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英仏首脳 サイズウェルC建設計画を全面支援
英国イングランド南東部のサフォーク州で、EDFエナジー社が準備しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(UK-EPR、167万kW×2基)建設計画について、英仏の首脳は10月6日の共同声明で両国政府が全面的に支援する考えを確認した。この声明文は、フランスのE.マクロン大統領の提唱によりチェコのプラハで開催された「欧州政治共同体(EPC)」の第一回会合に合わせ、同大統領と英国のL.トラス首相が初めて会談し、取りまとめた。両国首脳は、ロシア産化石燃料からの脱却とクリーンエネルギーへの移行は両国共通の課題であるとした上で、エネルギー関係の協力促進を特に協議。原子力発電は再生可能エネルギーとともに、一貫性のあるクリーンエネルギーへの移行戦略の一部であると再確認し、SZC建設計画を全面的に支援していくことで合意した。両首脳は、来月にもSZC関係者が「最終投資決定(FID)」を下すなど、建設準備を整えることを期待すると述べた。来年開催される英仏首脳会談に先立ち、首脳らはまた、両国間の民生用原子力協力全般について、イノベーションやインフラ開発、人材育成等についての協力をさらに拡大していく方針を表明している。SZC計画では、フランス電力の英法人であるEDFエナジー社の下で同計画を担当する子会社の「NNB GenCo(SZC)社」が2020年5月、英国の2008年計画法に基づき、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出した。今年7月に、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣(当時)は、PIの審査当局が提出した報告書や、その他の関係文書を慎重に考慮した結果、同計画へのDCO発給を決定している。なお、トラス政権の発足に伴いBEISでは新たにJ.リースモッグ大臣が就任し、保守党党大会における4日のパネル討論で「原子力発電を誠実に支援していく」考えを表明した。この討論には産業界の代表者も加わり、英国における将来のエネルギーミックスの中で原子力が果たす役割について議論。同大臣は将来のいかなるエネルギー戦略においても、原子力は確実に中心的役割を担うと述べた。また、この戦略にはベースロードの電力を安定して供給することの重要性があると指摘しており、同大臣としては1950年代から英国で信頼性の高い電力を供給してきた原子力であれば、今後もその役割を託すと明言している。同大臣はさらに、「原子力なくしてCO2排出量の実質ゼロ化は不可能、それどころか電力供給の確保戦略さえあり得ない」と表明。同大臣によれば、原子力は安全かつ十分な理解も得られている優れたエネルギー・オプションであり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻といった地政学的な出来事からも被害を受けにくく、1kWhあたりのコストも予測しやすい。同大臣は「大型原子力発電所の建設にふさわしい場所はどこにでもある」と述べており、SZC発電所だけで600万戸を超える世帯に少なくとも60年間、信頼性の高い低炭素な電力を供給可能だと指摘している。(参照資料:英国政府、EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Oct 2022
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英EDFエナジー社、4 基の閉鎖延期を検討
英国で5サイト・9基の商業炉をすべて所有・運転しているEDFエナジー社は9月28日、2024年3月に閉鎖が予定されているハートルプール(各AGR、65.5万kW×2基)とヘイシャムA(各AGR、62.5万kW×2基)の両原子力発電所について、運転期間の短期的な延長を検討していることを明らかにした。現時点で検討の初期段階にあることから、同社は今後実施する審査の結果に基づき方向性を判断する。欧州を中心に発生しているエネルギー危機の重大性と、これらの発電所で使用されている黒鉛レンガ製燃料チャンネルの点検状況を踏まえた上で、同社はエネルギーコストの上昇や供給量不足に対処するため、閉鎖の一時延期を検討中だ。 これは、同社が英国で担っているエネルギー供給保証上の役割のうち、短期的役割の一つとして示したものである。このほかに、2023年~2025年に10億ポンド(約1,625億円)をかけて原子力発電設備を維持することや、今年中に原子力で420億kWhを発電し、国内電力需要の13%を賄うことなどを明示。これらの原子力発電所の管理に当たっている5,000名の従業員とともに、現在の非常に困難な状況下においても、クリーンで低価格な電力を原子力で顧客に引き続き供給すると表明。今後数年間の最優先事項として、既存の原子力発電所で出来るだけ多くの電力量を確保し、英国におけるエネルギーの供給保証と原子力関係の能力維持に貢献するとしている。英国政府は2050年までに原子力発電設備を2,400万kWまで拡大することを目指しており、EDFエナジー社は英国政府が新規建設可能なサイトとして指定した8サイト中、ハートルプールやヘイシャムなど4サイトを所有している。同社は2018年12月からイングランド南西部サマセット州で、170万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)2基で構成されるヒンクリーポイントC (HPC)原子力発電所の建設工事を開始した一方、今年8月には隣接するヒンクリーポイントB原子力発電所(各AGR、65.5万kW×2基)を永久閉鎖している。今回の発表によると、同社は英国政府の目標達成に一定の役割を果たす覚悟であり、新規の原子力発電所の建設支援で新たに設置される政府機関GBN (Great British Nuclear)と協力していく。原子力関係能力の再構築を英国の主要な優先事項とし、将来の原子力開発を可能にするため、今年はスタッフの技術スキルの維持と向上に4,000万ポンド(約65億円)を投資する。また、来年の計画としては、既存の原子力発電所で最大200名のスタッフを新たに雇用し、HPC発電所が建設されているグロスターシャー州の事務所に運営・技術本部を移転する考えである。同社は現在、中国広核集団有限公司(CGN)と共同でHPC発電所建設計画に260億ポンド(約4兆2,240億円)の投資を行っており、同発電所の2基で英国の電力需要の7%を供給する計画。また、これに続いてイングランド南東部のサフォーク州では、サイズウェルC(SZC)原子力発電所(約167万kWの英国版欧州加圧水型炉:UK-EPR×2基)の建設に向けて、2023年中に最終投資判断を下すことになる。さらに、この近隣で1995年から稼働しているサイズウェルB原子力発電所(PWR、125万kW)については、運転期間を2055年まで20年延長し、60年とする方針である。なお、ハートルプール原子力発電所に関して、同社は英国政府が次世代原子力技術開発プログラムで進めている高温ガス炉(HTGR)の最初の実証炉建設サイトとすることを提案。現在、複数の技術プロバイダーと採用技術に関する協議を重ねている。(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Oct 2022
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GEH社、英国での「BWRX-300」建設を念頭に鋳鍛造品メーカーと協力
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は9月8日、英国内での同社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設に備えて、英国最大手の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ(SF)社と協力するための了解覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は今後、原子力関係の複雑な鋳鍛造品を製造するSF社の能力が、英国内で「BWRX-300」の建設需要を満たすのに有効であるか協議する。英国政府は原子力発電設備の増強により、国内電力需要の約25%を賄う計画であるため、GEH社は「BWRX-300」用の鍛造品を英国内で入手する契約の締結に向けてSF社と話し合うほか、将来的には世界中で「BWRX-300」を建設していくことも念頭に、その可能性を探るとしている。イングランド中部のシェフィールドを本拠地とするSF社は、2021年7月に国有化されており、すでに昨年12月、ロールス・ロイスSMR社のSMR用として、鍛造品を納入する370万ポンド(約6億1,620万円)の契約を獲得済みである。SF社のD.ボンドCEOは、SMRについて「民生用原子力発電設備の標準型になる可能性がある」とコメント。