2016年度定時社員総会 今井会長 挨拶
於:日本工業倶楽部
今井 敬
原産協会会長
日本原子力産業協会 会長の今井でございます。定時社員総会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
本日は、お忙しい中を、ご来賓として経済産業省から大臣政務官、星野剛士様、文部科学省から研究開発局長、田中正朗様のご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。
また、会員の皆様方には、遠路、また多数ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
先週6月12日でございますが、葛尾村の一部、それから14日には川内村全村の避難指示が解除されました。来月12日にも南相馬市の一部地域で避難指示が解除されることになっております。
震災から5年が経過して住民の方々の帰還に向けた一定の進展が見られますが、避難指示の解除後にも、コミュニティの再生や風評被害の払拭など、復興への課題が山積いたしております。我々原子力産業界は今後も福島の復興支援に取り組んでいかなければなりません。
一方、福島第一では昨年6月に改訂された中長期ロードマップに基づいて、汚染水対策や、1号機から3号機までの使用済み燃料の取り出しに向けた準備などが進んでおります。引き続き安全かつ着実に廃止措置に取り組むとともに、進捗に関するわかりやすい情報発信に努め、住民の方々の安心につなげていくことが何より大切だと思います。
また、汚染水を浄化処理した後に残るトリチウムを含む水につきましては、安全性を確保した上で海洋に放出するという現実的な解決策の実現に向けて、関係する皆さまにご理解いただけるよう国、事業者が一体となった取り組みをお願いいたしたいと思っております。
さて、わが国にとってエネルギーの確保は国家戦略の要であり、安定供給性、経済効率性、環境適合性に優れる原子力は、安全性を大前提として2030年に総発電電力量の20ないし22%を担うこととなっております。
それを実現させるためには、まず新規制基準に適合し安全を強化した上で、停止している原子力発電所の早期の再稼働を果たさなければなりません。現在まで、安全審査が終了したプラントは7基のみ、再稼働したプラントは4基に過ぎません。関係者には一層のスピードアップをお願いいたしたいと思います。
つい二日前に、高浜1、2号機で初めて運転期間の20年の延長が認可されましたが、大変喜ばしいことでございます。再稼働を確実に実施して、今後40年を迎える原子力発電所が安全を大前提として高浜1、2号機に続いて再稼働していくことを強く望むところでございます。
一方で、一旦は再稼働した高浜3、4号機が裁判所の仮処分決定により運転を差し止められております。原子力の安全性に対する国民の信頼は福島第一事故によって大きく損なわれており、これが司法の判断にも少なからず影響を与えているものと思われます。引き続き原子力発電を続けていくためには、事故を踏まえて改善した安全確保の考え方や、具体的な安全対策、防災計画などを国民に繰り返し分かりやすく説明していくとともに、司法の場においてもきちんと説明できるよう備えておくことが今後大切だと思います。
また、原子力発電を安定的に運転していくためには使用済燃料の貯蔵能力を強化する取り組みも欠かせません。
そして、2030年以降も原子力が一定の役割を果たしていくためには、新設、増設によって原子力発電の規模を維持していく必要があると思います。
原子力産業界はこうした原子力発電の将来像について認識を一つにしたうえで、国民の理解を得ていくことが重要だと思います。その結果として、次期エネルギー基本計画の中には、是非、「原子力依存度を可能な限り低減する」という現在の方針が改められるようにしていかなければならないと思っております。
さて、わが国は引き続き原子燃料サイクル政策を推進していくことといたしております。電力システムの改革が進み、各社が競争環境下に置かれても、長期的な課題は協力して取組む必要がございます。
先月18日にいわゆる「再処理等拠出金法」が公布されまして、再処理を実施する認可法人が設立されることとなりました。新たな体制の下においてももちろん、民間の活力をいかして効率的に運営されることを私共は期待しております。
使用済み燃料を再処理して取り出したプルトニウムにつきましては、わが国の保有量や使い道を世界中が注目いたしております。再処理工場稼働までに事業者が策定することになっているプルトニウムの利用計画に沿って、プルサーマルの実施に向けた最大限の努力をしていくことが必要だと存じます。
先月、「もんじゅ」の在り方に関する検討の結果として運営主体の要件が示されました。「もんじゅ」の運営にあたっては、どのような運営組織になるにしても、まずは携わる技術者自身が覚悟を持って臨まなければならないと思っております。
再処理に伴って発生するガラス固化体は地下300メートルより深い地層に埋設して最終的に処分することになっており、処分施設の建設地については、年内にも国から科学的有望地が提示されることになっております。処分施設建設地の選定にあたっては周辺住民の方々はもちろん、国民全体の理解が欠かせませんので、原子力関係者はより一層力を合わせて理解活動に取組んでいくことが求められます。
原子力事業を進めていくにあたっては、原子力発電所の安全・安定な運転をはじめ、原子燃料サイクル、福島第一を含む廃止措置、海外の原子力ビジネスなど、そしてそれらを進める上で欠かせない理解活動や人材の確保・育成など、非常に多くの問題がございます。
こうした課題の解決に向けて、関係者は丁寧な情報発信や相手の目線に沿った双方向の対話に努めるとともに、これまで以上に一致団結して、総合力を発揮しながら立ち向かっていかなければならないと思います。当協会はその連携にあたり、要となる役割を果たして参りたいと存じます。
当協会は「日本原子力産業会議」として1956年に設立され、今年で60周年を迎えました。今後とも会員の皆様と相互の理解を深め、ビジョンを共有しながら、原子力平和利用の促進につながる活動を引き続き展開して参ります。
最後に、会員の皆さまのより一層のご支援ご協力を賜りますよう、お願い申し上げ、私の挨拶とします。ありがとうございました。
以上
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