キーワード:ウエスチングハウス
-
WH社とベクテル社 ポーランドでのAP1000建設に向け前進
ポーランド初の大型原子炉としてAP1000を建設予定の米ウェスチングハウス(WH)社とベクテル社の企業連合は5月25日、ポーランドの原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)を交えた3社間協力の主要原則についてPEJ社と合意した。これらの原則は、過去数か月に及んだ両者の集中協議の結果、今年後半に締結されるエンジニアリング・サービス契約への適用条件として、双方の責任範囲や順守しなければならない重要ルールなどを定めたもの。この合意はまた、原子力施設の設計や作業スケジュール、プロジェクト管理、品質保証など、WH社とベクテル社間の協力分野も特定しており、設計段階ではWH社がプロジェクトを主導する一方、建設段階のリーダーはベクテル社になるとしている。PEJ社の発表では、この合意は実質的にエンジニアリング・サービスの契約締結に先立つ最終ステップになる。また、WH社によると、同プロジェクトではすでに一部の許認可手続きやエンジニアリング作業が始まっている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっている。同国政府は2022年11月、これらのうち最初の3基、375万kW分として、安全かつ実証済みの技術を用いた第3世代+(プラス)のPWR設計AP1000を採用すると発表。建設に最適の地点として2021年12月に選定した同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す方針である。採用炉型を決定した翌月、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は、AP1000の建設に向けた実施取り決めについてWH社と合意。今年2月には、設計に先立つフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動について、WH社と実施契約を結んでいる。4月になると、PEJ社はこのプロジェクトの「原則決定(DIP)」発給を気候環境省に申請。DIPの発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると正式に確認したことを意味している。今回の合意について米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使は、「最良の技術でポーランド初の原子力発電所を建設し、後の世代に安価でクリーンな電力を提供するという目標の達成をともに目指すワン・チームとして3社が結束した」と指摘した。WH社のP.フラグマンCEOは、ベクテル社と組んだチームの能力は、米国初のAP1000が4月に送電を開始し、後続の1基も間もなく完成するという事実からも明らかだと強調。世界ではこのほか4基のAP1000が営業運転中であることから、「当社とベクテル社のチームはこのような経験を通じて、ポーランドが環境に優しい確実なエネルギー・ミックスを効率的に確保できるよう協力していく」と述べた。ポーランド気候環境省のA.モスクヴァ大臣は、「2033年の送電開始がいよいよ現実味を帯びてきた」と表明。「このまま行けば、ポーランドは2040年にエネルギーの四分の一までを原子力で賄うという目標の達成も可能だ」と指摘している。なお、ポーランドでは韓国水力・原子力会社(KHNP)も、中央部のポントヌフで韓国製の大型PWR「APR1400」の建設を計画しており、ポーランドの国有資産省(MOSA)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2022年10月末に協力覚書を締結。PGE社とMOSAが一部出資するエネルギー企業のZE PAK社、およびKHNP社はその際、企業間協力意向書(LOI)を締結している。(参照資料:WH社、PEJ社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 May 2023
- NEWS
-
米WH社 AP1000のSMR版「AP300」を発表
米ウェスチングハウス(WH)社は5月4日、同社製AP1000の電気出力を30万kWに縮小したPWRタイプの小型モジュール炉(SMR)「AP300」を発表した。今後10年以内に初号機を完成させ、稼働させることを目指している。同社は現在、電気出力が最大でも0.5万kWというヒートパイプ冷却式のマイクロ原子炉「eVinci」を開発中だが、「AP300」はすでに稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000設計に基づいており、いわば「実証済み」のテクノロジー。AP1000はまた、米国と英国、および中国で設計認証を取得したほか、欧州の電力事業者が定めた安全基準「欧州電気事業者要件(EUR)」の認証審査をクリアしている。このため同社は、「AP300」では許認可手続き上の利点も備わるなど、顧客にとってはリスクが最小限の提案になると強調している。「eVinci」は2020年12月、米エネルギー省(DOE)が推進する「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定され、2030年~2032年の商業化を目指すカテゴリーの炉に分類された。これに対して、WH社は「AP300」では2027年までに原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し、2020年代末に同炉の初号機でサイト関係の認可手続きを完了し建設工事を実施する方針。同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「数あるSMRの中でも『AP300』は唯一、実際の建設・運転経験に裏付けられた設計であり、明確に見通せる建設スケジュールとコストの実証性を兼ね備えた先進的原子炉として世界中の顧客のニーズに応えていく」と述べた。WH社の説明によると、「AP300」は1ループ式の超コンパクト設計で、設置面積はサッカー・コートの4分の1ほど。AP1000と同じくモジュール工法が可能で、同一の主要機器や構造部品を使用、これには受動的安全系や燃料、計装制御(I&C)系も含まれている。また、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用出来るほか、建設にともなう課題への対応策もこれまでの経験から得られている。さらに同炉には、負荷変動に速やかに追従する能力があり、運転管理・保守点検(O&M)の手順もAP1000の18炉・年に及ぶ運転実績から確認済みである。「AP300」で得られる安全でクリーンな電力は、地域暖房や海水の淡水化に利用できるほか、間欠性を持つ再生可能エネルギー源の補完電源としても理想的。将来的には、クリーンな水素を製造する安価な手段としても活用が可能だとしている。 なお、WH社は「AP300」開発チームを率いる上級副社長として、R.バランワル最高技術責任者(CTO)を任命した。同氏はDOEの原子力次官補経験者であり、先進的原子力技術の商業化支援イニシアチブ「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」では担当ディレクターを務めるなど、原子力発電分野で数10年の経験を有している。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 May 2023
- NEWS
-
ブルガリアでのAP1000建設プロジェクトが前進