同社は原子力規模の機器供給では長期にわたる実績があるため、その専門的な鍛造経験を市場に大々的にもたらすことができるとした。同社はまた、今後10年間に最大4億ポンド(約667億円)を投資して、これまでの防衛産業向け業務から転換を図りつつある。このため、GEH社との協力では、原子力グレードの複雑な鍛造品を「BWRX-300」の商業化に向けて製造し、英国サプライチェーンにおけるGEH社のパートナー企業になる方針である。「BWRX-300」は電気出力30万kWのBWR型SMR。GEH社の説明では、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)のGEH社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。「BWRX-300」はまた、顧客がCO2排出量の削減目標を達成する一助になるだけでなく、建設と運転にともなうコストも従来の大型原子力発電所と比べて大幅に削減可能である。「BWRX-300」自体は今のところNRCのDC認証を受けていないが、カナダのオンタリオ州営電力であるOPG社は2021年12月、早ければ2028年までに既存のダーリントン原子力発電所内で完成させるSMRとして「BWRX-300」を選択。同じくカナダのサスカチュワン州営電力も今年6月、同州内で2030年代半ばまでにSMRを建設する場合は「BWRX-300」を採用すると表明した。また、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社も2021年12月、同社のグループ企業がポーランドの石油精製企業であるPKNオーレン社と合弁企業を設立し、SMRの中でも特に、「BWRX-300」の建設に重点的に取り組む方針を発表している。(参照資料:GEH社、SF社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 12 Sep 2022
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原子力機構、英国の高温ガス炉実証プログラムに参画へ
高温工学試験研究炉「HTTR」(原子力機構発表資料より引用)日本原子力研究開発機構は9月5日、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)より、同国国立原子力研究所(NNL)とともに、新型炉開発プログラムの予備調査を行う実施事業者として選定されたと発表した。英国が2030年代初頭までに高温ガス炉(HTGR)の実証を目指す「先進的モジュール式原子炉(AMR、高温ヘリウムガスなど軽水以外を冷却材として利用する)研究開発・実証プログラム」のフェーズA(基本設計関係の予備調査)に参画するもの。〈原子力機構発表資料は こちら、海外NEWS 既報 もご覧下さい〉BEISは2021年12月、AMR技術の一つとして、高温ガス炉を正式に選択。AMR研究開発・実証プログラムでは、その開発スケジュールについて、2022年以降のフェーズA、2023年以降のフェーズB(詳細設計の基礎となる基本設計調査)、2025年以降のフェーズC(サイトや建設・運転の許認可活動)の3段階のアプローチを想定。フェーズAでは、高温ガス炉の実証炉概念をまとめるほか、研究開発上の課題などを特定し、その実行可能性を検討するため、原子炉実証と燃料実証の2分野で総額最大250万ポンド(約4億円)の支援を図る。原子力機構は、2022年4月にBEISがフェーズAを実施する事業者の公募を開始後、高温ガス炉技術分野で協力関係にあるNNLからの要請を受けて、AMR研究開発・実証プログラムに応募した。実施事業者として選定されたのを受け、同機構は今後、プログラムへの参画を通して、高温工学試験研究炉「HTTR」の建設・運転を通じて培った高温ガス炉技術の高度化、その英国での実証を進め国際協力の強化を図っていく。高温ガス炉の核となる技術は国産(原子力機構発表資料より引用)「HTTR」は新規制基準適合性審査をクリアし2021年7月に運転を再開。これまで国内大手メーカーによる設計・建設・運転経験が蓄積されてきたほか、原子力用構造材として世界最高温度(950℃)で使用できる金属材料、高い閉じ込め性能を有するセラミックを用いた燃料被覆(軽水炉の約3倍の燃焼度)、高強度・高熱伝導・耐照射性を持つ黒鉛材料には、国内サプライチェーンの技術力が活かされている。今回の発表に関し、西村康稔経済産業相は、6日の閣議後記者会見で、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月策定)を踏まえエネルギー基本計画に明記された原子力産業に係る「海外の開発プロジェクトに高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画する」との記述に言及。日本が有する高温ガス炉技術が評価されたとの認識を示した上で、「革新炉の研究開発・人材育成は国際連携の成果も活用しながら進めていきたい」と強調した。
- 06 Sep 2022
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英政府、高温ガス炉の開発支援で6プロジェクトを選定
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は9月2日、総額3億8,500万ポンド(約619億円)の「先進的原子力基金」で実施する「先進的モジュール式原子炉(AMR)の研究開発・実証(RD&D)プログラム」について、約330万ポンド(約5億3,000万円)の予算を確保したと発表した。 英国政府が支援するこの次世代原子力技術開発プログラムでは、高温ガス炉(HTGR)の開発が中心となっており、その「フェーズA」として今回、HTGRの「基本設計に先立つ予備調査(pre-FEED)」関係のプロジェクトを6件選定した。これらに対し、330万ポンドのうち計約250万ポンド(約4億200万円)を交付する方針だ英国政府は2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指しており、HTGR開発はそのために最も有望な実証モデルになると考えられている。2021年7月には、HTGR実証炉を2030年代初頭までに1億7,000万ポンド(約273億円)の予算で完成させると表明。初期段階の革新的技術開発に対する今回の投資を通じて、英国政府は民間部門の関係投資を促し、クリーンエネルギー関係の高いスキルを必要とする雇用の創出を促進。国産の原子力技術開発を加速することにより、英国のエネルギー供給保証を強化する考えである。AMR RD&Dプログラムの「フェーズA」で、英国政府は2023年までの期間にHTGR燃料の実証案件2件を含む6件について、pre-FEED調査を実施する。燃料関係では、HTGRの被覆粒子燃料(CPF)開発に、それぞれ約25万ポンド(約4,020万円)を交付。モジュール式HTGRの実証案件としては、EDFエナジー・ニュークリア・ジェネレーション社、英国立原子力研究所(NNL)、U-バッテリー・デベロップメンツ社、および米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の英国法人によるプロジェクトを選定、それぞれに約50万ポンドずつ(約8,000万円)交付することが決定した。具体的な計画として、EDFエナジー・ニュークリア・ジェネレーション社はHTGR利用者の要件分析に焦点を絞り、2030年代に予定されている実証に最適の特徴を備えた設計を確定する。同社はまた、英国内で保有・運転しているハートルプール原子力発電所を最初のHTGR実証炉の建設サイトとして提案している。一方、NNLは日本原子力研究開発機構とタッグを組み、HTGRの設計・建設と運転に関して日本が確証済みの技術や革新的なアプローチを活用する。また、USNC社の英国法人は、同社が開発した「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」技術に基づいて、英国産業界の状況や今後増大が見込まれる高温熱の需要に最適な「改良型MMR+(プラス)」を開発・実証する。ロンドン郊外のスラウを本拠地とするU-バッテリー・デベロップメンツ社は、同社製のAMR実証炉について、英国内での実証に最適のサイズやコスト、輸送手段等を確定する方針である。BEISはこのほか、最大83万ポンド(約1億3,340万円)を原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)に交付すると表明。HTGRに対し両機関が革新的な規制アプローチを取れるよう、能力を向上させるとしている。BEISのG.ハンズ・エネルギー相はAMR技術について、「産業界を脱炭素化する上でコスト面の効果が高いソリューションであり、HTGR等のAMRが生産する低炭素な高温熱は特に、水素製造や産業用として活用が可能だ」と指摘している。(参照資料:BEISの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Sep 2022
