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UAE SMRやマイクロ炉の導入に向け米国ベンダー3社と覚書
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)は、連邦内での小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の導入に向けて、12月3日から5日にかけて、これらを開発している米国ベンダーのGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社、およびウェスチングハウス(WH)社の3社と、相次いで協力覚書を締結した。これらの覚書は、11月30日から12月12日までUAEのドバイで開催されている「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」の会期中に結ばれた。ENEC社はその開幕の前日、先進的な原子炉技術を通じて連邦の脱炭素化を加速するという「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を始動しており、3件の覚書締結は同プログラムの一環ということになる。UAEでは現在、連邦初の原子力発電設備となるバラカ発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の建設が順調に進展中。連邦原子力規制庁(FANR)は11月17日に同発電所の4号機に運転許可を発給しており、2024年の起動が見込まれている。ENEC社によると、すでに営業運転を開始した1~3号機はアブダビ首長国におけるクリーン電力の80%以上を賄うなど、UAEの発電部門や重工業などエネルギー多消費産業の脱炭素化は大幅に進んでおり、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するというUAEの目標達成に大きく貢献している。ENEC社は「アドバンス・プログラム」でこのような大型炉の建設経験と国際的な先進的原子炉サプライヤーのネットワークを統合、エネルギー多消費産業の脱炭素化を一層加速して、世界のクリーン・エネルギーへの移行を主導していく方針だ。同プログラムでは、SMRやマイクロ原子炉など最新の原子力技術を評価し、国内関係者や国際的なパートナーらとともにこれらの原子炉の建設に向けた具体的な道筋を決定付けるとしている。ENEC社はまず、12月3日にGEH社と協力覚書を締結しており、同社製SMR「BWRX-300」をUAEのみならず、中東地域やアフリカで建設する機会を共同で模索するとした。「BWRX-300」は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得した同社製原子炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。両社は「BWRX-300」のように小型で経済的、かつ柔軟性の高い運転が可能な原子炉で安価なクリーン電力を生産し、エネルギーの持続可能性や脱炭素化を追求する世界の潮流に歩調を合わせていく。この協力はまた、UAEが米国と進めているクリーン・エネルギーの促進イニシアチブ(U.S.-UAE Partnership for Advancing Clean Energy=PACE)の目標を達成する一助にもなるとのこと。ENEC社はまた、4日にテラパワー社と協力覚書を締結、署名式にはテラパワー社のビル・ゲイツ会長が同席した。同社が開発した電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉「Natrium」で、送電網の安定化やクリーン・エネルギーへの移行促進に向けた共同評価を行う方針。「Natrium」は溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることにより、発電所のピーク時の電気出力を50万kWまで拡大して5時間以上稼働できるなど、コスト面の競争力が高いという。「BWRX-300」と同じく、「Natrium」を中東地域やアフリカ、南アジア地域でも建設することを目指し、両社が結んだライセンシング契約や「PACE」イニシアチブに基づいて「Natrium」の商業化を世界規模で進めていく。ENEC社はさらに、5日にWH社と協力覚書を締結しており、同社製のマイクロ原子炉「eVinci」をUAEやその他の国で建設し、CO2排出量実質ゼロ化に貢献する可能性を共同で研究する。「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等での熱電併給が主な目的だが、エネルギー供給保障や地球温暖化の対策としても解決策になり得るという。ENEC社はアドバンス・プログラムの牽引役としてSMRやマイクロ原子炉の技術を評価し、今後の建設につなげる考えだ。ENEC社のM.アル・ハマディCEOは、COP28 に向けたUAEのメッセージとして「原子力はCO2排出量の実質ゼロ化に不可欠のエネルギー源であり、UAEのクリーン・エネルギー化戦略においても中心的役割を担っている」と強調した。(参照資料:ENEC社の発表資料①、②、③、④、WH社、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2023
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加サスカチュワン州 マイクロ炉の建設に向け補助金
カナダのサスカチュワン州政府は11月27日、ウェスチングハウス(WH)社製のマイクロ原子炉「eVinci」の州内建設に向けて、同州が一部出資している公共企業体「サスカチュワン研究評議会(SRC)」に8,000万カナダドル(約87億円)の研究補助金を交付すると発表した。SRCとWH社が2022年5月に結んだ協力覚書に基づくもので、この補助金を活用して同州の規制要件や許認可関係の手続きを行い、2029年までに初号機を建設。そうした経験を基盤に、将来複数の「eVinci」を州内の様々な産業や研究、エネルギー源に利用できるか実証する。建設サイトについては、規制手続などプロジェクトの進展にともない決定する方針だ。SRCはカナダで第2の規模を持つ技術研究関係の公共企業体で、年間収益は2億3,200万加ドル(約252億円)。過去76年にわたり、農業・バイオテクノロジーやエネルギー、環境、および鉱業などの分野で、世界22か国の約1,600の顧客に科学的なソリューションを提供しているという。また、同州中央部のサスカトゥーン市にあるSRC環境分析研究所では、電気出力20 kWの研究炉「SLOWPOKE-2」を2021年11月に閉鎖するまで約38年間運転した実績がある。WH社の「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等における熱電併給を目的としている。8年以上燃料交換なしで運転することが可能で、炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状に巻き付け、主要熱交換器とする設計だ。カナダ政府は2022年3月、国内での将来的な「eVinci」建設に向けて、2,720万加ドル(約30億円)をWH社のカナダ支社に投資すると発表。イノベーション・科学・研究開発省(ISED)の「戦略的技術革新基金(SIF)」から資金を拠出し、SMRの持つ「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」としての能力を活用するほか、カナダの経済成長や2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという目標の達成に多大な貢献を期待するとしていた。また、今年6月からは、「eVinci」について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」が本格的に始まっている。10月には米エネルギー省(DOE)が、WH社も含め米国内でマイクロ原子炉を開発中の3社と総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結。アイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)の新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用テストベッド(DOME)」を用い、3社の設計作業や機器製造、5分の1サイズの実験機建設と試験を支援する方針である。なお、サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は2022年6月、オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社の例に倣い、サスカチュワン州で将来建設の可能性がある初の小型モジュール炉(SMR)として、同じくGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定。現在、建設サイトを選定中で、2029年に建設実施の判断が下れば、2030年代半ばまでに最初のSMRを運開させるとしている(参照資料:サスカチュワン州、SRC、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Nov 2023
