第55回原産年次大会 今井会長所信表明
日本原子力産業協会会長の今井でございます。第55回年次大会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
今大会は、新型コロナウイルス感染の状況を踏まえ、オンライン配信を併用しての開催となりましたところ、660名の方に参加登録をいただきました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
さて、東日本大震災、および東京電力福島第一原子力発電所の事故から、今年で11年が経過いたしました。この間、およそ7割の帰還困難区域の指定が解除され、国は、残る区域の希望者についても、2020年代に帰還できる方針を決定しております。長きにわたり福島の復興にご尽力されてこられた多くの方々、ご支援をいただきました会員の皆さまに、心からの敬意と、感謝の意を表したいと思います。
また、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組みも着実に進んでおります。ALPS処理水については、海洋放出する国の方針に基づき、工事計画の申請がなされておりますが、明日午前のセッション3において最新の状況をお聞きいただけると思います。
さて、世界ではカーボンニュートラルの目標のもと、原子力をその具体的な解決策とした取り組みが積極的に推進されております。
例えば、英国では、2035年までに原子力発電を新たに15GW導入することが提唱され、フランスでも、原子炉6基の新設に加え、新たに8基の追加建設の検討が公表されております。また、我が国を含め、新型炉の開発などイノベーションの分野でも、各国政府の 支援のもと、多数の新型プロジェクトが進められています。こうした一連の取り組みは、脱炭素社会の実現に向けた具体的な手段として、原子力が世界的に評価されている証左であります。
また、ウクライナ危機をはじめとした世界情勢の不安定化によって、エネルギー安全保障の面からも、原子力の重要性はより一層高まっております。
申し上げるまでもなく、脱炭素電源である原子力は、安定供給の観点から極めて強靭で、かつ経済性にも優れ、また、環境に対し持続可能な最も信頼できるエネルギーです。本日午後のセッション1とセッション2では、こうした原子力の開発・利用、及び事業環境の整備について我が国や、欧米各国がどのような国家戦略のもと対処しようとしているか、ご登壇いただく皆さまにご紹介いただく予定です。
さて、持続的に原子力を利用していくにあたっては、核燃料サイクルの早期確立と、高レベル放射性廃棄物の処分事業を着実に進展させることも極めて重要であります。これは、我が国の原子力政策において、資源の有効利用と環境適合性の観点から、重視すべきテーマでありますので、明日午後のセッション4では、六ケ所村の再処理工場の近況をはじめ、バックエンド事業の意義と期待についてご議論いただくこととしております。
また、原子力は確立された脱炭素電源であるとともに、先進的な技術開発を通して、今後一層成長が求められるイノベーティブな技術でもあります。その持続的発展には、優秀な若者の参加が必要不可欠です。明日午後のセッション5では、国内外の 若手パネリストから、「若手が考える原子力の未来」について既成概念に捉われない、より自由な発想のお話を聞けることを楽しみにしております。
以上申し上げました通り、今年の年次大会は原子力の能力と価値を最大限発揮し、気候変動対応や社会・経済の持続的発展のために、原子力が果たすべき役割について考える機会にしたいと思います。
最後に、お忙しいスケジュールの中、ご登壇いただきます皆さまに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
これをもちまして、わたくしの開会のあいさつとさせていただきます。
ご清聴、ありがとうございました。
以 上
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