米ウェスチングハウス(WH)社は3月2日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWR=VVER-1000×2基)にAP1000を1基以上建設することを視野に、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB社)と協力覚書を締結した。KNPP-NB社は、既存インフラや認可を活用して1~2基の原子炉増設計画を管理するため、コズロドイ発電所が設立したプロジェクト企業。この覚書に基づき、WH社とKNPP-NB社はAP1000の建設計画を立案する共同作業グループを設置する。両社間の協力を拡大して、ブルガリアにおけるエネルギー供給の強化や気候変動防止目標の達成を推進。また、同国の原子力規制に則した建設計画を合理的に進めるため、共同作業グループは同国の設計面や許認可関係の規制体系に改めて取り組んでいく方針だ。ブルガリアは2007年に欧州連合(EU)に加盟する際、設計上の安全性に懸念が表明されていた同発電所1~4号機(各44万kWのVVER)を2006年までにすべて閉鎖した。現在は5、6号機の2基だけで総発電量の約35%を賄っているが、追加の原子炉建設は1980年代から継続的に検討中。採用炉型は、その時々の政府の意向により二転三転している。2012年に経済的理由でベレネ原子力発電所建設計画を中止した際、代わりにコズロドイ発電所でWH社製AP1000を採用した7号機の建設案が浮上したものの、資金不足のためWH社との当時の協力合意は期限切れとなった。2020年に政府が7号機の建設を再検討した時点では、規制当局が建設サイトの環境影響声明書の中でWH社製AP1000とロシアのVVERの両方を承認していたが、2021年1月に政府は最終的に、「ベレネ発電所用に購入済みのVVER機器で7号機を建設するのが経済的で合理的」と表明。その一方では、同年2月にKNPP-NB社が米国のニュースケール・パワー社と協力覚書を締結しており、コズロドイ発電所では小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性も出てきた。今年1月には、エネルギー省が2050年までカバーする新しいエネルギー戦略を公表し、コズロドイ発電所と計画中のベレネ発電所で2基ずつ建設する方針を明示している。同国議会はこれに先立ち、コズロドイ発電所の増設計画について票決を行っており、WH社製AP1000の導入に向けて、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針が確定。これにともない、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成を迅速化するため、3月1日までに必要な措置を講じることになっていた。WH社はすでに昨年12月、コズロドイ発電所5、6号機の1基に対し、2024年から10年間にわたり燃料供給する契約を獲得している。今回の覚書について、同社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長は、「当社の技術でブルガリアに経済面や環境面の利点をもたらしつつ、エネルギーの供給保証にも貢献していきたい」と抱負を述べた。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Mar 2023
- NEWS
-
米国初のAP1000 ボーグル3号機が初臨界達成
米ジョージア州で建設中のA.W.ボーグル原子力発電所3号機(PWR、110万kW)が3月6日、初臨界を達成した。同機は米国で約30年ぶりの新規炉であり、国内初のウェスチングハウス(WH)社製AP1000となる。同機では今後、起動試験を引き続き実施して、一次冷却系や蒸気供給システムで設計通りの性能が得られることを実証する。出力を徐々に上げて送電網に接続した後は、複数の出力レベルで試験を行いフル出力の達成を目指す。営業運転の開始までにすべてのシステムの機能と運転手順を確認する方針で、同機が供用を開始するのは2月中旬の発表通り5月か6月になる見通し。後続の4号機については、今年の第4四半期後半~2024年第1四半期の終わり頃を見込む。ボーグル3、4号機の建設工事はそれぞれ、2013年3月と11月に開始されており、サザン社傘下のジョージア・パワー社はこの建設プロジェクトに45.7%出資。このほか、オーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)およびダルトン市営電力がそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資している。これら2基の運転は、同じくサザン社傘下のサザン・ニュークリア社が担当する。ジョージア・パワー社の会長と社長を兼任する C.ウォマックCEOは、「今後も起動試験のあらゆる段階で課題の解決に取り組み、3号機を安全に稼働させる」と表明した。WH社のP.フラグマン社長兼CEOも同日、「ジョージア州でこれから数世代の州民に安全で信頼性の高い電力を供給していく重要な一歩になった」とコメント。同社のAP1000により、米国の原子力開発利用に新たな時代が到来したとしている。同社は第3世代+(プラス)のAP1000について、受動的安全系を全面的に採用しておりモジュール工法が可能な省スペース型の設計だと説明。中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中であるほか、ポーランドは最初に建設する大型炉3基にAP1000の採用を決定した。ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中の様々なサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:ジョージア・パワー社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 07 Mar 2023
- NEWS
-
ポーランドのPEJ社 設計に先立つ初期活動でWH社と契約
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業子会社Polskie Elektrownie Jądrowe (PEJ)社は2月22日、同国初の大型原子炉の建設に向け、米ウェスチングハウス(WH)社とフロントエンド・エンジニアリング等の初期活動を実施する契約を締結した。ポーランド政府は国内の複数のサイトで、2043年までに100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設する計画で、2022年11月には最初の3基、小計375万kW分に採用する設計として、WH社製の第3世代+(プラス)PWRであるAP1000を選定した。同国北部のルビアトボ-コパリノ地区で2026年にも初号機の建設工事を開始し、2033年の完成を目指している。2022年12月には発電所のレイアウトなど、プロジェクトの細かな取り決め事項についてWH社と合意している。今回結ばれた契約は、建設プロジェクトの実施契約締結に先立ち、WH社が進める10項目の準備作業を定めたもの。発電所の詳細な開発モデルの作成や予備的リスク評価に先立つ準備作業が含まれるほか、AP1000技術を現地の要件すべてに適合させるため投資の実施要件をリスト化し、ポーランドのサプライヤーを中心とした資機材調達戦略の枠組みを設定、建設プロジェクトに対する外部資金の調達についても原則を定める。PEJ社によると、このような作業は建設プロジェクトの実施スケジュールを維持していく上で重要であり、これまで世界中で行われてきた原子力発電所建設プロジェクトの教訓に基づいている。同社はすでに2022年、建設許可の取得に向けてプロジェクトの環境影響評価報告書をポーランド気候環境省に提出しており、関係インフラを建設する計画の策定やサイト周辺自治体との交流なども始めている。今回の契約締結について、気候環境省のA. モスクヴァ大臣は、「原子力はエネルギー・ミックスの重要な構成要素となり、ポーランドのエネルギー供給を保証する」と説明。「このような戦略的投資により、将来の電力価格が低く抑えられるだけでなく、クリーンで安全な国産エネルギーを確保できる」とした。また、この計画で数多くの国内企業が刺激を受け、関係サプライヤーやパートナー企業になるなど、国家経済や雇用にも良い影響があるとしている。一方、WH社の発表によると、同社はすでにポーランドの国内企業35社と提携契約を結んでおり、同国内で大規模なエンジニアリングセンターの設置も計画している。追加の産業投資を通じて、ポーランドの人材育成や機器供給基盤の構築も支援していく方針である。同社はまた、本格的な受動的安全系を備えたAP1000はモジュール方式で建設することができ、クリーンな電力や蒸気、水素も製造可能だと指摘。米ジョージア州では現在、2基のAP1000が建設中だが、中国ではすでに世界初のAP1000が4基営業運転中だとした。さらに、ロシア型PWR(VVER)を15基備えたウクライナでも、AP1000を9基建設する計画が浮上するなど、世界中のサイトで建設される可能性があると強調している。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Feb 2023
- NEWS
-
ポーランド SMR量産に向け6つの工科大で原子力プログラム設置へ