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鉛冷却高速炉SMRの開発で4か国5者が協力
ベルギー原子力研究センター(SCK CEN)、イタリアの経済開発省・新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)とアンサルド・ヌクレアーレ社、ルーマニアの国営原子力技術会社(RATEN)、および米国のウェスチングハウス(WH)社の5者は11月8日、鉛冷却高速炉方式の小型モジュール炉(SMR-LFR)建設を加速することで、了解覚書を締結した。液体重金属の技術蓄積がある5者が協力し、ベルギー北部のモルにあるSCK CENでSMR-LFRの商業用実証炉を建設。同炉の技術やエンジニアリング面の可能性を実証し、クリーン・エネルギーへの世界的な移行に際し、持続可能なエネルギー源である原子力を主力に位置付けていく考えだ。欧州原子力共同体(ユーラトム)のLFR研究開発プロジェクトでは、ENEAとアンサルド社が主導的役割を担っており、両者はユーラトムのLFR開発ロードマップに明記されたLFR実証炉「ALFRED」(電気出力12万kW)の建設をルーマニア南部のピテシュチ(Pitești)で実現するため、2013年にRATENと「FALCON(Fostering ALfred CONstruction)企業連合」結成の協力覚書を締結していた。今回覚書を結んだ5者は、SMR開発の次の段階の作業として、同計画で過去10年間に行われた設計・建設経験を活用し、商業用SMR建設の経済的、技術的実行可能性等を探る方針だ。覚書への署名はベルギーの首都ブリュッセルで行われ、同国のA.デクロー首相とルーマニアのK.ヨハニス大統領が同席した。また、在ベルギーのイタリア大使館と米国大使館からも代表者が出席している。ベルギー政府は2022年5月、SCK CENに革新的なSMRの研究を委託しており、研究予算として同センターに1億ユーロ(約160億円)を拠出すると表明。 SCK CENは、この研究を切っ掛けに鉛冷却高速炉SMRの実現に向けたパートナーの選定作業を始め、様々な企業が過去数年間に実施した鉛冷却炉関係の技術開発成果に基づいて、今回の5者が決定したという。受動的安全系が組み込まれた鉛冷却高速炉SMRは非常に高い安全性を備えており、原子燃料サイクルにおいては一層効率的な燃料の活用と長寿命放射性廃棄物の削減が可能である。協力覚書を締結した5者は、この有望な技術をコスト面の競争力を持ったエネルギー源として完成させ、それが商業規模で建設されるよう各メンバーが強みを発揮し補完し合う考えだ。 具体的なアプローチとしてSCK CENは、WH社が開発中のLFRを出発点に設定。将来のエネルギー・ミックスに、低炭素で持続可能かつ競争力のある鉛冷却高速炉SMRの電力と熱、水素製造等を提供するため、5者はあらゆる要件を満たせるよう協力する。鉛を冷却材として使用する原子力技術は、ENEAやRATEN、SCK CENなど同技術のパイオニアにとって未知の領域ではないという。これらの機関のノウハウで商業用SMR-LFRの技術を実証した後は、市場投入までの期間を最短にできるよう、WH社とアンサルド社の設計や許認可手続き、建設等での経験を活用。最終的な商業化を目指して盤石な基盤を固め、世界展開を図るという。(参照資料:SCK CEN、RATEN、アンサルド社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Nov 2023
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チェコのドコバニ増設計画で3社が入札の最終文書提出
チェコの国営電力(CEZ社)は10月31日、ドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で建設するⅡ期工事の最初の1基となる5号機について、100%子会社のドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)が大手ベンダー3社から入札の最終文書を受領したと発表した。2022年3月に始まったこの入札には、EDU Ⅱ社の安全・セキュリティ面の資格審査を通過した米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)が参加。3社は同年11月末に最初の入札文書を提出しており、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の3、4号機についても、法的拘束力を持たない意向表明として増設を提案している。これらの原子炉に採用する炉型として、WH社は中国と米国ですでに商業炉が稼働している120万kW級PWRの「AP1000」を提案。EDFは、中国で稼働実績があり欧州でも建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」について、出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」を建設するとした。また、CEZ社のウェブサイトによると、KHNP社はアラブ首長国連邦(UAE)に輸出実績のある140万kW級PWR「APR1400」の出力縮小版、「APR1000」を提案したと見られている。EDU Ⅱ社は今後、国際原子力機関(IAEA)の勧告事項に基づき設定した評価モデルで、各社の提案を技術面や商業面から評価し、報告書を産業貿易省に提出する。チェコ政府としてこれらのうち1社を最終決定した後は2024年中に契約を締結。2036年に試運転の準備が整うよう、建設プロジェクトの計画文書を作成する計画だ。同社は増設計画におけるその他の関係業務も進めており、2019年9月に環境省が増設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的な評価を下した後、2020年3月にⅡ期工事の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請した。5、6号機は既存の4基の隣接区域に建設されることになっており、SUJBは翌2021年3月に同許可を発給している。WH社の発表によると、米国政府は同社とベクテル社の企業連合がこの増設計画を落札できるよう、全面的にサポートする方針である。チェコ駐在のB.サベト米国大使は「エネルギーの戦略的供給保障面から見て、米国の技術は地球温暖化に対抗可能な、信頼できるクリーン・エネルギー源を提供するだけでなく、チェコの原子力サプライチェーンで数千人規模の雇用を創出する可能性がある」と指摘、米国とチェコの双方にメリットがあるとした。WH社はまた、チェコの原子力産業界とは約30年前から協力関係にある点を強調。ロシア型PWR(VVER)用の原子燃料を製造できる西側諸国で唯一のサプライヤーとして、VVERが稼働するドコバニとテメリンの両発電所に2024年から原子燃料の供給を開始するとしている。EDFは今回、「子会社であるフラマトム社のノウハウと工業技術力により、原子炉系統の機器や計装制御(I&C)系を提供できる」と表明。タービン系統に関しては、低速タービン「アラベル」の開発企業である仏アルストム社を米GE社が2015年に買収したことから、EDFと長年パートナー関係にあるGEスチーム・パワー社が同タービン付きのものを供給する。また、2022年6月にプラハに設置したEDFの原子力支部を拡張し、チェコのサプライヤー企業約300社との長期的な協力に向けた調整活動を行うほか、EDFが後援する「チェコ・フランス原子力アカデミー」が10月に正式開校したことから、チェコにおける原子力人材の育成を支援するとしている。(参照資料:CEZ社の発表資料①、②、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Nov 2023