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英ヒンクリーポイントBが永久閉鎖
現在英国で運転中のすべての商業炉を保有・運転しているEDFエナジー社は8月1日、イングランド南西部サマセット州のヒンクリーポイントB(HPB)原子力発電所1号機(改良型ガス冷却炉=AGR、65.5万kW)を永久閉鎖した。HPBではすでに今年7月、1号機よりも先に運転開始した2号機(AGR、65.5万kW)が閉鎖されており、無炭素な電力を46年以上にわたり発電してきた同発電所は今回、その主要業務を終了。今後は数週間から数か月の間に燃料の抜き取り準備を行い、3~4年かけて抜き取りの実作業とセラフィールドにある貯蔵施設への移送を実施する。その後発電所は原子力廃止措置機構(NDA)に引き渡される。ヒンクリーポイントでは、A発電所として出力約30万kWの黒鉛減速ガス冷却炉(GCR)が2基、1965年から2000年にかけて稼働した。B発電所では1976年2月に2号機が送電開始した後、同年10月に1号機が送電を開始しており、両機による閉鎖までの総発電量は3,110億kWhにのぼる。EDFエナジー社によると、この電力量は英国の全世帯が必要とする需要量の約3年分に相当するほか、同発電所が立地する南西部においては33年分に相当する。B発電所はまた、1億700万トンのCO2排出を抑制したことになり、これを76.89ポンド(約1万2,500円)/トンの炭素排出量価格で換算した場合の価値は83億ポンド、車両からの排出量に換算すると5,100万台分に相当する。同発電所だけで約500名の従業員と約250名の契約業者を雇用しており、地元サマセット州に対する経済貢献は年間約4,000万ポンド(約65億1,200万円)だったと同社は強調している。隣接するヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所では、170万kW級のフラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設する計画で、2018年12月に1号機が本格着工。EDFエナジー社が同計画の最終投資判断を下した2016年9月当時、1号機の送電開始は2025年末に予定されていたが、新型コロナウィルスによる感染の世界的拡大等により、現在は2027年6月に再設定されている。(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Aug 2022
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英政府、サイズウェルC建設計画にDCO発給
英国イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(約167万kWの英国版欧州加圧水型炉:UK-EPR×2基)建設プロジェクトに対し、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣は7月20日、「開発合意書(DCO)」の発給を決定した。DCOは国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトで取得が義務付けられている主要認可で、原子力発電所の新規建設で必要とされる最終的な手続き。英国政府は先月、SZC建設計画では「規制資産ベース(RAB)モデル」による資金調達が適していると発表するなど、EDFエナジー社と資金調達関連の交渉を継続中だが、DCO発給を受けた同社は「すべてがうまく行けば、2023年にもSZC建設計画で最終投資判断(FID)を下す」と表明している。EDFエナジー社の下でSZC計画を担当する子会社の「NNB Generation (SZC)社」は2020年5月、計画法(2008年制定)に基づいて、DCOの申請書を計画審査庁(PI)に提出した。5名の審査官で構成されるPIの審査当局(ExA)は2021年4月から10月にかけてこの申請書を審査し、今年2月にExAとしての結論と勧告を報告書にまとめてBEIS大臣に提出している。BEIS大臣は今回、同報告書およびその他の関係文書を熟慮した上で、「この建設計画には非常に高い緊急性と必要性があり、それは同計画がもたらす損失可能性を大きく上回る」と指摘、この点を踏まえてDCOを発給すべきだと結論付けている。 EDFエナジー社の発表によると、DCOを申請した際にNNB Generation (SZC)社は、SZC発電所の建設が地元コミュニティに及ぼす影響を最小限にとどめる方策と、恩恵を最大限もたらす方策を申請書に盛り込んだ。これについては、審査期間中に1,000人以上の関係者や諮問当局が根拠を提示してくれたとEDFエナジー社は指摘。また、2012年に地元サフォーク州で始まった合計4回の公開協議では、同州東部の住民1万人以上が関わったとしている。DCOの発給決定について、NNB Generation (SZC)社のC.ビンス最高企画責任者は「当社の提案を政府が全面的に支持したことを示すもので、サイズウェルC原子力発電所は必ず地元の事業や住民に様々なチャンスをもたらすとともに、サフォーク州が誇れるようなものを後に残すはずだ」と表明。同発電所はまた、CO2排出量を実質ゼロ化に導く英国最大規模のインフラ設備になるだけでなく、約600万戸の世帯に低炭素で信頼性の高い電力を供給。火力発電所を代替することで、同発電所によるCO2排出抑制量は年間約900万トンになると指摘している。 英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、「英国におけるエネルギー供給保証の強化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、非常に大きな一歩になった」と表明。サイズウェルC原子力発電所は今後80年以上にわたり無炭素な電力を安定的に供給するほか、天然ガスの使用量を削減し高サラリーの雇用を数千人規模で創出、英国全土で投資や事業の機会を長期的に提供していくとした。また、同発電所の建設が認められたことで、英国では今後原子力発電所を新たに建設していくための道筋が格段に強化されたと指摘している。(参照資料:英国政府、EDFエナジー社、NIAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Jul 2022
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英政府、原子燃料基金構想を発表
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は7月19日、原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、原子力発電所用原子燃料の国内生産量拡大を目的とした「原子燃料基金(NFF)」を7,500万ポンド(約124億円)の予算で始動すると発表した。同基金で支援するプロジェクトの選定入札を今秋に控えて、BEISは同基金を通じて原子力部門における費用対効果を確実なものにし、英国のエネルギー需要を十分に満たせるよう同基金の構造設計を検討している。このためBEISは同日、入札に関心を持つ企業に同基金への登録を促すとともに、入札の意思がないステークホルダーからは、原子力部門が抱える課題や今後のビジネス機会について知見に基づく見解など、基金設計の構築に役立つ情報を得るため、「情報提供依頼書(RFI)」を産業界に向けて発出したことを明らかにした。8月4日までの期間、書面で情報を提供してほしいと要請している。BEISは今年4月、クリーンで安価な国産エネルギーの開発を英国で大幅に加速し、エネルギー自給を長期的に改善するという「英国エネルギー供給保証戦略(BESS)」を発表した。このなかで安全でクリーンな原子力発電については、2050年までに現在の約3倍に相当する最大2,400万kWの設備容量を確保し、現時点で約15%に留まっている発電シェアを最大25%に引き上げる方針だと明記。既存の技術を使った軽水炉(LWR)や小型モジュール炉(SMR)に加えて、先進的原子炉設計(AMR)など、今後は様々なタイプや出力の原子炉を建設していくとしており、今年5月には新規の原子力発電所開発プロジェクトを支援するため、1億2,000万ポンド(約199億円)の補助金制度「将来の原子力開発を可能にするための基金(Future Nuclear Enabling Fund)」を起ち上げたと発表している。英国はこれまで、既存の原子炉で使用する原子燃料のほとんどすべてを国内サプライチェーンで確保してきたが、BEISによれば、民生用原子力発電所の開発規模拡大にともない、様々な原子炉設計を利用する可能性が高まり、原子燃料部門の重要性は一層高まっている。供給途絶を回避する確実な燃料供給により、原子力が英国のエネルギー供給システムに最大限に貢献すると指摘した。燃料部門のこのような潜在能力を現実化するため、英国政府は今回、「2021年の包括的歳出レビュー」で原子燃料基金の設置を決めた。同基金の入札では、国内での原子燃料生産量の拡大や諸外国からの燃料輸入量削減に資する様々な施設の設計・建設プロジェクトを選定し、それぞれに対し最大50万ポンド(約8,300万円)を提供。支援を受けたプロジェクトの諸活動は、2025年3月末までにすべて完了することになる。このような政府支援では、プロジェクトへの共同投資を民間部門から引き出すことも狙っており、BEISのK.クワルテング大臣は「原子力発電を大幅に拡大する計画を立てたため、それに見合う強靱で確実な燃料サプライチェーンを国内で確保することは理に適っている」とコメント。「この資金援助により、英国では既存の原子炉や将来の先進的原子炉設計に燃料を供給する様々なプロジェクトが始動し、民間部門からの投資も促される。これらは関係雇用を創出するだけでなく、英国のエネルギー供給保証を一層強化することにも繋がる」と指摘している。(参照資料:英国政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Jul 2022
