第54回原産年次大会 今井会長所信表明
日本原子力産業協会会長の今井でございます。第54回原産年次大会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
今大会は、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえ、オンライン配信での開催となりましたところ、830名の参加登録をいただきました。この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。
2011年の東日本大震災、および東京電力福島第一原子力発電所の事故から今年で10年が経過しました。被災された方々、今なお避難されている多くの方々に、あらためて心からお見舞いを申し上げます。また、長きにわたり福島の復興にご尽力されてこられた多くの方々、ご支援をいただきました会員の皆さまに、心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。
昨年、菅義偉首相が2050年までのカーボンニュートラルの達成を国内外に宣言し、現在、官民をあげて脱炭素に向けた精力的な検討が行われております。
国際エネルギー機関のデータによると、わが国では原子力発電により、これまでに約46億トンもの二酸化炭素(CO2)排出が回避され、原子力発電がなければ発電部門のCO2排出量は、少なくとも25%は増えていたと考えられています。
今日、世界の電力の約35%を非炭素電源が供給し、原子力はそのうちの約30%を占めております。つまり全体の約10%を原子力が供給しています。このように、原子力は地球温暖化防止に大きな貢献をしてきたわけですが、2050年カーボンニュートラルの達成に向け、更なる原子力の活用が必要不可欠であることが国内外の研究により明らかになりつつあります。
また、昨今の世界的なパンデミックにより、わが国の海外依存度や国の安全保障がより一層深刻になりました。エネルギーについても、化石燃料の大部分を海外からの輸入に依存しており、一次エネルギー自給率は約12%と先進国の中で特に低くなっています。申し上げるまでもなく原子力発電は、安定供給の観点から極めて強靭、かつ環境に対し持続可能な、最も信頼できる電源の一つであります。
しかしながら、そのような利益をもたらしているにも拘らず、わが国の原子力産業は様々な課題に直面していることも現実であります。我々原子力産業界は、安全性の一層の向上を図りつつ、既設炉の再稼働や運転期間の延長を着実に進め、安全の実績を積み重ねることによって、立地地域はもとより、社会からの信頼を得ていかなければなりません。
原子力発電を将来にわたって活用していくためには、国のエネルギー政策において、将来の新増設・リプレースが明確に位置づけられる必要があります。また、原子燃料サイクルの早期確立や高レベル放射性廃棄物の処分事業なども、着実に進めていかなければなりません。
世界はコロナ禍の中、経済、気候変動、エネルギーなど、地球規模の様々な課題に直面しております。そのような中、国内外の原子力産業界がこれから進む道は決して平たんなものではありません。したがいまして、今、年次大会を海外の先行事例も踏まえ、世界、そして日本の原子力産業が目指すべき将来について考える機会にしたいと思います。
最後に、お忙しいスケジュールの中、ご登壇いただきます皆さまに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
これをもちまして、わたくしの所信とさせていただきます。
ご清聴、ありがとうございました。
以 上
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