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米エネ省 3つのマイクロ原子炉で基本設計契約を締結
米エネルギー省(DOE)は10月23日、国内でマイクロ原子炉を開発中のウェスチングハウス(WH)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社と、総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結した。この契約金は、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が提供するもので、NRICのFEEEDプロセスに沿って、WH社のマイクロ原子炉である「eVinci」、USNC社の「Pylon」、ラディアント社の「Kaleidos」の商業化を促進。具体的にはNRICの新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッド」を使って、3社の設計作業や機器の製造、燃料を装荷した実験機の建設と試験に際し、支援を提供する。NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してDOMEテストベッドを建設中。DOEは早ければ2026年にもDOMEテストベッドでマイクロ原子炉の実験機試験を開始する計画で、3社が試験にかける経費を削減してプロジェクト全体のリスクを軽減するなど、これらの開発が一層迅速に進むよう促す方針だ。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「今回のFEEED契約により、3社のマイクロ原子炉はさらに一歩、実現に近づいた」と指摘。「これらの原子炉は、クリーン・エネルギーへの移行を目指す様々なコミュニティに複数の選択肢を提供することになる」と述べた。WH社の「eVinci」はヒートパイプ冷却式の原子炉で、電気出力は0.2万kW~0.5万kW。DOEは2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉を建設する計画である。今回のFEEED契約による資金で、WH社はINLにおける5分の1サイズの実験機建設計画を策定。最終設計の決定や許認可手続きに役立てたいとしている。USNC社の「Pylon」は、第4世代の小型高温ガス炉(HTGR)として同社が開発中の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW~1万kW、熱出力1.5万kW)の技術に基づいている。MMRよりさらに小型で、送電網が届かない地域や宇宙への輸送が容易。「Pylon」1基あたりの電気出力は0.15万kW~0.5万kWだが、複数基連結することで出力を増強することが可能である。ラディアント社の「Kaleidos」は、電気出力が最大0.1万kW、熱出力は0.19万kWの小型HTGR。遠隔地域のディーゼル発電機を代替するほか、軍事基地や病院、データセンターその他の戦略的インフラ施設に確実にエネルギーを供給。陸上や海上の輸送のみならず空輸が可能であり、立地点では一晩で設置することができる。同社のD.バーナウアーCEOは今回の契約締結について、「2026年に『Kaleidos』で試験を行い、2028年に最初の商業炉を建設するという当社のスケジュールが保たれる」と強調。V.バッギオCOO(最高執行責任者)も、「DOMEテストベッドでの試験では『Kaleidos』の安全性やその他の性能に関する重要データが得られるので、そうしたデータやその分析結果を原子力規制委員(NRC)に提出することで、商業化に向けた許認可手続きが前進する」と指摘した。(参照資料:DOE、WH社、ラディアント社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Oct 2023
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ブルガリア企業と米WH社 AP1000への機器供給で協力へ
米ウェスチングハウス(WH)社は10月19日、ブルガリア北部のコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWR=VVER-1000×2基)で予定されているAP1000の建設プロジェクトおよび地域全体におけるその他のプロジェクトを支援するため、ブルガリアの主要サプライヤーと技術協力に関する覚書を締結した。サプライヤーには、OSKAR-EL、Glavbolgarstroy、ENPRO Consult、EnergoService、EQE Bulgaria等が含まれている。ブルガリアは、安全性が懸念されていた同発電所1~4号機(各44万kWの旧式のVVER)を2006年までにすべて閉鎖。現在は同5、6号機の2基だけで総発電量の約35%を賄っており、新たな原子炉の建設については、1980年代から検討されていた。2021年1月に同国政府が「ベレネ発電所用に購入済みだったVVER機器(ロシア型PWR)を利用して、コズロドイ7号機を建設するのが経済的で合理的」と表明したが、同国議会で今年実施された票決において、WH社製AP1000の導入に向けて、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結を交渉する方針が確定。今年3月2日には、WH社とコズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB社)が協力覚書を締結した。今回の覚書では、計装制御(I&C)システム、放射線監視システムなどの主要コンポーネントの製造や、エンジニアリング、コンサルティング、建設サービスを、ローカリゼーションの一環としてブルガリア企業に委託することを視野に入れている。WH社のD.ダーラム社長は、「AP1000プロジェクトの成功には、豊富な経験を持つブルガリアの原子力サプライチェーンからのサポートが不可欠。」とコメントしている。AP1000は、唯一稼働している第3世代+(プラス)原子炉であり、米国内では、7月31日にジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所において、AP1000を採用した3号機が営業運転を開始。翌月には同型の4号機も燃料装荷を完了し、2024 年3月に営業運転を開始する予定だ。中国では4基の中国版AP1000が稼働中。また、2022年11月にはポーランド政府が同国初の原子炉建設計画にAP1000を採用した。そのほか、中・東欧、英国、北米の複数地点で導入が検討されている。
- 20 Oct 2023
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米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2023
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ポーランド AP1000の建設に向け米社とサイト設計等で契約
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は9月27日、同国初の大型原子力発電所建設に向けて、米ウェスチングハウス(WH)社およびベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結した。同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、WH社製のAP1000(PWR、125万kW)を3基建設するため、WH社らは18か月の同契約期間中、建設サイトに基づいたプラント設計を確定する。契約条項には、原子炉系やタービン系などの主要機器に加えて、補助設備や管理棟、安全関連インフラなどの設計/エンジニアリングが含まれており、両者はこの契約に基づく作業を直ちに開始。初号機の運転開始は2033年を予定している。ワルシャワでの同契約の調印式には、ポーランドのM. モラビエツキ首相をはじめ、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際問題担当次官補が同席。PEJ社のM.ベルゲル社長とWH社のP.フラグマン社長兼CEO、およびベクテル社のJ.ハワニッツ原子力担当社長が契約文書に署名した。