ポーランドの石油化学企業PKNオーレン・グループは1月31日、同国内で小型モジュール炉(SMR)を建設するため、国内6つの工科大学および教育科学省と技術スタッフの教育・訓練プログラム設置に向けた基本合意書に調印した。同プログラムの設置は教育科学省が支援しており、調印式も同省内で行われた。PKNオーレン・グループは自社事業の展開にともなうCO2の排出量を削減するため、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のSMR「BWRX-300」の国内建設を決定。そのための合弁企業として、2021年12月、化学素材メーカー大手のシントス社と折半出資で、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立した。OSGE社は2026年にも初号機の建設を開始し、2033年以降、数10基のSMRを完成させていく計画である。原子力分野の専門家の育成は、ポーランドにおける原子力産業の発展にとって最も重要な課題の一つとなっている。そのため、同社とOSGE社はグダンスク工科大、AGH科学技術大、ポズナン工科大、シレジア工科大、ワルシャワ工科大、およびブロツワフ科学技術大に原子力分野の教育・訓練プログラムの設置を提案。2023年と2024年の学年度を皮切りに、修士コースも含めた2学期分のプログラムの設置で、条件整備の共同アクションを取ることになった。グダンスク工科大ではまた、「グダンスク原子力技術センター」の設立準備も進められている。グダンスク工科大の説明では、「BWRX-300」を1基備えた原子力発電所では、約100名分の労働力が必要。これらの手配は喫緊の課題となっている。また、原子力産業が新たな産業分野として成り立つためには、原子力の専門家だけでなく化学者や化学技術の専門家、電気技師、安全性の確保と環境保全関係の専門家、サイバーセキュリティや危機対応サービス関係の専門家も必要になる。これらのことから、OSGE社の「BWRX-300」建設計画は、少なくとも数千人規模の雇用創出を意味するという。新たな教育・訓練プログラムで育成された専門家は、将来も安定した収入が保証されると強調している。PKNオーレン社のD.オバイテク社長は、「SMRはエネルギー効率が高い技術なので、当社の事業で排出されるCO2を2050年までに実質ゼロ化する上で非常に有効だ」とコメント。CO2を排出しない電源として同グループの他の発電設備を補完できるため、その専門スタッフの育成はポーランド経済とエネルギー供給保証の強化にもつながると指摘した。教育科学省のP.チャルネク大臣は記者会見の席で、「産学がともに発展するためには相互協力が欠かせない」と表明。低炭素エネルギーの開発はポーランド経済にとって重要課題であるとした上で、「ポーランドが世界をリードする科学者やエンジニアを輩出できるよう、当省としても別途、原子力関係の人材育成プログラムを計画中だ」と述べている。(参照資料:グダンスク工科大学、PKNオーレン・グループ(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Feb 2023
- NEWS
-
ブルガリア 新しいエネルギー戦略に新規の原子炉建設を明記
ブルガリアのエネルギー省は1月17日、今年から2050年までをカバーする新しいエネルギー戦略を発表し、同国唯一の原子力発電所であるコズロドイ発電所(100万kWのロシア型PWR=VVER-1000の5、6号機のみ稼働中)と計画中のベレネ発電所で、原子炉を2基ずつ建設する方針を明確に示した。ブルガリアの国民議会(一院制)ではこれに先立つ12日、コズロドイ発電所で原子炉を新設する計画について票決が行われ、同発電所にウェスチングハウス(WH)社製のAP1000を導入するため、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結交渉を開始する方針案が112対45、棄権39で可決された。この方針に基づき、関係閣僚らは7号機の建設承認手続きと8号機の環境影響声明書作成の迅速化に必要な措置をすべて、3月1日までに講じることになった。同省のR.フリストフ大臣によると、ブルガリアのエネルギー部門は昨年、120億kWh以上の電力を近隣諸国に輸出して約30億ユーロ(約4,200億円)の利益を得るなど、同国経済全体に大きく貢献。このため、今後も同国が欧州の発電および電力輸出分野で主導的地位を維持するとともに、国家の安全保障やエネルギー供給を保証し、国内のエネルギー源を継続して活用していくことは同戦略における優先事項となる。このことはまた、欧州連合(EU)が目指す「2050年までにカーボンニュートラルを達成」への貢献とエネルギーの安定供給は同戦略の主要事項だと説明している。同相は具体的に、主力電源である褐炭火力を2030年まで継続的に使用するが、それ以降は使用量を徐々に減らしていき2038年で使用を停止すると表明。EUの脱炭素化目標達成を阻まぬよう、あらゆる方策を通じてCO2の排出量を削減していくとした。原子力を中心とする電源の新設もその一環であり、コズロドイ5、6号機が閉鎖された後の代替電源となる7、8号機を新たに建設するほか、2012年に一旦頓挫したベレネ原子力発電所計画を復活させ、新規に2基を建設するとした。同相は、ブルガリアには原子力関係のインフラ設備のほかに、経験豊富な人材や認可済みのサイトなど、原子力開発に必要な条件はすべて整っていると強調している。同国では現在、コズロドイ発電所の2基で総発電量の約35%を賄っている。ロシアとの協力により、1980年代からベレネ原子力発電所(VVER-1000×2基、各100万kW)の建設計画を進めていたが、2012年当時のブルガリア政府はコスト高を理由に同計画を中止した。その代わりとして、WH社製AP1000を採用した7号機の建設案を一時的に検討したが、資金不足のため進展せず、この件に関する関係者の合意は期限切れとなっていた。その後2019年3月、ブルガリア電力公社(NEK)はベレネ計画を再開するため、戦略的投資家やプロジェクト企業への出資企業を国内外から募集すると発表。同年12月にはエネルギー省が戦略的投資家の候補企業として、米GE社を含む外国企業5社に絞り込んでいる。同国政府はまた、2019年11月に米国政府と原子力を含む様々なエネルギー分野の協力を拡大することで合意しており、翌2020年10月には米国政府と民生用原子力発電分野における戦略的協力を加速するため、了解覚書を締結。コズロドイ7号機の建設については、閣僚会議が2021年1月、改めて検討する方針を承認していた。(参照資料:ブルガリア政府(ブルガリア語)、ブルガリア議会の発表資料、原子力産業新聞・海外ニュース、およびWNAの1月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Jan 2023
- NEWS
-
米国で建設中のボーグル3号機 送電開始は4月に
米ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、3、4号機(各ウェスチングハウス社製のAP1000、110万kW)を建設しているジョージア・パワー社は1月11日、今年の第1四半期(2023年1月~3月)中に予定していた3号機の送電開始を4月に延期すると発表した。これは、同社および親会社のサザン社が証券取引委員会(SEC)に提出したレポートの中で明らかにしたもの。延期理由としては、同じくサザン社の子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア・オペレーティング社が、3号機の運転開始前試験と起動試験で冷却系配管の一部に振動を認めたため。同社は現在、修理作業を実施しており、原子力規制委員会(NRC)に対し、この作業を迅速に進めるため運転認可の修正を要請する方針である。この延期にともない、同プロジェクトに45.7%出資しているジョージア・パワー社は、これまでの建設費や試験費に加えて月額で最大1,500万ドルの(税引き前)資本コストを負担する必要がある。また、同プロジェクトにそれぞれ、30%と22.7%、および1.6%出資しているオーグルソープ電力とジョージア電力公社(MEAG)、およびダルトン市営電力にも影響が及ぶと思われる。ボーグル3、4号機の増設計画は米国で約30年ぶりの新設計画であり、それぞれ2013年3月と11月に本格着工した。同様にAP1000設計を採用したサウスカロライナ州のV.C.サマー2、3号機建設計画は、2017年3月のウェスチングハウス社の倒産申請を受けて中止となったが、ボーグル計画ではサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いで建設工事を継続してきた。3号機では2021年7月に温態機能試験が完了し、燃料の装荷も2022年10月に完了した。今後のスケジュールは主に、機器類の最終試験や運転前試験、および起動試験の進展状況に左右されるが、サザン・ニュークリア社は現在、ベンダーや契約企業、請負企業の管理や現場労働者の生産性監督、コストの上昇問題等に取り組んでいる。同型炉が中国で運転を開始してまだ数年ということから、新たな技術を導入した一部のシステムや構造物、機器類で設計変更や修理が必要になる可能性もあり、その場合はスケジュールのさらなる遅延やコストの上昇もあり得るとしている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Jan 2023
