2024年度 定時社員総会 三村会長挨拶

2024年6月18日

日時:2024年6月18日(火)15:00~
場所:日本工業俱楽部3階 大ホール

日本原子力産業協会会長の三村でございます。定時社員総会の開会にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

さて、昨年12月には、COP史上初めて公式な成果文書に温室効果ガス排出削減の重要な手段として原子力が明記され、さらに、我が国を含む25か国が、2050年に向けて世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させる宣言文に賛同したことは、世界の原子力産業界を大いに勇気づけるものでございました。

原子力は優れた安定供給性と経済効率性を有しており、運転コストが低廉・安定な準国産の脱炭素電源であることから、長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する、重要なベースロード電源であります。

また、原子力は我が国産業の競争力あるいは豊かな国民生活になくてはならないものであり、また、原子力産業そのものも国内の生産活動や雇用を通じて日本経済に貢献するもので、既に、「GX実現に向けた基本方針」、あるいは原子力基本法の改正を含む「GX脱炭素電源法」の国会決議、「今後の原子力政策の方向性と行動指針」の決定など、原子力を最大限活用する方針が明確に示されております。

本年の策定が見込まれる「第7次エネルギー基本計画」では、原子力の持続的かつ最大限の活用、ならびに早期の新規建設開始を明記するべきだと考えております。新規建設は、関係する産業をはじめ多くの人々に夢と希望を与え、将来への技術継承、人材の確保・育成、サプライチェーンの維持などに大きく貢献するものであります。その上で、当協会では、産業界の声として、次の4点を強く主張してまいりたいと思います。

一つ目は「既設炉の最大限の活用」であります。既設炉の早期再稼働、長期サイクル運転の導入、運転中保全の導入拡大、既設炉の出力向上など官民を挙げた最大限の活用を推進すべきと思っております。

二つ目は「原子力サプライチェーンの維持・強化」であります。震災以降、建設工事が中断しており、建設空白期間が長期にわたっております。サプライチェーン企業が人材や設備に投資するためには、確固たる政策的裏付けや具体的な受注の見通しが必要であります。そのためには長期の需要見通しに基づく将来の原子力発電必要容量およびその新規建設を見通した時間軸が具体的に明記されることが重要であると考えております。

三つ目は、「新規建設の投資判断を可能とするための事業環境整備」です。電力システム改革の進展に伴い、電力の事業予見性は著しく低下しています。投資回収面および資金調達面での課題に対処し、約20年にも及ぶ建設リードタイムを踏まえた適切な時期に事業者が投資判断できる事業環境整備が必要だと考えております。

四つ目は「国民理解の促進」です。環境適合性はもとより、我が国のエネルギー安全保障やエネルギー供給における準国産エネルギーとしての重要性、経済成長および産業競争力に貢献する「原子力の価値」を国民が十分認識していくための活動、これが必要だと考えています。

原子力発電を、長期に、持続的に支えていく上で原子燃料サイクルの整備は、極めて重要であります。昨年、日本原燃六ヶ所ウラン濃縮工場が約6年ぶりに生産運転を再開したことは、大変喜ばしいことであります。また、サイクルの要である再処理工場やMOX燃料工場の竣工への取り組みも着実に進めていく必要があります。

高レベル放射性廃棄物の地層処分については、北海道寿都町と神恵内村のご協力をいただきながら文献調査が進められております。本年5月には関係者のご尽力により、佐賀県玄海町が文献調査の受け入れを決定しました。高レベル放射性廃棄物の地層処分は我々の世代が責任を持って着実に進めていかなければなりません。原子力産業界としても国・NUMOと密接に連携しつつ、今後の進展をしっかり支えていきたいと思います。

さて、原子力のエネルギー利用とならび重要性が増しているのが医療、工業、農業などの放射線利用分野であります。この分野は国民の福祉の向上に向けて一層の可能性の広がりが期待されております。当協会は、こうした原子力の広範な分野における多様な価値についても、広く発信しています。

最後になりましたが、私たちが将来にわたって原子力を最大限活用していくには、常にたゆまぬ安全性向上を図り、様々な課題に対し、お集まりの皆さまをはじめ、産業界が一丸となって取り組むことが必要であります。

皆さま方の倍旧のご支援・ご協力をお願い申し上げ、私からのご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以 上

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