今回の契約の主な目的は、建設プロジェクトの実施に際して順守する基準や、設計/エンジニアリング上の要件を特定すること。同発電所のスペックを満たす初期設計の技術仕様書作成など、両者は同契約の条項に沿って様々な許認可の取得で協力。同契約は、建設工事の進展に応じて次の段階の契約を結ぶ際のベースとなる。同契約はまた、建設プロジェクトがポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)や技術監督事務所(UDT)の規制に則して実施されるよう、PEJ社を支援するもの。ポーランドと欧州連合の厳しい安全基準に則して建設許可申請を行う際、同契約で実施した作業の結果が申請書の作成基盤になるほか、原子力法の要件に準じて安全解析や放射線防護策を実施する際は、事前評価を行う条項が同契約に盛り込まれている。同契約はさらに、WH社らとの共同活動にポーランド企業を交えていくと明記している。これにより、ポーランド企業の力量や需要を考慮した上で、出来るだけ多くの企業が建設プロジェクトに参加できるよう、原子力サプライチェーンの構築を目指す。このほか、同契約を通じてポーランド企業の従業員が米国を訪問し、最新原子炉の設計/エンジニアリングや運転ノウハウを習得することも規定されている。ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、ポーランド環境保護総局(GDOS)が今月19日に同プロジェクトに対して「環境決定」を発給した後、21日付でWH社とベクテル社がポーランドでの発電所設計・建設に向けて、正式に企業連合を組んだ事実に言及。「これらに続く今回の契約締結は、国内初の原子力発電所建設をスケジュール通り着実に進め、国内産業を活用しながら予算内で完成させるというポーランドの決意に沿うもの」と指摘した。同相はまた、WH社とベクテル社が米国のボーグル3、4号機増設計画でもAP1000の完成に向けて協力中であることから、「両社がボーグル・プロジェクトで蓄積した経験と教訓、先進的原子炉のエンジニアリング・ノウハウは、ポーランドのエネルギー・ミックスの根本的な再構築に生かされていく」と表明。ポーランドにおける原子力エンジニアの育成や、ポーランド経済の発展にも大きな弾みとなると強調した。WH社のP.フラグマン社長は、「ポーランドのみならず、今回の契約締結は当社とベクテル社にとっても転機となるが、安全かつ信頼性の高い原子力でエネルギー供給を保証し、脱炭素化を図ろうと考えている国々にとっても、モデルケースになる」と指摘している。参照資料:PEJ社、WH社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Sep 2023
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ウクライナ WH社製SMRの導入に向け覚書
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月12日、ウェスチングハウス(WH)社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。今後10年以内に国内初号機の設置を目指すとともに、将来的には同炉設備の国内製造も視野に入れた内容。差し当たり、具体的な建設契約の締結に向けた作業や許認可手続き、国内サプライチェーン関係の協力を進めるため、共同作業グループを設置する。「AP300」は100万kW級PWRであるAP1000の出力を30万kWに縮小した1ループ式のコンパクト設計。AP1000と同様にモジュール工法が可能なほか、受動的安全系や計装制御(I&C)系などは同一の機器を採用している。ウクライナは2050年までのエネルギー戦略として、無炭素なエネルギーへの移行とCO2排出量の実質ゼロ化を目指している。このため原子力発電の増強を進めており、引き続き新しい大型炉を建設していく一方、ウクライナにとって有望な選択肢であるSMRの設置も進める考えだ。WH社との協力については、エネルゴアトム社が2021年11月、フメルニツキ原子力発電所で国内初のWH社製AP1000を建設するとし、同社と契約を締結。翌2022年6月には、国内で稼働する全15基のロシア型PWR(VVER)用にWH社製の原子燃料を調達し、AP1000の建設基数も9基に増やすための追加契約を結んだ。15基中13基の100万kW級VVER(VVER-1000)については、すでにWH社製原子燃料の装荷が進んでいるが、エネルゴアトム社は今月10日、残り2基の44万kW級VVER(VVER-440)に初めてWH社製の原子燃料を装荷している。WH社のP.フラグマン社長兼CEOは、「原子燃料の調達からプラントのメンテナンス、発電に至るまで、長期的に信頼されるパートナーとしてウクライナにクリーンで確実なエネルギーをもたらせるよう貢献したい」とコメントしている。今年5月に発表した「AP300」については、同社は稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000に基づく炉型である点を強調しており、実証済みの技術を採用しているため許認可手続きが円滑に進むことや、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用できると指摘した。同社の計画では、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から「AP300」の設計認証(DC)を取得し、2030年までに米国で初号機の建設工事を開始、2030年代初頭にも運転を開始するとしている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Sep 2023
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米ボーグル4号機、燃料初装荷
米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は8月17日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)原子炉AP1000として建設中の4号機(PWR、110万kW)で燃料装荷を開始した。157体の燃料集合体はWH社がサウスカロライナ州の工場で製造したもので、数日間で装荷を完了するとしている。同発電所では先月31日、米国で約35年ぶりに本格着工した同型の3号機(PWR、110万kW)が営業運転を開始。4号機でも燃料の装荷後は、起動試験で一次冷却系や原子力蒸気供給系が設計通りの温度や圧力で動くことを実証し、様々な出力レベルで試運転を実施する。ジョージア・パワー社は、今年の第4四半期か2024年の第1四半期には同機で送電が可能になると予想。同社と両機を共同保有する3社のうち、オーグルソープ電力は「これらの試験が首尾よく進めば、現時点のスケジュールどおり2024年3月に営業運転が開始される」と述べた。同発電所では、すでにWH社製PWRの1、2号機(各121.5万kW)が稼働していることから、4基が揃えば同発電所は米国でも最大規模となる。3、4号機だけでもそれぞれ、50万戸の世帯や企業に無炭素で安全、安価な電力を十分供給できるとジョージア・パワー社は強調している。米国初のAP1000であるボーグル3、4号機は、2013年3月と11月にそれぞれ本格着工したが、2017年3月にWH社が倒産申請したのを受けて、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いだ。また、2020年には新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減するなど、プロジェクトは様々なトラブルに見舞われたが、4号機では今年3月から5月にかけて温態機能試験を実施。7月末には米原子力規制委員会(NRC)から、「同機は建設・運転一括認可(COL)が認定した基準とNRCの規制通りに建設され、運転も行われる見通し」だとする確認事項書「103(g)」がサザン・ニュークリア社に到着。これにより、同機では実質的に燃料の装荷と起動が許可されていた。 WH社によると、AP1000はすでに中国・浙江省の三門発電所と山東省の海陽発電所で、合計4基が2018年以降順次営業運転を開始。ボーグル3、4号機はこれらに続いて、世界で5基目と6基目のAP1000となる。中国ではまた、中国版のAP1000となる「CAP1000」や「CAP1400」が合計6基、三門と海陽、および山東省の栄成石島湾発電所で建設中である。さらに、ポーランドなどの中・東欧地域やウクライナでも複数基のAP1000建設が計画されている。(参照資料:ジョージア・パワー社、オーグルソープ電力、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Aug 2023