- NEWS
-
デンマーク企業が小型熔融塩炉で英国の設計審査を申請
英国原子力産業協会(NIA)の1月5日付発表によると、デンマークの原子力技術開発企業であるコペンハーゲン・アトミクス社が、第4世代の小型トリウム熔融塩炉(MSR)を英国の包括的設計審査(GDA)にかけるため、申請書を英国政府に提出した。審査に先立ち現在、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が、設計者に同審査を受ける能力が備わっているか確認中と見られているが、同社の英国法人であるUKアトミクス社はすでに、フルサイズの原型炉を建設済み。今年から様々な試験を実施して、この炉が英国の安全・セキュリティ面の厳しい基準をクリアしていることを示す「設計承認確認書(DAC)」を原子力規制庁(ONR)から取得する予定。環境保護と放射性廃棄物の管理面については「設計承認声明書(SoDAC)」を環境庁(EA)から取得し、2028年にも最初の商業炉を英国内で完成させる予定である。MSRは燃料として熔融塩とトリウムなどの混合液体を使用する設計で、北米では1950年代に米オークリッジ国立研究所を中心に開発が始まった。CO2を出さずにクリーンな電力を発電できるほか、既存の軽水炉から出る長寿命放射性廃棄物を大量に燃焼出来る等の利点があり、「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」は2002年に溶融塩炉を国際共同研究開発が可能な6種のコンセプトの1つに選定している。UKアトミクス社のMSRは、減速材として重水を使用するコンテナ・サイズのモジュール炉(SMR)で、熱出力は10万kW。560°Cの熱を顧客に供給する。また、燃料としてトリウムや既存炉の使用済燃料を使用するなど、ウラン燃料ベースの既存炉を根本的に改善した革新的な原子炉技術であると同社は強調。最終的に排出される廃棄物は大幅に削減され、廃棄物の貯蔵期間も10万年から300年ほどに短縮できるとした。同社はすでに8年前から、英国の複数の大学と同炉の主要技術や機器類の開発・試験と実証を進めている。今後は、自動車や飛行機の製造と同様に同炉を工場で大量に製造し、先進的原子炉開発分野を牽引したい考えだ。UKアトミクス社としては、将来的に数千基規模のMSRを製造・所有・運転することを計画しており、関連設備や技術など付随するサービスも含めた総合的なエネルギー・ソリューションの提供というビジネス・モデルを検討中。同モデルでは開発リスクが軽減される一方、コスト面の効果が高い。また、顧客は設備投資などの資本支出を必要としない上、同炉の運転にともなう支出も非常に小さく済むことから、同社はMSRで競争力の非常に高い電力を安価で提供し、クリーンエネルギーへの移行を世界レベルで加速することができるとしている。BEISは2021年5月、GDAの審査対象としてSMRその他の先進的原子炉技術を含めると表明した。これを受けて、ロールス・ロイスSMR社は同年11月、同社製SMRのGDA申請書をBEISに提出。米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社も2022年12月に同社製SMRをGDAにかけるため、申請書を提出している(参照資料:NIA、BEIS、UKアトミクス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Jan 2023
- NEWS
-
ポーランド企業とWH社 AP1000建設の実施取り決めで合意
ポーランドのPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は12月15日、最初の大型炉発電所の採用炉型であるウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」の建設について、細かな取り決め事項でWH社と合意したと発表した。同国政府は先月、最初の3基、375万kW分の採用炉型としてAP1000を選定しており、今回の枠組み合意はその具体化の手続きとなる。建設プロジェクトの準備作業の概要を定めたもので、両社は今後のエンジニアリング・サービス契約締結に向けて、発電所のレイアウトなど初期段階の設計作業のほか、WH社が提供する許認可手続き関係の支援や建設サイトでのサービス業務、資機材等で合意。次の段階では詳細作業や商業契約に進む方針で、AP1000発電所の設計開始契約については、来年半ばにも別途結ぶとしている。ポーランドの改訂版「原子力開発計画」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万kW~900万kW建設することになっている。ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の子会社であるPEJ社は2021年12月、最初の原子力発電所の最も有望なサイトとして、バルト海に面した同国北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を選定。今年に入っては、政府の環境保全管理局に建設プロジェクトの環境影響声明書(EIS)を提出しており、現時点では2026年に初号機の建設工事を開始し、2033年に完成することを目指している。AP1000は第3世代+(プラス)の設計として、欧州加圧水型炉(EPR)と同様に稼働実績があり、中国で2018年以降に世界初のAP1000が4基運転を開始したほか、今年になって新たに2基が着工した。米国でも2013年から2基が建設中であり、ウクライナでは合計9基のAP1000建設が決まっている。同設計の特長として、WH社は本格的な受動的安全炉であることや、モジュール方式で建設可能な点などを挙げている。今回、WH社のD.ダーラム・エネルギーシステム担当社長とPEJ社のT.ステピン社長が協力合意文書に調印。調印式には、ポーランドのA.モスクヴァ気候環境相と戦略的エネルギーインフラを担当するM.ベルゲル政府全権委員、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使などが同席した。ポーランド政府のベルゲル委員は、「WH社の炉型を選定した際、M.モラビエツキ首相が記者会見で強調していたように、ポーランドが経済面でさらなる成長を遂げるには安価でクリーン、安定した電力供給が不可欠。その意味で原子力を選択したことは当然の結果」と指摘。原子力発電所によってポーランドはロシアなどからの化石燃料を必要としなくなり、国家のエネルギー供給保証を速やかに強化できると述べた。米国のブレジンスキー大使は、「今回の枠組み合意により、ポーランドは信頼できるパートナーから安全で信頼性の高い原子力エネルギーを得るという目標の達成に向け大きく前進した」とコメント。両国間協力の主要な柱でもあるこの合意により、ポーランドはCO2の排出量を削減しながら、エネルギーの供給を一層確実にすることができると指摘した。(参照資料:PEJ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Dec 2022
- NEWS
-
チェコ ドコバニ5号機の増設で3社が応札 中露は除外
