2015年度定時社員総会 今井会長 挨拶

2015年6月23日

於:日本工業倶楽部

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今井 敬
原産協会会長

日本原子力産業協会 会長の今井でございます。
定時社員総会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

本日は、お忙しい中を、ご来賓として文部科学省から副大臣、藤井基之様、経済産業省から大臣政務官、関芳弘様のご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。
また、会員の皆様方には、遠路、また多数ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

さて、東日本大震災から四年余りが経過いたしました。
福島第一原子力発電所では、汚染水の処理など依然として直面する課題はあるものの、4号機の使用済み燃料プールからの燃料搬出が終了し、燃料デブリの取り出しに向けたモックアップ試験施設の建設が始まるなど、一歩一歩ではございますが廃止措置が着実に進展しております。
そして周辺環境の除染も進み、住民の方々の帰還が少しずつ始まっております。また、常磐自動車道が全線開通し、ふたば未来学園が開校するなど、復興が少しずつ形になってきております。
我々、原子力産業界は、「福島の再生・復興なくして日本の原子力の将来は無い」という決意を忘れることなく、今後も福島の復興支援に取り組んでいかなければなりません。

さて、我が国の経済を見てみますと、2012年に発足した第2次安倍政権がアベノミクスを掲げて大胆な金融政策を実施した結果、円高が是正され、株価が上昇いたしました。この景気回復の流れを確実なものとするためにも成長戦略に取り組み、経済成長を実現させていく必要がございます。
しかし原子力発電が全基停止して以来、その代替として火力発電に過度に依存しており、円安の影響も相俟って、燃料の輸入による電気料金の大幅上昇が国民生活に多大な影響を与えております。
一刻も早く準国産エネルギーである原子力の再稼働を実現することによって国富の流出を抑制し、その資源を国内産業の成長に振り向けていくことが不可欠であります。

原子力発電は、こういった経済性だけでなくエネルギーセキュリティ、温室効果ガス削減などの観点からも、我が国のエネルギー政策において重要なベースロード電源と位置づけられ、将来にわたって一定の役割が与えられました。
環境面でみますと、2030年のエネルギーミックスにおいて、原子力が電力需要の20~22%を担うことを前提として、2013年度比2030年度にはCO2を23%減らすという意欲あるCO2削減目標が世界に示されております。
原子力がこうした役割を果たしていくためには、今後直面する全面自由化といった厳しい環境下においても電力の安定供給を維持できるよう、再稼働はもとより、廃炉、原子燃料サイクル、放射性廃棄物処分など、原子力全体を健全な事業として進めていく必要があると考えます。

原子力発電所の運転再開につきましては、当初約半年と言われた審査期間は大幅に長期化しているものの、関係者の努力の結果、川内1,2号機が新規制基準の適合性に係る審査の最終段階を迎えております。これを業界全体でしっかりと支え、一刻も早く最初となるプラントの運転再開を実現させなければなりません。
この後に続く審査につきましては、先行事例の経験により徐々に効率的になっているとのことですが、これ以上の遅延は許されません。未だに進捗が見られない沸騰水型炉の審査についても、加圧水型炉の経験を共有しながら、規制側と更なるコミュニケーションをはかるなど、より一層のスピードアップにつながるよう、努めていただくことを期待いたしております。

一方で3月には、美浜発電所1・2号機など運転開始から40年経とうとする4社5基の廃炉が決定されました。
我が国のエネルギー政策において原子力発電は、一定の役割を与えられながらも、依存度を低減する方向が明示されております。これから増えていく廃炉作業を確実に実施していくことはもちろん必要ではございますが、運転開始から40年が経過した原子炉を原則として廃止することが厳格に適用されれば、原子力はその役割を果たすことができません。
今後、運転期間の延長はもちろんのこと、新増設やリプレースについて正面から議論していかなくてはならないことは明白だと思います。

こうした原子力に関する課題を解決するために我々が取り組まなければならないことは、国民の理解と信頼回復でございます。そのためにはまず事故に学び、新規制基準のもとで安全性が確認された原子力発電所の運転を再開し、一層の安全性向上に取り組みながら安定運転の実績を積み重ねていくことが大切だと思います。それとともに、廃炉や、使用済燃料の取り扱い、高レベル放射性廃棄物の処分など、原子力の全体像を示していく必要があると思います。
こうした取り組みや成果を、立地地域をはじめとする国民に向けて一方的に説明するのではなく、一人ひとりの顔が見える形で、相手の目線に沿った、双方向の対話でわかりやすく説明することが、原子力に対する理解と信頼を得ていくことにつながると思います。

我々産業界は、我が国の持続的発展のためにも、その基盤であるエネルギーを支えていくという重要な役割を果たしていかなければなりません。
当協会は会員の皆様と相互の理解を深め、ビジョンを共有し、原子力の平和利用の促進につながる活動を引き続き展開して参ります。
最後に会員の皆さまのより一層のご支援ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。

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