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英政府、サイズウェルC建設計画で環境認可関係のパブコメ開始
英国の環境庁(EA)は7月4日、イングランド南東部サフォーク州でサイズウェルC(SZC)原子力発電所を建設・運転した場合の環境影響に関して、3種類の許可を発給する方針を提案。同提案を9月25日まで12週間にわたりパブリックコメントに付した。同提案について、国民やエネルギー関係の産業界、学界、NGO等から幅広く意見を募集、その上で最終的な判断を下し2023年初頭に結果を公表するとしている。EDFエナジー社の下でSZC計画を担当する子会社のNNB GenCo(SZC)社は2020年5月、SZC発電所の運転に際して放射性廃棄物を排出・処分する方針と、同発電所の予備電源としてディーゼル発電機を使用すること、および温排水と液体排出物を北海に放出する方針について、EAに許可申請書を提出した。EAは同年7月から10月までこの3つの申請書を審査した上で今回の判断を下したもので、これについては放射線影響に関する評価や周辺生態系の規制に関する評価、関係水域の水質や量に関する対策の枠組み評価等からも、EAの判断を支持する結果が得られたとしている。EAでSZC計画を担当するS.バーロー・マネージャーは、「これは発電所を建設する何年も前からNNB GenCo社が申請していた許認可。プロジェクトの開始前に発給の判断を下せば、発電所の設計や資機材の調達、起動などの面で良い影響があるし、周辺環境や野生生物の保全という点でも万全だ」と指摘した。パブコメの募集に関しては「我々の提案を関係者およびその他の人々に広く知らしめた上で意見を伺いたいし、我々が見落としているかもしれない情報の提供もお願いする」と表明。最終判断を下す際には、得られた意見を注意深く考慮すると約束している。SZC計画では、フラマトム社製の167万kWの欧州加圧水型炉(EPR)を2基建設する予定で、NNB GenCo(SZC)社は2020年5月、計画法(2008年制定)に基づき「開発合意書(DCO)」の申請書を計画審査庁(PI)に提出した。計画法によると、担当大臣は審査機関がDCO発給の可否に関する審査報告書を提出してから3か月以内に可否の判断を下さねばならず、SZC計画のDCOに関しては7月8日が、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣が議会に結果を報告する現時点での期限となっていた。しかし、住宅・コミュニティ・地方自治省のP.スカリー閣外大臣は今月7日(※スカリー大臣は同日付でBEIS政務次官から異動)、議会の下院に対し「DCO発給の可否を公表する期限として新たに7月20日を設定した」と発表。理由として、BEIS大臣に十分な検討時間を与えるためだと説明している。EDFエナジー社は現在、イングランド南西部サマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(172万kWのEPR×2基)を建設中だが、このプロジェクトでは中国広核集団有限公司(CGN)が2016年9月に33.5%の出資を約束した。その際、CGNはSZC計画に関しても20%の出資を約束していたことから、DCOの発給判断を下すのに先立ち今一度熟慮が必要と見られている。(参照資料:英国政府の発表資料①、②、英国議会の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Jul 2022
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英国の原子炉開発新興企業、MOX燃料製造工場の建設に向け資金調達
クリーンで安全な第4世代の先進的原子炉を開発するため、2021年9月に英国で設立された新興企業のニュークレオ(Newcleo)社は6月20日、今年3月の初回の株主総会を契機に開始した資金調達で、2か月間で3億ユーロ(約429億円)の調達に成功したと発表した。この資金を活用して、同社は今後5年から7年の間に、英仏の両国で鉛冷却高速炉(LFR)の電熱加熱式プロトタイプ装置(出力3万kW)を建設するほか、LFRで使用するウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の製造工場についても建設を進める方針。このため、グローバルな原子力産業企業である仏オラノ社には、同工場建設の実行可能性調査を依頼中であり、今年の後半にもLFRプロトタイプとMOX燃料製造工場の建設サイトの確保に向けて、優先業務を進めていきたいとしている。ニュークレオ社は最終的に、モジュール式で受動的安全系を備えた小型の可搬式LFR(出力20万kW)の開発を検討しており、今年3月にはイタリア経済開発省の新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)と協力する枠組協定を締結した。ENEAは液体鉛の分野で世界レベルのノウハウを蓄積しており、欧州原子力共同体(ユーラトム)が進めているLFR開発プロジェクトでは、イタリアのアンサルド社とともに主導的役割を担っている。ニュークレオ社はまた、LFRの製造販売に向けた国際拠点として、子会社の「ニュークレオSA社」をフランスで設立した。同国では今年2月、CO2排出量を2050年までに実質ゼロ化するため、E.マクロン政権が既存の商業炉の運転期間延長と新たな原子炉の建設を含むエネルギー政策を公表したことから、同社にとって戦略的に重要な市場になると考えている。フランスではすでに高速炉でのMOX燃料使用が認められているため、同社はLFRでこの燃料を使えばコスト面の競争力が上がるだけでなく、本格的に持続可能な原子力アプローチになると考えている。具体的には、長寿命の放射性廃棄物を処分する環境面や財政面の負担を減らせるほか、核拡散上のリスクも軽減、新たな原子燃料の入手でウランを採掘する必要性も完全になくなるとした。これらのことから、ニュークレオ社は産業規模のMOX燃料製造工場を建設して、LFRプロトタイプの将来的な運転に必要な燃料を確保、その後に英仏の両国で建設する複数のLFRにも活用すると述べた。重要な点は、同社のLFRが英仏両国の原子力増強戦略に合致するとともに、これらを補完する手段にもなることだと強調。ニュークレオ社は、すでに排出された廃棄物と新たに発生する廃棄物を持続的に管理する安全かつ効率的な方法としてMOX燃料を製造し、最終処分しなければならない廃棄物の量を大幅に削減していく考えだ。ニュークレオ社のS.ブオノ会長兼CEOは、「(ロシアによるウクライナへの軍事侵攻など)近年の地政学的展開は、世界レベルのエネルギー供給保証や脱炭素化に必要な措置として、原子力がますます重要になることを明確に示している」と指摘。「当社はクリーンで持続可能なエネルギーの必要性という差し迫った課題に迅速に対応中で、市場の状況から見て今こそ、原子力の枠組みを新たな技術に変化させる時期だと考えている。この新しい原子力技術なら、コストと安全性、放射性廃棄物という産業界の大きな懸念事項にも、効率的に取り組むことが可能になる」と強調した。(参照資料:ニュークレオ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Jun 2022
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SZCプロジェクトへのRABモデル適用が進展 英国