チェコの国営電力(CEZ社)は11月30日、同国南東部のドコバニ原子力発電所で増設するⅡ期工事(5、6号機、各120万kW級PWR)の最初の1基について、100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)が大手のベンダー3社から最初の入札文書を受領したと発表した。5号機建設の競争入札は今年3月に開始され、EDU II社は安全・セキュリティ面の資格審査をクリアした米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)を正式に招聘。ロシア国営のロスアトム社と中国広核集団有限公司(CGN)も参加を希望していたが、K.ハブリーチェク副首相が大臣を兼ねる同国の産業貿易省がこれら2社を除外した。EDU II社は今後、これらの入札文書の検討およびベンダーとの交渉を開始し、提案されている原子炉設計の技術面や商業面の妥当性を検証する。2023年9月までに最終入札文書を3社から受け取る予定で、これらの評価結果に関する報告書をチェコ政府が承認すれば、2024年にも選定ベンダーと契約を締結し、既存ユニットの隣接区域で2029年に5号機を着工、2036年の試運転開始を目指す。CEZ社は将来的に、Ⅱ期工事の2基で既存の1~4号機(ロシア型PWR、各51万kW×4基)を代替する方針。チェコ政府はそのため、この増設計画に対して今年初頭に成立した低炭素法に基づいてEDU II社に低金利融資を提供するほか、同炉が発電する電力の売買契約も交わすとしている。入札に参加した3社はこれまで、契約の獲得に向けて周到に準備を進めてきており、地元の関係企業と強力なチームを結成、ドコバニ発電所サイトを訪問するなどした。WH社の今回の発表によると、同社は原子炉建設のパートナー企業であるベクテル社と協力して、同社製の第3世代+(プラス)炉「AP1000」をドコバニ5号機として建設することを提案。その際、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所の増設計画についても、ベクテル社とともに請け負う提案をしている。一方のEDFは、今年6月にチェコの首都プラハにEDFの原子力支部を開設。中国で完成し、また欧州で現在建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」より出力の小さい、120万kW級の「EPR1200」をEDU II社に提案する方針を明らかにした。またKHNP社は、アラブ首長国連邦(UAE)への輸出に成功した、韓国製の第3世代の140万kW級「改良型加圧水型炉(APR1400)」を提案したと見られている。チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力の発電シェアを2040年までに60%に引き上げると明記。同戦略をフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいてドコバニ発電所の2基増設計画を進めている。同国の環境省は2019年9月にⅡ期工事建設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的判断を下しており、EDU II社はこれを受けて、2020年3月に同計画の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請、SUJBは2021年3月にこの許可を発給した。CEZ社は原子力発電の最大の強みとして、エネルギー・セキュリティの高さを挙げているほか、運転コストの低さや長期的な電力価格の安定性を指摘した。同社はまた、チェコの市場調査会社である「国際ビジネス研究サービス(IBRS)」が10月末から11月初旬にかけて実施した調査の結果に言及。同国では過去一年で原子力に対する国民の支持率が7%上昇し、1993年以降の最高値である72%に到達したが、この上昇は主に最近のエネルギー危機が原因だと指摘している。(参照資料:CEZ社、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Dec 2022
- NEWS
-
韓国KHNP社 ポーランドでの「APR1400」建設に向けサイト調査開始
韓国水力・原子力会社(KHNP)は11月11日、ポーランド中央部のポントヌフにおける韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指して、韓国の原子力企業チームが現地でのサイト調査に着手したと発表した。ポーランドの原子力開発計画では、100万kW級の大型原子炉を2043年までに6基、合計600万kW~900万kW建設することになっており、同国のM.モラビエツキ首相はこの件について10月末に「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表。同国北部のルビアトボ-コパリノ・サイトにおける最初の3基、375万kW分として、WH社のAP1000を建設することになった。一方、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は同じ頃、ポーランドの原子力開発計画の一環としてポントヌフで「APR1400」を建設することを目指して、KHNP社が年末までに建設費や資金調達方法などを盛り込んだ予備的建設事業計画を準備できるよう支援する協力覚書を、ポーランド国有資産省(MOSA)と締結した。また、ポーランドの原子力開発計画を担当する国営エネルギー・グループ(PGE)は、ポントヌフで別途、小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエネルギー企業のZE PAK社とともに、「APR1400」の建設計画でKHNP社に協力するための「企業間協力意向書(LOI)」を3社間で締結していた。KHNP社の発表によると、韓国チームは同社のほかに韓電技術(KEPCO E&C)や韓電原子燃料、韓電KPS、斗山エナビリティ(前「斗山重工業(株)」)、大宇建設などで構成されている。現在はZE PAK社の社員と協力して、9日からポントヌフの原子力発電所サイトとしての特性調査を開始しており、これまでに冷却水の水量や送電網との接続状況といった適性を検証している。同チームはまた、ZE PAK社のZ.ソロルツ会長とも、この計画に関する事業協力案について協議している。KHNP社はまた、このプロジェクトにおける韓国とポーランドの協力関係を強化するため、韓国原子力発電輸出産業協会(KNA)、ポーランド電力産業協会(IGEOS)と、10日にワルシャワで「APR1400サプライヤーズ・シンポジウム」を共同開催した。このシンポには、ポーランドの政府や関係機関、原子力サプライヤーなどから約200名が参加しており、韓国チームは「APR1400」の優秀性をアピールするとともに、ポーランドへの技術移転戦略などを紹介した。このイベントではさらに、両国の原子力関係企業が相互協力できる分野や人的交流の拡大等についての会合が複数開催され、韓国チームはポーランドの関係サプライヤー13社と了解覚書を締結。ポーランドの原子力発電所建設に対する資機材の相互提供や、運転・保守等でも企業間協力を強化することになった。このほか、KHNP社の海外原子力プロジェクト担当者が同じ日、ポーランドで副首相を兼任するJ.サシン国有資産相らと会談。このプロジェクトの事業計画の作成やサイトの適性評価計画、ZE PAK社との協力案について協議している。(参照資料:KHNP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Nov 2022
- NEWS
-
ポーランド 大型炉3基にAP1000を採用
ポーランド政府は11月2日、大型原子炉を備えた最初の発電所として、米ウェスチングハウス(WH)社が開発した第3世代+(プラス)の加圧水型炉「AP1000」を建設することを承認したと発表した。気候環境大臣が提出していた決議を内閣が正式に承認したもので、この承認と同時に同決議は発効している。同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっており、政府は今回、このうちの最初の3基、375万kWに安全で実証済みの技術を用いたAP1000を採用すると表明。原子力発電所の建設に最適の地点として昨年12月に選定した北部のルビアトボ-コパリノ・サイトで、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す。これによりポーランドは、エネルギー供給保証の基盤として新たな電源を確保しつつ、エネルギー・ミックスの多様化を図り、電力価格を低い水準で安定させるとともに、発電部門におけるCO2の排出量を削減。クリーンで安全な原子力発電所の建設に向けた新たな産業部門を、国内経済にもたらしたいとしている。ポーランドにとって、エネルギーを恒久的に自給しロシア産のエネルギーから脱却する上で、国内最初の原子力発電所建設に向けた投資を加速することは非常に重要である。そのため、原子力発電所の建設計画は長年にわたって、同国のエネルギー部門における重要課題の一つとなっている。政府のPPEJについては、WH社のほかにフランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの原子炉を提案。韓国政府とKHNP社は先月末、PPEJを補完する計画として、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)建設の実現を目指し、ポーランド政府との協力に向けた覚書、および同国企業との協力意向書を締結した。