エアロック「X-2ペネ」の内扉に1か所目の孔(直径約0.2m)の切削が完了した。内扉には3か所の孔を施工する予定で、早ければ3月上旬頃から続く2か所目の孔の切削に入る見通し。同機の原子炉格納容器内部調査については、2017年3月に自走式調査装置(形状変化型ロボット)を投入し、ペデスタル(原子炉圧力容器下部)外の画像取得・線量測定を行い堆積物が確認されている。アクセスルートを構築後、原子炉格納容器内に潜水機能付きのボート型アクセス装置を導入し、堆積物の形状・厚さ・燃料成分含有状況の確認、少量サンプリングなどを行う。3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しについては、2月26日時点で566体中84体の取り出しが完了。昨夏に着手した1/2号機排気筒の解体工事は、23ブロックに分けて解体する計画となっており、2月1日に11ブロック目までが完了した。5月上旬の解体完了を目指す。東京電力では、プロジェクトマネジメント機能や安全・品質面のさらなる強化を目指し、4月に福島第一原子力発電所に関わる組織改編を実施することとしている。組織改編に伴い東京から現地へ70~90名の要員シフトが計画されており、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明プレジデントは2月27日の記者会見で、これまでに発生したトラブルを振り返り、「作業は現場で行われる。東京ではなく現場でものを考える必要がある」と強調した。なお、来日中のラファエロ・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、26日に福島第一原子力発電所を視察した。同氏は、来日に先立ち、IAEA主催の核セキュリティ国際会議(2月10~14日、ウィーン)の際、政府代表として出席した若宮健嗣外務副大臣より、発電所の処理水に関する資源エネルギー庁小委員会の報告書を受け取っており、27日の梶山弘志経済産業相との会談で、IAEAとして同報告書のレビューを行っていることを述べた。
- 28 Feb 2020
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原産協会・高橋理事長がプレスブリーフィング、「PAI原子力産業セミナー」開催結果など紹介
原産協会の高橋明男理事長は2月20日、定例のプレスブリーフィングを行った。高橋理事長は最近の原子力人材確保・育成に関する取組について紹介。原産協会が関西原子力懇談会との共催で毎年行っている学生対象の合同企業説明会「PAI原子力産業セミナー2021」について、2月1日の東京会場に45社、16日の大阪会場に36社の関係企業・機関が出展したと説明した。計81社の出展数はこれまでで最多となった。一方、参加学生数は東京会場が140名、大阪会場が115名の計255名で前回より減少。高専の試験期間と重なったことを要因の一つにあげ、今後さらに分析を行うとしている。因みに前回は2019年3月3日(東京)と6日(大阪)に開催され、計339名の参加があった。また、2月12日に行われた「原子力人材育成ネットワーク」報告会で年間の活動実績とともに、原子力分野のジェンダーバランス改善について発表が行われたことを披露。同ネットワークが支援し、このほど日本で初の開催となった「IAEA国際スクール 原子力・放射線安全リーダーシップ」(IAEA主催、東海大学共催)が17日に開講したことも紹介した。現在開催中の同スクールには、主にアジア地域から若手の技術者・行政官ら計29名が参加。2週間にわたり講義・演習、福島第一原子力発電所見学などのカリキュラムが組まれており、28日の閉講式ではIAEAより修了証の授与が行われる。この他、高橋理事長は、最近の原子力を巡る動きとして、福島第一原子力発電所の処理水に関する資源エネルギー庁の委員会が10日に報告書を取りまとめたことに触れた。同報告書では、技術的に実績があり現実的な処理水の処分方法として、海洋放出と水蒸気放出をあげた上で、国内での実績や放出設備の取扱いなどから、海洋放出の方がより確実に実施できるとしている。記者との質疑応答の中で、高橋理事長は、風評被害に配慮し「地元、漁業関係の方々に対し丁寧に説明していく必要がある」と述べた。
- 21 Feb 2020
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福島県産オリジナル米「福、笑い」と命名、内堀知事「トップブランド」を目指す
福島県の内堀雅雄知事は、2月10日の定例記者会見で、トップブランド米としての流通を目指す県オリジナル米の愛称を、「福、笑い」と決定したと発表。これは、福島県が2018年秋より「県産米全体のイメージと価格をリードする高品質米」と位置付けるべく取り組んできたもので、今回愛称が命名されたのは、県農業総合センターで有望な新品種候補として選ばれた奨励品種の一つ「福島40号」。内堀知事は、愛称の決定に際し、県内外から約6,200件の応募を受け、流通関係者、料理人、クリエイターなどの意見をもとに選考したとしており、「手にした皆様に笑顔が訪れるようなお米になって欲しいとの思いを込めた」と説明。さらに、「県産米のトップブランド品種として引き続き関係の皆様と連携しながら、生産振興や販売促進に取り組んでいく」と、今後の販路開拓に向けての意気込みを述べた。「福、笑い」は2021年秋に本格デビューする。福島県産米の価格水準は、震災後に全国平均を大きく下回ったが、近年回復傾向にあり、農林水産省が昨春に取りまとめた「平成30年度福島県産農産物等流通実態調査報告書」によると、2017年度で全銘柄平均に対しマイナス2.5%にまで縮小した。同報告書では、北海道産の「ゆめぴりか」や山形県産の「つや姫」など、各道県発で売り出されている高価格帯米を紹介し、オリジナル米の市場投入に際しては、慎重なマーケティング戦略の策定が重要とも指摘している。他道県産米との競争を見据え、内堀知事は、「福、笑い」の生産に関し、徹底した品質基準の保持や生産者の登録制を、広報戦略として、プレデビューイベントや試験販売を通じた流通関係者や消費者へのPRを図るとしている。