英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のK.クワルテング大臣は6月14日、イングランド南東部のサフォーク州でEDFエナジー社が計画している「サイズウェルC(SZC)原子力発電所建設プロジェクト(約167万kWの欧州加圧水型炉=EPR×2基)」に対し、「規制資産ベース(RAB)モデル」を通じて資金調達を行う手続が大きく進展したと発表した。今年3月に成立した「原子力融資法」の基準に基づき、同相はこの日、同モデルの支援を受けるSZC発電所の開発事業者として、EDFエナジー社の子会社であるNNB GenCo(SZC)社を指名した。指名理由をまとめた文書案は7月4日までの期間、NNB GenCo(SZC)社と規制当局の原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)、ガス・電力市場局(Ofgem)に提示される。また、資金の調達方法や収益調整など同モデルの詳細に関する見解も、複数の原子力開発事業者やエネルギー企業、英国の送電系統運営者、スコットランドとウェールズの関係閣僚といったステークホルダーから聴取する。これらは同モデルで事業者支援を行う最初のステップになるとしている。これとは別に、SZC建設プロジェクトを正式に進めるには、主要認可である「開発合意書(DCO)」を英国政府から取得しなければならない。NNB GenCo(SZC)社は2020年5月、計画審査庁(PI)に「DCO」の申請書を提出しており、BEISの担当相はPI勧告に基づいて7月8日までに可否の最終判断を下す予定。この締め切り日は当初、今年の5月22日に設定されていたが、関係情報を十分検討する時間が必要だとして、PIが5月12日に日程の延期を発表していた。英国では現在、EDFエナジー社が南西部サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWのEPR×2基)を建設中だが、開発リスクに対する英国政府の保証として発電電力の売買に「差金決済取引(CfD)」を適用することが決まっている。しかし、CfDでは開発事業者が建設資金を全面的に賄わねばならない上、発電所の運転開始後に初めて資金の回収が可能になることからリスクが大きく、後続のカンブリア州のムーアサイド計画や、ウェールズにおけるウィルヴァ・ニューウィッド計画は撤回された。これに対して、RABモデルで建設資金を調達した場合、事業者は経済規制当局の認可に基づき、建設工事の初期段階から平均的な世帯の年間電気代に数ポンドを上乗せできるほか、本格的な工事期間中は月額平均で約1ポンド(約162円)が徴収可能。資金の調達コスト(借入利子)も軽減されるため、プロジェクトの確実性という点で民間部門の投資家に安心感を与え、最終的には消費者の電気代が削減される。英国政府は、大型炉建設プロジェクトの全期間中に節約される金額は、1件当たり300億ポンド(約4兆8,700億円)を超えると試算している。このような手続を通じて、原子力発電所の新設交渉はまた一歩、実現に近づいたとBEISは指摘。SZC建設プロジェクトは、新しい資金調達の枠組を原子力で活用する最初の事例となり、英国では2030年までに新たな原子炉の建設計画を最大で8基分承認するほか、2050年までに原子力発電設備を2,400万kWまで拡大、「英国の原子力ルネサンス」を実現に導くことができると強調している。(参照資料:BEIS、EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Jun 2022
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英国で建設中のHPC 1号機、送電開始時期を1年延期
フランス電力(EDF)は5月19日、英国子会社のEDFエナジー社が同国で約20年ぶりの原子力発電所として建設しているヒンクリーポイントC(HPC)発電所(172万kWの欧州加圧水型炉=EPR×2基)について、1号機の送電開始日程を前回2021年1月の予測からさらに1年先送りし、2027年6月に設定したと発表した。総工費に関しても、建設プロジェクトの最終投資判断(FID)を下した2016年9月当時、EDFエナジー社は196億ポンド(約3兆1,400億円)と試算していたが、2019年9月にこの数値を215億~225億ポンド(約3兆5,200億~3兆6,000億円)に改訂。2021年1月時点の見積もりでは220億~230億ポンド(約3兆5,300億~3兆7,000億円)に拡大しており、今回の日程先送りにともなう金額は250億~260億ポンド(約4兆~4兆1,700億円)に増加した。しかしEDFは、「同プロジェクトでは差金決済取引(CfD)((電力取引において、売電側と買電側で事前に一定の「行使価格」を設定。電力市場価格が行使価格を上回った場合、売電側がその差額を買電側に支払う一方、電力市場価格が行使価格を下回った場合は、買電側がその差額を売電側に支払う。))が適用されるため、英国民が支払う電気代に影響はない」と強調している。2018年12月の1号機着工以降、EDFエナジー社はコロナ禍においても建設を継続。2019年12月には2号機の建設工事も開始し、EDFは適宜スケジュールとコストを見直している。その結果、同社は2021年1月に、1号機で当初予定していた送電開始を2025年末から2026年6月に延期すると発表、今回はその日程をさらに先送りする判断を下した。また今後、新たな感染拡大の波やウクライナでの戦争がこれ以上影響を及ぼさないと仮定した場合でも、これら2基の作業がさらに15か月遅延する可能性があると指摘。今回の見直し作業においては、電気機器関係の作業と最終試験のスケジュールとコストは考慮しなかったとしている。コロナ禍で建設工事を継続した成果として、EDFは「サプライチェーンの健全性が保たれたほか、いくつかの重要な節目の作業が完了した」と指摘した。しかし、人的資源や資金、サプライチェーンが大きな制約を受けたのも事実であり、作業効率が低下。作業量などが増加し、延期の要因になったという。なお、同プロジェクトで次に実施する節目の作業として、EDFは2023年第2四半期に格納容器ドーム屋根の吊り上げと設置を予定している。(参照資料:EDFエナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 23 May 2022
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英国政府、新規の原子力開発を可能にするための基金を立ち上げ
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は5月13日、原子力産業界における競争を促し英国全土で関係投資が行われるよう、新規の原子力発電所開発プロジェクトを支援する1億2,000万ポンド(約192億円)の補助金交付制度として、「未来原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」を立ち上げたと発表した。今年の後半にも補助金の交付を始めたいとしており、関係企業に対しては交付先を決める際に実施する入札への登録を済ませるよう依頼しているほか、新たな原子力発電所の開発プロジェクトに関する情報も募集。今回のFNEFへの応募を考えていない企業にも、自社の経験に基づく知見をFNEFの制度設計に反映するため提供することを希望している。7月から8月にかけて入札書を受領した後、英国政府は入札者の適格性試験を実施する予定で、その次の段階ではさらに詳細な評価作業も実施。交付条件等で双方が折り合えば、12月からFNEFの補助金を交付するとしている。FNEFの設置は、BEISが今年4月に発表した英国の新しい「エネルギー供給戦略」の中で約束していたもので、2030年までに新しい原子炉8基の建設承認を済ませるという英国政府の意欲的な計画を実現するため、原子力市場への新たな参入希望者を奨励するとともに、新しい原子力技術の開発加速で投資を促す。このため、小型モジュール炉(SMR)を含む新規の原子力建設プロジェクトに補助金を交付する際は、的を絞った上でプロジェクト同士が競合することの利点を発揮するよう入札を設定し、その実現に向けて民間投資を呼び込む方針である。BEISは、原子力発電が英国エネルギーミックスの重要部分を担うと考えており、世界の天然ガス市場における英国の依存度を下げるとともにエネルギーの自給を改善すると指摘。英国民も原子力によって高いエネルギー料金を払わずに済むことから、将来のクリーンエネルギー技術の一つとして原子力への投資を促進する。FNEFはそれを支援するための制度であり、英国のあらゆる地域で新規建設の機会を提供し雇用を創出、国内の原子力サプライチェーンではこれにより、レジリエンス(供給力の一時的な低下等からの回復力)の強化と、関係機器の製造能力増強が図られる。BEISは今回、FNEFと同様に設置すると約束している新しい政府組織「大英原子力推進機関(Great British Nuclear=GBN)」の立ち上げ計画を練るため、産業アドバイザーとしてバブコック・インターナショナル・グループで原子力担当CEOを務めていたS.ボウウェン氏を起用すると発表した。GBNは一年に1基という早いペースの新規原子力発電所開発プロセスを支援するための組織で、「エネルギー供給戦略」に明記された目標「2050年までに原子力で最大2,400万kWの発電設備」の実現に向けて活動する。GBNを通じて英国政府は2023年から、最も有望な原子力新設プロジェクトをさらに選定する作業や事業者との交渉を開始する方針。ウェールズのアングルシー島にあるウィルファ・サイトへの支援も含め、英国政府はFNEFを通じた支援を出来るだけ早急に可能にしたいとしている。(参照資料:英国政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 17 May 2022