一方、WH社は9月12日、ポーランドと米国の両国政府が2020年10月に締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協定(IGA)」に基づいて、大型炉建設のロードマップとなる「民生用原子力分野における両国間協力の概念と計画に関する報告書」をポーランド気候環境省に提出。その中で、WH社がポーランドの計画にAP1000を提供する方針であること、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)や国際開発金融公社(DFC)が同計画に融資を行う可能性があることを示していた。今回ポーランド内閣が承認した決議では、WH社のこの報告書の提案に同意することになり、明示されているそれぞれの基本的義務事項を双方が履行する。具体的には関係する企業を支援するとともに、政府レベルでも規制やスタッフの訓練といった活動や、サプライチェーンの構築や一般国民の理解を求めるキャンペーン等を実施していくことになった。ポーランド政府は今回、エネルギー部門の重要課題を解決するための方策として、AP1000の初号機を2033年までに完成させることを挙げたほか、国内2つ目の原子力発電所を建設する準備を進めるため、速やかに対策を講じるとした。また、現在主流となっている化石燃料発電を低炭素な電源に取り換えるほか、電力需要を満たしつつ送電網の安定を図るため、分散型の再生可能エネルギーを大規模に導入するとした。さらに天然ガスの役割については、再エネの不安定な供給量を補完する移行期の燃料に限定するとしている。2つ目の原子力発電所の建設準備については、気候環境省のA. モスクヴァ大臣が記者会見の席上、「欧州その他の国の企業とも協力する余地が残されている」と発表。内閣の意向として、現段階では採用炉型の決定を待たずに建設準備を加速することを明らかにしている。なお、WH社は同じく2日付でコメントを発表しており、「ポーランドと当社にとって歴史的な日になった」と表明。ポーランドの建設計画については、AP1000設計の採用を前提に同社は今年1月、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したほか、9月にはさらに22社の同国企業と、ポーランドおよびその他の中欧地域におけるAP1000建設への協力を取り付けるため、了解覚書を締結したと改めて表明している。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)①、②、③、ウェスチングハウス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Nov 2022
- NEWS
-
韓国KHNP社 ポーランドのポントヌフにおける「APR1400」建設に向け協力意向書
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は10月31日、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設に向けた計画の策定と支援を行うため、ポーランド国有資産省(MOSA)と情報交換等の協力を行う了解覚書を、また両国の関係企業3社が「企業間協力意向書(LOI)」を締結したと発表した。ポーランドでは2021年2月に内閣が決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを進めている。同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は昨年12月、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を建設サイトに選定しており、この案件の最初の部分についてM.モラビエツキ首相は2日前の10月29日、「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表していた。ポントヌフにおける今回の協力構想について、ポーランドのPGEグループは31日付のリリースで「政府の原子力プログラムを補完するもの」と説明。LOIでは、同グループがエネルギー企業のZE PAK社とともに、韓国国営の韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力する可能性を模索することになったが、主な目的は「APR1400」の建設に向けた予備的開発計画を年末までに作成すること。このプロジェクトを通じて、ポーランドのエネルギー供給システムの安定性と独立性を向上させ、安価でクリーンなエネルギーを今後60年にわたって安定供給していく。また、同プロジェクトを通じてポーランドの経済的競争力を強化し、新たな投資の機会を創出したいと述べている。ポントヌフ地域では、ZE PAK社と同国の大手化学素材メーカーであるシントス社が昨年8月、ZE PAK社所有の石炭火力発電所に共同でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」、あるいはその他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設すると表明した。今回PGEグループは、同地で同グループとZE PAK社、およびKHNP社の3社が実施する具体的な作業として「APR1400」の建設に向けた地質工学的解析、地震条件や環境条件などの予備的調査を挙げている。3社はまた、準備作業と建設・運転段階における予算の見積もりや資金調達モデルの提案、実施スケジュールの作成と各段階の作業区分けなども実施。さらには、安価でクリーンな電力を適宜安定供給していくため、見積もり投資額や関係支出を合理的に抑えていくとした。「APR1400」を採用した発電所の建設に投資することで、ポーランド企業には新たな技術に対応した広範なサプライチェーンへの参加機会がもたらされるとPGEグループは指摘している。ポーランドの副首相を兼任する国有資産省のJ.サシン大臣は、「昨今のような地政学的状況下においては特に、原子力はポーランドにとって不可欠の重要電源になる」と指摘。低コストなエネルギーとエネルギーの自給という観点からも、ZE PAK社とPGEグループが進める今回の協力構想は、ポーランドの戦略的目標の達成に向けて、大きく貢献すると述べた。また、「『2040年までのエネルギー政策』の中でポントヌフは大型原子力発電所の建設候補地の一つだったが、同地での建設計画はポーランドの原子力プログラムにも貢献する」としており、両社がKHNP社との協力協議を開始し、韓国との協力関係強化に乗り出したことに歓迎の意を表明している。なお、ポーランド政府の原子力プログラムに沿ってルビアトボ-コパリノ地区で大型炉を建設する件について、「WH社の技術を採用する」とM.モラビエツキ首相が発表した後、両国政府もWH社も詳細を公表していない。しかし、米国のK.ハリス副大統領はこの発表ツィートに対し、「この協力が我々すべてにとって有益なのは明らかであり、地球温暖化に対処するとともに欧州のエネルギー・セキュリティ強化に貢献、両国の戦略的協力関係も深めていきたい」と返信。米エネルギー省(DOE)のJ.グランホルム長官も、「ポーランドが400億ドル規模となる建設プロジェクトの最初の部分に米国とWH社を選定したことはビッグニュースだ」とコメント、これにより米国では10万人以上の関係雇用が維持・創出されると説明している。(参照資料:韓国産業通商部(韓国語)、PGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Nov 2022
- NEWS
-
【短信】ポーランド首相 ツイッターに「WH社の技術を採用する」と投稿
ポーランドのM.モラビエツキ首相は10月29日、自身のツイッターアカウントに「米国のK.ハリス副大統領、およびJ.グランホルム・エネルギー省(DOE)長官との協議を終え、我が国の原子力発電プロジェクトではウェスチングハウス(WH)社の安全で信頼性の高い技術を採用することを確認した」と投稿した。同国では2021年2月に内閣が決定したエネルギー政策に基づき、国営企業が進めている小型モジュール炉(SMR)の導入計画とは別に、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。米WH社のほかに、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの技術を提案していた。(参照資料:モラビエツキ首相の投稿、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 Oct 2022
- NEWS