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加テレストリアル社 WH社製熔融塩炉燃料を調達へ
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月3日、同社製の「小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)」で使用する燃料を将来的に調達するため、同燃料の製造・供給契約を米ウェスチングハウス(WH)社の英国子会社と締結した。この子会社「スプリングフィールド燃料会社(SFL)」は、英ランカシャー州のスプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場を運営している。この契約の下で両社は、同工場の様々な既存インフラを活用してIMSR用燃料の試験製造プラントを設計・建設する計画だ。同契約はまた、2030年代に複数のIMSRを稼働できるよう、最終的に商業規模の製造施設建設を想定している。このため、英国政府はこの試験製造プラント建設に「原子燃料基金(NFF)」の中から290万ポンド(約5億2,500万円)の支援を約束。同契約は元々、テレストリアル社とSFL社および英国の国立原子力研究所(NNL)がIMSR用燃料の商業規模の確保に向け、2021年7月に調印した協力契約に基づいていることから、英国政府もこの協力関係を利用して国内エネルギー供給の保証戦略を進めていくとしている。テレストリアル社のIMSRは熱出力40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほか熱エネルギーの供給が可能。使用する熔融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり民生用の軽水炉に装荷されてきた「標準タイプ」の低濃縮ウラン((U-235の濃縮度が5%以下))を熔融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料((U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用する。この関係で、同社は2022年11月にこの標準タイプ燃料の梱包方法と国境を越えた輸送について、第三者に依頼して規制面の独自評価を行っている。その結果、これまで既存炉に利用されてきた燃料の梱包方法は、新たな種類の燃料梱包に派生するコンテナの設計や製造、許認可等の面でコストや時間がかからず、IMSRの燃料輸送に適していることが実証された。IMSRを主要な市場に速やかに送り出すという商業的側面でも、有利な燃料選択だったと強調している。同炉は今年4月、カナダの規制要件に対する適合性の事前審査で、同国の原子力安全委員会(CNSC)が提供している「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第2段階を完了。CNSCが「カナダで同炉の商業利用を阻むような根本的障害は見受けられなかった」と結論づけたほか、テレストリアル社も、「VDRは熔融塩を燃料として使う先進的原子炉がクリアした最初の規制審査になった」と指摘していた。IMSRについては、カナダのアルバータ州政府が建設に向けた検討を進めており、テレストリアル社と同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」は2022年8月、同州をはじめとするカナダ西部地域でのIMSR建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Aug 2023
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ボーグル3号機が営業運転開始 米国初のAP1000
米ジョージア・パワー社は7月31日、ジョージア州内のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中だった3号機(PWR、110万kW)が、同日付で営業運転を開始したと発表した。同機は今年3月に初臨界に達した後、4月に送電網に接続されていた。建設費の高騰やスケジュールが6年以上遅延するなど難産ではあったが、米国でようやくウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000が本格稼働した。米国で新たに着工した商業炉としては、約35年ぶり。建設工事と各種試験が最終段階に入った同型の4号機は、早ければ年末に起動できる見通しだ。ボーグル3、4号機はジョージア州内の4社が共同保有しており、ジョージア・パワー社が45.7%、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%それぞれ出資。米エネルギー省(DOE)から83億3,000万ドルの政府融資保証適用を受けた唯一の新設プロジェクトとして、3、4号機はそれぞれ2013年の3月と11月に本格着工しており、当時は2017年と2018年の完成を予定していた。一方、サウスカロライナ州では、これらとほぼ同時期にスキャナ社とサンティー・クーパー社がV.C.サマー原子力発電所で、同じくAP1000を採用した2、3号機を着工したが、2017年3月のWH社の倒産申請を受けて同プロジェクトは中止となった。ボーグル発電所では、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転会社となるサザン・ニュークリア社が、WH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続。この間、ジョージア・パワー社は2020年4月、新型コロナウィルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減している。また2021年7月末に3号機の温態機能試験が完了したものの、翌8月に原子力規制委員会(NRC)から「安全系に係わる電気ケーブルの配管が正しく設置されていない」と指摘されたこともあり、運転開始スケジュールは徐々に先送りされている。3号機ではその後、安全性と品質に関する398項目の厳しいチェックが行われ、サザン・ニュークリア社のチームは2022年7月、「(同機が)運転開始前の検査や試験、解析等に関する基準(ITAACs)をすべて満たした」とする文書をNRCに提出した。NRCは同文書およびその他の提出物を厳格に審査した結果、「3号機が建設・運転一括認可(COL)とNRCの規制どおりに建設され、運転も行われる見通し」と確認。同年8月にその確認事項書「103(g)」をサザン・ニュークリア社に送付し、同機の燃料装荷と起動を許可していた。ジョージア・パワー社は今回、4号機についてもサザン・ニュークリア社が前の週にNRCから「103(g)」を受け取ったことを明らかにしている。4号機は今年5月に温態機能試験を完了しており、建設サイトにはすでに同機用の初装荷燃料集合体157体も到着。現在の日程では、今年の第4四半期後半、あるいは2024年の第1四半期に同機の運転を開始する見通しである。 (参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Aug 2023
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WH社 英政府補助金で燃料工場を拡張へ