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英国のHTGR開発で米X-エナジー社が英キャベンディッシュ社と協力
米メリーランド州で次世代の原子力技術を開発しているX-エナジー社と、原子力発電所のあらゆる側面でサービスを提供している英国のキャベンディッシュ・ニュークリア社は5月11日、英国内でX-エナジー社製の高温ガス炉(HTGR)を建設するため、協力覚書を締結したと発表した。X-エナジー社は現在、小型のペブルベッド式HTGR「Xe-100」を開発中。電気出力8万kWのHTGRを4基連結することで、出力を32万kWまで拡大できる。X-エナジー社はこのようなHTGR設計を通じて、電力や産業用の熱生産、大規模な水素製造等で脱炭素化を促進するなど、世界中で高まりつつあるクリーン・エネルギーの需要に応えられると考えている。米国内では2027年以降に初号機を建設する計画で、英国での建設はそれ以降になるとしている。英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年12月、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)技術として、高温ガス炉(HTGR)を選択した。柔軟性の高い活用が可能な原子炉開発予算3億8,500万ポンド(約605億円)のうち、1億7,000万ポンド(約267億円)を「AMRの研究開発・実証プログラム」に投じ、HTGRの初号機を建設する考えだ。BEISはまた、今年4月に新しい「エネルギー供給保証戦略」を発表しており、この中で原子力開発における3つの方向性として、100万kW級の大型炉のほかに小型モジュール炉(SMR)、およびHTGRなどのAMR(*)を開発する方針を示している。米英の2社による今回の共同発表によると、HTGRの開発と建設に関する両社の協力は、「これら3つの方向性すべてに貢献する」というキャベンディッシュ・ニュークリア社の方針を支えるとともに、英国のエネルギー供給保証を一層確実なものとし、2050年までに英国がCO2排出量の実質ゼロ化を達成する一助になる。両社はまた、英国の原子力サプライチェーンにも、新たなビジネスの機会が相当量創出されると強調している。キャベンディッシュ・ニュークリア社は「世界をリードする米国の原子炉技術と、当社のプロジェクト統合能力や機器の製造・モジュール化技術、運転保守(O&M)能力などを組み合わせることで、双方の豊富な経験と幅広い専門的知見が一つにまとまり、英国でHTGRを開発・建設するための絶好の機会が生み出される」と表明した。「Xe-100」に関連する動きとしては、米エネルギー省(DOE)は2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとしてX-エナジー社を選定。米国内では、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社保有のコロンビア原子力発電所と同じサイト内で建設することを計画している。同設計についてはまた、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が2020年8月から予備的設計評価(ベンダー設計審査)を実施中。建設・運転許可の取得に向けた正式な申請手続に先立ち、同設計がカナダの規制要件を満たしているか、X-エナジー社の要請に基づいて評価している。さらに、ヨルダンが2030年までに「Xe-100」を国内で4基建設することを希望しており、X-エナジー社とヨルダン原子力委員会は2019年11月、基本合意書を交わしている。【注*】BEISは既存世代の原子力発電所の後に出現する新しい原子炉技術の説明としては、一般的に理解されている「SMR」という表現では意味が狭すぎると考えており、①水で冷却する方式の第3世代SMR:既存の原子力発電所と似たタイプの技術で出力が小さい、②新たな冷却システムや燃料を使う第4世代以降の新型モジュール式原子炉:産業プロセス熱などの新機能を提供できる――などの2グループに分類している。(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 May 2022
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英国の新しいエネルギー供給保障戦略、電力自給の改善で原子力を大幅拡大
©BEIS英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は4月6日、クリーンかつ安価な国産エネルギーの開発を大幅に加速し、英国のエネルギー自給を長期的に改善するという新しい「エネルギー供給保障戦略」を公表した。 その中で原子力は中心的役割を担っており、これまでのように原子炉を10年に1基ではなく「年に1基」という早いペースで建設していき、2050年までに最大8基を稼働可能にすると表明している。同国のB.ジョンソン首相は、エネルギー価格の世界的な高騰や国際エネルギー市場における激しい価格変動を背景に、この「大胆な」戦略を通じて英国のエネルギー供給保障を一層強化する方針。2030年までに英国の供給電力の95%までを低炭素化するため、原子力や風力、太陽光、クリーン水素等のクリーンエネルギー設備を迅速かつ意欲的に建設、短期的には国産石油や天然ガスの増産も支援していく考えだ。同戦略では原子力を、国内総電力量の約15%を安定的に供給する必要不可欠な電源であるとともに、間欠性の高い再生可能エネルギー源を補う存在と位置付け、同じ広さの太陽光発電設備の100倍以上の電力をもたらす、英国のエネルギーの根幹をなす低炭素電源であるとした。島国の英国でベースロード用の電源を十分に確保するには、原子力を活用する以外に方法はないとも指摘しており、英国は原子力で再び世界をリードしていくと明言。小型モジュール炉(SMR)も含めて、2050年までに現在の約3倍にあたる最大2,400万kWの発電容量を安全でクリーンな原子力発電で確保し、国内電力需要の最大25%までを賄う計画である。このための方策として、同戦略はまず、英国を原子力投資に最適な国の一つにすると表明。具体的に、上記の開発目標や2030年までに最大8基建設する方針に言及したほか、現行議会の期間中にSMRも含めて1プロジェクトの原子力発電所建設計画、次期議会ではさらに2プロジェクトで最終投資判断(FID)が下されるよう進めていくとした。また、新規の原子力発電所建設プロジェクトの進め方を大幅に変更する方針で、今月中に1億2,000万ポンド(約194億円)の予算で「将来の原子力開発を可能にするための基金(Future Nuclear Enabling Fund)」を設置。開発プロセスの全段階で支援を提供する新しい政府機関として、年内にも「大英原子力(Great British Nuclear)」を立ち上げ、新設プロジェクトの投資準備や建設期間中の支援が可能になるよう、同機関に十分な予算措置を講じる。これにともない、英国政府は2023年にも、新たな支援対象プロジェクトの選定作業を開始すると表明。可能な限り迅速に政府支援を提供できるよう、有望なプロジェクトの事業者と交渉に入りたいとしている。さらに、英国内では現在、新規の原子炉建設が可能なサイトが8か所あるが、今回の意欲的な計画を円滑に進めるため、長期間を見渡した包括的な立地戦略を策定する。このほか、SMRや先進的モジュール式原子炉(AMR)など先進的な原子力技術の開発を加速するため、諸外国と協力していく。ジョンソン首相は今回の戦略について、「新たな原子力設備から洋上風力に至るまで、今後10年の間にクリーンで安価な国産エネルギーの設備を拡大、価格変動の激しい輸入エネルギーへの依存を減らして、一層安価な国産エネルギーを享受する」と説明。BEISも、「新型コロナウイルスによる世界的感染の拡大後、エネルギー需要の急増で価格が世界的に上昇したことや、ロシアがウクライナに軍事侵攻したこと等により、今回の戦略を策定するに至ったが、この戦略は英国が高価格の化石燃料による発電を止め、長期的なエネルギー供給保障の確保で多様な国産エネルギーを推進する上で中心的役割を果たす」と強調している。(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Apr 2022
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英国の新興企業、小型の鉛冷却高速炉の開発でイタリアのENEAと協力