-
加カメコ社とブルックフィールド社の再エネ投資会社がWH社を買収
カナダのウラン生産大手であるカメコ社と、再生可能エネルギーに特化した投資会社のブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ(BEP)社による戦略的企業連合は10月11日、米国の大手原子力発電機器メーカーであるウェスチングハウス(WH)社を総額78億7,500万ドルで買収すると発表した。この総額には負債も含まれており、これを除いた株式の価値は約45億ドル。WH社の株式は現在、ブルックフィールド・ビジネス・パートナーズ(BBU)社が44%、残りを提携する機関投資家が保有しており、カメコ社は約22億ドルで全体の49%を取得しWH社の最大株主となるほか、BEP社と複数の機関投資家が共同で約23億ドルを支払い、それぞれ17%と34%取得する。買収手続きは、BBU社の関係投資家や規制上の承認を得たうえで、2023年後半に完了する予定である。BBU社の発表によると、同社とBEP社の親会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社が2018年に東芝からWH社を買収して以降、WH社はBBU社の下で中核事業である原子力発電機器や関連サービスに改めて集中。運営費の削減や社内の専門技術を強化することにより、その収益性は2倍近くに拡大した。また、原子力発電は近年、脱炭素化という世界的な目標の達成に有効な、信頼性の高いクリーンエネルギー源として認識されつつあり、WH社の事業はこうした強力な追い風の恩恵を受ける理想的な位置にある。 このような背景から、カメコ社とBEP社はそれぞれが保有する原子力関係とクリーンエネルギー関係の専門的知見を統合、クリーンエネルギー社会移行への中核事業として原子力を位置づけている。今回の買収を通じて、原子力部門を戦略的成長の中心基盤とする考えだ。BBU社のC.マドンCEOは、「この4年以上の間に当社はWH社の事業運営を大幅に改善しており、売り上げを拡大するとともに世界的リーダーとしての立場も強化。同社の経営状態は非常に良好だ」と述べた。カメコ社のT.ギッツェル社長兼CEOは、「原子力部門にとって、市場はかつてないほど良好な状態にあり、原子力は安全・確実かつ安価に無炭素なベースロード電力を生み出せる数少ない発電方法の一つだ」と表明。電化や脱炭素化、エネルギーの供給保証が優先される世界の中で、その重要性はますます大きくなると指摘した。同CEOはまた、「WH社の買収によって、原子力のバリュー・チェーン全体が成長するための基盤が築かれるほか、当社の戦略とも完全にマッチする」と強調。エネルギーの原産国や輸送の安全性が大きな関心事となっている現在、既存の顧客のみならず新たな顧客のニーズに応えるカメコ社の能力が増強されるとした。さらに、「WH社が提供する原子力発電設備製造や関連サービス、原子燃料は強力な収入源となり、当社のウラン燃料事業を補完する安定したキャッシュ・フローが生み出される」と説明している。(参照資料:BBU社、カメコ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Oct 2022
- NEWS
-
ルーマニア原子力公社、SMR建設でプロジェクト企業設立
ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は9月27日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear社」を設立したと発表した。計画では、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成を目指す。同発電所ではまた、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する予定である。SNNとノバ社が折半出資するRoPower社は今後、米国のJ.バイデン大統領が今年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行うとしており、その際は国際原子力機関(IAEA)が今年8月に実施した「立地評価・安全設計レビュー(SEED)」の勧告事項も適用する方針である。 設立の記念式には、米国務省のJ.フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官やルーマニア・エネルギー省のV.ポペスク大臣が同席した。同大臣は、ルーマニアで建設されるSMR初号機が欧州においても初のものになるとした上で、「この建設計画は、原子力分野における米国とルーマニアの連携協力の成功例だ」と指摘。この協力により、ルーマニアは最も重要な経済面の安定やエネルギーの供給保証という恩恵を被ることから、ルーマニア政府も同計画が近隣諸国を含めたエネルギーの自給に有効との認識から、支援していると強調した。この計画に関しては米国政府も積極的に後押ししており、2019年3月にSNNとニュースケール社が最初の協力覚書を結んだ翌年の10月、ルーマニアと米国の両政府は、ルーマニアでチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画を米国が支援するだけでなく、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化にも協力するため、「原子力分野における政府間協力協定(IGA)」に調印した。これと同じ日に米輸出入銀行(US EXIM)は、ルーマニアのエネルギー・インフラ分野等に対して、最大70億ドルの財政支援を行うための了解覚書を同国政府と結んでいる。2021年1月になると、米貿易開発庁(USTDA)がSMR建設サイトの選定に向けた予備的評価作業のため、約128万ドルの技術支援金をSNNに交付。この調査が完了した今年5月には、建設に適した候補地が複数特定されており、最有力候補であるドイチェシュティで詳細調査を行うことになった。同月24日には、SNNとニュースケール社、およびドイチェシュティの石炭火力発電所オーナーで、ノバ社を傘下に置くE-Infra社グループが了解覚書を締結、SMR初号機の建設について分析評価を行うと表明している。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2022
- NEWS
-
中国で三門原子力発電所Ⅱ期工事の3号機が着工
中国核工業集団公司(CNNC)は6月28日、浙江省の三門原子力発電所で、3号機(PWR、125.1万kW)の原子炉系統の据付部分に最初のコンクリートを打設したと発表した。同炉は今後着工する4号機(PWR、125.1万kW)とともに同発電所のⅡ期工事に位置付けられており、CNNCはこれにより正式にⅡ期工事の建設工事開始を宣言した。同発電所および山東省の海陽原子力発電所では、受動的安全系を装備した米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)設計の「AP1000」が2基ずつ、それぞれ1、2号機(三門は各125.1万kW、海陽は各125.3万kW)として、2018年から2019年にかけて営業運転を開始。これらのうち、最も早い2018年9月に運転を開始した三門1号機は、世界で初のAP1000となった。今回の発表で、CNNCは三門3、4号機の炉型に言及していないが、AP1000設計中国版の標準設計「CAP1000」になるとの見方が有力である。CAP1000の開発は、その容量拡大版のCAP1400が中国に知的財産権を認めるとのWH社との契約にはあったものの、これまでその進展状況が明らかにされていなかった。中国・国務院の常務委員会は今年の4月20日、三門発電所と海陽発電所、および広東省の陸豊原子力発電所で、大型炉を新たに合計6基建設する計画を承認した。これを受けてWH社は同月26日、「新たに4基のAP1000建設が三門と海陽で承認されたことから、世界のAP1000は米国で建設中のものも含めて合計10基になる」とコメントしている。CNNCによると、浙江省には中国初の原子力発電所となった秦山原子力発電所(I期工事~Ⅲ期工事まで合計7基)が立地するなど、同国の原子力産業の発祥地である。三門発電所では最終的に合計約600万kWのPWR建設が予定されており、1、2号機の発電量は累計ですでに600億kWhを超えた。Ⅱ期工事の3、4号機が完成した場合、同発電所の設備容量は500万kWを超え、これらによる総発電量は年間400億kWhに到達する見通し。これは年間3,000万トンのCO2の排出が抑制されることを意味しており、浙江省と長江デルタ地域における中・長期的な電力供給を支えるとともに、産業構造とエネルギーミックスの最適化を促進。クリーンで低炭素なエネルギーへの移行が促され、同省の高度な社会経済の発展がもたらされる。 CNNCの顧軍・総経理も三門3号機が本格着工したことについて、「浙江省とCNNCの産業開発にとって非常に重要な意味があり、エネルギー分野における両者の協力は今後さらに進展する」と指摘した。また、今後の抱負として、「国家の要求に応じてCNNCは今後も原子力開発を積極的かつ整然と進めていき、クリーンなベースロード電源としての原子力の役割を十二分に発揮させる。科学的な計画立案と高い技術を備えた開発を精力的に促して、電力・エネルギーの供給と低炭素社会への移行を確実なものとし、経済の安定化を図りたい。中央企業としての実践活動の中で社会・政治的な責任を果たすとともに、中国原子力産業界の質の高い発展を牽引していく」としている。(参照資料:CNNCの発表資料①、②(中国語版)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Jun 2022
