2020年度定時社員総会 今井会長 挨拶

2020年8月4日

日時:2020年8月3日(月)15:00~
場所:日本工業倶楽部

当初、6月の開催を予定しておりました本総会ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から延期させて頂きました。会員の皆さま方には本日の開催にご理解を頂き、心より感謝申し上げます。また、感染拡大の中、原子力発電所の運転や保守、再稼働に向けた工事などに取り組まれている会員の皆さま方に、この場をお借りして敬意と感謝を申し上げます。

新型コロナウイルスの感染拡大は様々なモノやサービスなどのサプライチェーンに、国際的な混乱を引き起こしました。医療や工業分野などにおける供給不足は、私たちの生命や暮らし、経済に深刻な影響を与えております。中には国家安全保障にかかわるものもあり、早急に対処が必要なことを浮き彫りにしました。社会を支える重要なインフラの一つである電力供給も同様のリスクを抱えています。我が国は資源に乏しく、海外からの輸入に大きく依存しております。低位にとどまるエネルギー自給率を早急に改善することは喫緊の課題であります。また、甚大な被害が毎年のように発生している豪雨災害は地球温暖化が要因の一つとされており、我が国も国際社会と協調して温室効果ガスの排出削減を強力に進めているところであります。

地球温暖化とエネルギー自給率の改善には温室効果ガスを排出せず、安定した電力供給が可能な原子力発電の最大限の活用が必要不可欠です。しかし、再稼働を果たしたプラントはいまだに9基にとどまっております。可能な限り早期に残るプラントの再稼働を実現させなければなりません。

原子力の活用を進めるには、国として原子力の必要性を強く認識し、将来にわたる原子力の利用を明確に位置付ける政策が重要となります。これにより原子力発電に対する適切な投資環境が整い、原子力産業界は原子力を支える人材の確保や育成、技術開発などに継続的に取り組むことが可能となります。そのためにも、国の次期エネルギー基本計画において将来にわたる原子力の活用が明確に示されることを期待いたします。

原子力産業界は原子力のさらなる安全性向上に取り組んでおり、設備、運転、保守すべての面で大きな成果を得ております。しかし、これらの活動には「もう十分」というゴールはなく、常に高みを目指していかねばなりません。日々の地道な取り組みにより再稼働、運転期間の延長、設備利用率の向上といった既存炉の有効活用が実現されます。また、長期的には新たな技術開発とそれに基づく新増設・リプレースの取り組みが進んでいくと考えます。

先週、六ヶ所村の再処理事業所における再処理の事業変更許可が決定されました。再処理は貴重なウラン資源の有効活用策であり、放射性廃棄物の減容化、有害度低減のメリットも有しています。将来世代のエネルギー供給の基盤となる原子燃料サイクルは、再処理工場とMOX燃料の製造工場の竣工をもって一応の完成となります。これらの竣工に向けた取り組みが着実に進められることを期待いたします。再処理により抽出されるプルトニウムの保有量の透明性を確保しつつ、プルサーマルによる発電で確実に消費していく姿を示さなければなりません。また、長期的な課題である高レベル放射性廃棄物の処分事業が国や原子力発電環境整備機構を中心として前進することも期待したいと思います。

原子力は今後、何世代にも亘って人類の動力源を担うとともに医療・工業・農業などにも大きな恩恵をもたらす技術です。その仕事は息が長いものであり、原子力人材の継続的な確保・育成は原子力の安全な利用と技術発展の基盤となるものです。原子力産業界は、産・官・学が連携した原子力人材育成ネットワークの取り組みをしっかりと支え、充実させていく必要があります。これらを通じ、優秀な若者を惹きつける魅力的な原子力イノベーションを一層推進していただきたいと思います。

国際協力については、研究施設の有効利用や最新知見の共有など国際的な連携も促進していく必要があります。この連携を効果的に活用し、国際的な研究者の育成や新たな技術開発に努め、我が国の原子力産業が世界をリードする流れを作り出したいと思います。

原子力発電所は立地地域の方々をはじめとする国民の理解がなければ運営できません。皆さまと一丸となって、私たちの安全に対する不断の取り組みと、原子力が国民にもたらす価値を丁寧に伝えていきたいと思います。

皆さまにも、多大なご協力をいただいている福島地域の復興支援では、今年3月に常磐線が全線で運転を再開しました。また、双葉町などで避難指示区域の一部解除が実現するなど復興が一段と前進しております。今後とも皆さまの引き続きのご支援をお願いいたします。

最後になりますが、当協会は会場にお越しの皆さまをはじめ、会員の皆様のご支援を頂戴しながら、
●「国民理解の促進」
●「人材の確保・育成」
●「国際協力」
を柱に、放射線利用も含めた原子力産業の環境整備に資する取り組みを積極的に展開してまいります。また、福島の復興に向け、地域に寄り添いながら、情報の発信などにも努めてまいります。今後とも一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

以 上

お問い合わせ先:企画部 TEL:03-6256-9316(直通)