米ウェスチングハウス(WH)社は7月27日、英国スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレード用として、英国政府の「原子燃料基金(NFF)」の中から総額1,050万ポンド(約19億1,200万円)の補助金を獲得したと発表した。2025年3月末までに交付される見通しだ。WH社はこの補助金を次世代原子炉関係の3つの用途に使用する予定で、まず第3世代+(プラス)の同社製PWRであるAP1000、およびその出力縮小版のAP300など、様々な軽水炉に使用する原子燃料を同工場で製造。英原子力産業界が将来にわたって、最新の燃料を供給できるようにする。また、英国での新規炉開発に備え、WH社は同工場でのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造検討に補助金を活用する。同社はさらに、カナダのテレストリアル・エナジー社および英国立原子力研究所(NNL)との協力に基づき、テレストリアル社製の小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)に使用する4フッ化濃縮ウラン(UF4)燃料と熔融塩燃料の試験製造にも補助金を活用する方針だ。NFFは2022年7月、英国内の原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が発電用原子燃料の国内製造拡大を目的に、7,500万ポンド(約136億5,700万円)の予算で設置した。これは、2050年までに国内の民生用原子力発電設備を2,400万kWまで拡大(現在は653.4万kW)して、英国のエネルギー供給を保証するには、しっかりとした燃料サプライチェーンを国内で確保・維持することが重要との認識に基づいている。英国政府はすでに2022年12月、NFFの7,500万ポンドのうち最大1,300万ポンド(約23億6,700万円)をWH社のスプリングフィールド・サイトに提供すると決定した。英国内で稼働する既存のガス冷却炉(AGR)用として、回収ウランと新たに採掘されたウランの両方を転換する能力の開発を目的としたもの。これにより、現時点でロシア以外の国では不可能な回収ウランの転換を可能にし、国際社会がロシアの燃料供給から脱却することを目指している。今年1月には、英国政府はNFFに残っている約5,000万ポンド(約91億円)の中から、資金提供するプロジェクトの競争入札を開始した。ここでの目的は、SMRを含む軽水炉用として英国産の燃料サプライチェーンを新たに構築するとともに、2030年代以降に運転開始が見込まれる先進的モジュール炉(AMR)用のHALEU燃料など、新しいタイプの燃料製造プロジェクトを支援すること。BEISのエネルギー政策を今年2月に引き継いだエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月18日、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、今回総額2,230万ポンド(約40億6,200万円)の補助金をNFFから拠出するすると発表した。WH社の燃料製造工場に交付する1,050万ポンド以外では、カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に950万ポンド(約17億3,000万円)を拠出し、低濃縮ウランおよびHALEU燃料の製造を支援。また、AMRの一つである熔融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEX社に120万ポンド(約2億1,800万円)以上を交付し、バーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転を支援するとしている。(参照資料:WH社、英国政府①、②、③の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Jul 2023
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スロバキア WH社製原子炉の建設可能性模索で覚書
スロバキアの国営バックエンド企業であるヤビス(JAVYS)社は7月17日、国内で米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRのAP1000や小型モジュール炉(SMR)AP300を建設する可能性を探るため、同社と2件の了解覚書(MOU)を締結した。スロバキアでは現在、WH社製原子炉を導入して国内の原子力発電設備容量を拡大できるか評価中。1件目のMOUで技術面やビジネス関係の詳細協力の枠組みを設定し、もう一件では、これらの原子炉の将来的な建設プロジェクト実施に向けた道筋を模索する。経済省が100%出資するヤビス社は、スロバキアで放射性廃棄物の管理を担当するほか、原子力施設の廃止措置のみならず増設と運転にも責任を負っている。同社はボフニチェ原子力発電所(ロシア型PWR×2基、出力各50万kWの3、4号機のみ稼働中)で将来的に5号機を増設するため、2009年にチェコ電力(CEZ社)との共同出資で建設および運転を担当するJESS社を設置。その際、ヤビス社が51%を出資した。ヤビス社はJESS社の親会社としてスロバキアの国益のため、利用可能な原子炉をすべて評価し、スロバキア政府が新たな原子炉の炉型や出力、立地点を最終決定するに当たり、選択肢を提示することになっている。今回の覚書で、ヤビス社は特にSMR建設プロジェクトの実施を念頭に置いており、このような新技術に関する情報をWH社と幅広く交換し、スロバキアのエネルギー供給網に加えられるかの適性を精査する。100万kW級のAP1000の出力縮小版となるAP300(出力30万kW)について、同社はWH社から「AP1000と同じ実証済みの技術を採用しているため、同様の許認可手続きが適用され、サプライチェーンも同じものが利用可能。同じく受動的安全系や負荷追従運転の能力も備えている」と説明されており、その建設と運転・メンテナンスを通して両設計の間でかなりの相乗効果が期待できると考えている。WH社は今年5月にAP300を発表。今回新たに、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し2030年までに初号機の建設を開始、2033年までに運転開始するとの見通しを明らかにした。WH社との協力について、ヤビス社のP.シュトレル会長兼CEOは、「ボフニチェ原子力発電所1、2号機の廃止措置など、WH社とは以前から長期的な協力関係にある」と指摘。これに加えて、WH社はスロバキアで稼働するロシア製原子炉向けに新燃料を提供するなど、燃料の調達先多様化にも貢献している。在スロバキア米大使館のG.ラナ大使は、「2件の了解覚書を通じて両国の企業が民生用原子力部門で商業レベルの協力を一層緊密にする基盤が築かれた」と歓迎している。(参照資料:WH社、ヤビス社(スロバキア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Jul 2023
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ポーランド政府 PEJ社のAP1000建設計画にDIP発給
ポーランドの気候環境省は7月11日、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉建設について、「原則決定(DIP)」を発給した。これは、原子力発電所の建設計画でポーランド政府が下した最初の主要な行政判断。同県ホチェボ自治体内のルビアトボ-コパリノ地区で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)のPWR「AP1000」を最大3基建設する計画が、エネルギー政策等の国家政策に則したものであり、国民の利益にも適うと正式に認めた。事業者となるPEJ社は今後、立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。ポーランド政府としても、国家のエネルギー供給ミックスがより良い方向に向かい、供給が強化される節目になったと強調している。ポーランドでは改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)を建設する。最初の3基、合計375万kWをポモージェ県内で建設・運転する場合の環境影響を評価するため、PEJ社は2022年3月にルビアトボ-コパリノ地区のほか、近隣のクロコバとグニエビノの両自治体が管轄するジャルニビエツ地区でも影響分析を実施。政府は同年11月、最初に建設する3基の採用炉型としてWH社製のAP1000を閣議決定した。PEJ社は今年4月に提出したDIP申請書で、このような建設計画の概要を明記。最大設備容量のほかに、2026年に初号機を着工して2033年の完成を目指す等の建設スケジュールや、採用されたAP1000技術の詳細等の記載もあった。政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ-チェジャコフスカ首相府担当相は、「国内のエネルギー供給を強化しながらポーランド政府は脱炭素社会への転換を進めており、原子力開発計画はそのために同時進行している数多くのプロジェクトの一つだ」と説明。「今回のDIPの決定により、ポーランドは初の原子力発電所の実現に近づいており、将来の発電システムの基盤として適切な発電量を確保できるようになる」と強調している。ポーランドではこのほか、鉱業大手のKGHM銅採掘会社が米ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)を、また化学・石油合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が米GE日立・ニュクリアエナジー社のSMR「BWRX-300」を国内で建設すべく、今年4月にDIPを気候環境省にそれぞれ申請した。また、同国中央部のポントヌフでは、韓国水力・原子力会社(KHNP)が韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指しており、国有資産省(MOSA)が一部出資するエネルギー企業のZE PAK社は今年3月、PGE社と合弁の特別プロジェクト企業を設立する方向で予備的合意に達している。(参照資料:ポーランド政府、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jul 2023