- NEWS
-
ウクライナとWH社が追加契約、全基分の燃料調達と合計9基のAP1000建設へ
ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社と米ウェスチングハウス(WH)社は6月3日、ウクライナで稼働する15基のロシア型PWR(VVER)すべてにWH社製原子燃料を調達するとともに、同国で建設するWH社製AP1000も9基に増やすなど、これまでの協力を大幅に拡大する追加契約を締結した。ウクライナのロシア離れは、2014年にロシアがクリミア半島を一方的に併合して以降、進展している。南ウクライナ原子力発電所やザポリージャ原子力発電所ではすでに、2015年から2016年にかけてWH社製原子燃料の試験装荷が始まっていた。ウクライナはまた、建設工事が中断しているフメルニツキ原子力発電所3、4号機(K3/K4)(各100万kWのVVER)の完成に向けて、2010年にロシアと結んでいた協力協定を解除すると2015年に表明。2021年8月にエネルゴアトム社がWH社と締結した契約では、建設進捗率が28%のK4にAP1000を採用するとしたほか、その他の原子力発電所も含めてAP1000をさらに4基建設するとしていた。両社の今回の追加契約ではさらに、ウクライナ国内でのAP1000建設プロジェクトを支える「ウエスチングハウス・エンジニアリング・センター」を同国に新たに設置することになった。ウクライナで稼働する既存の15基の運転支援や、これらの炉で将来的に実施される廃止措置の支援も、同センターの役割に含まれるとしている。追加契約への調印は、最初のAP1000が2基建設される予定のフメルニツキ原子力発電所で、エネルゴアトム社のP.コティン総裁とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが行った。これにはウクライナのエネルギー相と、WH社の燃料製造施設が立地するスウェーデンの在ウクライナ大使も同席。調印後は同発電所の視察が行われている。新しい契約によって、両社は既存の契約を再構築したと説明している。WH社の発表によると、稼働中原子炉の全面的な燃料調達先として同社が選定されたのは、ウクライナでエネルギーを確実に供給していく必要性を両社が共有していることや、両社がこれまでに築いてきた盤石な協力関係に基づいている。また、ウクライナ向けの原子燃料を製造するスウェーデンのバステラスでは、燃料集合体の機器製造に関するウクライナへの技術移転を今後も継続。エネルゴアトム社傘下のアトムエネルゴマシ社は近年、WH社製燃料集合体の上下ノズルについて、製造認定を受けたとしている。エネルゴアトム社のコティン総裁は今回の契約について、「現在のように困難な状況下においても、当社は戦略的パートナーであるウェスチングハウス社との協力分野や規模を広げており、ウクライナの原子力発電の歴史に新たな一ページが刻まれるだけでなく、欧州のエネルギー自給にも大きく貢献できると確信している」と述べた。WH社のフラグマンCEOは「業界をリードする当社の原子燃料やサービスで、ウクライナの稼働中原子炉を全面的にサポートできることや、新たに建設するAP1000の基数が5基から9基に増えたことを誇りに思う」と表明。「エネルゴアトム社との長年にわたる連携関係を今後も大切にし、ウクライナの脱炭素化に向けて協力していきたい」としている。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 06 Jun 2022
- NEWS
-
加サスカチュワン州の企業、WH社製マイクロ原子炉建設に向け協力覚書
カナダのサスカチュワン州政府が一部出資する「サスカチュワン研究評議会(SRC)」と、米ウェスチングハウス(WH)社のカナダ法人は5月18日、同州内におけるWH社製マイクロ原子炉「eVinci」(電気出力0.5万kW)の建設に向けて、協力覚書を締結したと発表した。SRCはカナダで第2位の規模を持つ技術研究関係の公共企業体で、農業・バイオテクノロジーやエネルギー、環境、および鉱業の分野で世界中の顧客に科学的なソリューションを提供中。同州中央部のサスカトゥーン市にあるSRC環境分析研究所では、1981年3月から2021年11月まで電気出力20 kWの研究炉「SLOWPOKE-2」を運転した経験もある。WH社の「eVinci」は遠隔地や鉱山等における熱電併給を目的としており、設計寿命は40年間。10年以上燃料交換なしで運転することが可能で、炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状に巻き付け、主要熱交換器とする設計である。両者は将来的にサスカチュワン州内で、「eVinci」をエネルギー利用を含む様々な分野で活用するための試験を実施する。安全で輸送も容易な「eVinci」を使い、同州のクリーンエネルギー生産について、ニーズに即した解決策を生み出したいとしている。サスカチュワン州は今年3月、オンタリオ州とニューブランズウィック州およびアルバータ州とともに、4州が協力して小型モジュール炉(SMR)を開発・建設するための共同戦略計画を策定した。将来的にカナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくのが目的で、ウラン資源に恵まれたサスカチュワン州では今のところ原子力発電設備は存在しないが、オンタリオ州で2028年までに送電網への接続が可能な出力30万kWのSMRを完成させた後、サスカチュワン州で後続のSMRを建設する計画が設定されている。今回の覚書締結について、同州のJ.ハリソンSRC担当相は「SRCでは38年間にわたって『SLOWPOKE-2』研究炉を運転した実績があるので、この経験を新たな技術であるマイクロ原子炉に生かしたい」と述べた。D.モーガン州営電力担当相も「近代的な原子炉設計には、州民が日々必要とするクリーンで安全なベースロード電源を提供する能力がある」と指摘。サスカチュワン州内で原子力発電開発を進めていけば、州内送電網の近代化が促されるだけでなく、数10億ドル規模の経済活動が州内で新たにもたらされると強調した。「eVinci」については、米エネルギー省(DOE)が2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定。7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉の建設を目指している。一方、カナダにおいては2018年2月、WH社が同設計について「ベンダー設計審査(予備的設計評価サービス)」の実施をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請したが、実施条件等で両者が協議中で審査はまだ始まっていない。それでもカナダ政府は今年3月、「eVinci」を将来カナダ国内で建設するため、イノベーション・科学・研究開発省の「戦略的技術革新基金(SIF)」から、2,720万カナダドル(約27億円)をWH社のカナダ法人に投資すると発表した。この投資を通じてカナダ国内の技術革新を促進し、SMR技術が持つ「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」という特質を活用、カナダ経済への多大な貢献を期待するとともに、同国が目標とする「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」の達成で一助としたい考えだ。(参照資料:SRCおよびWH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 May 2022
- NEWS