2018年度定時社員総会 今井会長 挨拶

2018年6月20日

日時:2018年6月18日(月)15:00~
場所:日本工業倶楽部

日本原子力産業協会 会長の今井でございます。定時社員総会の開会にあたり、ご挨拶申し上げます。

本日はお忙しい中、ご来賓として経済産業省から大臣政務官 平木大作様、文部科学省から研究開発局長 佐伯浩治様のご臨席を賜り厚く御礼申し上げます。会員の皆様方には遠路、また多数ご出席いただきまして誠にありがとうございます。

先般、4年ぶりの改定となる第5次エネルギー基本計画の素案が取りまとめられました。エネルギー基本計画は、我々の生活基盤を支えるエネルギーをどの様に確保していくのかを示す大変重要な計画で、国民一人ひとりが真剣に考えていかなければなりません。

我が国は資源小国であり、震災前の2010年には20%程度であったエネルギー自給率も原子力発電の停止により8%程度まで低下しております。また、温室効果ガス排出量の増大による地球温暖化問題は待ったなしの状況であります。再生可能エネルギーへの期待の高まりや加速する技術革新の動きなど、エネルギーを巡る情勢変化はたいへん大きく、不確実な将来に我が国は技術力をもって柔軟に対応していかなければなりません。

素案では、2030年のエネルギーミックスの実現に向けた政策の方向性、2050年に向けたエネルギー転換への挑戦が示されております。その中で再生可能エネルギーについては、経済的に自立した主力電源化を目指すとされております。再生可能エネルギーの導入は是非とも進めなければなりませんが、固定価格買取制度により高騰する電気代やその性格上、天候などによって出力が大きく変動することから、調整電源の確保といった課題を抱えております。

これに対し原子力発電はすでに実用段階にあり、経済性に優れ、安定した電力を供給できる確実なゼロエミッション電源であります。2030年のゼロエミッション電源比率44%における原子力発電の役割を果たすためには、運転期間の延長を含め30基程度の稼働が必要となります。さらにその先、2050年に温室効果ガスの80%削減という目標を達成するためには、原子力発電の新増設・リプレースなしでは、とても見通せません。また、資源に乏しい我が国は、原子燃料サイクルの確立が欠かせませんが、一方で我が国のプルトニウム保有量への懸念が海外から示されております。この懸念を払拭するためにも、停止しているプラントの再稼働を進め、プルサーマルを着実に実施していかなければなりません。

いわゆる3Eの観点から原子力発電の活用は欠かせないわけでありますが、今、社会的信頼の獲得が何より必要であります。原子力産業界は引き続き安全性の向上に取り組むとともに双方向のコミュニケーションに努め、原子力の価値についても理解を得ていかなければなりません。また、我々原子力産業界は2011年3月に起きた福島第一原子力発電所の事故の記憶を風化させてはなりませんし、福島の復興・再生に協力していく事が極めて大切であります。さらに放射性廃棄物の最終処分も信頼を獲得する上で、重要な課題であります。引き続き国と原子力発電環境整備機構をはじめとして原子力関係者は、国民との対話に努めていかなければなりません。

今、原子力産業界では規制の枠に留まらない自律的かつ継続的な安全性向上の取り組みの一つとして、原子力事業者のみならずメーカーや関連団体も参加する新組織「原子力エネルギー協議会」が7月1日に設立されます。新組織には国内外の最新の知見を集約し、規制当局とも対話しながら現場の実態を踏まえた、より実効的な安全性の向上を図っていただきたいと思います。当協会も新組織の一員として、これらの活動に協力して参ります。

世界を見ると温暖化対策、エネルギーの安定供給の観点から、現在も原子力発電所は増え続け、運転中の原子力発電所は443基、合計出力は3年連続で過去最高を更新しております。世界からの日本の技術力や知見への期待は大きく、英国やトルコでも我が国によるプラントの建設に向けた交渉が進められております。プラントの海外での建設は世界の原子力活用に貢献するだけでなく、日本の人材確保・育成、技術力の維持・発展の観点からも重要であります。

原子力をこれからも活用していくためには、優秀な人材の確保・育成が欠かせません。その為には、若者が夢の持てる研究開発プロジェクトも必要であります。4月の原産年次大会で各国から紹介され、エネルギー基本計画の素案でも取り上げられているイノベーションによる小型モジュール炉の開発にも取り組んで欲しいと思います。

当協会はこれまで産学官75機関からなる「原子力人材育成ネットワーク」を設立し人材の確保・育成に取り組んで参りましたが、このネットワークは情報共有、相互協力の促進に留まっておりました。今後は我が国全体として整合性の取れた形で、戦略的に人材育成に取り組むための司令塔機能を確保することが必要であります。当協会はその実現に向け主導的な役割を果たしてまいります。

繰り返しになりますが、資源に乏しい我が国にとって地球環境問題に向き合いながら、経済的で安定的な電力を確保していくためには、再生可能エネルギーとともに原子力発電を最大限活用することが不可欠であります。その為にも安全が確認された原子力発電所は速やかに稼働させ、しっかりと運転していくことが重要であります。

当協会は各地域で活動されている原子力懇談会などの関係組織とも連携しながら、情報の発信や理解活動、人材育成、国際協力などの諸活動を展開して参りますので、今後とも、より一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

以 上

                                              

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