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米印首脳 インド・コバダにおけるAP1000建設計画を確認
米国のJ.バイデン大統領と、国賓として訪米したインドのN.モディ首相は6月22日、ホワイトハウスにおける首脳会談で「世界規模の包括的戦略パートナーシップ」の強化で合意。その際発表した共同声明では、両国が半導体や重要鉱物、技術、防衛等の分野で協力を深めるとともに、インドのコバダで計画されている米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000の建設を進めていくことを改めて確認した。両国政府は、インドにおける電力不足の緩和と米国からの原子力輸出という双方の目的に向け、2008年に米印原子力協力協定を締結。その際、原子力資機材や技術の輸出を管理している国家間組織の「原子力供給国グループ(NSG)」は、米国の働きかけにより核不拡散条約(NPT)に未加盟のインドを特例扱いとする決定を下した。また、2009年にインド内閣は、西海岸グジャラート州のミティビルディをWH社製100万kW級PWR×6基の建設用地に、東海岸アンドラ・プラデシュ州のコバダをGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製100万kW級BWR×6基の用地に暫定指定した。しかし、メーカー側に一定の賠償責任を盛り込んだインドの原子力賠償法がネックとなり、これらの計画は進展して来なかった。また、机上のみでモデルプラントがまだ建設されていないGEH社製ESBWR(高経済性・単純化BWR)の建設にインド政府が難色を示したこともあり、コバダのサイトは2016年に正式にWH社製AP1000の建設用地に変更された。今回の共同声明で米印両国の首脳は、世界規模の脱炭素化において原子力が重要な役割を担うことを強調するとともに、地球温暖化への対処とクリーン・エネルギーへの移行、エネルギーの供給保証という側面から、原子力が両国にとって必要なエネルギー源であることを確認。インド原子力発電公社(NPCIL)とWH社が現在も6基のAP1000建設計画について交渉中であることから、インド原子力省(DAE)と米エネルギー省(DOE)がコバダでの建設実現に向けた協議を加速していることを歓迎した。両首脳はまた、次世代の原子炉である小型モジュール炉(SMR)の米国内での建設や輸出に向け、両国が協議中である点に言及。インドのエネルギー政策には現時点でSMRの導入計画が含まれていないが、同国が将来的にNSGに加わり先進的原子力技術の受領国となれるよう、米国は引き続き支援していくと約束している。インドでは現在、22基、678万kWの原子炉が営業運転中のほか、1基、70万kWが試運転中。このうち2基、200万kW分がロシア型PWR(VVER)で、2基、32万kW分は1960年代に米GE社が建設したBWR。残りはすべて国産の加圧重水炉(PHWR)で、出力は最大でも70万kWである。(参照資料:米ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 27 Jun 2023
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ウクライナ原子力発電所のバックフィット契約受注 WH社
米ウェスチングハウス(WH)社は6月13日、ウクライナのリウネ原子力発電所1、2号機(各44万kW級ロシア型PWR=VVER-440)を近代化する計画の一環として、「格納容器長時間冷却システム(LCCS)」を設計・製造・納入する契約を、同国の原子力発電公社であるエネルゴアトム社と交わした。この契約締結はエネルゴアトム社側の要請に基づくもので、先進的LCCSを導入することで過酷事故時のVVER-440の安全性を大幅に向上させるのが目的。WH社はVVER-440用に取得した特許技術を用いてLCCSを製造し、来年にもリウネ発電所に納入する。リウネ原子力発電所には100万kW級VVER(VVER-1000)の3、4号機も設置されており、これらの格納容器や安全系は基本的に西側諸国の安全要件を満たすとされている。しかし、VVER-440シリーズの原子炉は格納容器がない等、安全上の欠陥もいくつか認められている。「VVER-440の過酷事故管理」支援のため、WH社がLCCSを製造するのは今回が初めてになる。WH社によると、LCCSの導入によって事故時に格納容器内の熱が確実に除去され、効果的な減圧が可能になる。エネルゴアトム社が所有するVVER-440では、今後数十年にわたる安全性確保で、同発電所全体の安全裕度も大幅に上昇。これらを通じて、WH社はウクライナが安全・確実で信頼性の高いエネルギーを得られるよう支援していく考えだ。両社はすでに2000年代から協力関係にあり、エネルゴアトム社は2021年8月、建設工事が中断しているフメルニツキー原子力発電所4号機も含め、合計5基のWH社製AP1000の建設を視野に入れた契約をWH社と締結。2022年6月の追加契約ではこの基数が9基に増加したほか、ウクライナに設置されている15基のVVERすべてにWH社製燃料が供給されることになった。なお、WH社はウクライナの原子炉も含め、欧州連合(EU)域内で稼働するVVERの燃料を緊急に確保するため、3年計画の「Accelerated Program for Implementation of secure VVER fuel Supply (APIS)」プログラムを今年1月から主導している。ロシアのウクライナ侵攻に起因するもので、同計画にはEUが2023年~25年までの「ユーラトム(欧州原子力共同体)作業プログラム」を通じて共同出資中。同プログラムでは、WH社が燃料製造工場を置いているスウェーデンの支社を調整役とし、パートナーとしてECの科学・情報サービス機関である合同研究センター(Joint Research Centre)やスペインのウラン公社(ENUSA)、ウクライナのエネルゴアトム社、スロバキアの原子力研究所(VUJE)とスロバキア電力、チェコの原子力研究機関(UJV)とチェコ電力(CEZ)、ハンガリーのパクシュ原子力発電所、フィンランドのフォータム社など11の機関/企業が参加。VVER-440用燃料の早期出荷に向けて同燃料の設計作業を完了することや、VVER-440とVVER-1000用に改良型燃料の開発などが主な作業項目となっている。(参照資料:WH社、エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Jun 2023
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WH社とブルガリア企業 AP1000建設に向けFEED契約締結
