第57回原産年次大会「会長挨拶」
日本原子力産業協会会長の三村でございます。第57回原産年次大会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
最初に、本日ご参加いただきます700名の方に厚く御礼申し上げます。また、お忙しいスケジュールの中、ご登壇いただきます皆さまにも、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
さて、ご承知の通り、原子力発電の積極的な活用の機運は、国内外において極めて高まっているところであります。日本政府がG7議長国として重要な役割を果たした昨年4月の「G7札幌エネルギー・環境大臣会合」や、OECDとフランス政府が主催した9月の「新しい原子力へのロードマップ会議」では原子力の最大限活用が高らかに謳われました。また、12月にドバイで開催されたCOP28においては、COP史上初めて公式に原子力が積極評価されるとともに25か国により「原子力3倍宣言」が発出されました。先月には、ベルギー・ブリュッセルにおいてIAEAとベルギー政府が主催して史上初めてとなる原子力に特化した首脳会議「原子力サミット」が開催され37か国が参加しました。このように原子力発電の拡大を目指す国際的な動きは加速しています。
一方、わが国では、昨年、原子力の最大限活用に向け、数々の法改正と共に「今後の原子力政策の方向性と行動指針」が決定され、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定をはじめとして、国が前面に立って、原子力事業の環境整備の取り組みが力強く進められているところです。
このような国内外の強い原子力推進モメンタムの中で、私ども原子力産業界は今何をなすべきなのか、これが第57回を迎えます今次大会のテーマであります。世界の多くの国ではエネルギーセキュリティおよび脱炭素という原子力の価値を踏まえ、原子力を最大限活用するための様々な政策的措置が進められています。わが国においても、前述の法改正や行動指針を踏まえた具体的な行動や事業環境整備のための検討が始まったことや、今年度は第7次エネルギー基本計画の策定が予定されています。
この二日間では、わが国の今後の原子力政策の在り方についてはもとより、安全性向上の取り組みや、原子燃料サイクルや高レベル廃棄物最終処分などのバックエンドの課題、さらに人材基盤強化など我が国が原子力の最大限活用に向けて解決しなければならない原子力産業界の課題解決の方向性について示唆を得る機会としたいと思います。
まず、この後の特別講演では、世界原子力発電事業者協会(WANO)CEOの千種直樹様より「Maximizing the Safety and Reliability of Nuclear Facilities Worldwide(世界の原子力施設の安全性と信頼性を最大に)」について、そして、元米国エネルギー省(DOE)副長官のポネマン様より「New Perspectives on Energy Strategy and the Role of Nuclear Power(エネルギー戦略における新しい視点と原子力の役割)」についてお話いただきます。
午後のセッション1では新設計画が具体化する英・仏の専門家を招き、わが国の専門家と共に、わが国が原子力を最大限活用するうえで今後必要となる「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」を考えます。
続くセッション2では「バックエンドの課題:使用済み燃料管理・ 高レベル放射性廃棄物(HLW)最終処分をめぐって」と題して、欧州各国の先駆的な取組みを紹介頂きながらわが国のバックエンド事業の進め方について考えます。
明日午前のセッション3では福島について取り上げます。昨年8月にはALPS処理水の海洋放出が開始され、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた大きな一歩となりました。関係の皆さま方のご理解とご尽力に心より敬意を表するものであります。このセッションでは「福島第一廃炉進捗と復興状況」と題して、廃炉に向けた取り組みの進捗についてお話を伺うとともに、福島のさらなる復興を目指す「地元に産業や技術を根付かせる取り組み」についてもご紹介いただき、今後の展望などを伺います。
明日午後のセッション4では「原子力業界の人材基盤強化に向けて」と題して国内外でご活躍中の専門家と学生の皆様とが一緒になって、原子力の価値や役割を議論いただき、原子力産業が将来の活躍の場として選択されるためには何が必要か、などをお聞きできることを期待しています。
最後に、これら二日間のセッションを通じ、原子力の最大活用に向けた課題と展望、日本のみならず世界のエネルギー・環境問題を解決するための糸口について、ご参加の皆様とともに見出せることを切に願い私の開会の挨拶とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました。
以 上
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