2023年度定時社員総会 今井会長挨拶

2023年6月15日

日時:2023年6月15日(木)15:00~
場所:日本工業俱楽部

日本原子力産業協会会長の今井でございます。定時社員総会の開会にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、社会、経済の活動が正常化しつつあります。
長く続いたコロナ禍においても、原子力発電所の安全な運営をはじめ、厳しい条件下で原子力産業の現場を支えてこられた皆さま方の強い責任感と努力に、改めて敬意と感謝を申し上げます。

さて、ロシアによるウクライナ侵攻は、世界にエネルギー危機ともいえる状況をもたらしております。
いま私たちは、エネルギー安全保障とカーボンニュートラルを同時に解決しなければならないという歴史的転換点に立っています。
こうした中、世界では、原子力を課題解決の「鍵」と位置付け、原子力発電プラントの運転期間延長や、新設計画を決定するなど、原子力を活用する動きが顕著になっております。

一方、我が国は、エネルギー自給率が約11%と、OECD諸国の中でも最低クラスにあります。
エネルギーは、国民生活や、産業・経済活動の基盤であり、我が国のこうした危機的な状況を改善するには、原子力を最大限活用することが、必要不可欠であります。
この観点から、当協会は様々な機会を通じて、原子力産業界の意見を積極的に発信して参りましたが、原子力利用の価値を明確にした「GX脱炭素電源法案」が、今次国会で成立したことは大変意義深いことであります。
産業界としては、本法の趣旨に沿って、再稼働の着実な進展をはじめ、既設炉の徹底活用や、将来の新増設・リプレースなど、原子力の持続的、かつ最大限の活用を実現していく必要があります。
関係当局の皆様には、事業環境の整備をはじめ、行政面での必要なご対応を引き続きお願いしたいと思います。

さて、我が国が原子力を最大限活用していく上で、特に重要なことを2点申し上げます。
一つは、福島の復興と、福島第一原子力発電所の廃炉推進であります。
東日本大震災、および、福島第一原子力発電所の事故から、今年で12年が経過いたしました。
本年2月には、全ての希望する住民が帰還できるようになる法案が閣議決定されるなど、福島の復興に向けた取り組みは着実に前進しております。
長きにわたり、福島の復興にご尽力されてこられた多くの方々、ご支援をいただきました皆さまに、心からの敬意と、感謝の意を表すとともに、産業界・当協会としては、今後とも更なる支援を継続していきたいと思います。
また、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた大きな一歩となるALPS処理水の海洋放出についても、設備工事が着実に進められており、官民を挙げた国内外での理解活動が行われております。
当協会も、これまでにも増して、国内外への正確な情報発信と理解の促進に努めてまいります。

二つ目は、六ヶ所再処理工場の早期竣工といった核燃料サイクルの推進と、高レベル放射性廃棄物処分の推進であります。
核燃料サイクルは、プルトニウムを再利用することによって、原子力を我が国の準国産エネルギーとする極めて重要な事業であり、資源の有効利用や、放射性廃棄物の減容化、有害度低減などにも大きく寄与いたします。
審査の対応などで大変なご苦労があろうかと思いますが、確実な竣工に向け、関係者の総力を結集していただきたいと思います。

また、将来にわたる原子力の持続的利用においては、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する取り組みも大変重要な位置を占めております。
北海道の寿都町、神恵内村における文献調査が進んでいるところでありますが、これは日本全体で考えるべき課題であるため、官民が協力の上、今後のプロセスが着実に進展することを期待しています。

さて、原子力が社会の発展に貢献し続けるためには、立地地域はもとより、社会全体の理解が欠かせません。
そのためにも、産業界や関係各機関はそれぞれの役割を果たし、原子力の有する価値について国民へ広く発信し続ける必要があります。
当協会といたしましても、引き続き、

「国民理解の促進」
「人材の確保、育成の推進」
「国際協力の推進」

この3つを柱に、放射線利用も含めた原子力産業の再生に向けた取り組みを積極的に展開して参ります。

今後とも一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、私からのご挨拶とさせていただきます。

以上

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