米ウェスチングハウス(WH)社は6月14日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWRの5、6号機のみ稼働中)における同社製AP1000の建設に向け、プロジェクト企業のコズロドイ原子力発電所増設(KNPP-NB)会社と「基本設計(FEED)」契約を締結した。今年3月に両社が結んだ了解覚書の合意事項に基づくもの。WH社はこの契約で、AP1000の建設に必要な同発電所の既存インフラや、ブルガリア産業界の現状等を評価し、詳細設計の予備的作業や建設工事の準備を進めていく。3月の覚書で両社はAP1000の建設計画の立案に向け、共同作業グループの設置を決めている。同グループは現在、ブルガリアにおける原子力規制や許認可手続き、設計要件などを評価するとともに、ブルガリア政府が今年1月に発表した新しいエネルギー戦略に沿って、建設プロジェクトを合理的に進める方法等を検討。FEED契約で実施する課題や概算経費などの評価作業は、その最初のステップとなる。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟した際、これと引き換えに2006年までに安全上問題のあるコズロドイ1~4号機(各ロシア型PWR、44万kW)をすべて閉鎖し、現在5、6号機だけで総発電量の約35%を賄っている。追加の原子炉建設は1980年代から継続的に検討しているが、採用炉型はその時々の政権の意向により、2012年に頓挫したベレネ原子力発電所建設計画の製造済み機器を再利用する案や、WH社製AP1000を新たに建設する案など二転三転した。今年1月の新エネルギー戦略の中で、ブルガリア政府は既存のコズロドイ発電所と新規のベレネ発電所で原子炉を2基ずつ建設する方針を表明。同国議会はその数日前、コズロドイ発電所にAP1000を導入することを念頭に、米国政府と政府間協定(IGA)の締結交渉を開始する方針案を可決していた。また、KNPP-NB社の親会社であるコズロドイ原子力発電所は昨年12月、5号機用の燃料を2024年から10年間確保するためWH社と長期契約を締結。同発電所がこれまでロシアから購入していた燃料を、スウェーデンのバステラスにあるWH社の燃料製造工場で製造・納入することになった。WH社によると、同社のAP1000は受動的安全系やモジュール工法など最新の技術を用いた第3世代+(プラス)設計であり、中国ではすでに4基が稼働中のほか、同技術を用いた6基がさらに建設中である。米国でも1基が送電開始するなど、習熟した技術であることから、WH社はブルガリアでは建設作業の一部を地元企業に発注する考えを明かにしている。(参照資料:WH社、KNPP-NB社(ブルガリア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Jun 2023
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WH社 北欧2か国でのAP1000とAP300建設に向けフォータム社と協力
米ウェスチングハウス(WH)社とフィンランドのエネルギー企業フォータム社は6月7日、WH社製の大型炉AP1000と小型モジュール炉(SMR)のAP300を、フィンランドとスウェーデン両国で建設する可能性を共同で探るため、了解覚書を締結した。同覚書は、今後両社が実施する技術面や商業面の詳細協議など、協力の枠組みを定めたもの。北欧の両国でWH社製原子炉を実際に建設する際、必須となる前提条件の特定を目的としており、フォータム社は新規の原子力発電所建設で最終的な投資判断を下すのは、後の段階になると説明している。フィンランド政府が株式の約51%を保有するフォータム社は、ロシア型PWR(VVER)2基で構成されるロビーサ原子力発電所を国内で運転する一方、スウェーデンではオスカーシャムとフォルスマルク両原子力発電所にも一部出資している。2022年11月から、両国での原子力発電所新設に向けて2年計画の実行可能性調査(FS)を開始しており、その背景として「社会全体が直面しているエネルギーの自給や供給保証、CO2排出量の実質ゼロ化という課題を解決するには原子力が有効だ」と説明していた。このFSで、同社は大型炉やSMRの新規建設にともなう技術面と商業面の前提条件とともに、政策面や法制面、規制面などの社会的条件についても調査中。新たなビジネス・モデルの構築や関連企業との連携協力も進めており、これまでに英国のロールス・ロイスSMR社やフランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)のほか、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next)社、フィンランドの最大手ステンレス鋼生産企業のオウトクンプ(Outokumpu)社、ヘルシンキ市営のエネルギー企業のヘレン(Helen)社とも同様の協力合意に達している。一方のWH社は今年5月、第3世代+(プラス)の大型炉であるAP1000の電気出力を30万kWに縮小したAP300を発表した。1ループ式でPWRタイプのSMRとなる同炉は、設置面積がサッカー・コートの4分の1ほど。その利点として同社は、数あるSMR設計の中でも唯一、すでに中国や米国で稼働中のAP1000で実証済みの技術を用いている点を強調した。同炉はまた、AP1000と同じく負荷追従性に優れ、モジュール工法が可能。主要機器や構造部品もAP1000と同一で、これには受動的安全系や燃料、計装制御(I&C)系も含まれる。このほか、AP1000と同じサプライチェーンを利用でき、許認可手続きの手順も同じになるため、サイトでの工期も短縮されると指摘している。WH社は2027年までにAP300の設計認証(DC)を米原子力規制委員会(NRC)から取得し、2030年までに初号機の建設工事を開始、2033年には運転可能とすることを目指している。同社のD.ダーラム社長は「フォータム社の原子力発電所にはこれまでも、原子燃料その他のサービスを提供しており、当社の重要な顧客である。同社とのさらなる協力により、受動的安全性を備えた原子炉など、当社の先進的で実証済みの技術を北欧諸国に提供し、今後の世代に一層確実なエネルギー供給を保証していきたい」と述べた。(参照資料:WH社、フォータム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Jun 2023
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WH社 マイクロ炉の宇宙利用でアストロボティック社と協力へ
米ウェスチングハウス(WH)社は6月1日、マイクロ炉の宇宙利用を視野に航空宇宙局(NASA)や国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムで協力する可能性を探るため、宇宙用輸送サービス機器の開発企業アストロボティック(Astrobotic)社と了解覚書を締結した。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、WH社は現在、マイクロ原子炉「eVinci」(最大電気出力0.5万kW)の縮小版を開発している。これらの星で行われる研究等の活動に電力を継続的に供給する際、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的。今回の覚書を通じて、両社は宇宙における原子力技術の適用や輸送サービス・システムの開発に集中的に取り組んでいく。また、両社が本拠地を置いているペンシルベニア州のほか、オハイオ州やウエストバージニア州で、宇宙用原子力サプライチェーンの構築や人材の育成を進める方針だ。WH社は昨年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとエネルギー省(DOE)から、月面で稼働可能な核分裂発電システムの設計概念を提案するよう要請された。NASAの主導で有人宇宙飛行と月面着陸を目指す「アルテミス計画」では、2025年に有人宇宙探査機の月面着陸を予定していることから、NASAとDOEはこれに間に合うようWH社を含む3社を選定したもの。3社は月面環境下で少なくとも10年間稼働可能な40kW級核分裂発電システムの予備的設計概念を開発するため、DOE傘下のアイダホ国立研究所と12か月契約を締結、それぞれが約500万ドルの交付を受けていた。NASAによると、核分裂発電システムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でこのようなシステムの能力を実証できれば、火星等への長期ミッションに道を拓くことができる。一方のアストロボティック社は月面着陸船や惑星探査機等の開発産業を牽引しており、これらの機器に電力供給する商用電力サービス「LunaGrid」を月の南極付近に設置する方針。2018年11月に「アルテミス計画」の支援プログラムの一つである商業月面輸送サービスの入札に参加した後、2019年5月に同契約を獲得した3社の一つに選定されていた。(参照資料:WH社、NASAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jun 2023
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