- 10 Feb 2020
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東京電力「原子力改革監視委員会」、重点課題の改善状況「大きな進捗」と評価
東京電力の諮問機関「原子力改革監視委員会」(デール・クライン委員長〈元米国原子力規制委員会委員長〉)が2月4日に開かれ、同社が行う原子力安全改革の進捗、前回会合でレビューされた自己評価に対する改善状況について報告を受けた。東京電力は、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、「安全意識の向上」、「対話力の向上」、「技術力の向上」を軸に原子力安全改革プランを進めている。2019年1月の前回委員会会合では、原子力安全改革における(1)組織・ガバナンスの強化、(2)人財育成の強化、(3)コミュニケーションの改善、(4)原子力安全文化の醸成、(5)内部監視機能の向上――の各重点課題に対する自己評価についてレビューし提言を示した。今回の会合では、提言を踏まえた同社の取組状況について、「より厳しい自己評価を実施し、組織・ガバナンスを強化する上で大きな進捗がみられた」などと評価。また、コミュニケーションについては、「『伝える』から『伝わる』への活動を展開しているが、一層取り組んで欲しい」としている。会合終了後、記者会見を行ったデール・クライン委員長は、「外部からの指摘を待たずに、自分で気付くことができているかをチェックした」と述べ、自組織を厳しく評価し弱点を見つける重要性を強調。さらに、情報発信については、「『何ベクレル』といった数値だけでなく、誰でもわかるように説明することが大事」と指摘した。東京電力は、原子力安全改革プランの進捗状況を四半期ごとに取りまとめており、2019年11月に発表した年度第2四半期の進捗報告では、6月の山形県沖地震発生時に柏崎刈羽原子力発電所で生じた通報内容の誤りを踏まえ、通報連絡用紙の見直し、当番体制の強化、訓練実施などの対策を講じ、立地自治体による確認を受けたとしている。クライン委員長は、12月に柏崎刈羽原子力発電所を訪れており、東京電力が進めている安全対策を現場で視察し、「通常運転および様々な仮想の事故シナリオに対して、大きな安全マージンを加えるもの」などと評価した。
- 05 Feb 2020
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経産省、「福島イノベーション・コースト構想」の情報発信ポータルサイトを開設
経済産業省は2月3日、浜通り地域の産業創出を目指す「福島イノベーション・コースト構想」に関する情報発信ポータルサイト「Hama Tech Channel」を開設した。同構想のもとで革新的な事業創出に取り組む企業、そこで活躍する人たちへのインタビューをウェブ上で紹介し、SNSを通じた発信拡大も図る。「Hama Tech Channel」開設と合わせ、発信コンテンツの一つ、「福島イノベーション・コースト構想」関連の施設・企業や先端テクノロジーについて取り上げる「浜からビジョン」の第1弾記事が公開された。ここでは、南相馬市の「福島ロボットテストフィールド」の若手エンジニア・三枝芳行氏のロボット開発に抱く想いを紹介。今春に全面オープンする「福島ロボットテストフィールド」は、東西約1,000m、南北約500mの敷地内に「無人航空機エリア」、「インフラ点検・災害対応エリア」、「水中・水上ロボットエリア」、「開発基盤エリア」が設けられ、実際の使用環境を再現しながら、陸・海・空で活躍するロボットの研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練を行うことができる。幼少の時分からロボットが好きで大学生の頃はロボコンにも参加したという三枝氏は、インタビューの中で、「福島ロボットテストフィールド」のメリットとして、「同じ技術者として使用者に伴走しアシストする」と、開発支援の手厚さを強調している。この他、福島県出身の若者が地元で新しいことにチャレンジする姿を取り上げる「地元の星」、福島へ移住した人たちへのインタビューや移住・起業の支援制度を紹介する「移住リアルレポート」など、順次コンテンツを設けていく。
- 04 Feb 2020
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福島県知事が10月にドイツ他訪問、医療関連企業の進出促進や県産品PRへ
福島県の内堀雅雄知事は9月9日の記者会見で、10月6~12日にかけて、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)とハンブルク州、スペインのバスク州を訪問すると発表した。NRW州はドイツを代表する電力会社であるE. ON社とRWE社が立地しており、福島県と同州とはこれまでも再生可能エネルギー分野で覚書を締結し連携関係を築いてきた。今回の訪問で知事は、医療分野における展示会の相互開催も含め、これまでの経済交流をさらに深めていくよう覚書を更新することとしており、県内企業の海外進出促進に向け「しっかり後押ししていきたい」と、意欲を見せている。また、各訪問先では、各州トップとの会談の他、セミナーやレセプションを通じ、福島県の復興に向けた取組や食の魅力などを積極的に発信する考えだ。内堀知事は2019年に入って、1月の香港訪問、7月の「サマーダボス」(中国・大連市)出席など、県産品・観光のPRに向けた海外トップセールスを積極的に行っており、今回の欧州訪問に際しても、「世界の方々に、『福島の時計の針は止まっていない』、一方で『震災から8年余り経っても難しい課題を抱えている』という、『光と影』の両面を伝えることが重要」と強調した。
- 09 Sep 2019
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