昨年9月に英国で設立された先進的原子力技術の開発企業、ニュークレオ(Newcleo)社は3月16日、第4世代の原子力システムである(小型の)鉛冷却高速炉(LFR)の開発に向け、イタリア経済開発省の新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)と協力する枠組み協定を締結したと発表した。イタリアでは1990年までにすべての商業炉が閉鎖されているが、ENEAは液体鉛の分野で世界レベルのノウハウを蓄積。欧州原子力共同体(ユーラトム)が進めているLFR開発プロジェクトでは、同国のアンサルド社とともに主導的役割を担っている。このため、ニュークレオ社はENEAとの協力を通じて、今後7年以内に原子燃料や放射性物質を使わない電気加熱式のLFRプロトタイプ装置を、原子力推進の国で建設する。ニュークレオ社とENEAの共同研究では、LFRの熱力学的性能や機器の性能を研究するだけでなく、加速器駆動核変換システム(ADS)の設計研究も進め、現存する放射性廃棄物の大幅な削減を目指す。最終的に同社は、革新的技術を用いた安全で信頼性の高い小規模のモジュール式・先進的原子力システム(AMR)を(商業炉の運転が行われていない)イタリア以外の国で完成させ、国際市場に売り出す方針。これにより同市場では、第2世代や第3世代の原子炉設計が徐々に第4世代炉に切り替わっていくとしている。開発に際してニュークレオ社は、ENEAが保有するブラジモネ研究センターのインフラや技術力を活用。安全性分析や試験等を行うが、今回の協力協定の一環として新たな研究設備も同センターに設置する。そのために同社が投資する金額は10年間で5,000万ユーロ(約67億円)を上回る見通しで、新たに25~30名のエンジニア・チームも雇用する。同チームは今後約10年にわたり、ブラジモネ研究センターで働くことになる。ニュークレオ社のS.ブオノCEOは、ENEAとの協力について「当社には地球の今後のエネルギー・バランスを保つという重要な使命があり、そのための意欲的なスケジュールも設定した」とコメント。「ENEAの研究者との協力やブラジモネ研究センターへの投資を通じて、プロジェクトを実現するだけでなく、イタリアにおける研究開発の進歩にも貢献したい」と抱負を述べた。ENEAのG.ディアルーチェ局長も、LFRで安全かつ長期的な発電を行うという目標の達成に向け、ともに協力していく考えを表明。両者が研究活動を実施するブラジモネ研究センターの立地地域では、核融合技術の開発や放射性医薬品の製造など、その他の戦略的プロジェクトも行われている点を強調した。(参照資料:ニュークレオ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Mar 2022
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英国の超党派議員連盟、原子力で少なくとも1,500万kWの新設が必要と訴える
英国原子力産業協会(NIA)の3月17日付けの発表によると、英国議会における超党派議員連盟(APPG)の原子力推進派(原子力APPG)が同日、「英国がエネルギーの供給保証を強化するには、大小様々な規模の原子炉で2035年までに少なくとも1,500万kWの設備が新たに必要」と政府に訴える声明文を発表した。折しも、英国のB.ジョンソン首相は3月15日付けのThe Daily Telegraph紙で、「今こそ新たに原子力で大きな賭けに出るべきだ」との原稿を寄稿。労働党政権時代の歴史的な過ちを正し、ベースロード用電源として天候に左右されない原子力発電を大幅に拡大、ロシアのプーチン大統領の脅迫に翻弄されることのない盤石なエネルギー供給保証を英国内で確立すべきたと述べていた。英国政府は近々、ジョンソン首相のこのような方針を盛り込んだ国家エネルギー供給保証戦略を公表する予定である。このため原子力APPGは、同戦略に原子力を含めるという政府の方針を全面的にサポートしていくと表明。英国が天然ガスの輸入依存を断ち切り、国内の原子力再生に向けて必要とする5つのステップは以下の通りだと説明している。・「原子力発電開発に意欲的であれ」:政府の原子力開発ロードマップに、2035年までに新たに1,500万kW、2050年までに少なくとも3,000万kWの原子力発電設備を開発するとの目標を明記する。これにより、英国が先進的原子炉や大小様々な規模の原子炉を複数建設していく覚悟であることを明確に示す。・「原子力に投資する権利を獲得する」:4月の復活祭(イースター)までに、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資対象(英国タクソノミー)に原子力を含め、英国財務省が2021年6月に公表した「グリーン事業に対する資金調達の枠組み」の中で原子力を有資格の事業とする。・「原子力発電所の新設プロジェクトを加速する」:EDFエナジー社のサイズウェルC原子力発電所建設計画について、1年以内に最終投資判断が下されるよう促すほか、ウェールズ北部のウィルファ地点で大型炉の建設を提案している米ベクテル社とウェスチングハウス社のJVに対し、今日にも開発前段階の財政支援を与える。また、現政権期間中に小型モジュール炉(SMR)を10基発注するほか、その他の様々な規模の原子炉開発プロジェクトを前進させる。・「開発事業者に建設候補地へのアクセスを許可する」:使われていない原子力サイトの管理者である原子力廃止措置機構(NDA)に権限を与えて、これらのサイトを有望な開発事業者に貸与できるようにする。また、建設の可能性がある用地を保有する民間企業に対しては、原子力発電所開発に使用しなければならないことを明確に示す。・「開発プロジェクトの実施を支援する」:開発プロジェクトの実施に必要な「開発合意書(DCO)」の取得プロセスを簡素化するほか、基準に沿った形で開発事業者が時間を節約し、複数の計画立案や許認可取得手続きを同時に進められるようにする。関係するすべての規制機関にCO2排出量の実質ゼロ化を義務付けるとともに、「今後の原子力開発を可能にするための基金」に追加の資金を投入、入札の実施基準やプロセスについては詳細を公表する。今回の声明文について、原子力APPGのI.リデル=グレインジャー議長は、「最も重要視しているのは不安定な輸入燃料からどのようにして英国民の生活を守るかということだ」と表明。同議長によると、政府はCO2排出量の実質ゼロ化に必要な、信頼性の高い国産電力を原子力が提供できることに気付いている。その上で、「我々原子力APPGが今回提示した5つのステップは、英国が緊急に必要としている国家的重要インフラの獲得を可能にする」と強調している。ジョンソン首相の円卓会議©UK Governmentなお、英国のジョンソン首相はその後の3月21日、首相官邸に英国原子力産業界の首脳を招いて円卓会議を開催している。英国の原子力発電開発を加速する方法や、国内のエネルギー供給保証の改善方法について協議したもので、首相からは「クリーンで安全なエネルギー源である原子力が、英国の将来のエネルギー供給システムの中で主要部分を占める」という明確なビジョンを提示。原子力産業界の代表者からは、それぞれが国内外の専門的知見に投資して開発中の大型炉やSMRなど、様々な原子力技術やプロジェクトを紹介している。(参照資料:NIA、英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Mar 2022
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英規制当局、ロールス・ロイス社製SMRの設計認証審査を開始
英国の原子力規制庁(ONR)は3月7日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)からロールス・ロイスSMR社製の小型モジュール炉(SMR)設計について、包括的設計認証審査(GDA)の実施を要請されたと発表した。審査に必要な財源の確保や審査スケジュール等の調整がつき次第、ONRは同設計の安全面について、環境庁(EA)とウェールズ自然保護機関(NRW)は環境影響面について審査を開始する。ロールス・ロイス社のSMR開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は昨年11月、BEISに対してGDA申請の意思を表明しており、これにともなう最初の手続きとして、BEISは同社に関する初期スクリーニングを実施した。今回のONRへの要請は、同スクリーニングの結果、ロールス・ロイスSMR社には審査に値する能力と資質が備わっているとBEISが結論付けたことによる。ロールス・ロイスSMR社の発表では、同社製SMRは世界中の既存のPWR技術を活用した設計であり出力は47万kW。これは、陸上風力発電のタービン150台分以上に相当する。同設計はまた、工場内で機器を製造した後、設置場所で組み立てることができる。少なくとも60年間稼働してベースロード電源としての役割を果たすほか、間欠性のある再生可能エネルギーを補って、その設備容量拡大を支援。同社としては、2030年代初頭にも最初のSMRを国内送電網に接続する計画である。同社は2021年11月、米国の大手電気事業者であるエクセロン・ジェネレーション社、およびフランス国籍の投資目的企業のBNFリソーシズUK社とともに、英国内でのSMR開発に今後3年間で合計1億9,500万ポンド(約295億円)投資する計画を発表している。これを受けてBEISは、同社へのマッチングファンドとして2億1,000万ポンド(約318億円)を提供する方針を表明。英国政府からの資金提供は、同国の戦略的政策研究機関「UKリサーチ&イノベーション(UKRI)」が「低コストな原子力の課題(LCN)」プロジェクトで、2019年11月に「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」の中から1,800万ポンド(約27億円)をロールス・ロイス社が率いる「英国SMR企業連合」に提供したのに続くもの。2億1,000万ポンドは、同様にLCNプロジェクトから拠出される。BEISのGDA開始要請について、ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「複数のSMRを英国内で建設して低炭素な電力を適正価格で発電、英国が目指すCO2排出量の実質ゼロ化に貢献するという当社目標の達成にまた一歩近づいた」と表明。同社で規制・安全問題を担当するH.ペリー取締役も、「当社にはGDAや許認可手続きで対応経験がある専門チームが設置されており、規制当局とは協力的な関係にある。当社のこれまでの経験や教訓を駆使してGDAプロセスを進めていきたい」と述べた(参照資料:ONR、ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Mar 2022
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英国、HTGR実証炉建設計画の入札に先立ち産業界と情報交換
©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は2 月16日、「先進的モジュール式原子炉(AMR)の研究開発・実証プログラム」の下で2030年代初頭までに高温ガス炉(HTGR)の実証炉を建設するため、原子力産業界と事前の情報交換を行うと発表した。建設計画の「フェーズA」として、BEISは今年の春にも正式な入札招請(ITT)を開始するとしており、それに先駆けて関係情報を収集するのが主な目的。同プログラムの詳細と建設計画の指標となる概略的なスケジュールを提示した上で、資機材と燃料のサプライチェーン、機器製造や建設工事の関係企業、高温熱のエンドユーザーなど、HTGR開発に関心を持つ潜在的なサプライヤーから3月4日までの期間に要望や意見を聞き、実際の調達活動に備える方針である。BEISは2021年7月、「AMRの研究開発・実証プログラム」における初号機として、1億7,000万ポンド(約265億円)の予算でHTGRを建設する計画を発表。この提案は、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた重要施策としてB.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」、および翌12月に英国政府が発表した「エネルギー白書」で約束した施策である。これらは、2050年までに英国がCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、政府がHTGRを最も好ましい技術と認識していることを示したもので、2021年12月にBEISは、2030年代初頭の実証を目指して建設するAMR技術のひとつとして、HTGRを正式に選択したことを明らかにした。今回の発表でも、BEISは同プログラムの目的について、「低炭素な水素製造や様々な産業界で利用する高温熱の生産、コスト面の競争力がある発電等でHTGRの高温熱が役に立つと実証することだ」と説明している。同プログラムの概略スケジュールによると、「フェーズA」の段階では今年の春以降、最大250万ポンド(約3億9,000万円)をかけて、6~9か月間にわたり基本設計(FEED)関係の予備調査5件を実施する。入札招聘も実施してBEISはHTGR実証炉の概念をまとめるほか、研究開発上の課題や技術課題を特定して、その実行可能性を探る。また、2030年代初頭の完成を念頭に置いた開発ロードマップも作成する。これ以降の段階に進むには政府の承認取得が条件になるが、BEISは2023年初頭から「フェーズB」として、詳細設計の基礎となるFEED調査を実施する。ここでは、「フェーズA」で選定された複数の提案者がHTGRの概念設計を詳細に評価し、投資総額やライフサイクル・コストを正確に見積もる予定。BEISは「フェーズA」で選定されなかった提案者も含めて、提案者の最終的な絞り込みを行うとしている。最後の段階となる「フェーズC」への移行は2025年の半ばに予定されており、「フェーズB」で選定された提案者が建設サイトに最適の詳細設計作業を実施する。サイト許可や建設許可なども取得する方針で、これらの許認可活動が順調に進めば、計画通りにHTGR実証炉の起動と運転が実現する。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Feb 2022
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英規制当局、中国の「華龍一号」設計を承認
英国の原子力規制庁(ONR)は2月7日、中国が知的財産権を保有する「華龍一号」設計の英国版(UK HPR1000)について、実施していた全4段階の包括的設計審査(GDA))が完了し、ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給したと発表した。GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行われる設計認証審査で、DACの発給は対象設計の安全・セキュリティ面、SoDACは環境保護と放射性廃棄物管理の側面で、英国の厳しい基準をクリアしたことを確認。これにより、同設計が英国内で直ちに建設可能になるわけではないが、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が、英国エセックス州で共同で進める予定のブラッドウェルB原子力発電所建設(UK-HPR1000×2基)計画は技術的には大きく前進した。EDFエナジー社は現在、サマセット州でヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(172万kWの「欧州加圧水型炉:EPR」×2基)を建設中だが、同社は2015年10月、英国と中国の両政府が2013年に交わした覚書に基づき、CGNと共同で同計画に投資する内容の戦略的投資協定で合意。CGNはHPC計画の総工費180億ポンドのうち33.5%を投資することを約束したほか、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所(167万kWのEPR×2基)建設計画にも20%出資する。また、後続のブラッドウェルB計画については「華龍一号」設計を採用し、CGNが建設段階において66.5%を出資、EDFエナジー社をパートナーとしてCGNが同計画を主導することになった。ONRとEAが2017年1月に開始した「UK HPR1000」のGDAに関しても、EDFエナジー社とCGNは合弁で審査活動の管理会社「ジェネラル・ニュークリア・システム(GNS)社」を設立した。同社の株式の66.5%は、CGNが持ち株会社として立ち上げたジェネラル・ニュークリア・インターナショナル(GNI)社が保有。このため、今回のDACとSoDACはCGNとEDFエナジー社、およびGNI社に対して発給されている。 「華龍一号」はCGNと中国核工業集団公司(CNNC)、双方による第3世代の100万kW級PWR設計を一本化して開発されたもので、CGNはブラッドウェルB計画でCGNバージョンの「華龍一号」を採用する。この「華龍一号」は現在、中国・広西省の防城港3、4号機、広東省の太平嶺1、2号機、浙江省の三澳1、2号機として建設中であり、防城港の2基はブラッドウェルB発電所の参照炉に位置付けられている。今回、その英国版にDACを発給したことについて、ONRのM.フォイ主席原子力検査官(CNI)は「ONRの特別検査官が詳細かつ厳密に審査した結果であり、この設計が英国内での建設に適したものであることを示している」と述べた。EAのS.フィナーティ原子力規制担当局長は、「当庁の2025年までの行動計画にも示したように、審査は急を要する地球温暖化への影響を最優先としたもので、エネルギー供給の脱炭素化は英国における主要目標の一つだ」と説明した。原子力については、「CO2排出量の実質ゼロ化に向けて英国政府が進めているエネルギー政策の重要部分を担っている」と指摘。こうした背景から、審査では新たな原子力発電所が英国の厳しい基準を満たすだけでなく、周辺コミュニティや環境も適切に防護されるよう配慮したとしている。(参照資料: ONR、EA、ブラッドウェルB発電会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Feb 2022
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